ホーム > インタビュー&レポート > 坂東玉三郎芸術監督のもと、 壮大なテーマに挑む太鼓芸能集団・鼓童 新作『永遠』について、メンバーにインタビュー!
――最初に、おふたりが鼓童と出会ったきっかけから教えていただけますか?
坂本雅幸(以下、坂本):高校生のとき、鼓童が地元で公演をしていたのを観て衝撃を受けたんです。元々、ドラムをやっていたんですが、邦楽の太鼓とかには興味がなくて。でも、鼓童を観てガラリと印象が変わったというか、カッコ良いなと思ったんです。それで、高校卒業してすぐに鼓童に入りました。
漆久保晃佑(以下、漆久保):僕も高校生のときですね。和太鼓の部活に入っていて、先輩の紹介で鼓童を観たのがきっかけです。そのパフォーマンスがとても印象に残って、いろんな太鼓グループがある中でも、鼓童に入りたい!って思いました。
――具体的に、どんなところに魅力を感じたんですか?
坂本:最初に照明が落ちて大太鼓を勢いよく打つところから始まって、その一発の音で衝撃を受けましたね。あと、演奏されている方の姿勢、佇まいがすごくカッコ良かった。それまでは和太鼓ってどこか土臭いイメージがあって。そのときもはちまきとかふんどしで演奏しているのに、スタイリッシュに見えたんですよね。
――最初の2年間は佐渡の研修所で生活されるとのことですが、そこではどんなことを学ばれるんですか?
坂本:毎朝4時50分に起きて掃除をしたり、ランニングして、食事も自分たちで作って。それから太鼓や踊り、歌の稽古をしたり、能、狂言、お茶なども学びます。民俗芸能の土台でもある農作業もありますね。厳しいですけど、そこで鼓童の活動の基礎となるものを学んだり、人間として鍛え上げられます。
――来年上演される『永遠』は玉三郎さんが芸術監督に就任されて3作目ということですが、玉三郎さんが芸術監督をされることで、表現の仕方にどんな変化がありましたか?
坂本:今までの鼓童の舞台は曲を並べて演奏していく形だったんですが、それを単に曲を並べるだけじゃなくて、ひとつの作品として見せるようになりました。太鼓だけじゃなくて歌や演劇的要素も取り入れて、いろんな見せ方を考えてくださっています。第一弾の『伝説』も今ツアー中の『神秘』もそうなんですが、1年がかりで作っているから、いろんなことを試せるし、追求できる。最初は形にならないんですよ、全然。玉三郎さんからイメージを伝えられて、どうしよう…?と悩むところから始まって(笑)。そこからなんとなく形になって、また寝かせて、もう一度やってみて…、そうして時間をかけて作ることでクオリティの高い作品に仕上がるので、とてもやりがいがありますね。
――最初に玉三郎さんがテーマを出されて、みなさんでイメージを膨らませていくんですね。今回もすごく壮大なテーマで…(笑)。
坂本:そうですね(笑)。『伝説』も『神秘』も、最初にテーマをいただいたときはかなり悩みました (笑)。
――具体的にどんなふうに形にしていくんですか?
坂本:特に今回の『永遠』はすごく難しくて、永遠とは何ぞやというところから考えて(笑)。玉三郎さんが思い描かれているのは、“自然の営み”なんですよ。そういう普段の1日というか、夜明けから、光が差し込んできて、風が吹いたり雲が流れたりして、星空が出てきてまた夜明けに戻っていく。そこから永遠を表現できないかな、と。なので今は、夜明けや雨、風というものに対して曲を作っています。
――曲作りはメンバーそれぞれが考えるんですか?
坂本:メンバーがアイデアを出し合うことが多いですね。誰かが持っているアイデアを使ってそれを膨らませていく感じです。
――全部ゼロから作っていくんですよね。
坂本:そうですね。『伝説』や『神秘』は昔からある鼓童の曲や、伝統芸能ものを取り入れた部分もあるんですけど、今回はまったくゼロからです。
――無限の可能性があるんですね(笑)。
坂本:『永遠』ですね(笑)。『永遠』って何だろうって、自分たちもまだ消化しきれていない部分もありますし、今後稽古していく中で、夜明けとか光とか、音として具体的なものになっていくのか、もっと抽象的なものになっていくのかが楽しみだなと。どっちが『永遠』を表現するのに向いているのかということになると思いますし。
――玉三郎さんから何かヒントを与えられることも?
坂本:玉三郎さんも『永遠』について考えていらっしゃる状態ですね(笑)。
漆久保:以前、自分たちが作った演目で、僕も1曲だけアイデアを出させていただいたんですけど、僕が元々作ったオリジナルの形より、“こっちの形はどう?”って玉三郎さんからアイデアをいただいて。自分の脳みそを揉んでほぐされたような感じがしたくらいアイデアが豊富で、いろんなアドバイスをしていただけます。
――玉三郎さんが演出されることで、個人的に変わったことはありますか?
坂本:本当に細かいところまでご指導くださっていて、舞台人としての体調管理まで見てくださっているので、より意識が高くなったと思います。発声練習なども取り入れたりして、自分たちの甘いところを徹底的に正されるんですよ。
――鼓童には33年の歴史がありますが、玉三郎さんが芸術監督になられたことで、集団としてもさらにステップアップしている感じがあるのでは?
坂本:それはとても思います。
漆久保:僕は新人でスタートしたばかりなので、そこまでの変化は分からないんです。でも玉三郎さんにご指導いただくようになってから、音楽以外の芸術作品も観るようになり、そこからいろんなヒントを得たりしていますね。
坂本:視野がすごく広がった感じがしますね。僕は入団して10年くらいになるんですけど、昔は和太鼓=伝統芸能というイメージで、伝統芸能というところが評価されていた部分だと思うんです。でも、時代が変わってきていて、徐々に伝統芸能だけじゃ通用しなくなっている部分があるんですよね。そういったことを玉三郎さんもすごく考えてくださっていて、これからどうしようかと導いてくださっているので、とても有難いですね。
――『永遠』という作品で、個人的に挑戦したいことや、やってみたいと思われていることはありますか?
坂本:簡単にいえば、可能性を広げたいなと。新しい表現が少しでも出せたらと思っています。最近は、リズムを変えて演奏することが、太鼓の表現として新しいかどうかが自分の中でわからなくなっているので、こういう難しいテーマの中で取り組むことで、少しでも先が見えればと思います。
漆久保:『永遠』の中でもいろんな演目に出させていただくんですけど、自分が出した音でお客さんに何かを感じていただいたり、自分が構想するアンサンブルを聴いていただいて、伝えたい情景を感じていただきたいです。
――和太鼓で表現するうえで、大切にされていることや、いつも意識されていることはありますか?
坂本:漠然としていますけど、本質を見抜いて演奏していきたいと思っています。今回は『永遠』とは何ぞやというところから、浅いところにとどまらずに、深く追求していきたい。太鼓に関しても一緒で、単純に音が出れば良いわけじゃなくて、どういう音を出していて、自分の身体の使い方は理に適っているのかとか、表面的な表現になっていないかとか、本質的なところを自分の中で消化していけたらと思います。玉三郎さんがそういうところを鋭く見られていて、嘘が通用しないんです(笑)。
漆久保:僕は鼓童のメンバーになってまだ間もないので、先輩たちが創り上げてきた鼓童の音にどう馴染んでいけるかというのが今の一番のテーマですね。それがリズムだったり、音質だったり、いろいろあると思うんですけども、自分が担当する楽器の中で馴染んでいけるかというのがテーマにはありますね。
――玉三郎さんから演奏に対して何か要求されることはありますか?
坂本:弱い音を求められたりするんですが、僕たちはそれが苦手なんです(笑)。昔は強い音がメインで、小さくて強い音を求められたりはしたんですけど、玉三郎さんから柔らかい音とか優しい音を求められた瞬間に、全くノリがなくなったりとか(笑)。最初はどうそれを表現していいのかわからなくなっていましたね。
――そういう難しさもあるんですね。皆さんはそれぞれに得意な楽器があるんですか?
坂本:そうですね。大きい太鼓をメインにやっています。
漆久保:僕は笛の場面が多いですね。新作といっても、鼓童の歴史に上乗せされた新作なので、鼓童が創り上げてきた音の歴史を勉強しないと、馴染めなくなってしまう。それは良く言えば“新しい音”なんですけど、悪く言えば馴染めていないことになる。そうではなくて、馴染んだ共通した音で『永遠』という作品を作っていけたらと思っています。
――『永遠』は『伝説』『神秘』との関連性は特にないんですか?
坂本:そうですね。『伝説』が割とコンサート的な要素が強くて、『神秘』は芸能とかが入ってショー的な要素があって。『永遠』は今の時点ではわからないですが、アート的な作品になると面白いのかなって思いますね。
――今回使われる楽器は確定しているんですか?
漆久保:まだですが、国際色豊かになると思います。いろんな演目があるんですけど、ポリネシアの楽器を使ったりとか、ガムランとかインドネシアの楽器も入ってきたり。日本以外の楽器もたくさん使って。それが和太鼓と馴染んで面白い作品になると思います。
――では最後に、『永遠』で楽しんでほしいところを教えていただけますでしょうか。
坂本:“永遠”って現実に存在しないものかもしれないですけど、普通に生活していて、自然に触れたときとかふとしたときに永遠を感じる瞬間ってあると思うんですよね。そんなふうに、舞台を観に来てくださった方が、その一瞬の時間の中でも何か永遠を感じられるものを作りたいなと思っています。
漆久保:例えば温泉で気持ち良くなって、このまま時間が止まってしまえばいいのにって思う瞬間に永遠があると僕は思うんです。それと同じように、コンサートを観て楽しかった、このときがずっと続いてくれればいいのにとか、この感動がずっと残ってくれればいいって思うところに永遠があるんじゃないかと思うので、そう感じていただけるよう頑張りたいです。そして、お客様それぞれの永遠を感じていただけたらと思います。
(取材・文:黒石悦子)
(2014年9月11日更新)
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