5/8(木)より梅田芸術劇場 メインホールで上演される
劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『蒼の乱』
今作は、まさに「正調中島(かずき節)」炸裂!
覚えめでたき「王道!“いのうえ歌舞伎”」復活!
東京公演の観劇レポートが到着!!
冒頭、天海祐希と松山ケンイチが満点の星空の下に佇んでいる。ただ立つ、その行為だけでこれだけ見る者を惹き付けられる俳優が何人いるだろう。ふたりの存在感が一気に場を引き締め、観客を物語の世界へと誘っていく。今春、開幕した劇団☆新感線約1年強ぶりの本公演『蒼の乱』。原点回帰の楽しさを謳った勇壮なチャンバラ活劇は、しかし挑戦と冒険が随所に盛り込まれ、今の新感線にしか描けない最先端の作品となった。中でも松山ケンイチが放つ独特のオーラが、劇団にかつてない化学変化を巻き起こしていた。
時は平安。民衆は腐敗した朝廷に辟易し、各地で反乱の火種がくすぶっていた。朝廷と対立する常世王(平幹二朗)と大盗賊・帳の夜叉丸(早乙女太一)、新たな国づくりをめざす将門小次郎(松山ケンイチ)とその妻・蒼真(天海祐希)。1部では登場人物らの思惑が丁寧に綴られ、2部で物語が大きく動きだす。突如、反乱軍の長となった蒼真。小次郎はなぜ消えたのか、蒼真が抱える血塗られた過去とは。多くの謎をはらみつつ、有無を言わせぬ時代の空気が人々を飲み込んでいく……。
登場と共に拍手が沸く天海は「今は将門御前!」と名乗り歌うロック調のソロナンバーが圧巻。2000人収容の大劇場が「狭い!」と感じるほどのスケール感で老若男女の視線とハートを鷲づかみ。一方の松山は若々しくも力強い声が印象的で、バカだバカだと己の行動を悔いるシーンでは「ほんと愛すべきバカだよ!」と念を押したくなるほど。ヤキモキしつつも目が離せない、人間味溢れる英雄像を体現した。また本作で珍しく笑いにも挑戦した早乙女太一は、実弟・友貴との一騎打ちが超絶すぎる。場面ごとに声色も替え、その凄みと色香に何度唸ったことか! さらに「ひきつり笑いをするほど高い山(難役)」と小次郎の親友・黒馬鬼役に挑んだ橋本じゅんや、和製ジャック・スパロウな粟根まことなど、かつてない領域に踏み込む劇団員らの勇姿からも目が離せない。そして、大トリとも言うべき平幹二朗の登場で、物語は怒涛のフィナーレへと突入する。やがて迎える結末のとき。目の前に広がる光景を前に、多くの人の血と涙の上に成り立つこの国の歴史と未来を思わずにはいられない。果てしなき空と大地と、この蒼き地球のために語り継がれるべき物語。過去から未来へ、今――!
公演は4月26日(土)まで東京・東急シアターオーブ、5月8日(木)から27日(火)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。チケットは発売中。
取材・文/石橋法子
(2014年4月24日更新)
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