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ホーム > インタビュー&レポート > 俳優5名のアンサンブルに鳥肌が立つすごい舞台! 3/29(土)・30(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ公演を控え ひと足先に『おそるべき親たち』東京初日レポートをお届け!

俳優5名のアンサンブルに鳥肌が立つすごい舞台!
3/29(土)・30(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ公演を控え
ひと足先に『おそるべき親たち』東京初日レポートをお届け!

3月2日(日)、東京芸術劇場 シアターウエストで『おそるべき親たち』が開幕した。作品はジャン・コクトーの名作で、没落へと向かうブルジョワ家族をめぐる物語。出演は、佐藤オリエ、中嶋朋子、満島真之介、中嶋しゅう、麻実れい。前評判は聞いていたが、期待を越えるレベルの高さとその迫力に圧倒される舞台だった。大阪公演を控え、ひと足先に観劇した東京公演の初日レポートをお届けしよう。

 暗い劇場内に、少し高さを感じる丸い舞台。そこには、無造作に積まれたクッションと、複数のろうそくが2か所に置かれている。薄暗い闇の中から、人影の気配が。母親イヴォンヌ(麻実れい)が、けだるそうにクッションの山に横たわる。ハエの羽音。ぼんやりとしか見えない。何が起こる? 息を詰めて目を凝らした瞬間、場内アナウンス。いきなり観客の心を乱す幕開きだ。

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 低血糖のイヴォンヌを介抱する姉レオ(佐藤オリエ)と、おろおろする父親ジョルジュ(中嶋しゅう)。全員が黒い衣装。ろうそくのぼんやりした明りの中、初めて外泊した息子ミシェル(満島真之介)をめぐる会話に、ゆっくりと床が回り始める。そこへ真っ白の衣装を身に着けたミシェルが帰宅。舞台がパッと明るくなる。母親をソフィーと呼び、キスしてはしゃぐミシェル。なんかヘンだ、この母子…。
 
 レオは昔、婚約中だったジョルジュをイヴォンヌに取られ、今でも彼を愛しながらひとつ屋根の下に住む。イヴォンヌは夫より息子を溺愛し、夫には愛人がいる。なんかおかしい、この家族…。

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 ミシェルの初恋宣言に動転するイヴォンヌ。息子の恋人が自分の愛人だと知るジョルジュ。その狼狽ぶりに客席から笑いが起こる。醒めた目で状況を見つめるレオが不気味だ。レオは提案する。みんなでミシェルの恋人・マドレーヌ(中嶋朋子)に会いに行こう、と。そう、ジョルジュがマドレーヌと密会していた愛の巣に…。

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 1幕が終わり客席に明りがつく。一瞬の間の後、観客がみな、ふぅ~っと息を吐き、ざわめく。登場人物の濃密な関係と心の動きに、思わず息を詰めて観ていたのだ。2幕はもう、そのスリリングな展開から目が離せない。でも緊張しながら笑ってしまう。かき乱される感情。そして、衝撃のラストへ。

oso-4.jpg  俳優たちのアンサンブルは、唸るほど見事だ。さらに、最小限の舞台セットで登場人物の揺れる心を克明に見せつけ、観客の感情のうねりを増幅させる熊林弘高の巧みな演出。そしてやっと理解する。一見、三面記事を思わせるようなドラマでありながら、おぞましくも人間の奥底をえぐるような物語。これは天才コクトーだからこそ、構築できた倒錯の世界なんだと。

 「すごい舞台、観た…」。

 観終わって、きっと誰もがそう思うはず。15分休憩をはさみ、約2時間半。共有した時間は、その瞬間に消え去ってしまう生の舞台。が、その重力感ある印象は、ボディブローをくらったように心に響き、記憶に残り続ける。こんな演劇体験は、そうざらにできるものじゃない。ドラマシティなら、オペラグラスで観るのもいいだろう。覗き見る、という行為はこの作品にふさわしい。

 演劇通をも唸らせるすごい舞台。もうすぐドラマシティにやってくる。
 
 
取材・文/演劇ライター・高橋晴代
撮影/引地信彦
 



(2014年3月 7日更新)


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「おそるべき親たち」

発売中

Pコード:431-830

▼3月29日(土)15:00
▼3月30日(日)13:00

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定-7500円

[作]ジャン・コクトー

[劇作・脚本]木内宏昌(台本)

[翻訳]木内宏昌(台本)

[演出]熊林弘高 [出演]佐藤オリエ/中嶋朋子/
満島真之介/中嶋しゅう/麻実れい

※未就学児童は入場不可。

[問]梅田芸術劇場
[TEL]06-6377-3888

「おそるべき親たち」公式サイト
http://www.umegei.com/schedule/329/

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マドレーヌ役の
中嶋朋子インタビュー

https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2014-02/nakajimatomoko.html