せま~い空間で“のぞき見”する人たちを描いた、
哀愁漂う新作・MONO『のぞき穴、哀愁』
大阪公演が間もなく!

京都を拠点に活動する劇団MONOの新作『のぞき穴、哀愁』の大阪公演が、HEP HALLにて間もなく開幕する。作・演出の土田英生が手掛けるのは、ひと癖あるけど、どこか憎めない人物たちの会話劇。絶妙な間と、軽快なテンポで展開する笑いたっぷりの会話の裏に、人間の悲哀を潜ませる。
「ストーリーよりも、そこにいる人たちを見せたい」と語る土田が今回描くのは、“のぞくこと”を仕事にする人たちの哀愁だ。舞台は、ある会社の天井裏。一度会社をリストラされた人たちが、社長直属の「諜報課」としてスタンバイし、日々、天井から社内の様子をのぞいている。そんな、陰に隠れて人の生活をのぞき見する人たちの悲喜こもごもを表していく。
“のぞき見”の設定にしたきっかけは、土田が「ネット上にあふれる罵詈雑言に辟易しつつも、哀愁を感じたこと」だった。「無責任に、中途半端な知識で自己顕示していくことでしか自分の居場所が作れない人たちを、天井裏からのぞき見する人たちに重ねています。誰も知らないところでワイワイ言うだけしかできない人たちの哀しさを描きたい。最終的には、光を浴びずとも、自分の目の前のことを大事にしていればいいのでは、ということが示せたら」。
前作は5人の劇団メンバーだけでの上演だったが、今回は20代の若手キャストも招いて、にぎやかなステージに。登場するのは、“下”の広報課で働くOLやサラリーマン、社長の娘らと、“上”の諜報課で働く5人のメンバー。天井裏のワンシチュエーションだけで展開するため、舞台を異常に狭く作り込んでいる。「劇団を25年やってきて、今はそれぞれでも活動するようになってきましたが、自分の原点である劇団で、もう一度小劇場本来の面白さを見せられる作品にしたいと思い、今回は“小ささ”にこだわりました。ダクトがたくさんある高さ2m50cmの空間で、動きは作りにくいですが、小劇場ならではの濃密な空間を活かした面白さが出ると思うので、その辺りもご期待いただきたいですね」。
時代の閉塞感にも繋がるような、狭い空間でのお芝居。それぞれにコンプレックスを抱えた、愛すべき人たちの可笑しな会話劇を、客席から彼らをのぞき見する気分で楽しんで。
取材・文:黒石悦子
(2014年3月 5日更新)
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