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妹尾和夫率いる劇団パロディフライの第23回公演は
実在の人物をモデルにハートウォーミングな物語を上演

テレビやラジオのパーソナリティとしても知られる妹尾和夫主宰の劇団、パロディフライの第23回公演が間もなくシアタードラマシティで幕を開ける。
「おかみさん 文の清七そば」と題された本作は、大阪・福島に実在した「清八そば」のおかみさんがモデルとなっている。妹尾が約15年間、ともすれば“月火水木金金土土”と“食卓がわり”に通っていたという清八そば。時は小泉政権時代、小泉総理(当時)が提唱した“タウンミーティング”のパロディを清八そばでも開催していたという妹尾。ラジオ番組のリスナーに呼びかけたそれは、10年間で約5000人、関西はもとより全国からファンがお店を訪れたという。そのうち、おかみさん会いたさに訪れる人も現れるほど、そのお人柄は多くの人を魅了したという。
惜しくも1年半前に他界したおかみさん。決して前に出ることなく、一歩引きながらもここぞと言う時にはビシッと取り仕切っていた姿が本当に素敵だったと回想する妹尾。何とかしておかみさんの話を舞台化したいという思いが実現した本公演について、おかみさんへの思いも併せて話を聞いた。

――実在した人物をモデルにしているという本作ですが、脚本が郷田美雄さんです。郷田さんについて、まずは聞かせてください。

妹尾和夫(以下、妹尾):朝日放送のドラマのチーフプロデューサーで、僕と年齢も近いんです。僕が若い頃、彼の監督作に僕が役者として出ていたりして、よく知っていました。お偉いさんになったし、そろそろ時間が取れないかなと思って声をかけたら「僕でよかったら」というお返事を頂きました。日ごろは大作家にダメ出ししているような方なんです。実在した人物と言うことで、清八そばの旦那さんとお嬢さんにも集まっていただいて、生前のおかみさんのお話をいろいろ伺いました。

――郷田さんの脚本はいかがですか?

妹尾:郷田さんの本はきめ細かいですね。女性が書いたような本です。ただ、きめが細か過ぎて、映像だったらできるけど舞台ではそこまで出せないよということもあるので、舞台でどこまで描くかという戦いをしてますね(笑)。でも、主人公をこれだけしっかり描いてくれた本も恐らく劇団史上、初めてです。周りの人の方がよく描かれていて、主人公はストーリーテラーになっているということもよくあるんです。そういうものでは、僕たちとしはお客さんはどこで感情移入したらいいんだろうと思うんですね。うちが実験的な芝居を作る劇団だったらいいんですけど、そういう芝居を目指してはいなくて。やっぱり、お客さんが感情移入して、きゅんとして、最後に“はあ~、よかったな”って思ってもらえる芝居にしたいので、主人公をしっかり描くと、お客さんの気持ちも入りやすくなりますね。

――先ほども見せ方について“戦い”とおっしゃっていましたが、その戦いの面白さとは何でしょう?

妹尾:郷田さんの本は丁寧に丁寧に、人と人との絡みが描かれています。ところが舞台で見ると、それがトゥーマッチになっちゃうこともあるんですね。ヒューマンドラマとか、心の葛藤を描くお芝居の場合は、あんまり描きすぎちゃうと逆によくないのかなと思って。余白の部分が必要というか。なので、細かく描かれた部分をどうカットして余白にするか、ですね。そういう戦いも、これまで22回、本公演をしてきて初めてです。

――妹尾さんの長いキャリアにおいて、そういった“初体験”をどう受け止められていますか?

妹尾:楽しいですね。楽しいし、今までと違う作業だから新鮮ですね。パンフレット掲載用に、郷田さんと対談をしたんですけど、今みたいな話もして。余白の部分を舞台でどうやって、シーンとシーンの間に見せるかっていう話をしながら「3つほどシーンをカットしたよ」って郷田さんに言ったら、「そうですか、僕、しつこすぎますかね」っておっしゃってました(笑)。

――見せ方でも何か新しいことにチャレンジされているんですか?

妹尾:正直言って斬新なものを編み出せないので、今まで自分が見てきたり、考えてきたことのアレンジをどう新鮮に見せるか、ですね。これは昔やったんですが、回想シーンっで“このシーンはセピア色で見せたいよなぁ”って思ったんです。それで編み出したのが、お客さんにセピア色のセロファンを配布して、そのシーンになったら合図してお客さんにセロファンを通して見てもらうということをしましたが、それは大ウケしたことがありましたね(笑)。

――そのアイディアは斬新ですね(笑)。では、今回の本公演のテーマを教えてください。

妹尾:夫婦愛、家族愛はもちろんですが、福島2丁目にあったそばやのおかみさんの物語ということで、その物語を舞台で見ていただいて、清八そばに行ったことがない方も、その店に行ったら温かくなれるんだという気持ちを実感してほしいと思います。なので、キャッチコピーも、「ぜひおかみさんに会いに来てください」というものにしました。

――時代背景はどのような設定でしょうか?

妹尾:時代は1970年代。70年代安保の、学生運動が盛んだったころの設定です。そういう中で、物語の最後にちょっと大きな仕掛けを施しています。それは今は言えませんが (笑)、何かが起こります。

――そこはやはり見どころですね。

妹尾:はい。それと、前半にもう一つ。今回は安井(牧子)がおかみさんの役をするのですが、一人で独白するシーンが10分ぐらいあるんです。ここは僕も稽古場で見るたびに、毎回泣きました。お酒が飲めないおかみさんがお酒を飲むシーンで。稽古場でもみんな食いついてましたね。それが前半の見せ場の一つです。後半の見せ場は言えませんが(笑)。

――清八そばのおかみさんはどんな方だったんですか?

妹尾:何が素敵かって、距離感なんです。おかみさんは自分から出てきてしゃべる方じゃないんですね。何かがあったら出てきてくださって、常に一歩引いていらっしゃる。こっちが気を遣わなくてもいい方なんです。自分の思いだけでなく、お客さん、従業員のことも考えていらっしゃった方で。関西でテレビやラジオのお仕事している中で、この15年くらいは一番支えてもらっていた方ですね。直接、何かをしていただけるとかじゃないんですけど。

――存在そのものが妹尾さんの支えになっていたんですね。では最後になりますが、今、関西版WEBを読まれている方に、本公演に向けてメッセージをお願します。

妹尾:今回は実在したおそば屋さんのおかみさんをモデルにした話で、もちろんおかみさんにこのお芝居を捧げたいという気持ちもあるんですが、それは二の次で。恐らく皆さんが生活しているエリアの中で、そういう行きつけの、気を許せるようなお店って1件くらいあると思うんです。僕にとってはたまたま実在した清八そばというおそば屋さんでしたが、見に来られる方がそれぞれの生活圏の中にあるお店とダブらせて、何か感じてくださったらいいなと思ってます。それがお店の方でなくても、遠く離れている家族だったり、恩師だったりでもいいんです。キャッチコピーの「おかみさんに会いに来てください」というのは、“あなたにとってのおかみさん的な存在の人を思ってください”という思いがあります。このお芝居をご覧になって、そういう人を思い出して「しばらくご無沙汰してるな、会いに行ってみようかな」と思っていただければなと思います。




(2013年12月 6日更新)


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写真はいずれも前回公演より。

劇団パロディフライ
「おかみさん 文の清七そば」

発売中

Pコード:432-535

▼12月14日(土)13:00/18:00

▼12月15日(日)13:00

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

前売り-6000円(指定)

[作]郷田美雄

[演出]妹尾和夫

[出演]妹尾和夫/安井牧子/岩崎なおあき/松井桂三/伊舞なおみ/他

※未就学児童は入場不可。

[問]劇団パロディフライ
[TEL]06-6359-7049

劇団パロディフライ公式サイト
http://www.parodyfly.com/

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