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「語りとマリンバのハーモニーを楽しんでほしい」
北村想の代表作『寿歌』シリーズの第4弾、
“完結編”がリーディング×生演奏で上演!

1979年初演の『寿歌』より、1982年の『寿歌Ⅱ』、1985年の『寿歌西へ』と続き、さまざまなカンパニーで上演されてきた、劇作家・北村想の『寿歌』シリーズ。今回、シリーズ完結編として書き下ろされた新作『寿歌Ⅳ-火の粉のごとく星にうまれよ-』が、リーディング公演として上演される。

 

シリーズ全編を通して描かれるのは、核戦争が終わった後の瓦礫の荒野を、リアカーを引いた、しがない旅芸人ゲサクとキョウコがさすらう原風景。『寿歌Ⅳ』では、ふたりが若き禅宗の僧侶・ソウジュンと荒野で出会うところから物語が始まる。ただ風が吹きぬけるだけで人も建物もなく、終末の気配が漂う中、ゲサクとキョウコの軽妙で深遠な会話が繰り広げられていく……。

 

「『寿歌』シリーズは、ロードムービーのようなもの。最初の『寿歌』ではキリスト教の観念を取り入れましたが、今回はその正反対の宗教である仏教の思想を持ちこみました。旅をしつつ、悟りを開くために思い悩む修行僧を入れることで、お気楽なゲサクとキョウコと対比させています」と、作品について語る北村。ゲサク役には上方落語の噺家・桂九雀、キョウコ役には、北村が絶大な信頼を寄せる船戸香里、ソウジュン役にはニットキャップシアターのごまのはえを配し、打楽器奏者・新谷祥子によるマリンバとパーカッションの生演奏とともに展開していく。「演劇に生演奏で楽器を取り入れる場合、マリンバの音色は特に親和性が高いと思うんです。今回、リーディングに音楽を取り入れたのは、音楽ファンにも鑑賞してもらいたいという想いがあるのと、音楽性をより押し出すことで、リーディングという形態を発展させる道筋を作れたらと考えています。マリンバも語りも、“聴く”ものなので、ふたつの音のハーモニーを楽しんでいただけるようにしたいですね」

 

核戦争後の荒野を舞台にした作品だが、この『寿歌Ⅳ』を描くにあたっては、震災については特に意識をせず書いたという。「私は戯曲を書くとき、ストーリーやテーマは考えず、シチュエーションと登場人物だけを考えます。そうすると、登場人物たちが勝手に話を進めてくれるんです(笑)。今回もそうして書いたんですが、震災や世界の情勢については、私の中を通過したうえでアウトプットされたものなので、自分の中で操作している部分があるのかもしれません」

 

シリーズ完結編にて、ゲサクとキョウコはどこへ向かうのか。会話と演奏の心地よいハーモニーに身を委ねながら、物語と新たなリーディングのスタイルを楽しんで。


(取材・文/黒石悦子)




(2013年10月21日更新)


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北村想
きたむら・そう●劇作家、小説家、エッセイスト。1984年に『十一人の少年』で第28回岸田國士戯曲賞、1990年に『雪をわたって…第二稿・月のあかるさ』で第24回紀伊國屋演劇賞、1997年にラジオ・ドラマ『ケンジ・地球ステーションの旅』でギャラクシー賞を受賞。2008年には小説『怪人二十面相・伝』が『K-20 怪人二十面相・伝』として映画化。AI・HALLでは18年間、戯曲塾「伊丹想流私塾」で塾長を務めている。

reading evolution マリンバと物語の響演『寿歌Ⅳ~火の粉のごとく星に生まれよ~』

▼10月26日(土)19:00
▼10月27日(日)14:00
AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
前売-1500円/当日-1800円
※日時指定・整理番号付自由席。

[作・演出]北村想
[音楽]新谷祥子(marimba & percussion)
出演]桂九雀/船戸香里/ごまのはえ(ニットキャップシアター)

[問]AI・HALL[TEL]072-782-2000

AI・HALL
http://www.aihall.com/