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前衆議院議員の中野寛成氏が
現代の日本を優しくわかりやすくレクチャー
「ガンジーの予見から読み解く みんなで考えるニッポンの未来」

前衆議院議員の中野寛成氏が、政界を勇退したのは2012年11月のこと。当時、史上最年少の25歳で豊中市市議に初当選し、それ以後は地方議員、国会議員(衆議院議員11期)として、約50年に渡って政治に携わってきた。今年4月から吉本興業の特別顧問に就き、現在は、関西大学客員教授、評論家、コメンテーター、パーソナリティとして活躍の場を広げている。日本の政治・経済を間近で見続けてきた、元“国会の重鎮”ともいうべき中野氏が、このたび「ガンジーの予見から読み解く みんなで考えるニッポンの未来」を上梓。これからの日本はどうなっていくのか? 国民にできることって? 難しいイメージの政治・経済をわかりやすくレクチャーする一冊。この著書へ込められた想いを、改めて中野氏に尋ねてみた。

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――タイトルに「ガンジーの予見から読み解く」とあるように、著書で現代社会とガンジーの「20世紀資本主義7つの大罪」を照らし合わせていて、分かりやすい上にあまりにも当てはまることが多くて驚きました。

中野:そうでしょう! 「20世紀資本主義の7つの大罪」は、ガンジーのお墓に掘られている言葉なんですよ。「原則なき政治」、「道徳なき商業」、「労働なき富」、「人格なき教育」、「人間性なき科学」、「節度なき快楽」、「献身なき信仰」。この7つが、資本主義によってもたらされるであろう大罪として予見されています。私がずっと座右の銘にしてきた言葉です。アベノミクスがもてはやされている今だからこそ、この言葉をみんな思い起こさなくてはならないのではないかと思います。時代を遡ると、イギリスのサッチャリズムやアメリカのレーガノミクスといった、いわゆる資本主義の原点はみんな共通しています。ガンジーはそれよりもっと前の時代から、イギリスの植民地主義に対する怒りを込めてこういった時代の到来を予見していたわけです。いまのアベノミクスは、オリンピック選手で例えるなら、筋肉増強剤を打っているようなものです。いずれ、人間の体をボロボロにしてしまうのではないかと心配しています。

――アベノミクスはすでに動き出していますが……。

中野:どこで歯止めをかけるのか、でしょうね。アベノミクスによって伸びた部分は有効活用すればいいと思いますが、そのことによって生まれる急激な格差をどこかで是正しないといけません。安倍首相は、雇用や賃上げは経済成長したあとに付いてくると言っていますが、「それを先にやれよ!」と思いますね(笑)。「まずは会社が儲からなければ雇用も賃上げもできない」と安倍さんは言うでしょうけど、「儲かったら給料を上げます」という約束を、誰も交わしていないじゃないですか。

――消費税も、来年4月から5%から8%に上がります。国民としてはとても厳しいのですが…。

中野:私自身が衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会の委員長でしたから、国会で法律を決めた張本人のひとりなんです。ですから当然、時期的にも目的から言っても上げざるを得ないと考えます。しかし、私が引退した頃に政権交代し、それとともに法律の中身と本質がかなり変化しているのではないかと感じています。消費税は、社会保障に特化して使われなければならないものです。しかし、アベノミクスという資本主義のなかで、お金に色がついていないばかりに「税収があるから」とほかに回されていく傾向があまりにも強すぎる。消費税の使い道と運用を、国民目線に立ってもっとしっかりと配慮しなくてはなりません。

――この本は、とくにどういう方々に読んでもらいたいと思っていますか?

中野:学生さんや主婦の方、サラリーマン、いろんな世代の方々に読んでいただきたいです。「国民」とは誰かといえば、お年寄りや若者、男性、女性といった区別なく、老若男女すべての人。政策テーマによっては個別になりますが、政治の仕事という観点から見れば、セーフティーネットといった生活のベースとなるものについては求められているものは基本同じです。たとえば、現在のアベノミクスのような一点突破型、いうなれば富士山のような山をひとつ作りさえすれば、その山頂に降った雨がやがて裾野に降っていき自然と全体を潤すだろうという考え方を僕は取りません。それとは逆の、土台を下からしっかりと積み上げていくピラミッドのような手段を取りたいと思っていました。なぜなら、そうしないと必ず格差という歪みが出てくるからです。そういったことを伝えていきたいという思いは、政治家の頃からありましたね。

――著書でのハイヒール・リンゴさん、ロザン・宇治原さんとの対談も、先生の本音が垣間見られて刺激的でした。

中野:日本の本来あるべき姿を本音で書く上で、私の一方的な思い込みではいけないので、ツッコんでいただけるような要素があればと思ってリンゴさんと宇治原さんに対談のお相手をしていただきました。リンゴさんはテレビ番組で拝見し、「すごいツッコミをする人やな」と思っていたので、このたび対談が実現して大変うれしかったですね。宇治原さんは、謙虚で常識のある方。極論に走らず、ひとつひとつをよく考えている方やなと感じました。

NN_t2.jpg――政治家を卒業されて、今の立場で政治を見て改めて感じたことはありましたか?

中野:政治には、ゴールがあるわけではないですからね。ただ、言えることは、スターだけでは物語は作れないということ。政治のなかで、本当に真面目に政策を考え、国のことを考えている人を、皆さんができるだけ評価してあげてほしいと思います。派手なパフォーマンスばかりする劇場型の政治家につられないように。劇場型の人の中にも、信念を持っていて、ひとつのアピールの方法として演じている人もいるんです。とはいえ、中身が伴っていない人もいますし、信念はあるけど能力がない人もいます。問題は、政治家にしろ経済にしろ、本物か偽物か見分ける力を持つ必要があるでしょうね。

――国民として、こういった著書を読む以外に、どうやって政治家を見る目を磨いていけばいいのでしょうか?

中野:たとえば、テレビのワイドショーもニュース番組も両方見てもらって、見比べてみる。意外とワイドショーのなかに真実が込められていることもあるので、それを見極める力が必要なんでしょうね。新聞でも、一紙だけではなくて、せめて二紙ぐらいは読み比べてもいいかもしれません。かなり、書いてあることが違ったりしますから。それと同時に、マスコミもここまで力を持ってくれば、マスコミ自身が批判されることにも耐えなければならない。やはり、部数や視聴率ばかり追いかけるのではなく、マスコミにもひとつの見識がないといけないですよね。国民ウケする政治家が劇場型タイプで、さらにマスコミまで劇場型ばかりになってしまうと、救いようがなくなってしまうんです。

――今後の活動は、基本的には大阪を拠点にされるんですか?

中野:そうですね。大阪は非常に包容力があり、大衆の知恵がある土地です。在日外国人の方も「大阪が一番住みやすい」と言う方が多いと聞いたことがあります。大阪の人は気取らないし、心にゆとりがあるからだろうと思うんです。僕自身も、長崎で生まれて親父が商売に失敗し、夜逃げ同然で大阪に出てきたんですけど、そんなどこの馬の骨とも分からない私を、大阪の人は選挙で勝たせてくれた。普通なら「あんなよそ者!」と言われるところですけれど、私はよそ者扱いをされたことが一度もないんですよ(笑)。温かい、懐の深い街です。

――今後、こういう本を書いてみたいというテーマがあれば教えてください。

中野:この本では、様々なテーマについて書いているのですが、「憲法」や「外交」や「教育」や「世界との付き合い方」などなど、各論についても深く書く機会があればなと思います。僕は民主党の憲法調査会長を長い間やっていたので、憲法については、詳しい方のひとりなので(笑)。以前、憲法の本を出したこともあるんですが、もう時代が変わっているところもあるので、少し解釈を変えて、日本国憲法を分かりやすく、皆さんの暮らしに当てはめたらこんな風になるねん、というようなことが書ければなと思っています。

――日本国憲法はたしかにもっと知りたいです。憲法9条改正議論のなかには、何やら物々しい意見もあって……。

中野:そうですね、もうちょっと冷静に、常識で考えられる、常識が通用する憲法論があってしかるべきだと思います。憲法論議に限らず、日本人は、政治をゲームみたいに思っているところがありますよね。「アベノミクス? おもしろいやん」とか、「橋下さんおもしろいやん、何かやってくれそうやん」などなど……。何をどうやってくれるかはわからなくても、「何かやってくれそう」というだけで票を入れてみようかと。だけど、政治というのはゲームや人気投票と違って、「この人に入れて、この人が勝ったらこうなるねん」という、自分の暮らしに対する影響について考える、そういう選び方をしないといけない。日本人は、本当は中庸の取れた人たちなんですよ。天気予報を見て、にわか雨が降りそうなら「大きな傘はいらないけれど、折り畳み傘をカバンに忍ばせておこうかな」という。ところが最近は「傘を持っていくか、持っていかんか! 二者択一!」と、そういう日本人が増えたような気がします。

――極論に走りがちなんですね。

中野:現代社会は、過激というか、極端になりすぎていると思うな。僕は、両方の極端を、なんとか収めたいんですよ。だからこの本には、「一度頭を冷やして、落ち着いて考えてみようよ」というメッセージも込めているんです。でも、そういった本はどうしても地味に映ってしまうので、リンゴさんや宇治原さんと一緒に話をすることで、こういう落ち着いた本も読んでもらえるんじゃないかな、と期待しています(笑)。

(取材・文/中野純子)




(2013年10月25日更新)


Check

「ガンジーの予見から読み解く
みんなで考えるニッポンの未来」

著者:中野寛成
定価:1575円(税込)
発行:ヨシモトブックス
発売:ワニブックス

中野氏の面白キャラが開花!?
ハイヒール・リンゴと
出版記者会見!

去る10月2日、中野寛成氏の著書「ガンジーの予見から読み解く みんなで考えるニッポンの未来」の出版記者会見が開催され、著書で対談したハイヒール・リンゴも出席した。中野氏の印象を、「大先輩にこう言うのは失礼なのですが、思っていた以上に真面目に、本当に日本のことを考えている方だと思いました」とコメント。さらに、政界引退についてリンゴに「後ろ髪を引かれる思いでしたか?」と尋ねられた中野氏が、「前髪がないのでね」と、自分の頭髪をネタにするひと幕も! 「先生は、おやじギャグが好きなんですよね?」とリンゴに言われると、「青年ギャグのつもりで言ってるんですけど(笑)」と切り返し、ユニークな素顔を垣間見せていた。

ハイヒール・リンゴ舞台出演情報

『なんばグランド花月』
発売中 Pコード:597-150

〈本公演〉
1階指定席-4500円 2階指定席-4000円

▼11月16日(土) 12:45/15:45
[出演]オール阪神・巨人/今いくよ・くるよ/西川きよし/トミーズ/ハイヒール/スリムクラブ/他/「吉本新喜劇」(川畑泰史/若井みどり/井上竜夫/浅香あき恵/他)

▼11月30日(土) 12:45/15:45
[出演]桂文珍/ハイヒール/大木こだま・ひびき/トミーズ/もりやすバンバンビガロ/ダイアン/他/「吉本新喜劇」(辻本茂雄/すっちー/島田一の介/松浦真也/他)

▼12月7日(土) 12:45/15:45
出演]中田カウス・ボタン/笑福亭仁鶴/今いくよ・くるよ/ハイヒール/三浦マイルド/Wヤング/トータルテンボス/他/「吉本新喜劇」(川畑泰史/桑原和男/吉田ヒロ/末成由美/他)

▼12月17日(火) 11:00/14:30
[出演]中田カウス・ボタン/宮川大助・花子/大木こだま・ひびき/桂小枝/ハイヒール/他/「吉本新喜劇」(辻本茂雄/井上竜夫/浅香あき恵/島田珠代/他)

プリンセス天功のよしもと摩訶不思議花月
11月2日(土)10:00~一般発売
Pコード:433-131
▼11月29日(金) 19:00
なんばグランド花月
全席指定-4000円
[出演]プリンセス天功/池乃めだか(吉本新喜劇)/ハイヒール/テンダラー/ガリガリガリクソン/もりやすバンバンビガロ/千鳥/他

[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル[TEL]0570-550-100

なんばグランド花月
http://www.yoshimoto.co.jp/ngk/

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