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ヨーロッパ企画の大阪公演が間もなく開幕!
“迷路コメディ”と銘打った新作でどう遊ぶ!?
劇団員と客演・菅原永二にインタビュー

外部公演に映画やドラマ、イベントなど、メンバーそれぞれが幅広い活躍を見せる京都の劇団、ヨーロッパ企画。彼らが年に一度集結して贈る新作公演が今年も上演。一昨年から“漂流コメディ”“移動コメディ”と、企画性を意識したコメディに挑戦している彼らが、今作『建てましにつぐ建てましポルカ』では“迷路コメディ”と銘打ち、舞台上に迷路を作り上げて物語を展開していく。今回は、客演のひとりである菅原永二と劇団員の中川晴樹、石田剛太に、本公演についての話を訊いた。

――菅原さんは、最初にヨーロッパ企画の作品を観られたときの印象を憶えていますか?
菅原「『サマータイム・マシンブルース』のDVDを観たんです。学生がやっているのと勘違いするくらい若い雰囲気なのに、クオリティがすごく高くて」
石田「中川さんは48歳くらいに見えますけどね(笑)」
中川「僕が出てたことに気付いていなかったんですよね」
菅原「パーマをかけていたのと、メガネが違っていたので(笑)。お話も面白くて、これはすごい人たちが出てきたなと思いましたね」
石田「それは何をきっかけに観たんですか?」
菅原「『冬のユリゲラー』をスズナリに観に行こうとしたら入れなくて。そしたら、メンバーの土佐君がDVDをくれたんです」
石田「あ~、そうだったんですね」

――じゃあ実際にヨーロッパ企画の舞台を生で観られたのは?
菅原「それから随分経ってからで、『ロベルトの操縦』です。土佐君とはテレビの『演技者』で一緒だったこともあり、連絡先は交換してたんですけど、それ以来全然連絡をとってなくて。グローブ座で『昭和島ウォーカー』をやっていたのも知ってたんですけど、観に行けなかったんですよね」

――今回のお話を頂いたきっかけは何だったんですか?
菅原「一昨年の『ロベルトの操縦』を観て、昨年も『月とスイートスポット』を観て、“面白かった~”って思いながら帰ろうとしたら、声をかけてくださって」
中川「へぇ~!全然知らなかった」
石田「諏訪さんが永二さんと仕事をして、仲良くなったんですよね。諏訪さんが“永二さんに出てもらいたい!”ってすごく言ってました」
菅原「一昨年の客演で出ていた中山(祐一朗)さんとか、去年の加藤啓さんとかは古くから知っていて、ふわふわした人たちが呼ばれていくな~って思ってたんです(笑)」
一同「ハハハハハ(笑)!」
菅原「自由度の高い人たちが呼ばれていくんだなって思ってたんですが…」

――おふたりに続いて…(笑)
菅原「ということは、自分もそういうふうに思われているのか!って(笑)。“中山っちと啓は自由度高いからな~”って言っていた人間が呼ばれるってことは…ねぇ。ちょっと自分のこと見つめ直そうかなと(笑)」
一同「ハハハハハ(笑)!」
石田「外から見たら同じところに入ってたっていう(笑)」

――劇団員としては、客演の方が入られて刺激を受けると思うのですが、今回菅原さんが参加されていかがですか?
石田「中山さんと啓さんのときは、一度外部の公演で一緒にやらせていただいたことがあって、それなりにコミュニケーションが取れていた状zだったんです。でも永二さんは、諏訪さんや土佐さんとしか一緒にお仕事してなくて、飲みの席で一緒になってお話したくらいだったので、最初はちょっと緊張感とか背筋が伸びる感じがありましたね。これまでの人がなかったわけではないんですけど(笑)」
菅原「段々その背筋も丸くなっていってるけどね(笑)」
石田「永二さんが稽古場に合流してエチュードをした瞬間、雰囲気が引き締まったというか、これで1本できるなっていう確信を持てたので、やっぱりすごいな~と思いましたね」
中川「僕は永二さんが出ていた舞台で、芸人さんに対して役者たちが自由にボケ続ける、っていう、芸人以上に芸人らしいことをやってたのを観たことがあったんです。芸人以上に突っ込むこともあって、すごくバランスのいい、面白い方だなと思っていたので、一緒にやれるのがすごく嬉しいですね。あと、東京の方に来ていただくと京都に住んでいる僕らが知らない、東京の演劇事情が知れるんです(笑)。この劇団はどんなふうに作っているとか、この演出家はどういうふうに作品を作るとか、そういうことを知っている方たちが京都に来てくれて話が出来るのがすごく有難いなと思いますし、僕らが勉強させていただいている感じですね。作品を良くしてもらうというのもありますし、いろいろ知ることが出来るから、年に1回来ていただく客演の方はすごく大事な存在です」

――逆に、菅原さんから見て、京都で活動しているヨーロッパ企画の雰囲気はどう感じますか?
菅原「すごく素敵な環境ですよね。誰でも出入り自由な事務所もあるし。後輩の人がいつの間にかスタッフになっていたりとか、誰かよくわからない人が寝てるけど、聞いてみたら誰かの知り合いだったみたいな(笑)。そんな誰でも集まれる遊び場みたいな仕事場ってないですよね。あえて東京に出ないのはなるほどって思うし、お互い意見を戦わせるのではなく、それいいねって受け入れたり、こういうのやってみようかって提案したり。すごくいろんなものが生まれてくる環境じゃないかなって思いますね。京都で作って、東京なり地方なりに持って行くっていうのは変わらない作り方で素敵だなって。のんびりしていてすごく居心地がいいですよね」

――作品の雰囲気そのままの、いい意味でゆるい空気感がありますよね。作品を作るときはいつも、みなさんの普段のキャラクターを活かして作られるんですか?
石田「キャラクターというよりも、関係性を活かして作っていきますね。キャラクターはやっていくうちに出てきたりとか、上田君からこういうキャラでって指定があったりするんですよ。でも、先輩後輩であったりとか、関係性は割と普段のままの方がしっくりくるみたいで。永二さんは諏訪さんと仲が良くて、上田君も諏訪さんが後輩のようにふるまっているのが想像できるから、そういう関係性の雰囲気を出したりしていますね」
中川「そういう点では、僕はちょっと離れた役をやることが多いですね」
石田「中川さんは元々客演から劇団に入ったこともあって、ちょっとメンバーから離れて見ている人っていうのが上田君の中でもあるのかもしれないですね。それか、いちばん上でガンガン仕切ったりして、みんながボーッとしているのとかを見ると、若干キレ気味で“これ、何待ちの時間?”みたいな」
中川「それイメージだから(笑)。悪口言ってるだけやん(笑)」
一同「ハハハハハ(笑)!」
中川「『ショートショートムービーフェスティバル』をやってたときは僕がリーダーで仕切ってたから、どうしてもそういう役まわりになるんです」
石田「そういうことか(笑)。“これ何の時間なの?”って言ってる印象があるから(笑)」

――そうなんですね (笑)。今回は中世のヨーロッパが舞台ということもあり、その時代の映画を見ながら勉強もされているとか。
中川「言葉が独特なんですよね。普通にやればいいのかもしれないけど、おそらく衣装もセットも中世風になるだろうし、一般的な中世貴族のイメージで喋りたいなって。でもその言葉遣いがなかなか難しくて」
石田「出てこないですよね」
中川「普段僕らあまりちゃんとした敬語を使っていないから、敬語もまず難しかったりする」
菅原「貴族同士だと、お互いを敬うような感じだからね」
中川「どっちが上っていう立場もないですから」
石田「例えば、気丈にふるまいながら迷ったときには、“迷いましたな~”っていう言葉になるんですよ。現代口語なら“うわ~、迷ったな~!どうすんだよ~”っていうのはパっと出てくるんですけど、“迷いましたな~”というのは言葉としてなかなか出てこないんですよね」
中川「日常の会話が難しいんですよ」

――いつも設定はさまざまですけど、口調や会話は普段の延長線上にあるような雰囲気だと思うのですが、今回は中世貴族らしさを出すんですね。
中川「前回はヤクザの話で語尾に“バカ野郎”ってつけたりしたけど、普通のやりとりのときもありましたしね。うまく組み合わせてやると思います」
石田「酒井君はナイトの役なんですけど、ブレずに貴族らしい世界観を忠実に出してきますね。すらすら言葉が出てくるんですよ。フェンシングもやってたし、中世ヨーロッパの世界観が好きみたいですね」
菅原「誰よりもすらすらと言葉が出てくるよね。彼の中ですごく広がってますよね」

――酒井さんはいつも終盤に出てきたり、他の方とはちょっと違う役どころでキーマンのようになっていますよね。
石田「最近、どんどんおかしくなってきてる気がします(笑)」
中川「それこそ『サマータイム・マシンブルース』のときの酒井なんて、すごい常識人で、突っ込んで説明するっていうキャラクターだったけど、今は無理だもんね(笑)」
石田「普段が変なので、それにみんなが気付いてきたんですよ。最近のヨーロッパ企画は終盤で酒井が出てくる雰囲気になっているので、お客さんにも酒井が出てくるともうすぐ芝居が終わるんだなって思われてる(笑)」
中川「それか西村が出るかだね」
菅原「あ~(笑)」
石田「上田君がお客さんに“そろそろ終わるんだな”って思われるから、ちょっと最初から出そうかなとも言ってました(笑)。なので、本番を楽しみにしてほしいですね」

――今回は“迷路コメディ”ということで、いつも以上に作り込んだ舞台になるそうですね。ヨーロッパ企画の真骨頂とも言える作品になるのではと思うのですが、皆さんも楽しみにされているのでは?
石田「最近は舞台セットと有機的に絡むことが多いんですけど、今回は特に稽古の段階で大きなセットを建て込んでやりましたね。それをやったときにプロの劇団だなって、僕らもビックリしちゃったんです」
菅原「本格的だなって思いましたよね。でもすぐに解体しちゃってたけど…(笑)」
中川「実際にセットを使って、この場合はどういう関係性が生まれるかというのを見ながら作っていくんでね(笑)」

――では最後に、今回の公演で楽しみにしてほしいところを教えていただけますでしょうか。
中川「今回は企画性コメディの第3弾で、迷路コメディで。最近は、もうちょっと若い頃には恥ずかしくてやらなかったことをやってたり、ちょっと大人になって開き直ってる部分があって、それを面白がってやってるんですよね。前回は結構ちゃんとした物語を作って、笑いもありながらしんみりさせていい雰囲気の芝居に仕上げたけど、今回はそれはないから、15周年ですし、パッと楽しくやれたらいいなと思いますね」
石田「僕もほぼ同意見ですね(笑)。客演さんも永二さんのほかに女性がふたりいて、賑やかなんですよ、いつもより。前回は渋い雰囲気で、大人のコメディこれだぞ!という雰囲気だったんですが。前に上田君が“30代のコメディが思い付かない”って言ってたんですよ。“20代は学生のノリでダラダラした雰囲気が面白くて、おそらく40代、50代になったら渋みが出て面白いことが出来る。でも30代ってサラリーマンで言えばいちばん働き盛りでしょ。真剣なんだよな。そんなときにコメディって出来ないんだわ”って上田君が一時期言い出してたんですよ。それから“くだらないことも真面目にやるぞ!”っていう雰囲気をやるのが30代のコメディっていう感じになってきて、今回はそれが顕著に表れるような賑やかで楽しいお芝居になりそうです。サラリーマンの無礼講で芝居を作っているノリです。無礼講なんで観に来てください(笑)」
菅原「メッセージとかないんですよね、多分(笑)。それに、あっても受け取らなくてもいいと思うので、観てニヤニヤして笑って帰って頂ければ。石田君が無礼講って言うのも本当にその通りで、上司が“おかしいだろあれは!”って言っても、“まぁまぁ、今日ぐらいいいじゃないですか”ってなだめるような(笑)」
石田「そうですよね。そういう雰囲気ありますよね。永二さん呼んでこんなことやるのかって(笑)。ダンサーさんも出ますしね」
菅原「楽しそうだなと思って観ていただきたいですね。やってる側が楽しんでいると思うので(笑)」

 

(取材・文/黒石悦子)




(2013年9月28日更新)


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(左から)中川晴樹、菅原永二、石田剛太

【プロフィール】
ヨーロッパ企画●京都を拠点にマルチに活動する劇団。脚本・演出の上田誠が設計したトリッキーな劇構造を、日常会話を積み重ねてコメディへと昇華。ユルさと緻密さを内包する独特な魅力で、幅広い観客の支持を得ている。

なかがわ・はるき●2000年、『苦悩のピラミッダー』へのゲスト出演をきっかけに、ヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼすべての作品に出演。少年王者舘『-累-かさね-』、カンパニーデラシネラ『カルメン』など、外部の舞台・

ヨーロッパ企画「建てましにつぐ建てましポルカ」

▼9月28日(土) 18:00

▼9月28日(土)・29日(日) 13:00

シアターBRAVA!

前売-4000円(指定)

[作][演出]上田誠

[音楽]滝本晃司

[出演]石田剛太/酒井善史/角田貴志/諏訪雅/土佐和成/中川晴樹/永野宗典/西村直子/本多力/花本有加(KIKIKIKIKIKI)/吉川莉早/菅原永二

※9/28(土)18:00公演はおまけトークショーあり(〔出〕ヨーロッパ企画メンバー)。
※学生シートは取り扱いなし。
※未就学児童は入場不可。
※9/28(土)はビデオ撮影のため、客席にカメラが入ります。

[問]シアターBRAVA!
[TEL]06-6946-2260

シアターBRAVA!
http://theaterbrava.com/

ヨーロッパ企画
http://www.europe-kikaku.com/