ホーム > インタビュー&レポート > 「大人と子どもが一緒に楽しめる演劇を」 柴幸男主宰の劇団ままごとが ファンタジックな新作を上演
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『あゆみ』より 撮影:青木司 |
2010年、『わが星』で岸田國士戯曲賞を受賞した柴幸男。彼が作・演出を手掛ける劇団ままごとの新作『日本の大人』は、「大人と子どもが一緒に楽しめる作品」を目指した、劇団初の親子向け作品だ。8月30日(金)、31日(土)の2日間、伊丹AI・HALLにて上演される。
本作は、小学6年生の主人公・奥田君のクラスに、32歳で小学26年生のおじさん・熊野さんが転校してくるという、ちょっぴりファンタジックな物語。柴がこれまで手掛けてきた作品と言えば、“人間の一生”を描いた『あゆみ』や、“星の一生”を描いた『わが星』が代表作。それらは、役者がずっと歩き続ける芝居であったり、ラップの言葉遊びを使ったミュージカルであったりと、特に演出にこだわった作品だった。しかし今回は、『あゆみ』や『わが星』とは少し趣向を変えて作るという。
「『あゆみ』や『わが星』は、壮大な設定の中でどこにでもあるような会話を並べながら、演出で面白く仕上げた作品。今回はもっと物語の度合いが大きいものを書こうと、最初から変な要素を取り入れました。ある小学校に転校してきた32歳のおじさんに対して、小学生たちがどうリアクションするのかというのがお話の主軸です。それと、小学生たちが20年後、32歳になったときの視点も入れて、二重にお話を進めていきます。大人にならなければいけない子どもたちと、子どもでいたがる大人が出会って、それぞれの価値観が少し揺らいでまた別れるお話にしたいと思っています」
いつまでも子どもであり続ける熊野さんは、柴の憧れの存在として描く。柴の心の中にある“現実”と“夢”にたいする葛藤が、小学生とおじさんとなって表れているようだ。
「熊野さんは、人の役に立たなければいけないとか、誰でもいつかは大人になって仕事をしないといけないという、世の中の暗黙の了解に対抗している人(笑)。子どもの頃は、ただ空を眺めてきれいだなってぼんやりする、何もしない時間ってあったと思うんですが、大人になるにつれてどんどん減っていきますよね。その何もしない時間を大切にしたいという思想のもと、小学生であり続ける熊野さんは、僕の夢のような存在です(笑)。でも、理想ではあるけれど、本当にそれでいいのかという想いもあるので、“それじゃダメでしょう”という小学生と、“誰も心の自由は奪えない”というおじさんは、僕の中の葛藤なんですよね」
今作は親子向けの演劇だけに、両者の目線を意識しなければならない。特に子どもたちを60分間飽きさせずに見せるのは、柴にとって新たな挑戦だ。
「大人はある程度劇が停滞していても、“この後面白いことが起こるかもしれない”という目線で見れるけど、子どもたちは一瞬でハマるし、一瞬で飽きるんですよね。ただ、一回心が離れるとあまり戻ってきてくれない大人に対して、子どもたちは一回心が離れてもまた面白い瞬間があればすぐに戻ってきてくれるんです(笑)。反射神経がいいお客さんを相手にしているような感じですね。彼らが60分間飽きないことを第一に考えて、観てるそばから驚いたり、笑わせたり、えっ!?と思わせたり、音や空気での反応が起こるものにしたい。演劇ってこういうことが出来るんだって思ってもらえるようにしたいですね。とはいえ、子ども向けの作品にするのではなく、大人も楽しめるようにしないといけないので、子どもに合わせ過ぎないようにバランスを調整しながら作っています」
メインターゲットは小学4年生からと想定しているが、「小学校低学年の子にも観てほしい」と柴。夏休みの最後に、親子で楽しめる演劇を。
(取材・文/黒石悦子)
(2013年8月28日更新)
▼8月30日(金)15:00/19:30
▼8月31日(土)11:00/15:00
大人前売-3000円 当日-3500円
中学生~大学生-1000円
小学生以下-500円
[作・演出]柴幸男
[出演]秋葉由麻/大石将弘(ままごと)/高田博臣(劇団うりんこ)/高野由紀子(演劇関係いすと校舎)
※全席自由・日時指定・整理番号付。
※4歳未満は入場できません。4歳以上はチケットが必要です。
※高校生・大学生の方は、入場時に学生証や身分証明書をご提示ください。
[問]アイホール072-782-2000
アイホール
http://www.aihall.com/