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大阪公演のみのお楽しみ、女性アーティストとの
対バンも楽しみなチェルフィッチュ『女優の魂』
について主宰の岡田利規にインタビュー!

2012年8月、横浜STスポットの25周年記念事業として初演したひとり芝居『女優の魂』。「美術手帖」2012年2月号に掲載されたチェルフィッチュ主宰・岡田利規の短編小説『女優の魂』を一字一句変えずに舞台化した本作は好評を博し、その言葉の再現に「まるで戯曲として書かれたかのようだ」との感想が寄せられたという。演じるのは女優の佐々木幸子。近年のチェルフィッチュ作品に続けて出演している。そして現在、全国ツアー中の『女優の魂』がいよいよ今週末、大阪に上陸する。

実に6年ぶりという大阪公演を目の前にして、主宰の岡田に『女優の魂』について伺った。まず、小説を発表した時点では、舞台化の構想は「全然考えていなかった」という本作。岡田曰く、“チェルフィッチュの作品の中では、ユルくてお気楽な作品”とのことだが…。

「チェルフィッチュの作品は--最近の数作は特に--、見る人にいろいろ強いてるところが多いと我ながら思います。チェルフィッチュが“本気”を出してしまうと、ついそうなってしまうんですよねー。『女優の魂』はそういう意味で、本気出さないで作ったものなんです。そのぶん、気楽でユルいものになりました。だから、ふつうの意味で見やすくて、わかりやすくて、面白いものになったと思うんです」

また、初演では、「初心に立ち戻る」という意味も込められていたそうだが、初演を終えてみての感想を。

「上記したような狙いが当たって、いつものチェルフィッチュとは違うものをつくることができました。一人芝居だったこともあって、今年の再演ツアーは、これまでチェルフィッチュが行くことのかなわなかった場所に、何ヵ所も行くことが実現しました。このような活動の仕方は我々にとって新しいだけでなく、今後の我々にとってとても重要なことでもあると思ってるので、このツアーを実現できたということが、『女優の魂』の昨年の初演が我々にもたらしてくれた最大のものであるといえます」

最後に、佐々木幸子という女優の魅力を聞いた。

「まずは、とても俗っぽい感覚を持っているところ、芝居ってものを小難しいものにしないでおけるところが彼女の大きな強みだと思います。特に我々チェルフィッチュなんて、ついつい高尚でスノッブな感じになりがちなところがあるので、佐々木さんみたいな存在は非常に貴重です。そして彼女はものすごく技術が高い。そしてあまりそう見えないところがさらにすごい。一般のお客さんに楽しんでもらえる回路を持っていると同時に、玄人筋に受けるような渋い技術もある。あまりに玄人好みすぎて玄人にもわからないんじゃないか、というような。そういう微妙なテイストを操作できる技術も持ってる人です」

大阪公演は8月2日(金)より大阪・南船場のepokで幕を開ける。本公演では毎回、大阪の女性アーティストとの対バンもあり、これは全国ツアーの中でも大阪だけの試みとなる。こちらもどうぞお楽しみに。チケットについてはお問い合わせを。
 



 

●あらすじ

 

すでに死んでしまった女優が、自分が殺されたいきさつや、殺した若い女優について語る最初の場面から始まり、続いて「パフォーマンスとは何か」を自らの身体をもってレクチャーさながらに語る場面。

 

最後の場面では、死後の世界で出会う、アーティストになることをあきらめ自殺した青年との会話を、落語のように軽妙に演じ分ける。

 

そして女優は、死後も女優であり続けられるのか。


(2013年7月31日更新)


Check
2012年8月STスポット横浜
写真:前澤秀登

佐々木幸子
1979年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部在学中から演劇活動を始める。2004年より野鳩に劇団員として所属。近年は、ポツドール「愛の渦」(作*演出:三浦大輔、第50回岸田國士戯曲賞受賞作品)や、ポツドール初の海外進出公演「夢の城」(ドイツにて上演)、また、若手人気劇団ナカゴーの公演などに出演。チェルフィッチュには「わたしたちは無傷な別人である」、「ゾウガメのソニックライフ」、「現在地」、最新作「地面と床」に出演。

●公演情報

『女優の魂』

▼8月2日(金)☆20:00(Doddodo)

▼8月3日(土)16:00(柴田聡子)

▼8月3日(土)20:00(白波多カミン)

▼8月4日(日)14:00(たゆたう) / 18:00(YTAMO)

☆は追加公演
※カッコ内は対バンアーティスト

epok

前売2500円

学生2000円

当日3000円

[原作・演出]岡田利規

[出演]佐々木幸子

[問]チェルフィッチュ公式サイトまで

チェルフィッチュ公式サイト
http://chelfitsch.net/


岡田利規

1973年、横浜生まれ。演劇作家/小説家/チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―」最終選考会に出場。2007年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第二回大江健三郎賞受賞。2012年より、岸田國士戯曲賞の審査員を務める。2013年には「遡行 変形していくための演劇論」を河出書房新社より刊行。


チェルフィッチュ

岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニーとして1997年に設立。チェルフィッチュ(chelfitsch)とは、自分本位という意味の英単語セルフィッシュ(selfish) が、明晰に発語されぬまま幼児語化した造語。『三月の5日間』(第49回岸田國士戯曲賞受賞作品)などを経て、日常的所作を誇張しているような/していないようなだらだらとしてノイジーな身体性を持つようになる。その後も言葉と身体の関係性を軸に方法論を更新し続け現在に至る。07年5月ヨーロッパ・パフォーミングアーツ界の最重要フェスティバルと称されるKUNSTENFESTIVALDESARTS2007(ブリュッセル、ベルギー)にて『三月の5日間』が初めての国外進出を果たして以降、アジア、欧州、北米にて海外招聘多数。2011年には『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』が、モントリオール(カナダ)の演劇批評家協会の批評家賞を受賞した。