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「忠臣蔵では黒子のような女をいろんな見せ方で」
女優 水谷八重子が語るりく、そして芝居への思い

文学に描かれた、やさしく、美しく、強く生きた日本の女たち。平岩弓枝の名作『花影の花』の、大石内蔵助の妻「りく」に、日本を代表する女優のひとり、水谷八重子さんが挑む。
りく、そして赤穂浪士の故郷である、ここ兵庫での上演を前に、作品について、そしてお芝居について語った。

―― 『花影の花』は大石内蔵助の妻「りく」の物語ですが、忠臣蔵のイメージは?

水谷八重子(以下、水谷):忠臣蔵で浮かぶのは錦兄(きんにい)。萬屋錦之介さんの内蔵助がホントにステキで…。私は南部坂の瑤泉院(ようぜんいん)と一力の太夫の役と2回やらせていただきました。「りく」役は林与一さんの内蔵助のとき、一番やりたい役でしたから「りくの役なら出ます」って(笑)。

―― 「りく」は仇討ちする気配のない内蔵助に仇討ちを勧める役どころといった解釈のものもありますが。

水谷:そういう差し出たところはなくて、逆に悟って悟っていくような…。それを今回は一人で表に出してやらなければなりません。忠臣蔵という大きな歴史ドラマの中の黒子のような女。その一生をいろんな見せ方でお見せしたい。今はそんな欲張りな気持ちになっています。

―― 「りく」をどう演じますか。

水谷:大切なものをみんな捨てて仇討ちする(内蔵助の)覚悟を知っている女性。知って最後まで生き抜く「りく」は強い。強い「りく」をお見せしたいです。

―― 演出の青井陽治さんとはこれまでにもお仕事をされていますが、青井さんの印象は?

水谷:最初は自由にやらせておいて、後で手綱を締める。鵜飼いですね。自由に泳がせて鮎をいっぱい獲らせて、最後にぐっと締めて吐き出させる。私は鵜(笑)。

―― ご自身でも演出をされますが。

水谷:演じている自分を冷静に見られないと役者は出来ません。例えば、今お客様が必要としているのは私でなくてこの人だ、その邪魔にならないようにそっと移動している、というような…。だから役者は日々演出家でもあるんです。

―― 演じている自分を見ている自分が同時にあると…。

本当に役になりきっているときと、どこか冷めていて自分が自分にやらせているときと、それは役によって違います。ただ、まったく考え方が自分と違う役、私ならこうは感じないなと思うのに、実際そうやってしまっている自分がいる。そういう瞬間があります。いったい何が乗り移ったのかしら、って。「りく」はそうありたいですね。

―― 一人芝居は常に自分に目が注がれ続ける、大変ですね。

水谷:自分一人でやると思えばそう。お客様を相手役と思えば、いい相手役で、相手役をつかんでしまえば、あとは楽しめます。ただ、いいお客様にするのもしないのも自分次第なんですけど。

―― いいお客になるには?

水谷:何か貰って帰ろうという貪欲な想いで観てほしい。ボーっと見ていられると、お近づきになりにくい(笑)。大阪のお客さまからは貪欲さを感じます。金払ろうたんや、その分楽しませぇやって、って(笑)。で、こっちもとにかく必死でやっちゃう。すると、ようやった、ようやった、と。

―― 兵庫にも“いいお客様”がたくさんいらっしゃいます! 楽しみにお待ちしています。

 

(取材・文/阿部聡)




(2013年4月 4日更新)


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水谷八重子
みずたにやえこ●父は14代目守田勘弥、母は初代 水谷八重子。1955年に16歳で新派・歌舞伎座で初舞台。時を同じくしてジャズ歌手としてもデビュー。「花の吉原百人斬り」でNHK最優秀助演女優賞を受賞するなど、以降、映画、テレビドラマ、舞台と数々の作品に出演。代表作は新派の「佃の渡し」、「深川不動」、「滝の白糸」など。1995年に二代目水谷八重子を襲名し、新派の大黒柱的役割を担う。文化庁芸術選奨最優秀賞(1973年)、菊田一夫演劇賞(1978年)、「新派の伝統を支える代表的な女優」として東京

●公演情報

『大石内蔵助の妻、りく』

発売中

Pコード:424-642

▼4月7日(日) 14:00
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

全席指定-3000円

[作]平岩弓枝

[脚]笹部博司(上演台本)

[演出]青井陽治

[出演]水谷八重子

※未就学児童は入場不可。

[問]芸術文化センターチケットオフィス
[TEL]0798-68-0255

水谷八重子公式サイト
http://www.t2phage.com/yaeko/

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