インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「お客さん自身の物語を描きたい」 京都の劇団・悪い芝居が“闇”にまつわる新作を上演! 作・演出の山崎彬に作品への想いをインタビュー

「お客さん自身の物語を描きたい」
京都の劇団・悪い芝居が“闇”にまつわる新作を上演!
作・演出の山崎彬に作品への想いをインタビュー

息苦しく、ドロッとした空気を根底に流しつつ、ポップで疾走感のある舞台を作り上げる京都の劇団・悪い芝居。彼らの新作公演『キャッチャーインザ闇』が、大阪・in→dependent theatre 2ndにて間もなく開幕する。前作『カナヅチ女、夜泳ぐ』では、観劇後に爽快な余韻を残すというアプローチを試みた彼らが、今作の“闇”にまつわる物語でどんな表情を見せるのか、作・演出の山崎彬に話を訊いた。

――闇の中を走る人の物語。

「タイトルにもありますけど、闇の話を描きたいと思っています。まず最初に、前も後ろも横もわからない、真っ暗な闇の中を走っている人がイメージとして湧いてきたんです。それは逃げているのか、追いかけているのか、何かを探しているのか、どこへ向かっているのかわからない。そんな姿を光の方にいる人が見ると、“大丈夫かな”とか“助けないと”って勝手に思い込むんですよね。そういう状況が浮かんできて、もし自分が闇に入ったときに、同じように“あいつ大丈夫かな”って見つけてくれる人がいるんだろうかってふと考えたら、いないかもしれないな~っていう悲しさとともに、清々しさも感じて。で、闇の中に入ったら、光の中で気付かなかったような小さな光に気付きやすくなるかなとか、いっそ周りを真っ暗にしてしまえばいいと思う人がいても面白いなとか思って、そこから話が書けないかなと思ったんです。もっと先、もっと見えないところでも走っている人はいるのに、近くの足音や息遣いが聞こえる人だけを心配することでよしとしている人なんかも描けたらなと思っています」

――とにかく走り続けていればいい。

「人って、仕事でも生活でも、日々いろんなことを真顔で受け入れてやっていますけど、どこかで“甘えたい”とか“助けがほしい”って思うことはあると思うんですよね。今まで自分が物を作っていて、“誰か気付いてくれへんかな”っていう気持ちがあったんですけど、ただ走っていればそれを見て何か思う人はいる。助けに来るか来ないかは別として。どっちにしても、前も後ろも横もわからない中を走っているんだから、そのまま走っていればいいんやっていう清々しさを感じたんです。もちろん、結果とか求めるし、欲しいとは思いますけど、それは1秒先もわからないことだから、周りが何も見えなくても走っていればいいやって。最初は光を求めて走ってたけど、走り出したら走らずにはいられなくなって。本人はどこまで走れるんだろうって思い始めてるのかもしれない。でもそれを見た人は“あの子は大丈夫か”って心配する。その違いがなんとなく面白いなと思って」

――舞台で闇を表現する方法。

「闇の話だけど、俳優にはどうしても光を当てなきゃいけませんからね。光を当てながらどうやって闇を表現しようかっていうのが楽しみです。音楽も、闇の中での静寂を表わす音楽があったら面白いなとか、いろいろ仕掛けていきたいと思っています。走る表現も、その場で駆け足して息を切らして…っていうのではない、何か別の表現で表せないか探っていますね。光を当てて見せる舞台で闇を表したり、場を移動できないのに走るっていうことをテーマにするって、僕はできると思っているから。そういう話を書きたいんです」

――いつもお客さん自身の物語を描きたいと思っています。

「いろいろあるエピソードのうち、主な柱のひとつは女子陸上選手の話にしたい。世界で1番になりたい人の話。女性を下に見ているとかではなくて、どれだけ女性が世界で1位になりたいって思っても、絶対に男性の記録には届かない。そこから何かドラマが生まれるんじゃないかなと思って。あとは、家族の話かな。年齢的に、自分の周りで結婚とか出産とか、家族ができることが増えてきたんですよね。そうなると、自分に予定がなくてもどうしても考えてしまうので、そういったことも含められたらなと思っています。僕はいつもお客さん自身の物語を書きたいから、観た人が“何でこんなに自分のこと書いているんだろう”って思ってもらえたらいいなと思います。そこには物語の無限の広がりがあるはずなので。“走り続けること”に対して、言葉じゃなくて、感覚として何かを掴んで帰ってほしいですね」

(取材・文/黒石悦子)




(2013年2月20日更新)


Check
山崎彬
やまざき・あきら●1982年奈良県出身。2004年に行った路上パフォーマンスをきっかけに、悪い芝居を旗揚げ。全公演の作・演出を手掛け、俳優としても出演する。ぼんやりとした鬱憤を勢いよく噴出させ、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する作風が特徴。ライブハウスでの企画公演や、築80年の家屋を使った公演など、劇場外での活動も行う。3月29日より、東京・こまばアゴラ劇場にて、テアトル・ド・アナールの新作公演に出演予定。

●公演情報

悪い芝居 vol.14『キャッチャーインザ闇』

発売中

▼2月20日(水)~26日(火)
(月)14:00/19:30
(火)14:00
(水)(木)(金)19:30
(土)(日)14:00/18:00

in→dependent theatre 2nd

一般2900円
学生2400円
高校生以下1000円

当日500円増

[作・演出]山崎彬

[音楽]岡田太郎

[出演]大川原瑞穂/池川貴清/植田順平/呉城久美/宮下絵馬/森井めぐみ/北岸淳生/山崎彬/田川徳子(劇団赤鬼)/大塚宣幸(大阪バンガー帝国)/福原冠

[問]悪い芝居 info@waruishibai.jp

悪い芝居公式サイト
http://waruishibai.jp/

★新潟、東京公演もあります!

●新潟公演
3月15日(金)
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

●東京公演
3月20日(水・祝)~3月26日(火)
王子小劇場

詳しくはオフィシャルサイトへ!