ホーム > インタビュー&レポート > 「お客さんと一緒に想像していけたら」 “生きること”をテーマに描いた 舞台『3150万秒と、少し』 主演・相葉裕樹にインタビュー!
――元々、作品のことはご存知でしたか?
「最初は知りませんでした。お話を頂いたときは、台本よりも先に『New Year’s Day』という原作の映画を観ました」
――原作の映画を観られて感じたことは?
「攻めた作品だなと思いました。原作は、薬物とか海外ならではの刺激的な描写も入っていて、今回の脚本よりももっとディープな感じで進んでいくので、結構衝撃を受けました。でも面白かったです、すごく。ドキドキしながら観ていました」
――原作と今回の舞台でどういう部分に違いがありますか?
「日本ならではのストーリーになっている部分は多いですね。同級生がスキー事故で雪崩に巻き込まれて死んでしまったり、悠也と直人のふたりが、やりたいことリストを作って、最後は岬から飛び降りる約束をするという大枠は同じですが、過程が現代の日本ならではだなって思います」
――例えばどういうところに感じますか?
「すごく可愛らしいんですよね。映画では人間を手術する描写があるけど、そこまでヒドイことはしないし、薬物も出てきません。放火をしたり、強盗をするというちょっと大胆なことがあるほかは、モテモテになる、とかね(笑)。そういう点で日本の高校生らしさが垣間見えるんじゃないかなと思います」
――相葉さんが演じる悠也は、やんちゃで問題児のようなキャラクターですが、実際に台本読んで受けた印象は?
「大人に対しての不満だったり、事故を経験していない人に対しての当たり方がやけに強いなと思いましたね。なんでそんなに当たるのかなって。でも稽古を進めていくにつれて、事故を経験した人ならではの苦しみや悩みを感じて。大人から見ると理解できない行動も納得できるようになりましたし、悠也の気持ちにどんどん近づけることができました。周りはすごく取り繕って温かく迎えてくれるけど、それが逆に傷つく。堪が鋭い子なので、無理に愛想笑いしてると、全部わかるんですよね。それでキレちゃったりするんです。悠也のような鬱屈した、反抗的なキャラクターを演じることがなかったので、それを舞台でできるのは楽しみです。また新しい一面をお見せできたらなと思います」
――演じていく上で、ご自身の高校時代と重なることも?
「大人になりたくないと思っているのは同じだなって思います。でも悠也が大人になりたくない理由と、僕が感じていた大人になりたくない理由は違いますね。悠也みたいに反抗的な態度をとることはなかったし。でも、高校2~3年くらいから仕事をし始めて、大人の人と接する事が急に増えた事もあって、漠然と大人に対して何かしら不満を抱えることはあって。大人って汚いなって感じることもあったし、大人って大変そうだなっていう目で見たりもしていましたね」
――それから少し大人になった今、気持ちの変化は?
「やっぱり子どもは知らない世界が多いというか、できる範囲が狭いですよね。学校や親の制約がありますし。お酒もたばこもダメですし。改めて考えると、限られたスペースで生きていたんだなって思います。あと、人間は何かを喪失して大人になっていくんだな、とも。それが時々寂しいなって思うところではありますが、その分、得るものも大きいし、そうしないと生きていけないんだなって思いますね」
――“生きること”をテーマにしたこの作品に触れて感じたことは?
「重いテーマではありますが、誰しもが通る道なんですよね。でもそこには答えがなくて。自分自身、考える機会を与えてくれる作品だなって思います。普段、死ぬと思って生活している人ってなかなかいないと思いますし、僕自身も意識していなかったです。でも“死”は意外と身近にあることを再確認できると思いますし、この作品に触れることでスタッフもキャストも考えて、感じて。僕たちが感じたことをみんなにも劇場で感じてほしいなって思います。でも、ただ重いだけの作品ではなくて、17歳ならではの青春の一面もあるので、大人の世代の方には“こういうこと思ってたな”とか、“うちの子こういうこと考えてるのかな”とか、違う角度から観れると思いますし、若い方たちにも、この作品を機会に何かを感じ取ってもらいたいと思います」
――立場は違っても、それぞれに重ねることができる作品ですね。
「そうですね。それぞれの経験だったり世代だったりで、いろんな捉え方ができる。観に来てくださったお客さんの中にも何かしらの答えを作っていけたらなと思います。一緒に想像できたらいいですね」
――直人役の小澤さんとのシーンが多いと思いますが、これまでに共演の機会はありましたか?
「共演という形は今回が初めてです」
――では、初めて共演してみて、どんな印象を受けましたか?
「すごくほんわかしていて、柔らかい雰囲気があります。同い年だし、地元が千葉で一緒だったり、戦隊出身だったり、共通点が多いのですごく居心地がいいですね。いいパートナーだと思います。役と同じように、キャラクターも僕と全然違うので、バランスがとれていてやりやすいですね。W主演で、亮太がいてよかったなって思います。プレッシャー自体も2分割できますからね。それに一緒に作品と向き合っていける人がいるのはとてもありがたい。ひとりじゃなくてよかった(笑)」
――まさにこの作品のテーマですね。
「そうですね。ひとりじゃないというのはポイントですね。ふたりでよかったと思える。それも役にリンクするんじゃないかなって思いますね」
――主演のプレッシャーはやはり大きいですか?
「僕と亮太の良し悪しでこの作品が決まるといっても過言ではないくらい、分量があると思うので。僕たちがよく見えないと作品全体が崩れちゃうっていうプレッシャーはありますし、作品を背負って、引っ張っていかなきゃいけないなって思います」
――現場は同世代の方が多いですよね。雰囲気はいかがですか?
「雰囲気はすごくいいですよ。初めよりもどんどんクラスっぽくなってきました。先輩方との関係もいい意味で近からず遠からず。芝居をしていても先輩方が脇でグッと固めてくださっている感じがして、シーンが締まるんですよね。若いだけの芝居じゃなく、そこでかなり緩急がつけられるので、しっかりと皆さまに届けられるんじゃないかなと思います」
――最後に“生きる”という作品のテーマに沿った質問です。最近“生きててよかった!”という最高に嬉しかった出来事は?
「僕、お風呂が大好きなんですよ(笑)。極限まで疲れたときに、スーパー銭湯とかで大きなお風呂に入って疲れをとったりしてる瞬間“あ~、生きてんな~!!”って思いますね(笑)。その瞬間は疲れてることすら楽しめる。疲れてるからこそお風呂も気持ちよく感じるし、幸せだなって思います(笑)」
(取材・文/黒石悦子)
(2013年2月19日更新)
発売中
Pコード:425-071
▼2月27日(水)14:00/18:30
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
[一般発売]全席指定-8500円
[原案・原作]ラルフ・ブラウン
[劇作・脚本][演出]藤井清美
[出演]相葉裕樹/小澤亮太/美山加恋/青柳塁斗/タモト清嵐/佐藤永典/小原春香/酒井瞳(アイドリング!!!)/池田光咲/秋元龍太朗/柳原聖(カルマライン)/西原亜希/津田健次郎/斉藤レイ/小林美江/八十田勇一
※14:00公演は、終了後にアフタートークあり(〔出演〕相葉裕樹/小澤亮太/美山加恋/青柳塁斗/タモト清嵐/佐藤永典)。
※18:30公演は、終了後にキャストによるアンケートお受け取りあり(〔出演〕相葉裕樹/小澤亮太/青柳塁斗/タモト清嵐/佐藤永典/津田健次郎)。
※未就学児童は入場不可。
[問]梅田芸術劇場
[TEL]06-6377-3888
梅田芸術劇場公式サイト
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