ホーム > インタビュー&レポート > OMS戯曲賞受賞の稲田真理、土橋淳志 受賞&新作についてコメント!
次世代を担う劇作家の発掘、中堅劇作家への刺激を目的とした、関西発の「OMS戯曲賞」。第19回となる昨年の選考には49作品が応募、12月に行われた最終選考で、大賞に『留鳥の根』の稲田真理、佳作に『限定解除、今は何も語れない』の土橋淳志が選出された。
大賞に選ばれた稲田は、昨年の『幸福論』での佳作に続いて2年連続で受賞。自らの経験をもとに物語を生み出し、心の機微を繊細に紡いでいくのが彼女の作風だ。受賞に際し、「昨年に続き、こんな素晴らしいことが自分の身の上に起こるとは思っていませんでした。生きることにくじけなくてよかったと思います。これからも人間の暗い部分に寄り添った戯曲を書きたい」と、その想いを語った。
一方、土橋は2009年の『裏山の犬にでも喰われろ!』で佳作を受賞して以来、3年ぶりの受賞。今作は東日本大震災後に書きあげた作品で、仙台の劇団「三角フラスコ」との合同公演で上演された演目だ。「三角フラスコさんとの合同公演の内容を決める矢先に、大きな災害が起こりました。そこからこの作品を書き上げ、上演に至るまではさまざまなことがありましたが、多くの方のお力添えで、仙台・大阪で上演できました。そのひとつの記録として、この作品が受賞し、戯曲本として残ることは本当に嬉しいです」と、喜びを表した。
最終選考の審査員は、生田萬、佐藤信、鈴江俊郎、松田正隆、渡辺えりの5名。稲田の作品を「ダントツで面白かった」と語ったのは、マレビトの会を主宰する劇作・演出家の松田だ。「社会が格差のスパイラルにあり、一度底辺に落ち込んでしまうと、這いあがれない。そんな社会の中でどう自分を生かすかとか、時代の風潮がしっかりと描かれている。演劇ではこういう書き方があると、非常に鮮やかに提示されている作品」と評した。また、かつて「ブリキの自発団」を主宰した作・演出家の生田も「前回からの劇的な進化を強く感じた。ページをめくるごとにグイグイと引き込まれていく。罪を犯す者が背負った業や宿命を非常に泥臭く、自身が泥まみれになりながら描き出す。自分の書きたいことにブレがなく、相当腰が据わった作家だと思う」と賛辞を呈した。
一方、東日本大震災を受けて描かれた土橋の作品に対して、「人としての誠実な姿を見た」と語ったのは、「劇団八時半」等で活動、現在は東京を拠点に作・演出を手掛ける鈴江。「土橋君が得意な劇中劇の構造が、うまく作用していた。また、失った命のことを今は何も語れない。受け入れることが出来なくてストーリーにならない。そういう物語を書くことは、劇作家の態度としてとても誠実なことだと思う」と評した。
稲田は1月25日(金)より、大阪・in→dependent theatre 1stにて新作『木莵と岩礁(みみずくとがんしょう)』を上演する。海辺の小さな町を舞台に描かれる、女性たちの人間模様。「震災について、被災者ではないところから、違う目線で描きたい」と稲田。土橋も3月1日(金)より、兵庫・AI・HALLにて新作『或いは魂の止まり木』を発表する。今回の受賞で、それぞれがどう進んでいくのか、期待したい。
(取材・文/黒石悦子)
(2013年1月23日更新)
伏兵コード『木莵と岩礁』
[作][演出]稲田真理
[出演]朝平陽子/向田倫子/田所草子/大西千保/安元美帆子
▼1月25日(金)~28日(月)
(金)19:30 (土)14:00/18:00 (日)14:00 (月)14:00/19:00
In→dependent theatre 1st
前売-3000円 当日-3500円 U-23-2000円
※U-23は23歳以下の方が対象。
※小学生以下は入場不可。
[問]righteye
[TEL]06-6647-8243
伏兵コード
http://blog.livedoor.jp/fukuhei1/
[作][演出]土橋淳志
[出演]横田江美/松原一純/細見聡秀/幸野影狼/新城アコ/松嵜佑一/条あけみ/林田あゆみ/福山俊朗
▼3月1日(金)~3日(日)
(金)19:30 (土)14:00/19:00 (日)11:00/15:00
※3/2(土)14:00、19:00公演終了後、アフタートークあり(14:00[出]土田英生/19:00[出]小暮宣雄)
AI・HALL
[前売]一般-2600円 学生-1500円
[当日]一般-3000円 学生-2000円
[問]A級MissingLink
[TEL]090-4562-4310
A級MissingLink
http://www.aqml.jp/