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「滑稽だけど愛らしい人たちを」
新春恒例、野村万作・萬斎の狂言会が開催!
萬斎が語る狂言の魅力と見どころとは!?

狂言師、野村万作・萬斎による「万作萬斎新春狂言2013」が、1月16日より2日間、大阪・サンケイホールブリーゼで上演される。毎年の干支にちなんだ趣向で披露する本公演、16年目となる今年の演目は、『樋の酒』(ひのさけ)と『千切木』(ちぎりき)だ。一門勢ぞろいで連吟する「謡初」(うたいぞめ)、萬斎の凛々しい小舞『八島後』(やしまののち)、軽妙な萬斎トークとともに楽しませてくれる。

干支にちなんだ演目といえど、“巳”をモチーフにしたものが少ないため、お正月らしい華やかな演目を用意したという萬斎。『樋の酒』は、人間国宝・万作の代表作で、「太郎冠者と次郎冠者が主人の留守に……」といった、狂言の定番の物語だ。日頃から盗み酒をするふたりの冠者を、主人は米蔵と酒蔵に閉じこめて外出する。しかし酒蔵を預かる次郎冠者が酒を飲み始めて……。「狂言のキャラクターたちは黙ってお留守番できない(笑)。酒蔵から米蔵へ、“樋”という“とい”のような物を使って酒を注ぐけど、結局酒蔵へ入って飲んで騒いでしまう。定型でありながら楽しめる一曲です」と見どころを語る萬斎。

一方『千切木』は、夫婦物の代表曲。連歌の集まりに乗り込み、「誘われていない」と悪態をつく嫌われ者の太郎。そこで怒った人々に踏みつけられ、目を回しているところに太郎の女房がかけつけて仕返しをするよう促す……。「弱いのに虚勢を張る夫のお尻を叩いて、男を盛り立たせる。口数が多くて気が強いけれど、愛情に満ちた肝っ玉母さんのような女性(笑)。狂言ならではの女性像や、集団に馴染めない人が描かれた作品です」(萬斎)

古典は難しい印象を持たれがちだが、人間の欲や可笑しさを描いた狂言は、現代に通じる部分が大いにある。「例えば、人がパソコンで“何見てるのかな?”って気になると、見ちゃいけないと思っても見てしまう。それが『樋の酒』では、向かいの蔵で“あいつ何してるんだろうな?”って感心を持つことに表されています。狂言では年齢も言わなければ性別も言わない。“この辺りの者”と言うだけで、誰に当てはめることもできますから、皆さんを映す鏡のようなものなんです。普段からイタズラや悪さをしたり、人間らしい人ほど共感できると思います。“ダイエット中だけどちょっと食べちゃおうかな”というような(笑)。どんな人にも欲望はありますからね。それに加え、狂言の登場人物たちは理性と社会性がちょっと薄い人たちだから、皆さんの代わりにやってくれる痛快さがある。だから狂言を観るとストレス発散にも繋がるんだと思います。“人間は滑稽、だから愛くるしい”、という目線で描かれたものが狂言だと伝わればいいですね」と、狂言の魅力を語ってくれた萬斎。

演目前には萬斎がトークで作品紹介をしてくれるので、初めてでも肩肘張らずに楽しめる。人間らしく、愛らしいキャラクターに、どこか親近感を覚えるかも!?
 


(取材・文/黒石悦子)
 




(2013年1月16日更新)


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野村萬斎

●公演情報

『万作萬斎新春狂言 2013』

▼1月16日(水) 19:00
▼1月17日(木) 19:00

サンケイホールブリーゼ

当日券は要お問い合わせ

1/16(水)
[出演]野村万作/野村萬斎/石田幸雄/深田博治/高野和憲/月崎晴夫/内藤連
※「謡初」野村萬斎 小舞「八島」 野村萬斎 狂「樋の酒」野村万作/高野和憲/内藤連 狂
「千切木」野村萬斎/深田博治/月崎晴夫/石田幸雄

1/17(木)
[出演]野村万作/野村萬斎/石田幸雄/深田博治/高野和憲/月崎晴夫/村井一之
※「謡初」野村萬斎 小舞「八島」 野村萬斎 狂「樋の酒」野村万作/高野和憲/村井一之 狂「千切木」野村萬斎/深田博治/月崎晴夫/石田幸雄

※両日ともトークあり(〔出〕野村萬斎)。

※未就学児童は入場不可。

[問]
ブリーゼチケットセンター
[TEL]06-6341-8888