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ホーム > インタビュー&レポート > テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』から 着想を得たトリコ・Aプロデュース『ROUVA』が 間もなく、京都と大阪・八尾で上演! 主宰の山口茜に作品への思いをインタビュー!

テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』から
着想を得たトリコ・Aプロデュース『ROUVA』が
間もなく、京都と大阪・八尾で上演!
主宰の山口茜に作品への思いをインタビュー!

山口茜が主宰のトリコ・Aプロデュースが、テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』の登場人物、ローラをモチーフにした恋の物語『ROUVA』を上演する。叶わぬ恋と知りながら、一喜一憂するローラ。やがてかたくなに閉ざしていた心を開けるもその瞬間、突き放されるという絶望。「ずっと死んでいたものががっと甦る。それが美しくて。それを見たかったんです」と上演を前にして語る山口。作品について話を聞いた。

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。『ROUVA』は『ガラスの動物園』のローラをモチーフにしていますが、なぜそうしたんでしょう?

山口茜(以下、山口):『ガラスの動物園』は男の子が主人公で、その子が口うるさいお母さんと、なかなかお嫁に行けないお姉さんを捨てて都会に出る話なんです。『ガラスの動物園』の戯曲からはお姉さんへの愛が読み取れるんですが、半分以上はお姉さんの滑稽な部分が描写されているんですね。これって、お姉さんの愛を叫んでいるようでいて実は、切り売りなんじゃないかなと思って、お姉さんは滑稽に描かれることを望んでいたのかなと思って、そこから創作しました。ただ、テネシー・ウィリアムズのことで一つ見逃していたことがあって。彼はいつも滑稽でカッコ悪い女の人を主人公しているんですが、そこが面白いと思いながら「でも結局、あんたは男やろう」と思っていたんです。でも、最近になって彼がゲイだったと知って。やっと。それで、お姉さんに自分を重ねてたんやろうなってやっと気付いたんです。お姉さんは自分のことやったんやって気付いて、今回はそういう視点も入れて作りました。

--2010年に『せりふのないガラスの動物園』という作品を今回と同じく、アトリエ劇研で上演されていますが、その時はまだ気付いていなかったんですか?

山口:はい。その時はまだ。ただ無自覚だったんですが、お姉さんをカッコ悪くするため男の子に演じてもらったんです。後で考えると、それは意外と近かったかもしれません(笑)。

--それだけ溢れ出るものがあったんですかね。

山口:この戯曲がすごいんです。本当に。エンタテインメント作品ってカッコイイ男の子と綺麗な女の子が力を合わせて敵を倒したりするじゃないですか。私はそこに全く自分の居場所がないと思いながら自分の芝居を作ってきたんですけど、テネシー・ウィリアムズの作品には居場所を感じましんたね。

--そして『ROUVA』ですが、ローラをモチーフにしながらも完全なオリジナルで。

山口:そうですね。みんなが普通にできることができない人、タブーだからなかなか言えないというものを引きずり出したいと思っています。

--山口さんの作品にはそういうテイストが多いですか?

山口:多いと思います。でも、今まではそれを無自覚にやっていましたね。

--今回は自覚的に?

山口:かなりそのつもりでいます。

--そのタブーというのも、なんだか難しそうですね。

山口:『ROUVA』では、自分自身も含む、人間の根源的な欲求、そこが満たされない人というか…。

--ローラはいわゆる非リア充?

山口:そこです(笑)。リア充な人って特に意識せず、何でもすっと行けるじゃないですか。そうではないことを書きたいと思ったんです。精神的に満たされないものを。

--なるほど。ちなみに舞台設定は?

山口:特定せずにやってますね。外国でもなく、日本でもなく。役名の設定もないですね。ポジションでは医者とか、患者とか、弟とか、そういう感じではあるのですが。

--舞台上ではどうやって呼びかけるんですか?

山口:姉さんとか、弟とか、先生とか。

--名前をつけないのは何か理由があるんでうすか?

山口:名前をつけることに抵抗があるんです。名前をつけると何か一気にリアルになるような気がして、なかなかつけられなくて。場所が限定している時は名前をつけるのですが、限定していない時は出さないようにしていますね。

--名づけると生々しくなるんですか?

山口:ローカルな感じになっていくのが…。それでもいいんですけど、それがうまくできなくて。だからまだ、作家として入口に立っている状態なんですよね。村上春樹さんの作品は、初期の頃は名前がなかったんです。ちょっとずつ出てきて、今は割とみんなに名前があるんですけど。それで例えると、まだまだ書き始めたぐらいですね。

--作品は恋愛を描いていますが、どういう思いが込められていますか?

山口:『ROUVA』は恋愛というより片思いについて書いているんですけど、ここで一旦けりをつけようという意識でいます。片思いの時って、脈が全然なくてもちょっとしたことで妄想が広がっていく、10代のような恋の仕方だと思うんですけど、でもそのうち、大人になるにつれて人を好きになるということが分かっていくと思うんです。でも、大人になっても10代のような片思いをする人もいると思うし、自分もそういうところがあると思うので、片思いというものに対してちょっと整理しようかなと思ったんです(笑)。

--描いてみてどうですか?

山口:何でこんなに求められていないのに求めるのかな?と思って、最終的には生きていることを噛みしめるというか。一つ一つの恋愛にこだわると、「私って女として認められてないんやな」とか、ネガティブに思うんですが、それでも生きたいんやなと思うんですよね。

--希望ですね。

山口:そうですね。どんな人も生きようとして、パートナーを求めて子孫を残そうとするという、根源的な強い力が起き上がればいいなと思います。ローラは固く閉ざしていた心をこじ開けられて、それでもう1回、人を好きになろうと思うのですが、突き放されて。その辛さを描きたかったんです。すごく残酷ですけど、それって究極やなと思って。ずっと死んでいたものがガッと甦って、それが美しくて。それを見たいと思いました。この作品は、特に女性に観てほしいです。

--なるほど。リア充か非リア充か、観る人によって全く違う受け止め方になりそうです…(笑)。今日はありがとうございました。




(2012年11月 9日更新)


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●公演情報

トリコ・A『ROUVA』

▼11月9日(金)19:00

▼11月10日(土)13:00/17:00

▼11月11日(日)13:00/17:00

アトリエ劇研

一般当日-3000円
学生当日-2000円

※全席自由。整理番号付。

▼12月9日(日)13:30

八尾プリズムホール 小ホール

一般前売-2000円
学生前売-1000円

一般当日-2300円
学生当日-1500円

[作][演出]山口茜

[出演]岩田由紀/松本芽紅見/藤原大介(飛び道具)/帰山玲子/朝平陽子/桑折現/大熊隆太郎(/)/山口茜

※未就学児童は入場不可。

[問]トリコ・A プロデュース
[TEL]080-3792-9906

トリコ・A
http://toriko-a.com/