ホーム > インタビュー&レポート > ふたりだけで演じる緊迫の100分間、 世界でも話題を呼んだ心理サスペンスが大阪に初登場!
――まず、「彼」という人物についてお教え頂けますか。
「実際にシカゴで起きた事件を元に作り直された作品で、「彼」はIQが200以上もあるエリート。将来的には優秀な弁護士になろうとしていて、表面的にはうらやましく思われる生活をしているんですけど、心の中はすごく空っぽなんです。愛を欲していて、寂しいがゆえに猟奇的な殺人を犯してしまうんですよね」
――そんな「彼」の内面をどう捉えて演じられていましたか?
「最初はどうしてこうなっちゃったんだろうって、理解しがたい人物だったんですが、稽古をしていく中で、孤独、愛、暴力という現代にも通じるテーマが含まれていることがわかってきました。自分とはかけ離れた存在だろうと思っていたんですが、この人も人間だったんだなと思うことができたんです。そこからは、共感とまではいきませんが、役に近づけるようになりましたね。僕たちが生きていく中でも、「あの時こうしたから今こうなった」ということがよくあると思うんですよね。殺人事件も同じで、実はちょっとしたきっかけがあって、それが気付いた時には大きくなっていたっていう。とても人間的で、僕たちが生きている中でもよくあることだと思うので、そういうところも観て頂いたら面白いと思います」
――初演は大好評だったとのことですが、実際肌で感じられましたか?
「すごく難しい役で、演じることで精一杯だったんですが、当日券で列ができているのを見ると、やってよかったなって思いました。怖い話ですけど、お客さんの中でも人生観が変わったという声を聞けたのが嬉しかったですね。ハッピーな気分になれるお話でもないし、ザ・ミュージカルというものでもないんですが、何かすごく考えるきっかけになったり、人生の大事なものを考えさせてくれる作品になっていると思います」
――再演のお話を受けてどう思われましたか?
「考えて悩んで苦しみながらやっていく作品で、演じていても辛いんですよね(笑)。でもまた栗山さんについていって、新しい作品を作るような気持ちでやりきりたいですね。相手役の松下君とも1年ぶりで、役に対するアプローチの仕方も変わってくるでしょうし、成長した作品にしたいなと思っています」
――Wキャストでの上演ですが、相手のペアに対して意識しますか?
「まったく同じ作品をやるわけですけど、本当に別物で、ライバルとも仲間意識とも違うんですよね。初演もWキャストで、先輩ふたりを「お兄さんチーム」って呼んでいました(笑)。稽古を見ていてもやっぱり真似できないし、経験値も違う、身長も違う。何もかも違っていて全く異なる作品になっているんですよね。キャストによって色とか雰囲気とか全てが変わってくるのが『スリル・ミー』のよさで。どういうふうにやってくるのかなって楽しみに思うので、そういう意味では意識しているかもしれないですが、特に影響されることはないですね」
――では、柿沢さんペアは若さがウリですか(笑)?
「そうですね~(笑)。実際役が19歳の設定なので、比較的近いかなとは思います。演出の栗山さんも仰っていたんですが、僕たちのいいところは、最後の殺人まですごい勢いで突っ走っていくような、若さゆえの疾走感が出せるところだと思います。セリフは一緒なんですが、若気の至り感が出てしまうんですよね。お兄さんチームは“確信犯で殺す”ふたり、僕たちは“やってしまった”ふたりというくらいに雰囲気が変わります」
――劇団四季を辞めてから初めての舞台がこの作品で、感触はいかがでしたか?
「それまでやってきた1000人規模の大きな劇場から、ギュッと100人程のキャパになったので、ちょっと戸惑いはありましたが、僕自身それを求めてもいたんです。お客さんの顔も見えるくらいの空間なので、改めてその距離を実感する機会になりましたね。今回は少し劇場の大きさが変わりますが、大阪でミュージカルに出るのは2008年の『人間になりたがった猫』以来なので、楽しみですね」
――柿澤さん自身、この作品に触れてどんなことを感じましたか?
「たくさんあるんですが、個人的にはやっぱり“愛”という部分が大きいかなと思います。愛って何なのか。家族、友人、恋人、同性愛でも異性愛でもいいし、何でもいいんですが、人との関わり方を考え直す作品になったので、ご覧頂く方にもそれを感じてもらえればいいなって思います」
――ふたりだけで演じる100分間、緊迫した時間が楽しめそうですね。
「みんな本当に息を飲む感じで、あっという間だと思いますね。ミュージカルが好きとか嫌いとかも関係なく、初めて舞台をご覧になる方も楽しめると思います。男性も楽しめる作品になっていますので、サスペンス的な緊張感を味わって頂きたいです」
(取材・文/黒石悦子)
(2012年8月 3日更新)
発売中
Pコード:420-700(8/5(日)まで販売)
サンケイホールブリーゼ
全席指定-7500円
[原案・原作][劇作・脚本][音楽]ステファン・ドルギノフ
[翻訳]松田直行(訳詞)
[演出]栗山民也
▼8月8日(水)15:00
[出演]田代万里生/新納慎也
▼8月8日(水) 19:00
[出演]松下洸平/柿澤勇人
8/8(水)19:00公演終了後、アフタートークイベントあり。スペシャルゲストも決定!
【開催日程】19時公演終演後
【参加資格】19時公演ご観劇の皆様
【出演】松下洸平、柿澤勇人
【ゲスト】田代万里生
[問]ブリーゼチケットセンター
[TEL]06-6341-8888
※チケットぴあでの前売り券取り扱いはは8/5(日)23:59まで。ただし、公演前日までブリーゼチケットセンターにて予約受付中。当日券もあり。未就学児童は入場不可。
サンケイホールブリーゼ
http://www.sankeihallbreeze.com/
監獄の仮釈放審議委員会で、34年前、「私」と「彼」が犯した犯罪に対して問われる「私」。「彼」と共に12歳の子供を誘拐して凄惨な殺害をするまでの状況を淡々と話す。飛び級で法大を卒業するほどの明晰な頭脳を持った「私」と「彼」、そのふたりに何があったのか。物語は34年前に遡っていく……。