ホーム > インタビュー&レポート > 「緊張感を味わってください!」 男子新体操を題材にした舞台『タンブリング』vol.3 主演の柳下大にインタビュー
――再び『タンブリング』に挑むことが決まって最初に感じたことは?
柳下「ずっと出たかったんですよ!舞台の『タンブリング』vol.1とvol.2はどちらも拝見しましたし、vol.1 は日替わりゲストとしても出させて頂いたんですが、その時は嫉妬していました(笑)。プロデューサーに「出させてください!」って直談判するくらいに出たい気持ちが強かったですね。『タンブリング』は本当に大事にしていた作品なので、出演が決まったときは本当に嬉しかったです。しかも、ドラマで演じた役で出られるということも大きいですね。ドラマで乗り越えてきたこと、みんなの思いも背負いながらできるので、余計に嬉しく思いました」
――そこまで『タンブリング』への思い入れが強いのはどうしてですか?
柳下「個人的にゴールデンでの連続ドラマは初めてでしたし、それに、メインキャストがみんな若手で、全員でひとつの目標に向かう一体感が感じられました。新体操を題材にしていることで、他にはない経験ができたと思います。みんなと一緒にいる時間も多くて、本当に部活をやっているような感覚がありました。なので、あの経験は僕にとってかけがえのないものになりましたね」
――部活といえば、以前出演された『テニスの王子様』とも似たような感覚がありそうですが、また違いますか?
柳下「そうですね。『テニスの王子様』でも貴重な経験をさせていただきましたが、『タンブリング』は少人数ということもあり、より一体感を強く感じたのかもしれません。それと、“テニス”に出た後もさらに経験を積んできたので、あのときに持っていなかった自分の中の熱が出せたんじゃないかなと思います」
――“新たな熱”というと、例えばどのような?
柳下「自分だけではなく、全員の力の相乗効果でいい作品にしたいという思いを、全員が持っていましたね。みんながすごく作品を大事にしていることを感じましたし、完成したら一緒に見たり、自分たちがやっているのに、泣いちゃったりして(笑)。それくらい、仕事という感覚が一切ありませんでした。いい仲間に出会えて、お芝居の中で気持ちが高ぶるシーンがあっても、何の迷いもなくできていましたね」
――水沢拓については、どう捉えていますか?また、演じる上で意識していることは?
柳下「ドラマでの水沢はひとつ悩みを抱えていたので、言いたいこともはっきりと言えないし、閉じこもっちゃうタイプでしたね。だけどその分、一歩引いているからこそ誰よりも仲間のことを見られる人なのかなと。今回も、あることをきっかけに新体操からちょっと距離を置いてしまっているんですが、水沢拓のいちばん芯にあるものは、「何よりも新体操が好き」ということ。そこだけは絶対に変わらない。好きだからこそ諦めたり、迷ったり、躊躇したり、避けてしまったり。それでもやっぱり新体操に惹かれてしまうということは芯に持っていたいですね。“水沢拓=新体操”という意識は絶対欠かさず、そこを気持ちの軸としてしっかりやっていきたいと思います」
――今回はまた新たなキャストで、『テニスの王子様』で共演した方々も出られますね。
柳下「馬場(徹)君は、1~2年ほど前からお互いの舞台をよく観るようになって、そこからお互いすごく意識し始めたんです。で、ある映画で一瞬だけ共演できたことがあったんですが、それが逆にもどかしくて。「もっとちゃんと共演したいね」っていう話をしていた中でのこの作品なので、すごく嬉しいですね。実際同い年ということもあって、とても刺激を受けますし、楽しみにしています」
――役者として意識されているということですよね?「負けてられない」というような感覚ですか?
柳下「自分にできないことをやっているなって思うんですよね。演劇界にしっかりと足を踏み入れている感じがします。この世界に入って、それこそ『テニスの王子様』を受けたときから、馬場君とは一緒のオーディションだったんです。同い年で、ふたりして制服着て稽古場通ったりした仲なので、そんな仲間がひとつ上のステージで頑張っているということは嬉しいですし、だからこそ、今一緒にやりたいと思いました。なので、ライバルのような感覚ではなく、同士として共に刺激し合いながら成長していきたいと思っています」
――生の舞台で見せる新体操は、映像とはまた異なる魅力が感じられそうです。
柳下「初めて生で新体操を見たとき、その迫力にすごく圧倒されたんですよね。その感覚ってやっぱり映像では伝わりきらない部分があると思っていて。そこの違いがすごく大きいですよね。あと、舞台だとずっとお芝居をやり続けてきた流れで新体操が入るので、集中力も精神力もすごく必要になります。自分が観客の立場で観てるときは「すごいな~!」って感動していたんですが、あれを自分がやるっていう意識に変わった途端、「大変なことをやっていたんだな」っていうプレッシャーを感じて(笑)。だからこそ余計に、負けたくないという気持ちは強くなりましたね」
――体力的にも大変ですよね。
柳下「体力は相当いりますね。フラットな状態でやってもキツイと思うのに、ぶっ続けでお芝居してからの新体操はさらに……。舞台は生ものなので失敗できないですし、ちょっと気を抜いたら怪我しますからね。しっかり体力作りして、パフォーマンスしたいと思います」
――お客さんにも緊張感が伝わるでしょうね。
柳下「そうですね。それが『タンブリング』にしかない魅力でもあると思います。もちろん、どんな舞台も稽古の成果を出すことが当たり前ですが、この作品は「もしかしたら失敗するかも」とか、「アクシデントが起きるかもしれない」という緊張感をはらんでいるので、その空気も味わって頂けます。しかも、新体操の経験者ではなく、役者が真剣に取り組んでいる姿という、半分ドキュメントにも思えるくらいのものを見せられる。きっと僕たちはコントロールできないくらい死ぬ気でやっていると思うので、その気持ちがお客さんにも伝わればいいなと思います」
――『タンブリング』を通して、どんなことが伝えられると思いますか?
柳下「見どころはたくさんあると思います。単純に、華やかさを楽しめると思いますし、新体操のすごさも実感してもらいたい。それに、仲間との友情や、個人の葛藤や辛さといった内面的な部分も感じて頂けるように演じたいと思っています。正解があるわけではないけれど、何かに迷っている人には、この『タンブリング』が何かひとつの道や光になればいいなとも思います。それくらい受け取り方に幅のある作品だと思うので、お客さんそれぞれにいろんな楽しみ方をして頂きたいですね」
――女性のファンが多いかと思いますが、そういう垣根を越えて楽しめそうですね。
柳下「元気とか勇気、希望、そういう前向きな気持ちを与えられる作品だと思うので、気晴らしに来て頂けたらと思いますね。舞台自体あまり観たことがない方も、観ることがお好きな方も、観た後に少しでも気分や考え方が変わる作品になると思いますし、そうできるように作っていきたいと思います。いろんな要素を含んだ作品にしたいですね」
(取材・文:黒石悦子)
(2012年8月13日更新)
発売中
Pコード:420-260
▼8月17日(金)18:00
▼8月18日(土)12:00/17:00
▼8月19日(日)12:00
シアターBRAVA!
全席指定-7800円
注釈付指定席-7800円
[脚本]広田光毅
[演出・振付]増田哲治(TETSUHARU)
[出演]
柳下大 馬場徹 佐々木喜英 木戸邑弥 春川恭亮 青柳塁斗 延山信弘
志尊淳 土屋シオン 浅香航大 江田結香・新垣里沙/石井正則
※注釈付指定席は1階席中通路前の両サイドに設けたお席です。一部シーンが見え辛い可能性がありますので予めご了承下さい。未就学児童は無料。但し、お席が必要な場合は有料。
[問]シアターBRAVA![TEL]06-6946-2260
シアターBRAVA!
http://theaterbrava.com/
鳥森高校を卒業した水沢拓(柳下大)は、男子新体操の強豪校・隼体育大学に進学するも、ある事件をきっかけに、男子新体操部を退部。鶴島大学に編入して、新体操とは無縁の生活を送っていた。そんな水沢に、鶴島大学男子新体操部員たちは新体操部への入部を懇願する。はたして、水沢は再び新体操のマットに立つことが出来るのか!?