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坂本龍一やダムタイプ・高谷史郎も参加
詩の朗読、音楽、映像、ダンスのコラボで探る
パフォーマンスの新たな可能性

19世紀のフランスを代表する詩人、ステファヌ・マラルメ。彼の詩を朗読し、音響や映像、ダンスと組み合わせて新たなパフォーマンスの姿を探る「マラルメ・プロジェクト」の第3弾が7月22日、京都芸術劇場 春秋座で上演される。2010年に京都造形芸術大学の渡邊守章、浅田彰により立ちあげられたこの企画。第1弾は渡邊が朗読する詩に、坂本龍一が即興的に音楽をつけ、ダムタイプ・高谷史郎がデザインした映像を流し、シンプルかつドラマティックな空間を立ち上げた。さらに、昨年は第2弾「『イジチュール』の夜」を上演。「マラルメが好きだったバレエを取り入れたい」(渡邊)と、ダンサー白井剛、寺田みさこによる身体表現を加え、朗読も浅田とふたりで行うなど、表現に厚みを持たせて見せた。

そして今回は、第2弾と同じメンバーでこれまでの総括として上演。詩句としては難解で、とっつきやすいものではないかもしれない。しかし渡邊は「マラルメは何より詩人。詩を読んだ時に「感動できる詩」として観客に受け取られなければならないし、そう翻訳をしなくてはいけないだろうという思いがあります。マラルメを全く知らない人が観た時に、マラルメがどういう人かわかるような枝葉は出したい」と語る。第1弾から映像を手掛ける高谷も最初は「難解に感じていた」という。「僕らが読んでも分からないものだと思っていましたが、渡邊先生が朗読されたのを聴いた時、すごく頭に入ってきて驚きましたね。その後、先生からの説明を受けて、無数の星屑が文字を形成しては砕け散っていく様子を映像にしました。今年の作品で面白いと感じたことは、ミーティングの時に先生が説明するように舞台が進んでいくんです。これがどう舞台で展開していくのかが楽しみですね」。

前回より、ふたりのダンサーが身体で表現しマラルメの詩を立体化。観る側にとってもよりイメージしやすいものになっている。寺田は「客席にいると、見えてくるもの、聞こえてくるもの、感じるものの情報がものすごく多いだろうなと思います。人によっては、音に引き寄せられる時間があったり、ダンスに引き寄せられる時間があったり、映像の世界に入っていく時間があるはず。そこをうまく泳いでいけると楽しく感じられるだろうなと思います。ダンサーとしては、そのバランスの中で、舞台上でどう身を置くのか、どんな状態を保つのがいいのかということがすごく難しくもあり、面白いですね」と、作品の面白さを語り、白井は「身体表現は、お芝居よりも抽象的な動きをすることが多く、言語的な解釈を越えたところで身体が出てこないとダンスにならない。マラルメの言葉を見ていくと、言語ではあるけれど、身体性や現実をさらに飛び越えるものがあります」と、詩の持つ奥深さを表現する。

浅田が目指すのは、「19世紀に劇場から拒否された詩人が密室で書いた、秘教的な散文の中にある潜在的なドラマを、21世紀のマルチメディア・パフォーマンスとして立ち上げること」。詩の朗読に、音楽、映像、ダンス、それぞれ第一線で活躍するアーティストによるパフォーマンスが絡み合う舞台。そのコラボレーションを楽しみながら、表現の可能性の広がりが肌で感じられるはずだ。

(取材・文:黒石悦子)
 




(2012年7月19日更新)


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撮影:清水俊洋

●公演情報

マラルメ・プロジェクト3
『イジチュール』の夜へ
-「エロディアード」/「半獣神」の舞台から-

発売中(7/19(木)まで販売)

Pコード:420-732

▼7月22日(日)16:00

京都芸術劇場 春秋座

一般-4000円(指定)

シニア-3600円(60歳以上、指定)

学生&ユース-2500円(学生・25歳以下、指定)

[出演][演出]渡邊守章

[出演]浅田彰/坂本龍一/白井剛/寺田みさこ

※映像、高谷史郎。
※未就学児童は入場不可。

[問]京都芸術劇場チケットセンター[TEL]075-791-8240