ホーム > インタビュー&レポート > 吉本興業の100年の歴史をお芝居にした月替わり公演 『吉本百年物語』、7月公演は“大大阪時代”が舞台 一世を風靡した夫婦漫才のミスワカナ・玉松一郎に 扮する藤林美沙、山崎邦正にインタビュー!
――まずは、この舞台のオファーを受けた時の率直な感想からお願いします。
山崎邦正(以下・山崎)「僕は吉本興業にお世話になって24年。今回100年という節目で、1年間通してやる記念事業に参加させていただけて凄く光栄です。4月8日の『伝説の日』でも沢山の芸人がNGKに集まったんですけど、その日だけじゃなくて、約1ヵ月間、吉本興業の歴史を振り返る中で、玉松一郎さんの役ができるというのは本当に嬉しいですね」
藤林美沙(以下・藤林)「私は奈良出身なので、テレビもそうですし、『吉本新喜劇』も見に行ってました。特に中学の時は、“天然素材”がもの凄く盛り上がっていた時期。よく見ていましたね。でも、この話をいただいた時は、勉強不足で吉本興業さんの昔の歴史を知らないところが結構たくさんあって。ただ、台本を読んで、お笑いに対する愛情と色んな温かいものを感じて、凄く感動したんです。なおかつ、普段ではなかなか一緒にお芝居する機会がない方々と1つの作品を作れるというのは、挑戦でもあり、楽しみですね」
――お二人が演じられるのはミスワカナ・玉松一郎。天才と謳われた、実在の漫才師です。
山崎「劇中には、漫才シーンもあります。今でいう宮川大助・花子さんとかのパターンですよね。夫婦漫才で、女性がわぁわぁと言うて、男性が引っ込み思案というか。その礎を作ったらしいという情報だけは知っているんですけど、ワカナ・一郎さんの漫才は生では聴いたことないですね」
藤林「私は、テープをもらいまして(笑)。正直、聞かんかったらよかったなと思うほどに、やっぱり凄かったですね。ミスワカナさんは、声色をコロコロ変えたり、スピード感があって、だけどちょっと艶っぽくてみたいな。声に物凄く特徴のある方だな、という印象が強かったですね。早口というわけではないのですが、歌うようにしゃべる方。実際に歌ったり踊ったりタップもされていたと聞いて、そういう意味では私も普段、ミュージカルのお仕事などをやらせてもらってるので近いかなと思ってたら……崩されたみたいな(笑)。とにかく絶妙で。漫才をやったことのない私ができるのかなって……。全然届かへんと思ったんですけど、邦正さんに教えていただきながら、“漫才をする”という意識ではなく、“お芝居をする”という意識でトライした方がいいのかなと、自分なりには思っています。勉強させてもらいます」
――玉松一郎はアコーディオンがトレードマークです。山崎さんは以前もピアノに挑戦されましたが、今回もアコーディオンを猛特訓中とか?
山崎「そうなんです。舞台でもアコーディオンは僕の見せ場だと思うんです。僕は、セリフがあってもワカナに振り回される役なので、アコーディオンを弾いて、そこで哀しさとか喜びを弾きながら表現したいですね。出会いのシーンとか、登場シーンとか、要所要所に結構ありますから。アコーディオンの先生はおしどりのマコちゃん。レッスン中も“ここは難しいから、こうしましょう”とか色々アイデアを出してくれてるので、そこは委ねてます。劇中では、『金色夜叉』といった昔の名曲を、2曲ほど弾かせていただきます 」
――片やミスワカナは、不世出のエンターテイナーですよね?
藤林「ほんとにそうですよね。私もたぶん、修行の日々になると思います(笑)。演出家の先生に言われているのは、ワカナさんは民謡も歌うし、中国語もしゃべるし、日本国中の方言もしゃべったりすると。さらに、下駄でタップするシーンがあったり、邦正さんと漫才するシーンがあったりと、とにかく宿題が山積みです。なおかつ、お芝居はきっちりやらないといけない。そんな中で、チャーミングに生きていらしたミスワカナさんという方がいて…。なので、少しでもワカナさんを生きられるように、プレッシャーを楽しみに変えてできたらいいなと思います」
山崎「ワカナさんは今の芸人さんにはいない、破天荒タイプですよね。だから僕らは憧れる。それと、お芝居に出ることが決まってから知ったんですけど、その時代は大阪が日本で一番人口が多かったという。まさに、“大大阪”。そんなに盛り上がっていたんかと。戦争という時代背景もあるんですけど、いい時代ですよね」
――夫婦漫才師を演じる山崎さんと藤林さん。あうんの呼吸が求められると思うのですが、お互いに初対面の印象はどんな感じでしたか?
藤林「ご挨拶させてもらった時に、やっぱり芸人さんて凄いなって。何ていうんでしょう。役者とも違う、タレントさんとも違う雰囲気を持ってらして、それが決して押し付けがましくなく、何か自然にそこにいらっしゃる。前に出るわけでもなく、でも前に出て(笑)。素晴らしい方だなと思ったんです。それでいて、お顔を見たら何か笑ってまうみたいな。でも、それって凄いことやなって。だからお客さんは芸人さんに会いたくなって、劇場に足を運ぶんやなって思うんですよね。今回は足を引っ張らないように頑張ります(笑)」
山崎「ワカナさんは、ほんとに難しい役だと思うんです。ある種、魂を解放させて、1回吹っ切って。たぶん憑依しないとできない役だと。それだけ、やりがいのある役。劇中では、そんな彼女を一郎は好きで好きでたまらんという。台本読みながら、“あぁ、俺、こんな女好きやな”と思ったんです。破天荒な、どこ行くか分からへんような女の人ってパワフルで、やっぱり芸人としても凄い魅力があって。台本の字からも、艶っぽいのが湧き出てるんです。芸を捨てて恋に走ったり、でも“やっぱり芸人やから”みたいな…振り幅が凄い。僕は、それをサポートする役に徹していきたいですね。そんなワカナさんを、藤林さんがどう演じられるのか楽しみですし、それを間横で見られることが楽しみ。一番の観客になろうと思ってます」
――山崎さんは、お芝居に本格的に挑戦されるのは今回が初めてですが、プレッシャーはありますか?
山崎「全く不安はないですね。やるだけですから。それが下手やろうが、何しようが、しゃーないやんみたいな(笑)。ただ、『吉本新喜劇』には出てますけど、『新喜劇』とは違ってオムツにも一切ならないし。全く笑いなしで行こうと。そういうのは楽しみです」
――では、最後に7月公演の見どころをお聞かせください。
藤林「セリフにも少し出てくるんですけど、“芸人と社員は家族だ”と。芸人さんたちを支えいてる会社の人たちと、高座に立って戦ってる芸人さんたちとの絆が丁寧に描かれているんです。ワカナ・一郎という個々の人生観より、芸人さんをサポートしている人たちの家族のような愛。それがあるから、吉本は戦争があった時代にも必死こいて笑いを届けようとしていた。そのエネルギーに私も胸を打たれたので、その家族愛のようなものを感じてもらえる作品になればいいなと思ってます」
山崎「とにかく台本が面白い。読んだけでほんまに泣いてしまいまして。僕らは芸人やから、社員さんがこういうふうに芸人を思ってくれるのやと。あとは、ワカナの奔放さ。こういう芸人がいたと伝えるだけでも意味があると思います。それが生で動くわけですから、僕はそれがほんとに見たい。あとは、アコーディオンですね(笑)。そして、ワカナがネタをやっているのを僕が横でサポートしている、その夫婦愛の場面も見てほしいです」
(取材・文/松尾美矢子 撮影/大西二士男
)(2012年6月25日更新)
発売中
Pコード:597-154
▼7月8日(日)~8月2日(木)
月~土19:00
日16:00
※7/11(水)・16(月)・18(水)・23(月)・25(水)・28(土)・29(日)・8/1(水)
なんばグランド花月
1階指定席-7500円
2階指定席-6000円
[出演]南野陽子/小籔千豊/藤林美沙/山崎邦正/渡邉絋平/金子昇/他
※未就学児童は入場不可。大人・子供ともに一律料金。
[問]チケットよしもとお問合せ専用ダイヤル
[TEL]0570-036-912