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「とにかく観てほしい舞台です!」
新聞記者ジョー・ブラッドレーを演じる吉田栄作に
本作の魅力や見どころについてインタビュー!
開幕直前、オールキャストの会見レポも到着!

1953年にウィリアム・ワイラー監督により製作された『ローマの休日』。主演のアン王女を演じたオードリー・ヘップバーンは本作でアカデミー主演女優賞を獲得し、一躍スターに。1950年代のローマを舞台に繰り広げるアン王女と新聞記者ジョー・ブラッドレーのロマンティック・ラブストーリー。今なお多くの人々に愛されている名作中の名作が、わずか3人の俳優によって舞台化されたのは2010年のこと。美術、衣裳、小道具に至るまで、映画の世界観を忠実に再現した本公演は、脚本・演出のマキノノゾミが第36回菊田一夫演劇賞を受賞し、多くの話題を呼んだ。
そして2012年、アン王女役に荘田由紀、秋元才加を新たに迎え再演が決定した。前作に引き続きジョー・ブラッドレー役を演じる吉田栄作に、舞台版『ローマの休日』の魅力や作品への思いを聞いた。

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。まず、2010年の初演のことをお聞かせください。

吉田栄作(以下、吉田)「『ローマの休日』というのは、やはり映画がレジェンドですから、それを“日本人がどんな茶番劇をやっているんだろう”と僕がお客さんだったらそう感じてしまうと思うんです。でも、観ていただければお分かりになると思いますが、映画ファンの方々を裏切りませんし、さらに物語が深まっていくところがあるので十分に満足していただける作品だと思うんです」

--吉田さんは、最初に舞台版のことをお聞きになって、どう思われましたか?

吉田「僕も最初、『ローマの休日』という舞台が作られると知った時、無理だろうと思いました。だけど台本を読んで気持ちが覆ったんです。とにかく演者、スタッフが一丸となってしっかりとしたものを作れば、いいものができるという確信が持て、僕の気持ちはポーンと180度、変わりました。前回は、東京で2週間、大阪で3日間、上演させていただき、大変多くの方に観ていただきました。実は、初演の頃から近い将来、再演をやろうというお話がありました。そして、それこそマキノさんが菊田一夫演劇賞を受賞されて…」

--今回の再演では、新聞記者ジョー・ブラッドレーの人生がより奥深く描かれているそうですね。1950年代というレッドパージが盛んに行われていた時代、自由に生きられなかった時代が背景にあることは、どう思われますか?

吉田「脚本のマキノノゾミさんと鈴木哲也さんの目の付けどころが素晴らしいなと思いましたね。舞台版『ローマの休日』は、原作者であるダルトン・トランボが自身の体験、経験を、新聞記者ジョー・ブラッドレーに投影しているんです。だから、あながち作り話じゃないんですよね。実は、ハリウッドでダルトン・トランボが実名を出したのは、ここ12年ぐらいのことなのです。それまではずっと影の存在で、ずっと偽名で。映画でも、友達のシナリオライターの名前を借りていたそうですね」

--ダルトン・トランボは、『ローマの休日』で受賞した時も、受賞式には替え玉が登場したとか。

吉田「そうなんです。ずっと表舞台に出ず、生涯を終えた方なんですよね」

--そんなダルトン・トランボについて、どう思われますか?

吉田「当時のアメリカは、自由を勝ち取る戦争に勝ったはずなのに、人々から思想、信条の自由を奪っていったわけですよね。ダルトン・トランボは、それに対して自分の信念をかけて真っ向から戦い、友達を売ることもしなかった。そんなダルトン・トランボ、そして『ローマの休日』でのジョー・ブラッドレーという男は、僕にとってとても魅力的な男ですね。決して長いものに巻かれず、金や名誉など、そういうところではない、もっと人間の本質的なところで生きた彼は、同じクラスにいたら間違いなく友達になっていたと思います。レベルは全然違うのですが、僕は舞台版の『ローマの休日』の台本を読んだ時に懐かしいエピソードを思い出したんです」

--そのエピソードについて、聞かせてください。

吉田「高校3年生の時のことなんですが、就職が内定していた親友が、校内でちょっとしたいたずらをしたんですが、それが大問題になりまして。“誰がやったか知っている者は名乗り出ろ”と先生が言ったんですが、誰も出なかったんですね。そいつがやったとは、全然バレてなかったんですが、僕は知っていたんです。そしたら“少なくとも怪しいと思う奴らを知っている者は匿名で紙に名前を書け”となり、そこに記された5、6名が職員室に呼ばれました。その中には僕もいて、真犯人もいたんです。で、一遍に並ばせても誰も白状しないので、個別になったんですよ。個別で2、3人の先生に囲まれて吐けとなったんです。真犯人の就職先というのは、彼が子どもの頃から夢見ていたところだったので、それは絶対、親友としても守りたいと思って、僕は“俺がやった”と言ったんですね。ただ、別の小部屋で“犯人はアイツだ”と言う奴がいて、真犯人も自分だと自白していたんです。その時点で犯人が確定したわけなんですが、そのことで俺は逆に先生から大目玉を食らったんですよ。“お前は俺たちの信頼を裏切ってくれた”みたいなことを言われて。ただ俺は、親友を売りたくなかったっていうだけなんです。それから18年の時が過ぎて、36歳の時に同窓会があったんです。その時、担任だった先生が、“あの時の事件だけどさ、本当は犯人はどっちだったんだ?”って。僕は“ああ、あれはアイツです”“今だから言いますけど、全然アイツですよ”って(笑)。それでみんな大爆笑だったんですけど、その時のことを僕は台本を読んで思い出して、作品に出てくるレッドパージのところで、すごくリアリティを感じましたね」

--なるほど。確かに、仲間を自供させられるところなど、何か似ている感じがしますね(笑)。では、吉田さんとジョーとの距離感で、初演と再演で変わったところはありますか。

吉田「大前提として映画をハイ・リスペクトしているところはあるのですが、たとえばジョー・ブラッドレーは一般市民じゃないですか。ローマに派遣された新聞記者ですよね。ちょっとやさぐれて、斜に構えて生きているという人間像からスタートして、真正面から人間を見て、若い女の子に惹かれて好きになって、その出会いがあったからこそまた次があるという、そういう等身大のジョー・ブラッドレーですよね。ハイ・リスペクトしていることは一旦胸にしまって、映画『ローマの休日』、グレゴリー・ベックという大きな看板じゃなく、何かより等身大の自分で感じてみたいなと思っていますね」

--その、一般市民という感覚は、どんなものなのでしょう?

吉田「それは、言葉ではすごく難しいと思います。というのは、仕事をしていない時の自分は、皆さんと同じことをしていますよね。食事をして、寝て、起きて、顔を洗って、排泄をして。全く同じです。もちろん職業が人に見られている仕事だという意識は高い方かもしれません。ただ僕は、普段の自分というものがすごく大事だと思うんです。普段、何をしているか。僕はなるべくニュートラルでいるようにしているんですけども、芸能人とか、役者とか、○○役というギアを入れず、世間の中に紛れることがとても大事だと思っています。国民でいること。それは当り前なんですが(笑)。一市民、一区民でいることがすごく大事だと思っています」

--なるほど。職業が違うだけで、同じですよね。職業が違うというのも、世間一般と同じことですもんね。

吉田「そういうことです。同じなんですよ」

--この舞台は視覚的にも映画と遜色ないようにということで、モノクロの世界で作られています。この点も本公演の大きな特徴ですね。

吉田「これも映画の話をしますと、時代はもうすでにカラーだったんですね。それをウィリアム・ワイラー監督が、あくまで物語と人物に焦点を当てたいということで、あえて白黒にしたんです。当時、イタリアロケに行くなんてことはアメリカ映画では斬新だったんですが、背景は二の次だと」

--余計な情報を入れないように。

吉田「はい。それをそのまま、この舞台でも再現します。その辺はさすが、“天才マキノノゾミ”のアイデアですよね」

--お芝居をされていて、そんなマキノさんの才能をどういうところで感じられますか?

吉田「まず、登場人物を3人に絞ったところですね。発想としては、2人からチャレンジしたと。でも無理だったから3人にしようと。ただ、声の出演で川下大洋さんがいらっしゃいますが、基本、生の人間は3人しか出ないと。そこがまさに“人物に焦点を当てよう”という映画の舞台版だと思うんですね。マキノさんという人は、いろんなところでものすごく考えられている人なんだなということが、本を読んでも分かりますしね。例えば、最後の謁見のシーンなんて、映画ではアーヴィングがいますが、舞台版ではいないんです。でもいるんです。“いないからいる”んです。それは計算でそういうふうに見せているんです。いるよりいない方が、人がいるように思うという。深いでしょう? そういうマキノマジックがそこかしこに隠されていて、その辺も本当に感心しますね」

--いないけど存在を感じる。

吉田「はい。そういう演出になっているんですよ。お客さんも絶対、そのシーンではアーヴィングのことを想像するんです。舞台にはいないアーヴィングのことを。そこまで計算された本になっているので、これがつまらないわけないんですよね」

--今回もアーヴィング役は小倉久寛さんで、13年来のお付き合いということですが、コンビネーションではバッチリですか。

吉田「と、思いますけどね(笑)。年に何度も食事をしたり、酒を飲んだりという仲なので、あと一緒に海に行ったりとかね。なので、やっぱり……そこで遣った金と飲んだ酒の量はね、無駄ではなかったということをこの舞台で証明しないと、経費になりませんから、はい(笑)」

--再演では、荘田由紀さんと秋元才加さんがアン王女役として初登場されますが、ダブルキャストだとまた物語の見え方も異なるんでしょうね。

吉田「荘田さんは文学座という素晴らしい劇団でお芝居を学んで、舞台にも何度も立っていらっしゃいます。僕も観たことがあります。そんな荘田さんとガチンコの芝居ができることが、すごく楽しみです。秋元さんは今、日本で一番忙しいアイドルグループの代表的メンバーですよね。一般社会からちょっと閉ざされて生きているところがあると思うのですが、その辺がアン王女とのリアリティにつながると僕は思っていて、そこが秋元さん独自の味になると思うんです。だから、『ローマの休日』は2回観ていただくことをオススメします」

--そうですね。ぜひ2回、荘田さんと秋元さん、それぞれのアン王女を楽しんでいただきたいですね。

吉田「大阪公演は、荘田さんと秋元さんで各2回公演で、一日で2回、観ることもできますしね。1回目を観て、休憩挟んで食事して、2回目が終わって飲みに行って、“ここがよかったね”とか“ここが違ったね”とか、アン王女の違いについて語り合って欲しいですね。僕らの話は一切、しなくて結構ですから(笑)。“あの二人も頑張ってたね”ぐらいでいいので(笑)」

--いえいえ(笑)。大いに話題にさせていただきます! 今日はありがとうございました!

吉田栄作、小倉久寛、そして荘田由紀と秋元才加のWキャストでお届けする『ローマの休日』は5月12日(土)、13日(日)に大阪・シアタードラマシティで上演。初演でも多くの反響を呼んだ待望作だけに、この機会をどうぞお見逃しなく。
 




(2012年5月11日更新)


Check

●公演情報

『ローマの休日』

発売中
Pコード:417-685

▼5月12日(土)17:30
▼5月13日(日)12:30
[出演]吉田栄作/秋元才加(Wキャスト)/小倉久寛

▼5月12日(土) 13:00
▼5月13日(日) 17:00
[出演]吉田栄作/荘田由紀(Wキャスト)/小倉久寛


梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定-9000円

梅田の休日ペアチケット-8000円(1名分)

[原案・原作]ダルトン・トランボ

[劇作・脚本]イアン・マクレラン・ハンター(オリジナル脚本)/ジョン・ダイトン(オリジナル脚本)/鈴木哲也/マキノノゾミ

[劇作・脚本][演出]マキノノゾミ

[音楽]渡辺俊幸

[問]梅田芸術劇場[TEL]06-6377-3888

※未就学児童は入場不可。

※5/12(土)17:30公演終了後、アフタートークショーあり(〔出演〕マキノノゾミ/吉田栄作/荘田由紀/秋元才加/小倉久寛)。

★梅田の休日ペアチケット★
・2枚単位(合計16000円)での販売
・劇場内のドリンクコーナーで1名につき1ドリンク(アルコール除く)プレゼント
・公演終了後舞台上にて<真実の口>と写真撮影可(各自カメラ要持参、但し5/13(日)17:00公演は除く)
・販売期間中1人1公演のみ2セット(4枚)まで。

『ローマの休日』公式サイト
http://www.umegei.com/schedule/146/

前売り券は各日前日まで発売!
チケット情報はこちら

●あらすじ

1950年代の夏、イタリア・ローマのマルグッタ街51番にある独身者向けの小さなアパートの住人である新聞記者のジョー・ブラッド(吉田栄作)はある夜、ちょっとした災難に見舞われる。街で出会った風変わりな娘を自室に泊めざるを得なくなった。街角のベンチに横たわって眠りこけていた美しいその娘の面倒を渋々、見ることになったのだ。
翌朝、ジョーは驚愕する。自室のカウチで寝息を立てている娘こそ、欧州歴訪の旅の途中でローマを訪れていたアン王女(荘田由紀・秋元才加)だったのだ。大使館をこっそり抜け出し、お忍びで街をさまよっていたものらしい。
ジョーは早速、特ダネを取ろうと身分を隠したまま、王女への取材を始める。カメラマンのアーヴィング(小倉久寛)も呼び寄せ、ローマの名所旧跡を巡る3人。その間もアーヴィングのカメラはこっそり、王女を撮影し続けている…。
しかしジョーは、アン王女がいかに窮屈で自由のない生活に苦しんでいたか、そして今日のような一日を待ち望んでいたかを知るのであった。そしていつしか互いに心惹かれて…。

●プロフィール

吉田栄作

よしだえいさく/1969年生まれ。東映映画『ガラスの中の少女』でスクリーンデビュー。映画、ドラマ、舞台と幅広く活動。2003年には『武蔵』(NHK大河ドラマ)『ブラックジャックによろしく』(TBS)の演技が評価されギャラクシー賞・奨励賞を受賞した。また、2009年からメジャーでの音楽活動も再開した。近年は、2010年の舞台『ローマの休日』をはじめ、舞台『シングルマザーズ』(二兎社)、映画『山本五十六』などに出演。


5/11(金)会見レポート!

大阪公演初日直前、吉田栄作、小倉久寛、荘田由紀、秋元才加のオールキャストによる会見が行われ、それぞれ意気込みを語った。

「僕と小倉さんに関しては今回、再演ということで、同じ作品が2回できるということはそれなりの評価をいただいたことなので、大変光栄に思っています。前回もそうでしたが、この作品は本当に映画をご存知の方の期待を絶対に裏切りませんし、舞台に登場する人物が三人のみということで人物の説明が深くなっておりますので、多くの方々に観ていただきたいと思っています」(吉田栄作)

「すごく楽しく稽古をして、この時を迎えて、本当に嬉しく思います。今、初日を迎えることがとても楽しみなのですが、映画よりも掘り下げている部分がこの作品にはあって、本当に凝縮された内容になっているので、お楽しみいただけると思います」(荘田由紀)

「三人だけのお芝居も始めてですし、歌もダンスもほぼない、ストレートプレイも初めてすごくドキドキしているのですが、アン王女をWキャストでやらせていただくことで、2通りの『ローマの休日』をお楽しみいただけると思います。すばらしい作品に参加させていただいているので、たくさんの方に観ていただけるよう、精一杯頑張りたいと思います」(秋元才加)

「僕が出ていない、ジョーとアン王女のシーンを稽古場からずっと観させていただいているんですが、それがいいんですよ。二人のドラマがね。王女はかわいいし、切ないし、ジョーもカッコイイし、切ないし、すごく素敵だと思って観ていたんですが、僕が出ることで邪魔をしないように、それでいてスパイスになるように一生懸命やらせていただいきたいと思います。映画の『ローマの休日』と同じくらい素敵な作品だと思います」(小倉久寛)