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娼婦ルーシーという難役に挑む濱田めぐみに
作品への思いや舞台の魅力などをインタビュー!

鹿賀丈史主演で過去に4度公演し、日本のミュージカル界に新たな伝説を刻んだ傑作ブロードウェイ・ミュージカル『ジキル&ハイド』。この春、新たなジキル役にミュージカル界のプリンス石丸幹二を迎えるほか、キャストを一新。ニュー・プロダクションとして生まれ変わることに。
人間の持つ光と影、そして裏と表を描いたR・L・スティーブンソン作の物語を、フランク・ワイルドホーンの壮大かつ流麗な音楽が彩り、より奥深い世界観で魅せる『ジキル&ハイド』。本公演では、分裂する人格を抑制しきれず、理性と欲望の間で苛む医師のジキルに石丸幹二。そして彼のもう一つの人格である凶暴なハイドに心惹かれる娼婦のルーシー役に濱田めぐみ。ジキルの婚約者であり彼を一途に愛するエマ役には笹本玲奈と、日本ミュージカル界で屈指の歌唱力を誇る3人が集結。
そこで、本作が劇団四季退団後2作目となる濱田めぐみに、作品について話を聞いた。

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。『ジキル&ハイド』で劇団四季退団後、2作目のミュージカルとなりますね。

濱田めぐみ(以下、濱田)「キャストの方々が実力のある方ばかりで、その中でルーシーを演じるのは安心感がありますね(笑)。“ああ、この世界観の中で自分が実際に入ってやるんだな”っていう客観的な自分と、実際入ってみて、中から見ている自分と二通りいます。でもルーシーの目線から物事を見ると、そんなに複雑ではないんですよね」

--複雑というのは?

濱田「ルーシーはジキルに一目惚れして、娼婦という仕事をしながらも彼に恋焦がれていきます。一方でハイドにひどいことをされるのですが、でも、その治療のためにジキルに会いに行きます。その行動的にはすごく純粋で、シンプルですよね。それを自分が客席から観ていた時には複雑に見えたんです。でも、客席の向こう側に入っていくと、ルーシーはすごく純粋なことがわかりました。なので、ルーシー・ハリスという女性像の中に入っていくという作業なんだなと思いました」

--複雑に見えた舞台の中に入って行くことは、どんな感じすか?

濱田「灯台下暗しというか、実際、その場では分からないけど、遠くから見たら分かることってあるじゃないですか。ナスカの地上絵みたいな。地上では道が続いているなぁって思っていたものが、上から見たら絵だったという、その逆パターンのような。ルーシーになってジキルと会話を繰り返す中で、やっていることは一人の人間としての生き方、ルーシーとしての生き方を生きるんだなという印象でした」

--製作発表会見では、“ルーシーとしての女性像、娼婦になるまでの人生を大事にした上で演じたい”とおっしゃっていましたね。

濱田「彼女はどうやって“どん底”という娼婦宿に来たのか考えていたんですけど、演出家とお話している時に浮かんだのは、ルーシーは小さい頃に身寄りがなくなって、“どん底”に引き取られて、そこで育ったんじゃないかという説でした。そうだとしたら、娼婦の世界で育っているわけだから、逆に外の世界に対する好奇心は世間ずれをしていないし、純粋無垢だと。でも、性欲というものを操る職業なので、男性をコントロールする術には長けているわけですよね。それはもう対極ですよね。それで、彼女の中にも二面性があるんだなって思って。それが彼女の中での『ジキル&ハイド』なんだと」

--女性としてそんなルーシーに共感を抱かれたり、逆に理解できなかったりすることはありますか?

濱田「彼女の台詞で、“あんなに優しくされたの初めてだったわ”という一言があるのですが、人生において優しくされるということが分からない人が、ほんのり優しくされた時に感じる素直な気持ちはすごく共感できますし、それを素直に口に出せる彼女も素敵だなと思います。女性として、そういうところは持っていたいし、素直な自分でありたいと思いました。そこはルーシーのすごくいいところで、魅力ですよね。その反面、セックスの世界で生きて、男性たちの欲望を自分のえさにしている。そういう真逆の部分が分からないです。純粋な彼女がまとっているもう一つの魅力というか、男の人に彼女を抱きたいと思わせる何か。演出家からは、今回、内面から出るエロティシズムというか、色気を大事にしていこうと言われました。その時も、う~んって考えたんですけど、でも確かにそうだなと」

--いわゆる露出が多いというのではなく…。

濱田「肌を露わにするわけじゃなく、佇まいとか仕草、思考、発想、ちょっとした行動でうわっとなるような…。それってやっぱり彼女が生きるすべとして身につけてきたものだと思うんです。それがなかったら生きていけなかったし、これからも生きていけない。それなくしてルーシーは成り立たないと思うんです。そこの理解ですよね。私の中では、映画『吉原炎上』とリンクするところもあります。ただ、私の人生だけでは到底、想像だけでも追いつけない部分がありましたね」

--職業としてのそれとっていうところですよね。

濱田「そう。割り切れているのか、どうなのか。そういうことを考え出すときりがないですね」

--とはいえ、もしかしたら天性のものかもしれない。

濱田「そうですね。そういう力を元々持って生まれたのか、そういう星の下で生きていかざるを得なかったのか…。ただ、やっぱり舞台の上って魔法がかかってるから、全キャストが衣裳を着て、メイクをして、ライトの中に入って、お客さんが入った状態で、どん!っと見せた時に初めて、全部のパズルがはまるんでしょうね」

--今回、ルーシー役でというお話を聞いた時はどうでしたか?

濱田「最初にお話をいただいた時は、作品のイメージしかなかったんです。それまでマルシアさんが演じていた役なので、彼女に“ルーシーの役をいただいたよ。マルちゃんの次にやるからね、よろしくね”とメールをしたんです。で、ふと、“そういえばマルちゃん、すごく官能的に、なまめかしくやってたなぁ…。娼婦だったなぁ”と思って。そして改めて台本を読んだ時に、“うん、娼婦だな…”と(笑)。あと、曲の完成度もクオリティもすごく高くて、これは大変だなぁとも(笑)。そこで、あわわわとプレッシャーを感じましたね(笑)。でも、さ~これは挑戦しがいがあるぞとも思いました」

--その楽曲ですが、フランク・ワイルドホーンさんの作品の魅力を教えてください。

濱田「ロック、バラード、カントリー、ゴスペルとか、すべての曲調が全部違っていて、キーが高いものがあったり、それこそキーが突然低いところから高いところに飛ぶものもあって、、とにかく難度が高いです。そして譜面だけでは歌えない何かがいたるところにあります。でも、そのことで声という楽器を使って演じるということが鍛えられましたね(笑)。あと、全部の曲がそうなんですが、ワイルドホーンさんの曲はエネルギーを凝縮させて歌う、汗をかきながら歌う感じがします」

--“譜面だけでは歌えない何か”とは、どんな感覚なんですか?

濱田「一言で言えばセンスですね。歌い手のセンスと、ワイルドホーンさんが望むことを読み取って、嗅ぎ取るというような」

--そんな歌とお芝居が重なると、どうなりますか?

濱田「立体になる感じですね。平面で作っていたものに水分が加わって、ぼわんって立体的に膨らむ感じです。そこにライトが当たって、こっちの面ではピンクで、こっちの面ではブルー。で、お客様から観ると七色に見えている。だから舞台上って不思議ですよね。そういうマジックがありますね」

--私たちが客席から見る光と、舞台上の光はかなり違いますか。

濱田「全然、違いますね。明るいなと思っていても、客席からは暗かったり、逆に客席からは陽炎のように見えていても、こっちは煌々としていたりとか。そういうライトの使い方もすごく絶妙ですね。役者って客席から自分の舞台を観ることができませんが、ある時に『ボニー&クライド』の上演映像を見せていただいたことがあったんですが、こんなにキレイに見えているの?という瞬間があって、それは衝撃的でした。舞台はやっぱり、すべては観客席のためにあるんだなと思いました」

--劇団四季を退団されて、今回で2作目になりますが、これから先も四季でのご経験をどのように生かそうとお考えですか?

濱田「そうですね。四季で得た15年は、私にとって宝であり、土台であり、それがなければ今の私はないです。先輩からのアドバイスで知ったこと、後輩を教えながら分かったこと、自分で盗み取ったものなど、そういうことがふとした瞬間に出てきます。“ああ、これは、あの時に得たものだ”と思うことがありますね」

--そういうことが力になって。

濱田「そうですね。そして、少々のことがあってもへこたれないというか、へこたれる気にならない」

--こうしてたくさんの俳優さんとの作品づくりはどうですか?

濱田「初めて出会った方と一緒に物事を作るということを繰り返されているので、一瞬で打ち解けてくださって。あと、私のことをすごく心配してくださるんです。いろいろ気遣ってくださって、稽古場の使い方から何か、本当に丁寧に教えてくださって、本当に皆さんに支えられています。このお返しはやっぱり舞台上じゃないとできないから、常に元気で、パワフルにやっていこうと思います。みんな、温かくて、優しくて、面白くて。みんなポジティブで、自分たちが持っているものを持ち寄って、よいものにしようという集団だから、すごく刺激的ですし、ワクワクしますね」

--では最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。

濱田「今回のルーシー・ハリスという役は、今までにない自分、また新たな一面を出していこうと思うので、ぜひ確かめに来てください。そして一緒に『ジキル&ハイド』の世界を楽しみましょう!」

『ジキル&ハイド』は4月6日(金)より梅田芸術劇場 メインホールで開幕。ミュージカル界で日本屈指の歌唱力を誇る面々が集結し、新たなる世界観で魅せる本作をどうぞお楽しみに!




(2012年4月 3日更新)


●公演情報

ミュージカル『ジキル&ハイド』

発売中

Pコード:416-550

▼4月6日(金)14:00

▼4月7日(土)13:00

▼4月7日(土)17:30

▼4月8日(日)13:00

梅田芸術劇場 メインホール

S席-12600円

A席-8400円

B席-4200円

[劇作・脚本]レスリー・ブリカッス

[作詞]髙平哲郎(上演台本)

[演出]山田和也

[音楽]フランク・ワイルドホーン

[出演]石丸幹二/濱田めぐみ/笹本玲奈/吉野圭吾/畠中洋/花王おさむ/中嶋しゅう/他

※未就学児童は入場不可。4/7(土)17:30公演は、公演終了後、トークショーあり(〔出演〕石丸幹二/濱田めぐみ/笹本玲奈)。

[問]梅田芸術劇場[TEL]06-6377-3800

ミュージカル『ジキル&ハイド』公式サイト
http://www.tohostage.com/jekyll/index.html

前売りチケットは、公演日前日まで販売!
チケット情報はこちら

●あらすじ

 1888年秋、ロンドン。医者のヘンリー・ジキルは、セント・ジュード病院の最高理事会に臨んだ。長年研究を続けてきた、「人間の善と悪を分離する薬」の人体実験の許可を得るためだった。すべては精神のコントロールを失った父を救うため。ひいては人類の幸せと科学の発展にも寄与できるとジキルは確信するが、婚約者エマの父ダンヴァース卿、そして友人のアターソンから「死神よりも危険な理論だ」と忠告される。二人の危惧は的中、上流階級の面々が集う理事会で、ジキルの要求はほとんど一方的に却下された。

 その夜、リージェント・パーク地区のダンヴァース卿邸では、ジキルとエマの婚約パーティーが開かれた。そこに出席した理事会のメンバーは、この婚約を快く思ってはいない。なかでも、秘書官のストライドはエマに結婚を考え直すように迫るが、エマとジキルは強い愛情の絆で結ばれていた。

 パーティーを逃れ、ジキルはアターソンに誘われるまま、カムデンタウンにある娼館も兼ねるパブ"どん底"を訪れる。そこには蠱惑的な娼婦ルーシーがいた。その場の雰囲気にとまどっているジキルに、ルーシーは甘くささやく。「私で試してみたら?」その言葉に、ジキルは自ら開発した薬を"自分で試す"という解決法を見出す。

 ハーレー・ストリートの自宅に戻ったジキルは薬を服用。ほどなく体に異変が起こる。頭痛、恍惚感、痛みが全身を貫き、呼吸困難に・・・。ジキルの心と体は、エドワード・ハイドに変わった。「自由だ!」-ハイドは叫び、ロンドンの夜の闇の中へ出てゆく。

 それから1週間。ジキルはエマやアターソンとも会おうとしなかった。ある日、ルーシーの体の傷を治療した彼は、加害者がハイドであることを知り、愕然とする。いっぽう街中では理事会のメンバーが次々に惨殺されていった。エマとの結婚式が近づく中、ジキルは、ハイドをほとんど制御できなくなってゆくのを感じていた。

 アターソンにすべてを打ち明けた彼は、ルーシーの身を案じ、「ロンドンからすぐに立ち去るように」との手紙を託すのだった・・・。

(公式サイトより)

●プロフィール

濱田めぐみ

はまだめぐみ/福岡県出身。'95年12月、劇団四季オーディションに合格。抜群の歌唱力と将来性が認められ、3カ月後の'96年2月には『美女と野獣』のヒロイン、ベル役に抜擢されデビュー。その後、『ライオンキング』(初演)、『ウィキッド』(初演)に出演。これら四季三作品でヒロインを演じた劇団四季で唯一の女優であり、2010年の退団まで看板女優として15年間、在籍した。退団後の初舞台はワイルドホーン作曲のミュージカル『ボニー&クライド』。ミュージカル『ジキル&ハイド』が2作目となる。