関西を中心に活動している工藤俊作による『工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10』その第12回公演が先日、大阪で行われ、現在は東京はこまばアゴラ劇場で開催中だ。大阪公演でも好評を博した本作は、脚本を突劇金魚のサリngROCK、演出をトリコ・A・プロデュースの山口茜が手掛けた『楽園!』だ。女性の作・演出は初めてとのことで、ふたりとの出会いから聞いた。
工藤俊作(以下、工藤)「サリngROCKさんに脚本を書いてもらおうと、サリngROCKさんのお芝居を観ている最中から考えていて。で、サリngROCKさんに依頼する前に演出してもらうならと考えていたんです。以前、山口さんの作品を観たときすごくおもしろい演出をされるという印象が頭の片隅に残っていたので、その組み合わせを考えたときに『あ、これは絶対に面白くなる』と思って、ひとまず先に山口さんにお願いしました。実はサリngROCKさんに本を書いてもらいたいと思っているんですけどどうしょうと聞いたら、それはいいじゃないですかというお返事をいただいて。その後、サリngROCKさんにもお願いしました」
--山口さんとサリngROCKさんはお互いにどう思われていたんですか?
山口茜(以下、山口)「お互いに存在しか知らなかったですね。でも注目されている人なので興味はありました。人間の心理として」
サリngROCK「山口さんの作品は、このお話が決まってから映像と和知の作品も観たんですけど、もう一気に好きになりましたね。演出家が誰であっても、自分の書いた本が違うものになるということが、演出されることの楽しみなんですけど、山口さんがやるから楽しみがまた増えました。だから、すごくうれしいです」
--『楽園!』のストーリーはどのようにして?
工藤「サリngROCKさんの好きなように書いててと」
サリngROCK「今回、役者さんの年齢層が幅広かったので、いろんな人が出てくる作品にしようと思ったのと、それとは別でタイトルが『楽園!』で。宗教的な楽園って死後の世界でのこととかを指したりすると思うんです。死んだ後にそういういいところに行けるから、生きているときに頑張れみたいな。その考えに結構興味があって。私は何かの宗教に入っていはいませんが、すごく共感するものがあって、生きているうちに自分の中で楽園を作りだしておかないと、普段のつらさとかしんどさに納得できないような気がしていて。そこへ向かっているいろんな人たちのお話にしようと思いました」
本作は、あるOLが求める楽園に向かって旅をするという、ロードムービーのような物語だ。その作品に対して演出の山口が受けた印象とは?
山口「相当な挑戦状でした(笑)。転換がめちゃめちゃ多いんですよ。それがむしろ面白いと思って。こんな舞台台本、どうよ?ってことやんね?」
サリngROCK「そうですね…(笑)。自分の劇団でも舞台転換は多いほうなんです。それはどうしようと毎回、自分でも思っていたんですけど、でもそれよりさらに多くしてみました(笑)」
山口「そうなんです。多いんです。しかも、全部室内ならまだしも、ほとんど外で。衝撃的でした(笑)。読むだけやったらいいんですけど、演出せなあかんなと思って…」
サリngROCK「ちょっとせっかくなので、自分ではやらないことを書いてみました。ゆだねてみようと」
山口「でも、シーンがどんどん変わっていくので、疾走感がありますね」
--脚本がサリngROCKさんならではと思われるご感想は?
山口「そうですね。ポップです。あと、自分が書くと演出のことを書いてダメにあってしまうから、考えていない分、伸びしろがすごくあるので、自分が柔軟になればどこまでもできるなと思いましたね
--今回、役者さんもベテランの方が多く出られています。そのことに関してはどうですか?
山口「いつも何が悪いんやろ? 台本かな、演出かなって悩んでいた部分が、役者というのもあったんやなと今回気づいたという感じですね。『楽園!』では、皆さんがぱっと作られるので、私も刺激されて次の手が出せるんです。私がこうしたいんですとお伝えしたことを何倍にも返してくださる方ばかり、自分のカンパニーでやるときはすごい悩んで進まない部分が進んでいくんです。自分だったら勇気がなくて出演依頼できなかった方ばかりなので、すごく貴重な経験です。役者がいいとこんなに変わるんだなと思いました」
--工藤さん、プロデューサーとしてどうですか?
工藤「その中に自分も入れてもらってんのかな(笑)。出演者もみんな、山口さんの演出を受けるのが初めてなので、今言われていることとは逆で、この本がこういう演出になるんやっていうことは、みんな思っていると思います。台本もらって読んでいるときの役者の想像と、演出の想像は違うので、みんながびっくりするんです。ここ、そうしますか!?というような。でもそれが、役者冥利に尽きますね。想像を絶します」
--工藤さんが最初に、このお二人に作・演出をお願いしたいと思われた。そのときの想像は越えていますか?
工藤「はい。いい感じで。大正解です。やっぱ工藤俊作、目利きやな~と(笑)」
大阪公演でも好評を博した「工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10『楽園!
』は2月19日(日)までこまばアゴラ劇場で上演中。今、注目のサリngROCKと山口茜のタッグと関西の実力派俳優たちが魅せる本作を、関東の演劇ファンの方はこの機会にぜひ!