ホーム > インタビュー&レポート > 初のライセンス契約で海外で上演されることとなった 韓国発の大人気オリジナルミュージカル『パルレ』 ソウルの路地裏で貧しくも明るく強く生きる人々の姿を 描いた本作について主人公ナヨン演じる木村花代が語る
2010年の劇団四季退団後、木村花代にとって初の主演作となるミュージカル『パルレ』。「気持ち新たに向き合いたい」と語る木村だが、本作へはどのような経緯で出演することになったのだろう。
木村花代(以下、木村)「私は『パルレ』出演のお話をいただいてから、韓国に本公演を観に行きました。『この作品に出る』と思いながら観劇したのですが、そのとき、役者としていろんなものを背負って生きてきたけど、もう一度新しく、ピュアな気持ちで芝居に取り組んでいけるんのではないかと思ったんです。『パルレ』はミュージカルと言ってもストレートプレイに近いお話なんです。多くの賞を受賞している素晴らしい楽曲と同様に物語も本当に素晴らしくて、ぜひこの役にチャレンジしたいという思いが芽生えました。この作品を通してもう一度、新しい木村花代として生まれ変わることができるんじゃないかという期待が膨らみまして、挑戦させてほしいとお願いしました」
ミュージカル『パルレ』は、韓国ではテハンノで上演されている。韓国・ソウルという街が持つパワーについては、どのような印象を受けたのだろうか。
木村「『パルレ』の観劇で初めて韓国に行ったんですが、人や街の雰囲気が関西にすごく近いと思いまして、私も関西出身なので親近感がわきました。現地には劇団時代からの韓国のお友達がたくさんいるので、いろんなところに案内してもらったんですが、本当に人が良くて、情が厚くて、なんて関西に似ているんだろうというのが第一印象でした」
木村は、この街でロングランを続けている理由を、作・演出のチュ・ミンジュに聞いたそうだ。
木村「ミンジュさんは、登場人物ひとりひとりに、『ああ、これは私だ』と親近感を持って観ていただけるのがその一つなんじゃないかとおっしゃっていました。ご自分でもロングランになるとは思ってなかったそうです。プロデューサーにも制作の動機をお伺いしたところ、このミュージカルを観て、嫌なことや生きることの辛さを洗い流して、新しい風にさらして、きれいになった洗濯物を羽織って、真っ白な心になってまた生きていこうという思いをお客様に持って帰っていただきたいと思ったそうです。私も、『パルレ』を観たとき同じように真っ白な気持ちになりました」
現地での観劇の感想をさらに詳しく聞いた。
木村「冒頭からもう、ワクワク、ドキドキで、ずっと笑って観ていたんです。と思いきや、役者さんが泣くと同時に私も涙がこぼれたりしました。あと、客席と舞台の距離感がすごく近いミュージカルと思いましたね。ミュージカルってどうしても、敷居が高く、客席と舞台は別空間という感じがあると思うんですけど、『パルレ』はお客さんをすごくいじりますし(笑)、お客さんと一緒に楽しもうという気持ちがすごくあります。参加型のミュージカルで、ただ観るだけではなく、一緒に楽しんで、元気をもらって帰ることのできる作品だなと思いました。なので、退団後初の作品がこのミュージカルであることに本当に幸せだと感じました」
そして日本版『パルレ』がいよいよ走り出した。作・演出のチュ・ミンジュとはどんな話をしたのだろう。
木村「ミンジュさんからは日本版なりの『パルレ』を作ってほしいと言われていたので、オリジナルのアイデアをどんどん提供してほしいという感じで、ディスカッションしながら作っていきました。それだけに本国にはなものをお見せできるのではないかと思います」
また、ナヨンという役作りの上では、どういったことが交わされたのだろうか。
木村「役者は舞台の上で生きてもらわないと困りますとおっしゃっていて。舞台ではナヨンを演じるのではなく、花代でいてください、花代が感じるままに動いてくださいということを言われました。これは役者として究極の芝居と言ってもいいと思いますね」
そんな中で、とてもうれしい言葉もかけてもらったそうだ。
木村「私は19歳で夢を持って上京しました。ナヨンも同じように、夢を追いかけてソウルにやって来ました。ソウルはいろんな方が夢を追いかけて集まって来るのですが、『あなたはそんな人々と同じ気持ちをきちんと持っているから、ナヨンに見えます』とおっしゃっていただきました。大都市で一人暮らしをする女の子という弱い存在であっても、どうやって強く生きていくかという部分を演じていけたらいいなと思いますね」
そんなナヨンと恋に落ちるソロンゴはトリプルキャストで展開する。続いてはソロンゴを演じる3人それぞれの印象を聞いた。
木村「松原剛志さん、野島直人さん、LENさんはまったくキャラが違います。松原さんはお兄さんキャラで、しっかりした頼れるソロンゴという印象があります。野島さんは情熱的なんです。それゆえ一緒に感情が上がってしまう傾向があって、抑えきれなくなったり (笑)。でもそこが生ものの面白さだと思います。そしてLENさんは、天然なのか何なのか、お芝居がすごく自然で、ちょっと草食系の感じはするんですが、でもお芝居をすると『俺についてこい』タイプなんで、韓国の男性特有の器の大きさを感じます。本当に三人三様、全然違いますね。ただ、大阪公演は、LENさんと私の組み合わせはないんです。ナヨンもWキャストで、LENさんの相手役となる野呂佳代さんも私とは全く違うタイプなので、また別の作品のように楽しめると思いますね」
最後に、本公演への意気込みを聞いた。
木村「私も今、自分がまとっていたものを落としているような状態です。『パルレ』は洗濯という意味であるように、今までの自分の経験とか、そういうものを一度ゼロにして、お芝居を始めたころの素直な気持ちに戻してやっていけたらいいなと思っています。あれ? 木村花代ってこんな人だっけ?と思って観てもらえたらいいなと思います!」
木村花代をはじめ、個性豊かな実力派俳優たちが、ソウルの路地裏でパワフルに生きる人々を熱演するミュージカル『パルレ』。そんな彼らの姿からは生きる力はもちろん、日常生活の素晴らしさ、尊さも感じられること必至だ。ライセンス契約によって韓国以外では初の上演でもある。この機会をどうぞお見逃しなく!
(2012年2月15日更新)
▼2月17日(金) 18:30
[出演]木村花代/野島直人/川島なお美/大鳥れい/安福毅/上田亜希子/奈良坂潤紀/三波豊和
▼2月18日(土) 12:00
[出演]野呂佳代/レン/川島なお美/大鳥れい/安福毅/上田亜希子/奈良坂潤紀/三波豊和
▼2月18日(土) 17:00
[出演]木村花代/松原剛志/川島なお美/大鳥れい/安福毅/上田亜希子/奈良坂潤紀/三波豊和
サンケイホールブリーゼ
全席指定-8300円
[劇作・脚本][演出]チュ・ミンジュ
[劇作・脚本]保坂磨理子(上演台本・歌詞)
[演出]鈴木孝宏(共同演出)
[音楽]ミン・チャンホン
[美術]ヨ・シンドン
※未就学児童は入場不可。
[問]ブリーゼチケットセンター[TEL]06-6341-8888
当日券は要お問い合わせ。
韓国オリジナルミュージカル『パルレ~洗濯~』公式サイト
http://www.bballae.puremarry.com/
■地方出身の気の強い娘ナヨンと、モンゴルから出稼ぎにきた青年ソロンゴの物語
ソウル暮らし5年、路地裏のアパートに引っ越してきた27歳のナヨンは故郷から出てきて、書店で働きながら暮らしている。ある日、洗濯物を干しに上がった屋上で、隣のアパートに住むモンゴル人青年"ソロンゴ"と出会う。風で飛ばされた洗濯物によって出会い、ぎこちない挨拶か始まった二人の距離が、少しずつ近づいていく。
■愛嬌たっぷりの“ヒジョンママ”の物語
東大門で下着屋をする”出戻り”ヒジョンママ。恋人”クさん”との喧嘩の毎日に憤怒しながらも、今日もまた”クさん”の下着を洗濯しながら悩みを打ち明ける。
■ソウル暮らし45年大家のおばあさんの物語
ナヨンとヒジョンママが住んでいるアパートの毒舌の大家のおばあさん。洗濯機を買うお金を惜しんで、冷たい水で手洗いし、段ボールを拾って運びながら商売し逞しく生きているが、洗濯ひもになびく白いに布おむつを見ながら、今日もため息をつき涙を流す。
■隣近所みんなの物語
今日も社長の顔色をうかがう社員、買掛金に心を痛めるスーパーのおじさん、スンデ(春雨の腸詰め)のようにギュウギュウ詰めのバスの運転手、今日を生きる市井の人々の情愛あふれる人生が洗濯とともに描かれる。
(公式サイトより)
きむらはなよ/11月28日生まれ、大阪府出身。1997年、劇団四季入団。ダンサーとして初舞台を踏む。その後ファミリーミュージカルの主役に抜擢され、以降、主演女優として着実にキャリアを踏む。数々の作品でヒロインを演じ、シリアスからコメディまでこなす幅広い演技力と、タップやダンスで高い評価を得る。主な出演作品は『キャッツ』グリドルボーン役、『オペラ座の怪人』クリスティーヌ役、『美女と野獣』ベル役など。2010年、劇団四季退団。本作が退団後初めての舞台出演となる。今後は舞台だけでなく映像分野や歌手としても活躍を目指す。