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ホーム > インタビュー&レポート > 口上、落語、そして爆笑歌舞伎と盛りだくさんの内容で お届けする『極つき 染丸の会』についてはもちろん 入門からこれまでの歩みを語った林家染丸インタビュー!

口上、落語、そして爆笑歌舞伎と盛りだくさんの内容で
お届けする『極つき 染丸の会』についてはもちろん
入門からこれまでの歩みを語った林家染丸インタビュー!

1966年、三代目林家染丸に入門。三味線や日本舞踊の素養を生かし、お囃子で彩る華やかな落語を得意とする四代目林家染丸。林家一門の総帥として日々、落語はもちろんのこと、寄席囃子の後継者育成や大学での落語授業など、若い世代へ落語の魅力を伝える教育者としての一面も併せ持つ、上方落語界を代表する噺家の一人だ。その染丸が12月16日(金)、なんばグランド花月で落語会を開催する。その名も『~噺家生活四十五年 染丸襲名二十年~極つき 染丸の会』と、入門と襲名それぞれ節目を迎えた2011年を締めくくる、何ともおめでたい会だ。そこで、この落語会についての意気込みや、45年に及ぶ噺家人生についてなど、染丸にその心境を聞いた。

――12月16日に、噺家生活45年、染丸襲名20年を記念して「極つき染丸の会」が開催されます。月並みですが、まずは45年の噺家生活を振り返っていただきましょう。

林家染丸(以下・染丸)「私の場合はホンマにしんどいことや苦しいことが色々ありましたけど、楽しいことの方が多く思い出されます。やっぱり人との出会いというか、『あの人がいたから今の私があるねんな』てなことを思います。だから、出会いをプラスとして考えて計算したら、やっぱりプラスの方が多いなと。…そう思うような45年(笑)」

――染丸さんは入門されて2年足らずで三代目の師匠が亡くなられました。さらに、兄弟子の四代目小染さんも急逝。まさに孤軍奮闘で頑張っておられた印象があります。心が折れそうな時に、原動力やエネルギーになったものは何でしょうか?

染丸「その時にどういうことを考えるかというと、『もし辞めて何になんねん?』、『何がしたいねん?』と。自問自答したら、やっぱり“落語家”ってなるんです。自分のやりたいことをしながら、全部ええことばっかりで生きてる人なんて、まずいてませんからね。やっぱり嫌なこともせなイカンやろうし。そこで、いつも『もうちょっと、やろうか』という結論に達しましたね」

――周囲の支えも、励みに変えてこられた? 

染丸「自分一人やったらとても乗り切ってこられなかったんですが、諸先輩方が言うてくれたことが僕の心に凄く響いたりね。或いは、『弟子にして下さい』と言うてきた奴がおると。落語が好きで来た奴には何とかしてやろうという気になりますし、何も知らんと噺家になりたいと来た奴には、こいつにホンマの落語の楽しさを教えてやろやないかいと思いますしね。知らん間に一門も人数が増えてきましたので、こんだけの弟子がおるっていうことも一つの私の力の源ですよね」

――四代目染丸を襲名して20年。当時は、どのような染丸像を目指しておられましたか?

染丸「最初、周りから言われたんは『先代とはえらいイメージが違うな』。うちの師匠は随分肥えてましたし、それは小染にも重なってたわけですよ。だから『向こうが継いだらピッタリやったのに』という感じも垣間見えたんです。そこで考えたのは、うちの師匠も二代目染丸とはイメージが違う。二代目は芝居や音モンが好きでね、選ぶ落語もハメモノの入るような噺が多かったわけです。うちの師匠はそういうのはあんまりやりませんでしたし、太鼓も打ちませんでした。芝居も器用な方じゃなかった。イメージが違いますやん。そんなら、同じイメージでなければならないということはないと。だったら、私は私の染丸というものを作っていかなければいけない。そう思い到って頑張りました」

――襲名の話は、すぐに決心がつきましたか?

染丸「継ぐいうたら私しかいてませんから継がんならんのですけど、果たして私に務められるもんか、私がなってもええもんかと、なかなか決心がつきませんでね。けど、師匠の名前が世間に忘れられていくっていうのが、物凄く寂しかったんですよ。最終的に(笑福亭)仁鶴兄さんに相談して。すると『色々いう人もあるけど、気にせんでええねん。一番大事なのは、君が継ぎたいかどうか。それだけや。決心したら色々応援してあげる』と。それが一番力になりましたね。襲名披露の口上の時は、僕が一番並んで欲しかった師匠方がズラッと並んでくれて。それぞれ『おめでとう』という気持ちを持っててくれてはったんで、嬉しかったですね。この師匠方のためにも、恩返しをせなイカンなと思いました」

――今ではお弟子さんが13人になりました。

染丸「とにかく心に決めたのは、色んな会があるけど、その会のプログラムの中に林家某というのが必ず入っているという一門にしたかったんです。おかげさんで随分数が増えましたんで、どんな若手の会でも林家某が1人か2人は必ず入ってるという風になってきました。それは、やったー!と(笑)」

――そして、今回の『極つき染丸の会』。いかにも染丸さんらしいプログラムですね。

染丸「僕は、あんまり何周年とかやるのん嫌いですねん。45年もやっててそんなんかい?と言われるのもアレやし、年もバレるしね(笑)。それを弟子たちが『やんなはれ、やんなはれ』と言うんですよ。やるからには、僕らしい賑やかなものにしたいなと」

――2部構成で、第1部は桂三枝さん、月亭八方さん、宮川大助・花子さんという豪華なゲストを迎えての口上で幕開きです。染丸さんは『淀五郎』を披露されますが、この噺の主人公は『忠臣蔵』のお芝居に大抜擢された歌舞伎役者ですね。

染丸「会が偶然にも討ち入りの2日後になったんで、季節とピッタリ。これまでは、だいたいハメモノ入りの陽気で派手な噺が多かったんですけど、今回は人情噺系のものをやってみようかなと。今そういう系統の噺で何が一番やりたいかっていうたら、このネタが好きなんですね。噺家の生き様にも繋がる共通点がありますし」

――何か心境の変化になるキッカケがありましたか?

染丸「世間がこんなんですから、ヘラヘラ笑ろてるような時代じゃないなと。笑いはもちろん大事ですけど、お客さんが笑った後に何か心にほのぼの感が残るような、そういう落語が今やりたいんですわ。ホッとする、心に沁みる、という題材は落語の中にいっぱいありますし。トシのせいかも分かりませんが、今はそういうネタを選らんでしまいます」

――今回の『淀五郎』には、どんな工夫が?

染丸「好きなもんで前から何度もやってきましたが、今回はかなり工夫を加えてバージョンアップしてやりたいなと。芝居のテクニックがどうこうという話もいっぱい入ってるんですけど、それだけじゃなくて、人間・淀五郎にスポットを当てて『胆が大事や』というのをクローズアップしたいんですよ。それは落語も同じ。テクニックで笑わせることも大事なんですが、やっぱり人間を描けないと落語ではない。そういうところで、この噺は非常に共感できるんですね。でもね、自分の大きな会でやる時には、必ず『今やってるままでええのかな』と考えますねん。やり慣れたものをそのまま出すんじゃなくて、自分が発見した新しい何かを入れてみるとか、もういっぺん練り直してみるとか。そうでないと、ネタがドンドンド傷んでくる。それに、トシと共に自分の考え方も変わってきますやんか。自分の主張とかメッセージとかがないと、絶対にダメですからね。メッセージ性というものが落語のような古い芸でもとても大事やと思うんです。この噺をやり始めた40代の時とは違って、今ならこれを主張したいというのがあるんで、それを考えてもう1度やり直すという。落語はなんぼでもやり直せるんです。自分一人ですから凄く自由ですし、色んな工夫もまたできる。それが落語の一番の魅力じゃないかと思うんですよ」

――第2部では爆笑歌舞伎を上演されます。“爆笑歌舞伎”は染丸さんの独演会ではお馴染みですが、なぜ始められたんですか?

染丸「普通の独演会のスタイルでは物足りない。何かお得感をと。落語だけやなくて、いわゆる大喜利をつけるようなもんですね。普段見せんようなものを、独演会やから見られますよという。まぁ、私がやりたいというのが一番大きいんですけど(笑)」

――今回の出し物は「仮名手本忠臣蔵~お軽勘平道行」。天満天神繁昌亭3周年の際にも、染丸さんがお軽、三枝さんが勘平、八方さんが鷺坂伴内という同じ配役で上演されました。

染丸「どっちも気ぃよう乗ってくれたんです。ずっと一緒にやってきた仲間でもありますし、2人とも割とそういうことを嫌いなようでいて好きなんですねよ(笑)。今回の舞台は、まず八方ちゃんがうちの弟子が扮する花四天を引き連れて出てくるんです。コントチックなシーンで、八方ちゃんの一番面白いとこを見てもらおうとね。ただ、最低10分はもたしてくれと。というのは、私の化粧の時間があるから(笑)。ひとしきり笑ろてもらったら浅黄幕がパラッと落ちて、そこに浮世絵のような美男美女が立ってるという(笑)」

――新たな演出はお考えですか?

染丸「立ち回りも、今回は趣向を凝らして3周年の時とは違うようにしてます。というのが、立ち回りは全部勘平がやるんですよね。それでは、私はどうなんねんと。何せ私の会ですからね。そこで、勘平と交代してお軽も立ち回りをやろうと(笑)」

――ズバリ、爆笑歌舞伎の見どころを教えてください。

染丸「そら、幕がパラっと落ちたところ(笑)。参考にしてるビデオが菊之助と海老蔵ですから、それになるべく近づくようにしたいなと。ただ、どんなハプニングが起きるか分かりません。出たとこ勝負。そこが一番の見どころじゃないですか。そういう時に我々が機転を利かしてどう処理をするかという。ですので、真面目に鑑賞してはいけません(笑)」

――では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。

染丸「今現在の染丸はこんなんです、というのを見ていただきたいですね。きっと最初から最後まで楽しい舞台をご覧にいれることができると思いますので、是非お越しください」

(取材・文/松尾美矢子、撮影/大西二士男)


 

 




(2011年11月21日更新)


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●公演情報

『~噺家生活四十五年 染丸襲名二十年~極つき 染丸の会』

発売中

Pコード:416-375

12月16日(金)19:00

なんばグランド花月

全席指定-3500円

[出演]林家染丸/桂三枝/月亭八方/宮川大助・花子/林家染二/林家うさぎ/他

※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。車椅子の方はチケット購入前にチケットよしもとコールセンター[TEL]0570(041)356まで要問合せ。出演者変更の場合あり。

[問]チケットよしもとお問合せ専用ダイヤル[TEL]0570-036-912

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