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天国へと続く階段を歩きながら記憶の断片を
描いてゆくロード―ムービーのような舞台に

10月1日(土)よりHEP HALLで上演されるsunday『ハイ/ウェイ』。本作は、死んでしまった一人の女性が死後、天国へと続く階段で自分がなぜ死んでしまったのか、途切れ途切れの記憶をよみがえらせながら、少しずつ積み重ねていくというストーリーだ。途中、彼女の死と関わりのある男も出てくるが(もちろん彼も亡くなっている)、男もまた自分の死んだ理由は忘れているのだった。そんな男女を役者7人が演じてゆく。

 

「役者7人で、一人の人間の頭の中を描いていくんですが、役者は出ずっぱりで、ずっと階段を歩きながらの独白が続きます。中には会話もあるんですが、わりと不思議な感じの世界観かなとは思います」と、sundayの主宰であり演出のウォーリー木下(以下、木下)。
 
男と女の記憶の断片を紡ぎながら、やがては大きな絵を描いていくという。
 
木下「パズルみたいな作風なんです。最初は全然、わからないというか、小さいところを見せられるので『一体これは何なのか』と思われるでしょうけれども、徐々にその点がつながって大きくなって、最終的には1枚の絵になるという仕組みです。そうやって1枚の絵にしたときに、ピースが足りない人もいると思うんですけど、それはそれでいいかなと僕は思っています。お客さんに言葉を投げて、その言葉から勝手に空想して、輪を広げていってもらえたら。たぶん、最終的に観ている絵は100人いたら100人とも違うでしょう。もちろんある程度のコントロールはしますが、そういう実験もしてみたいなと思っています」
 
今回の舞台では「階段」がその世界観を表す上で重要な役割を担う。
 
木下「見せ方として錯覚がすごい好きで、『ここがどこなのか』とか、上がっているのか降りているのかわからない状態を表現できたらいいなと思っています」
 
ちなみに、この階段、稽古では“エア階段”を使っていたという。実際の運動量は約60階の高層ビルを上がるほどになるのではと予想する木下。役者にとって相当な運動量だ。
 
木下「sundayの前回公演『サンプリングデイ』は、100人ぐらいのキャラクターが出てきて、ある一日の話をやったんです。で、何となくその時の反動という感じで、今度は登場人物を一人か二人にしたいなと思いました。それも天国に向かう途中のロードムービーみたいな感じでできないかなと。ただ、ロードムービーを実際に舞台上でやるのは難しい。場所は一つだけだし、ずっと歩いていてもその場歩きみたいになるし、その場歩きで見せるのも今さらな感じだなと考えていたときに、複雑に入り組んでいる階段があったら永遠に歩き続けらるなと。場所もどんどん変わって、ロードムービーに合うのかなと思って。ずっと歩き続けなくちゃいけないので役者には大分付加をかけますけども…。まあ、役者はスポーツだと思って演劇をやっているところがあるので(笑)。でも、多分、終わるころにはガクガクになるんじゃないでしょうか」
 
では、本作の見どころはどういうところだろうか?
 
木下「全編を通してアンサンブルになっていて。男役、女役、関係なく、役者7人で一人の人間の記憶や思い出を演じ続けます。そこには音楽的な要素やダンス的な要素もたくさんあって、それをこの舞台美術の中で行います。演劇にちょっと堅い感じのイメージや、まじめなイメージを抱いている方もいると思いますが、ライブパフォーマンスみたいな感じで観にきてくれると楽しめるんじゃないかと思いますし、アート系が好きな方も、こういう空間なので楽しんで観てもらえるんじゃないかなと思います」
 
sunday『ハイ/ウェイ』は、10月3日(月)までHEP HALLで上演。エッシャーのだまし絵のような世界観で繰り広げられる一人の人生をぜひ、目撃してほしい。



(2011年9月30日更新)


Check
舞台模型。HEP HALLにこのような階段のセットが出現。観る場所によって見え方も変わってくるとか。

公演情報

sunday play #4『ハイ/ウェイ』

10月1日(土)15:00 / 19:00
10月2日(日)13:00 / 17:00
10月3日(月)15:00 / 19:00
※受付開始は開演の45分前、会場は30分前

HEP HALL
06-6366-3636

全席指定 前売3,500円/当日4,000円
全席指定 学生2,500円
(前売・当日共、sundayでのみ取扱)

※学生チケットは当日受付。要学生証。
※当日券は残席数に応じて販売。

[問]タツタ[TEL]090-3970-9916

sunday公式サイト
http://www.sunday-go.jp/

プロフィール

sunday

'04年、劇団☆世界一団からsundayに改称。「今面白いと思うことを、遊びながら作る」というメッセージ性の少ないカンパニー。'10年7月には第3回公演『サンプリングデイ』を大阪・精華小劇場で上演した。来年3月には吹田メイシアターのメイシアタープロデュース show劇場vol.6に登場、怪談の名作『牡丹灯籠』を上演する。また、演出家のウォーリー木下は、ノンバーバル・パフォーマンス集団オリジナルテンポも手掛け、同カンパニーのスタッフらと結成したお絵かき部「おかきのみ」の作品をぴあ関西版WEBで連載中。また、大阪発ノンバーバル・パフォーマンス『ギア』の演出も手掛ける。