ホーム > インタビュー&レポート > ニキータ・ミハルコフ監督の映画『太陽に灼かれて』が 栗山民也演出、成宮寛貴主演で日本初の舞台化へ!
―― まず、作品『太陽に灼かれて』への出演を決めた際の心境を聞いた。
成宮寛貴(以下、成宮)「今年で俳優人生11年目を迎えて。また初心に帰ってといいますか、再スタートを切るような、ここからまた10年ぐらい、この仕事をやっていくんだなということを考えたとき、ここから10年間やっていくために、どんな俳優になるかというビジョンを考えたんです。そういうことを考えたときに、僕は4年間、舞台から離れていたんですが、もう一度舞台に立とうと思いました。今はネットドラマ等も普及してきて、映像で観るエンタテインメントってたくさんありますけど、そういう時代だからこそ生のお芝居の良さ、生の感動ってすごいなと痛感していて。栗山民也さんというすばらしい演出家と組めるのも大きな魅力だったし、ミーチャというキャラクターにもすごく惹かれて、いろんな偶然が重なって、この役をお受けしようと思いました」
―― 作品に対しても以下のように語る。
成宮「ミーチャのキャラクターと、1930年代のロシアという時代背景…、人々が自由に生きられなかった、抑圧された世界に惹かれましたね。そういう中でも人を愛することや人を思う気持ちがものすごく強くて。でもそれが、逆の方に向いてしまうという切なさもあって。今では非常に考えづらい環境ですが、そういう特殊な状況だからこそ、すごくドラマチックなお話だと思います」
―― では、ミーチャという人物をどのように見ているのだろうか。
成宮「コトフ大佐一家の和やかな雰囲気の中にミーチャという人物が突然現れて、最初は違和感あるんですね。みんなで踊ったりする賑やかなシーンでも一人だけ、変な感じというか。みんなは笑っているのに、一人だけ心が死んだような表情をしていて。そして最後にはミーチャの復讐劇が始まるんですけど、死を覚悟した男の何とも言えないうつろな表情がすごくミステリアスで、色っぽく、そして儚く切ない。そのキャラクター、その人物像にすごく惹かれました」
―― 演じる上で留意していることとは?
成宮「大家族がワイワイやっている中で一人、ミーチャだけが何かを抱えているという、お客さんには最初から違和感を持ってもらわなくちゃいけないんですけど、映画では表情をクローズアップするなどして非常にわかりやすく表現されているんですが、舞台は完璧に俯瞰で観るものですから、その辺をどうやって表現するかが僕のテーマです」
―― ミーチャはピアニストでもある。劇中ではピアノ演奏や、タップを踊るシーンも登場するが、そのあたりの役作りはどうだろうか。
成宮「ピアノは子どもの頃にやっていて、1年前にもピアノを買って弾き始めていたんです。なので、作品で弾く曲はマスターしました。僕は楽譜が読めないんです。先生が弾いた音を覚えるタイプなんですが、それで全曲覚えました。タップはまったく初めてですね。初めてタップを見たときは、魔法のように見えて…。タップってステップが決まっているんですけど、ステップのスピードを上げることが難しくて、苦戦しています(笑)」
―― そして共演者についても聞いた。
成宮「鹿賀さんとは初めてご一緒しますが、すごく楽しみです。鹿賀さんは舞台の上での存在感がものすごいので、その存在感に負けないお芝居ができたらいいなと思ってます。水野さんとも初めてだし、非常に楽しみです」
―― また、“栗山民也演出作”への心境はというと…。
成宮「僕がまた舞台をやりたいと思ったタイミングで栗山さん演出の作品にオファーしていただいて、すごく光栄なことだし、ご縁も感じています」
―― ここで、4年間、舞台を離れていた理由を聞いた。
成宮「僕にとって舞台は修行という感覚がちょっとあったんですね。舞台が始まると生活が変わるんです。体調管理ということもあって、上演中は劇場と家の往復で友達とも一切会わないし、お酒も飲まない。電話もほとんど出ません。家の中も出入りするのはベッドルームとお風呂だけという生活になるんです。で、一時期、自分の芝居の殻がぶち破れなくて、舞台ばっかりやった年があったんですが、そこでやり過ぎちゃったんですね(笑)。僕は仕事とプライベートの両方がないとダメなんですけど、舞台をやり過ぎてプライベートがまったくなくなってしまって。そのことがきつく感じたことがありまして。それで“舞台は当分、いいかな”って思って、単純に“やりたい!”と思わなくなったんです。決定的な何かがあったというわけではありません」
―― そして4年というブランクもどこ吹く風、舞台『太陽に灼かれて』に出ることが楽しみで仕方がないと言う。俳優人生11年目。これから先の役者としての目標を聞いた。
成宮「台本を読んだ時点である程度、結果がわかるものには出るのはやめようと思ったんです。自分のキャラクターが最大限に生かせて、自分の武器が使えて、なおかつ、どうなるかわからないような、未知数でちょっと怖いと思う刺激的な作品をやっていきたいと思っています。そして、攻めていきたいなとも」
4年ぶりの舞台出演を決めた理由は他に、ファンからの声援も大きかったと言う。舞台がデビュー作だっただけに、舞台ファンも多く、握手会などで「また舞台に出てくださいね」と何度も声をかけられたそうだ。その声援が背中を後押ししたとも。それだけに、“舞台俳優”としての成宮は未見、という方にもぜひ観ていただきたい作品だ。
なお、舞台『太陽に灼かれて』では、ミーチャとコトフ大佐との対決シーンも、映画版とは異なる描き方をしているとのこと。この点も大きな見どころとなりそうだ。
『太陽に灼かれて』
発売中
Pコード:411-851(公演日3日前まで販売)
▼8月19日(金)~21日(日)
金18:30
土日12:00/17:00
兵庫県立芸術文化センター 中ホール
全席指定9500円
[脚色]ピーター・フラナリー
[演出]栗山民也
[翻訳]常田景子
[出演]成宮寛貴/鹿賀丈史/水野美紀/美山加恋/他
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■06-7732-8888
チケット情報
(2011年8月 1日更新)
1936年、モスクワ郊外の美しい村。ロシア革命の英雄コトフ大佐は、若く美しい妻マルーシャ、娘ナージャと共に平和な日々を送っていた。ある夏の日、彼らの前に一人の男が現れる。男の名はミーチャ。彼はマルーシャの幼馴染であり、将来を約束した恋人だった。突然の生還を歓迎するムードにおいて、コトフとマルーシャはミーチャの存在を不気味に感じていた。そんななか、ミーチャは自分が姿を消した真相を、まだ幼いナージャに語り始めたのだった…。スターリンの大粛清という時代を背景に描いた、愛憎入り乱れる壮絶な人間ドラマだ。
なりみやひろき●'82年、東京都出身。'00年、宮本亜門演出の舞台『滅びかけた人類、その愛と本質とは…』でデビュー。以降、舞台、映画、ドラマ、CMで活躍する。舞台出演作は『ハムレット』『KITCHEN』『お気に召すまま』(蜷川幸雄演出)、『マダム・メルヴィル』(鈴木裕美演出)、『魔界転生』(G2)など。2012年初春に主演映画『逆転裁判』が、秋には『のぼうの城』が公開予定。