インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 6月の大阪松竹座に、かつての道頓堀の賑わいが甦る!!  藤山直美&坂東薪車の名コンビが贈る新作舞台を上演!


6月の大阪松竹座に、かつての道頓堀の賑わいが甦る!! 
藤山直美&坂東薪車の名コンビが贈る新作舞台を上演!

大阪松竹座の6月公演は、古きよき時代の道頓堀を舞台に、笑いあり、涙ありの感動物語『 夢物語 華の道頓堀』を28日まで上演中。主演は、'09年の『銀のかんざし』(大阪松竹座)、'10年の『春風物語 恋の呂昇』(京都南座)に続く3度目の共演となる藤山直美と坂東薪車。いまやすっかり名コンビのふたりが、かつて五座の櫓が立ち並び、芝居街として賑わった道頓堀で生きる男と女の物語を繰り広げる。 その役どころはというと、藤山直美演じるのが旅館の仲居である妙。辛い過去を秘めながら、明るく前向きに、歌舞伎役者の嵐扇之助を支えていく。そして、東京から上方へ、道頓堀の華となるべく芸の道に励む扇之助を演じるのが坂東薪車だ。歌舞伎役者が歌舞伎役者を演じるという点も見どころの本作について、脚本家の佐々木渚を交えて、藤山直美、坂東薪車に聞いた。

―― まずは藤山直美から、芝居の見どころや意気込みを。

藤山直美(以下、藤山)「みんなが芝居を欲していて、お芝居を観ようと五座の櫓が立ち並ぶ道頓堀に足を運ぼうかという、古きよき時代のお芝居なんで、大阪のお客様に喜んでいただける芝居にしたいです。また、古きよき時代の大阪を楽しみ、懐かしみ、またそこで共感を覚えていただいて、心が和んでいただければいいなと思います」

―― 続いて坂東薪車より、見どころや意気込みを。

坂東薪車(以下、薪車)「藤山さんとの共演はこれで3度目になります。昨年は南座におきまして、『春風物語 恋の呂昇』で共演させていただきました。そのときは人形遣いの役でございました。人形遣いは、想像でつくり上げる部分も大きかったのですが、今回は歌舞伎役者の役ということでございまして、ある意味では歌舞伎役者としての真価が問われるとも言えると思います。日々、いい舞台になるように務めてまいりたいと思います。皆様に感動して、笑って、楽しんでいただく、それが一番だと思っております」

―― 脚本家の佐々木渚によると本作は、『銀のかんざし』とはまた異なるキャラクターでふたりを描いているという。『銀のかんざし』での役どころも踏まえて、本作との違いについて聞いた。

佐々木渚「直美さんが演じられる妙という女性は、自分の子供という女性にとって一番大切な人を亡くしています。そのことが妙の言動や選択に大きく影響を与えていると思うんです。『銀のかんざし』のお勝は非常にストレートに自分の気持ちを表す女性でしたが、今回はどちらかといえば控えめに、扇之助の夢を叶えていこうとする女性を書かせていただきました」

―― では藤山は、そんな悲しい過去を持つ女性を演じることをどう受け止めているのだろう。

藤山「難しいですよね。丁稚役で走り回っているほうが楽しいんですけどね(笑)。前川清さんとの『紺屋と高尾』を京都バージョンに変えた舞台で、吉野太夫の役をさせて頂いたんですね。妙はその吉野太夫と『銀のかんざし』のお勝を足して割ったような性格やと自分では思うんです。子供を亡くしたときに、女の人は母性をどういうふうにもって行くのかと考えたとき、この妙にとっては、扇之助さんの夢が叶うことなんでしょうね。この年になったらだんだん、性格とか、生き様とか、送ってきた人生が舞台に現れると思うんですね。今回は新作で、全員が初演ですから、ここからが出発点。あんなことをしてみようとか、ああいうやり方をしようということより、出てきた姿でいいのと違うかなって。そういうふうに思っております」

―― 対して薪車は、役どころである歌舞伎役者をどのように演じようと考えているのか。

薪車「このお話を聞いて、とても自分に近い人物だなと思いました。今まで生きてきた人生を大いに役作りに反映させていきたいと思っております。歌舞伎をご覧になっているお客様にも、役者とはこういう風情があって、言葉遣いをして、生活でと、歌舞伎の世界ってこんなものなのかなと楽しんでいただきたい。また、歌舞伎役者の代表というプレッシャーも感じております。劇中劇で『二人椀久』をアレンジした踊りもありますので、これもまたしっかりやらないといけないと思っています」

―― 坂東薪車を相手役に招いての舞台は、これで3回目となる藤山。過去2回の舞台を経て、薪車という相手役に対してどう感じているのだろうか。

藤山「正直、ぶっちゃけまして、私は喜劇よりも歌舞伎が好きなんです。歌舞伎の役者さんと一緒にお芝居できる、これは私にしたらすごい嬉しいことです。昨年、『春風物語 恋の呂昇』の千穐楽でもお話させてもらったんですけど、血が滲む役者さんはよく見たことあるんですけど、この方は血がしたたるんですよね。そのことにすごく感動させていただきました。そして、坂東竹三郎師匠のご教育というか、それを受継いでおられて、すばらしいなと思います」

―― また、薪車のさらなる魅力と、ふたりで共演することの意味を説く。

藤山「薪車さんはやっぱり、竹三郎師匠の芸養子さんであるということが一番の芯やと思います。やっぱり竹三郎師匠がいらっしゃいましての薪車さんですから、その辺のところは師匠に叩き込まれているとも思います。本当に上方歌舞伎に命をかけて来られましたから。そして私は、喜劇に命をかけてきましたので、上方歌舞伎、そして上方喜劇が融合されていい化学反応が出て、上方ならではのいいお芝居ができればと思っています」

―― 道頓堀という町を舞台にした物語を演じる今回。“地元”だからこその感じることもあるようで…。

藤山「大阪が舞台のお芝居を、大阪で演じるのは難しいですね。大阪で『桂春団治』をやるときも緊張するんですよね。もちろん、大阪のお芝居をしますから、大阪の皆様方に応援していただきたいところはあるんですけども、そのへんはすごくシビアではないかと思うんです」

―― そして、お芝居をすること、そのものについても語る。

藤山「役者は一期一会で、毎日手を抜くことなく、お客様に喜んでいただきたいと思う心を持っているかどうかですよね。常に思うのは、お客様にどう見られて、どう評価されたいか、どれだけ自分の株が上がるんだろうというようなことさえ思わなかったら、お客様は観に来てくれはると思っています。やっぱり芝居の神様にずっと見ていただいてもらってますので、『私利私欲に走っているな、自分の名前を大きくしようと思っているな』と思われたら、芝居の神様は私を絶対応援していただけないと思います。私は一切、そういうことがないまま、ここまで来させてもらったので、何とかお客様に観に来ていただいているのだと、このごろつくづく思わせてもらっています」

『 夢物語 華の道頓堀』は、かつての道頓堀の賑わいを描いた作品だけに、公演中はその雰囲気を少しでも味わえるよう、大阪松竹座において芝居小屋の風情を作り出すという。物語の世界観と同じく、『道頓堀に芝居を観に来た』という感覚も楽しめるようで、こちらの仕掛けにもご期待いただきたい。




(2011年6月 8日更新)


Check

公演情報

「夢物語 華の道頓堀」

▼6月5日(日)~28日(火)
11:00/16:00
大阪松竹座
1等席12600円 2等席7350円 3等席4200円
[出演]藤山直美/坂東薪車/林与一/小島慶四郎/大津嶺子/土田早苗/他

※この公演は終了しました。