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“複合型テクノポップ”を掲げるユニット、
日本人とバングラデシュ人が1stアルバム『TRAFFIC』で描く
異なる文化×異なる感性が交差した新しい風景

日本人のトラックメイカー・田川とバングラデシュ人のテクノDJ・オニムによる“複合型テクノポップ”ユニット、日本人とバングラデシュ人(通称・ポンデシ)。2025年に「黄色と茶色」のリリース以降、ふたりの多彩な音楽性を掛け合わせて「東京とビジネスセンター」、「砂丘(feat. 初音ミク)」など緩やかに楽曲を重ねてきた。そんな彼らが2026年11月11日に1stアルバム『TRAFFIC』を発表する。クラシックの練習曲(HANON)をミニマルテクノに昇華させたオープニング「étude」からDTM制作の孤独と対峙した「きこえる」まで11のストーリーを紡ぐ。まだまだメディア露出は少なめとあって、謎の多い彼らにたっぷりと話を聞いた。ちなみにオニムの日本語は、ただただ普通の日本人レベル。自分のことを「わし」と呼び真摯に語る田川と、テンション高く口調も滑らかなオニム。そのやりとりにも興味深いものがあった。

新しいものに挑戦したい気持ちを
"複合型"と言いたいと思った



――日本人とバングラデシュ人、まだまだ謎多き部分だらけだなぁと思っているのですが、まずおふたりはどのように出会ってなぜ一緒にやることになったのでしょうか。

オニム「高校が一緒だったんです。当時はお互い音楽の話もしなかったし純粋に同級生だったんですけど、大学3年くらいの時にお互いが音楽をやっていると知って再会したんです。その後大学を卒業してから一緒にやろうという話になりました」

田川「わしはボカロを使ってひとりで完結するような音楽をやっていたんです。コロナの時期にパソコンを買ってそこから4年くらいですかね。でもひとりでやっていてもそれを世の中に出すきっかけを作れずにいました。どうしようかなと思っていた時にオニムがトラックを作っているとSNSで知って。すごくイケイケどんどんな人だし、一緒にアーティストとして活動できる気がして誘いました」

――同級生としてSNSでは繋がっていたんですね。

田川「お互いが何をやっているかくらいはぼんやりわかっていたくらいで。ただ、高校の同級生だからこそ近況を知っていた感じですね」

――田川さんがオニムさんと一緒にやりたいと思った一番のポイントはどこだったんですか?

田川「会って話す中で、彼の生きるスタンスがすごくいいなと思ったんです。かなり自信家なんですよ。わしは逆に自信がなくて」

オニム「ネアカなんだよねっ。僕!」

――月と太陽みたいですねぇ。

田川「そういうところに惹かれました。引っ張ってもらえるんだろうなと思って。そうしてもらえたら自分がラクになる部分もあるじゃないですか」

――制作に没頭できるというか。

オニム「そうそう、雑音は全部僕が止めるんで!」

――オニムさんは田川さんに声をかけられていかがでしたか?

オニム「僕はインストのシンプルなトラックを作っていたので、なぜ声をかけられたんだろう? と思っていました。でも彼が、そのトラックにポップスを乗っけたら面白いよって言ってくれて。僕が作っていた曲はもう自分の理解の範疇に収まっていて、そこを出た方が面白さは出るとは思っていました。もっと面白いことをやりたくて、即承諾でしたね」

――結成してやっていきたい音楽については、どう考えていたのでしょう。

オニム「正直言うといろんなスタイルをまだまだ模索している段階ではあります」

田川「そこはまだ定めなくてもいいのかなと思っていて。1カ月後ですら出てくる音楽が変わるんだということを実感しているので、その時その時に2人が出したいものをパッと気持ちよく出していこうかなという気持ちです」

――ただ日本人とバングラデシュ人が取り組む音楽について「複合型テクノポップ」というキーワードを掲げているじゃないですか。この言葉がどんな経緯で生まれたのかも気になります。

オニム「僕はジャンルを絞ることが面白くないかなと思っていて、いろんなことをやっているよということを示したいと思いました。いろんなもの、新しいものに挑戦したい気持ちを"複合型"と言いたくて」

田川「最初はキラーポップって言っていたんです。新しい言葉を付けたくてキラーポップと言っていたけど、テクノDJが音楽を作るというニュアンスも入れたくて今の言葉に落ち着きました。ただ、何にも縛られないというのは結成当初から向き合ってきたことのひとつです」

オニム「とにかく僕が型にハマるのが好きじゃないです。型にハマるのはもったいないし、はい〜僕の場所そこじゃない〜! って思っちゃいます」

――あはは! いいですねぇ。その複合型テクノポップという言葉が見つかったことで、逆に自分たちを自由にした部分はありました?

オニム「かなり自由になったと思います。テクノっぽくするというより自分たちっぽくすることが大事だと思うようになったし。それはこのアルバムの『TRAFFIC』の制作を通じて考えるようになったかな」

――その言葉はリスナーにも届いている実感はありますか。

オニム「届いているなと思います。複合型テクノポップと掲げることで、みんなそういうふうに認識してくれて。ラジオに出演した時に山崎怜奈さんが"ビートがテクノっぽいですね"って言ってくれて。あぁ、やっている音楽の中にちゃんとテクノを感じてくれているんだなあと実感しました」

――ちなみにポンデシがどのように制作を進めているのかも、興味あります。

オニム「作詞作曲が完全に完成したデモが僕の手元に届くので、どうしたらポンデシっぽくなるかどこをテクノっぽくできるかを考えてアレンジして、それをまた彼が最後に戻してアレンジしてもらうんです」

――田川さんが最後にもう1回アレンジを加えるんですか?

田川「し直さないとまずいんで(笑)。テクノすぎるとか、バッティングしているとかを調整します」

――アレンジ面で言うとオニムさんはバキバキにテクノを通ってきた分、ポップにするってめちゃくちゃ難しくないですか?

オニム「めっちゃ難しいです。今も難しいと思ってます」

――その辺も田川さんが最終調整をするんですか?

田川「制作の時は特にテクノとかポップスっていう意識をしていなくて。とにかく曲としていい感じに仕上げることを重視しているので、曲によってはインストパートがなくても、逆に1曲を通してインストになっていてもいい。オニムのアレンジ次第でその方向も変わります」

オニム「その辺は結構流動的かもね」

――曲をふたりで作り上げていくみたいなこともあるんですか。

田川「最初の方はありました。「黄色と茶色」っていう曲とかですね。今はお互いリモートで作っていく方法です。働きやすい職場になりました(笑)」




テーマは「生きていく中で決して
欠かすことのできない人との交わり」



――日本人とバングラデシュ人の初のフルアルバム『TRAFFIC』が11月11日にリリースされます。初めてのフルアルバム制作は、どんなところから出発したのでしょうか。

田川「最初はタイトルの『TRAFFIC』という言葉を思いつきました。この言葉に託したかったのは、生きていく中で決して欠かすことのできない人との交わりです。それについて歌っているものはどれだろう? と数あるデモ曲の中からピックアップしていきました」

――『TRAFFIC』というタイトルに行き着いたのは...?

田川「実は最初はマンションっていうタイトルにしようと思っていたんです。実際マンションに住んでいて隣の部屋の人とも交流があったんですけど、それが面白いなと思って」

――今時隣人と交流するっていうのも都会では珍しいですね。

田川「そうですね。マンションは箱の中にいろんな人が共存していて、深く関わる人もいれば全く関わらない人もいて、そのアンバランスさがすごく面白いと思いました。でもそうこうしている間に「Express Train」という曲ができてしまって、マンションはちょっとなぁと」

――列車とマンション...確かにちょっと遠い感じもしますね。

田川「マンションという言葉で重視していたのは交流だなと思ったので、マンションに代わる交流を示す言葉はないかなあということでTRAFFICに辿り着きました」

――交流という言葉が歌詞に活かされるのは想像ができるのですが、音にも活かされたりしましたか?

田川「音はそもそも制作の過程が面白い交わりの宝庫で、テクノとポップスが対極にある中でそれをひとつの曲として成立させること自体が交流だなと思います。アルバム全曲歌ものではなくてそこにインスト曲を入れてみるとか、そういうやり方で交流を表現できたらなと考えていました」

オニム「それこそ交流って、ポンデシらしいキーワードですよね。ふたつのバックグラウンドがあるものが交わってTRAFFIC。テクノっぽい感じもありますし。ふわっとした概念ではあるけど、すごく納得しました」

――制作中はどんなモードで進んだのでしょうか。

オニム「"僕的には"ですけど、1曲目の「étude」から7曲目の「Local Train」までは感情が一緒なんです」

――感情が一緒?

オニム「8曲目以降の「エスエル」、「ドライブ」、「ワンアンドアナザー」は明らかに僕の好みが出ている気がしていて、ちょっとブレイクとかが好きだったんだろうなという感じが出ています。「ワンアンドアナザー」はデモの時点でちょっとブレイクビーツの様相が入った曲でしたし。逆に前半の「黄色と茶色」や「東京とビジネスセンター」はかなり早い段階で完成していたので、他の曲とのギャップがすごくあるなと思います。その2曲はテクノとピアノの融合を頑張ったなぁという感じがあります」

――この制作中だけでもモードが変わっていたんですね。

田川「そうですね、それぞれの曲の中で完結する音選びは意識しましたね」

――個人的には列車シリーズ3曲「Express Train」と「Local Train」、「エスエル」がすごく聴きごたえがありました。アルバムらしいというか3曲を順に聴いていくことの楽しさがあったというか。

田川「そもそも「Express Train」と「Local Train」は連作であり、対極でもあるんです。「Express Train」は元々あった曲で、それに合わせて雰囲気を変えた曲が欲しいなと思って「Local Train」を作りました。「エスエル」はオニムからペッと飛んできて」

――飛んできた(笑)。そもそもですが「Express Train」と「Local Train」は連作であり対極でもあるのなら、2曲だけでも成り立ったのでは? と思うんです。でもそこにもう1曲加えたのはなぜだろう、という疑問も生まれます。

オニム「結論から言うと、「エスエル」は完全に独立した曲ではあるんです。これだけタイトルをカタカナにしているのも、そのためです。僕がこの曲を作ったのは...単に作りたくなったからというだけなんですけど(笑)、「Express Train」と「Local Train」を聴いて思いついたのが蒸気機関車だったという...」

――「Express Train」と「Local Train」に触発されたんですね。

オニム「そうですね、気持ち的に。とにかく「エスエル」は「Express Train」と「Local Train」と比べて壮大な曲になるように作ろうということだけ考えました。音でいうと、ハットがたくさん複雑に入っていると壮大な音になるかなと思ってやってみたり」

――ただ2曲に対して「エスエル」を加えた3曲になったことで、世界観は大きく広がった気がします。

田川「「エスエル」は最終のアレンジでは削るどころか逆にやりすぎました。乗っけるくらいのイメージで」

オニム「俺、すげえ満足しちゃって!」

田川「歌詞を乗せて、歌を生かすような感じにしました。その点で言うと、もう削るとか乗っけるとかではなく、音をどう使うかを突き詰めて、再構成するぐらいの感じでいった印象もあります。オニムからデモが届いた時点で「エスエル」っていうタイトルもあったので、お題と共に音がついたおもちゃが手元に届いたような気がして。そのおもちゃを使って、自分の持っている理論や耳の力を借りて曲を形作っていった感じです」

――ちなみにこのアルバムの中で軸になった曲というと「エスエル」ですか?

田川「このアルバム内で言うと...やっぱり「Express Train」ですね。最初のシンプルなデモの時は自分がやりたい音楽というか、ベースとキックだけで心地よく聴こえるようなものだったんです。リスペクトしているキアスモスというアイスランドのエレクトロユニットの音作りに憧れて、どうすればあんな音になるんだろうという研究のために作ったのが最初のデモでした。そういう意味で他の曲よりも思い入れは強いですね」

――今回のアルバムはサウンドデザインにDolby Atmosミックスを用いて、音の配置や移動が立体的に表現されているとのことなのですが、これはどういう環境で聴くのがベストなのでしょうか。

オニム「Apple Musicで対応しているイヤホンを使って聴いていただくと、すごく音の体験ができるようになっているんです。Apple製品を使っている人なら設定をオンにしてもらって、Dolby対応のイヤホンを使ってもらえると僕らが想定した音をお楽しみいただけます」

――その"想定した音"を言葉で表現することってできますか?

オニム「うわっ! 本当に音がたくさん聴こえてくる...!」

田川「もうそれに尽きます」

オニム「僕らも適切な表現ができないんですけど、本当に降ってくる! みたいな感じです」

田川「スピーカーが7台くらい僕らをぐるりと取り囲んでいるようなところで、この音はここから出す、この音はこっちから出す、って設定しました」

――ほぇー。なんなら、家電量販店のイヤホンのデモ機に、『TRAFFIC』を入れて欲しいですねぇ。

田川「あぁ! それめっちゃいいですね。ホント、たくさんの方に驚きの音楽体験をしてもらえたらうれしいです」

取材・文/桃井麻依子




(2026年11月 6日更新)


Release

1st Album『TRAFFIC』

2026年11月11日配信開始
ビクターエンターテインメント

[収録曲]
01. étude
02. 黄色と茶色(Album Mix)feat. 四国めたん
03. Yellow & Brown feat. 十明
04. 羊毛電氣株式会社 feat. Rocca Hashimoto、四国めたん、ずんだもん
05. 東京とビジネスセンター(Album Mix)
06. Express Train
07. Local Train
08. エスエル
09. ドライブ
10. ワンアンドアナザー feat. Rocca Hashimoto
11. きこえる feat. Rocca Hashimoto

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Profile

日本人のトラックメイカー・田川と、バングラデシュ人のテクノDJ・カジ・オニム・エホサヌールによる音楽ユニット「日本人とバングラデシュ人」(通称・ポンデシ)。異なる文化的背景を持つ2人が、テクノやポップスなど多様な音楽的要素を融合させた「複合型テクノポップ」を掲げ、独自の音楽表現を追求している。2025年に活動を開始し、同年3月に「黄色と茶色 feat. 四国めたん」をリリース。音楽活動に加え、ポッドキャスト『HEN - 日本人とバングラデシュ人による番組 -』を始めYouTube等での発信にも力を入れ、音源だけでは伝わらない2人の個性や独特の空気感を届けている。2026年11月11日には初のアルバム『TRAFFIC』をリリース。


Link

日本人とバングラデシュ人 公式ホームページ
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A029998.html

公式X
https://x.com/Pon_Deshi

公式Instagram
https://www.instagram.com/pon.deshi/