ホーム > インタビュー&レポート > 原昌和の怪我からの復帰で見えた、4人の音の強さと豊かさ the band apart×ぴあ関西×関西のイベンター・GREENS 共催イベント『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2026 -10th Special- DAY1』レポート
ここ数年は雨がちだった『SMOOTH LIKE GREENSPIA』だが、10周年を迎えた2026年はすっきりとした秋晴れに。開演直前のスマホに表示された気温は27度...!暑さ対策をしている観客の姿で溢れている。まるで、夏だ。

定刻過ぎ、場内に流れた「Intro (Hikawadai Line)」を合図に荒井岳史(Vo&Gt)、川崎亘一(Gt)、原昌和(Ba)、木暮 栄一(Dr)が姿をあらわす。アルバム『HIKAWADAI NIKKI』の冒頭と同じ都会的な浮遊感を感じられる音の世界観が会場に漂い、これから始まるパフォーマンスへの期待が高まる。『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2026 -10th Special-』、ここから始まる2日間が「約束は緑色」で幕を開けた。彼らのアンサンブルの妙が詰まった一曲はたっぷりとした緑に包まれた野音の風景にもよく似合っていて、とても心地のいい走り出し。「やぶ忠 / YABU-CHU」、「昼下がりのボヤージュ」と最新アルバムからの楽曲を重ね、洗練された音の中にどこか日々の生活の息吹が感じられるアルバムの空気感を開放的な空間へ広げていくような序盤戦。今回のツアー中、野外での公演はこの日と彼らが主催する『ITaFES』のみなので、貴重な機会だ。続いて披露されたのは、ここ数年の同イベントでは頻繁に演奏されている「8月」。ギターで軽やかに走り出した冒頭を経て、音像を変えながら過ぎゆく季節の切なさも滲ませてゆくアンサンブルが耳に心地よく響く。


荒井が「ありがとうございます」と口を開くと、久々のライブで緊張していること、木暮はこの日に腰を痛めてしまいバックステージで尻を出しながら治療してもらったことなどを語り、会場はリラックスムードに。そして木暮が「原さんから一言いただきましょう」と目線を送る。7月に手のひらの粉砕骨折という大きな怪我を負い、ライブをはじめとした演奏活動を休止し治療とリハビリに専念していた原。ここ最近のライブは延期したりサポートベーシストを迎えての活動に切り替えるなど、4人完全体でのパフォーマンスは今日が復帰の日だ。それもあってライブ開始からここまで4曲、どうにも原の演奏姿に目が向いていた。「つぶやくと、(ネットでは)元気なのにライブやってねーじゃんって言われるからねぇ」とSNSでの発信も自粛していたというのだが、それこそ怪我の顛末は終バスに乗り遅れそうになりまだ走れる! と思って行動した結果、「したたかに滑って左手の小指の付け根が砕け散った」のだそうだ。聞くだけでも痛い話だが、怪我からたった3カ月弱でぶっといベース音を野音に響かせていることに、純粋に驚いた。「小指はまだ曲がんないけど、今日は気合いで(弾きます)」という一言に、大拍手&大歓声。おぉ、盛り上がってきた...!


「妄人街」、「中毒」と再び新作アルバムからの曲へ戻り、サビで観客の手が無数に上がった「higher」、そして野音に観客の歌声が響いた「Eric.W」と絶大な人気曲が続く流れに、会場全体がブチ上がっていくのを目と肌で感じる。複雑に絡み合うギター、しなやかにうねるベース、楽曲の推進力を生み出すドラム。各パートが独立した動きを見せながらも、ひとつのグルーヴへ結びついていく。4人の演奏力が持つ醍醐味を、改めて味わえる流れだ。

荒井の「『GREENSPIA』では毎回珍しい曲をやるんですけど、今回は誰も知らないかもしれないです。ゆっくり聞いてください」との言葉の後演奏されたのは「Prime minister」だった。2010年に開催された『SMOOTH LIKE BUTTER TOUR Winter 2010』でライブ会場限定EPとしてリリースされた『intoxication e.p.』に収録された曲でなんと現在もサブスク未解禁、ファンこそ知る1曲だ。タンバリンの音や、ポップなサウンドも含めてキャッチーな曲...と思いきや、自宅に帰って歌詞を調べて横転。どストレートに政治を(というか政治家を)皮肉った曲! 個人的には"今聴けてスカッとした"という思いが心に残る。そして再び最新アルバムから「かなしい」を披露。ブルーの照明に包まれながら荒井が歌い上げる〈想像力のない言葉に 溢れた世界は かなしい〉という、現代のモヤに対するストレートな歌詞が日暮れの空の下で響く。緻密な演奏技術やグルーヴの心地よさだけではなく、楽曲が持つ言葉の輪郭もまた、彼らの音楽を形づくる大切な要素だ。続く「The Ninja」、「Mercury Lamp」では、リズムに彩りを添える木暮のパーカッションも含め、4人の音が幾重にも重なり合う。

「30年やっていると、当たり前のことが当たり前じゃなくなってくることもあるんです。だからこそ、今日は噛み締めてやらせてもらっています」と荒井が感謝を述べると、木暮が原へ「久しぶりのライブはどうなの?」と投げかける。原の答えはこうだ。「ここに戻ってくるために必死でしたよ。おかげさまでやっと(小指が)曲がるようになってきたので...これからもよろしくお願いします」。その言葉への大音量の歓声と拍手が鳴り止まぬ中で演奏された最新アルバムを象徴する「氷川台DAYZ」を経て、空が暗くなり始めるとライブは後半へ。うっかり歌詞が飛んでしまい荒井の苦笑いにも会場が妙に沸いた「夜の向こうへ」から「Tuesday Night」へと続く流れは楽曲が示す情景と実際に移り変わっていく会場の景色とが重なる時間でもあり、ステージも夜の照明に彩られた姿へと変わっていく。そして本編ラストは、アルバムでもラストに収録された「Footsteps in the snow」。真夏のような暑さだったこの日、少し...いや、かなり早いウィンターソングが届けられ、日が落ちた会場で、照明に照らされたメンバーがそれぞれの演奏を展開しながら、アウトロでは見事な一体感を生み出していく。個々の動きが自由でありながら、揺るぎなく調和している楽曲を放つ4人。彼らの姿と放つ音から得られる高揚感こそ、the band apartというバンドの魅力なのだと見せつけられた気持ちだ。

盛大なアンコールに応えて、ステージへ戻った荒井が「本当に10周年、ありがたいです。...俺、なんかすごい緊張しちゃった。「夜の向こうへ」の歌詞飛んでやんの。500回くらい歌ってんのにねぇ(笑)」、と笑う。その言葉の後に演奏されたアンコール曲は「K. and his bike」。荒井のギターから始まり、少しずつ楽器が加わっていき、4人の音がひとつのグルーヴを作り上げていくバンアパの魅力が前面に押し出された1曲だ。ふと周囲に目をやると、ずっと彼らの音楽を愛してきたんだろうなぁという観客たちが、いい顔をしてステージを見守っている姿があった。曲がうねるごとに歓声を上げてビールを飲んでいるストリートファッションのお兄さん、土曜出勤をしてきたらしいワイシャツ姿のお兄さんは仕事の鞄を足元に置いて歌を歌っているし、小さな子どもを連れたお母さんは周りを走り回る息子さんに目を配りつつも手拍子を続けていた。ステージ前のエリアに目を向ければ、川崎のギターの音や動きに合わせて体を揺らしているのが見える。誰もがアルバムリリースツアーと原が活動復帰するバンアパを待ち望んでいたんだなと思わずにいられない、そんな光景が広がっていた。

アンコールを終え、メンバーがステージから去ってもなお会場からは「もう少し演奏を!」と願う手拍子が鳴り止まない。そのコールに応えて木暮と原が再びステージに姿を表した。ステージセンターのマイクの位置へと木暮が進み、ドラムセットのチェアに原が腰を下ろす。木暮が「もう用意している曲がありませんので、一本締めで!」と、\よぉーお!/の掛け声で原がシンバルをジャーン!、観客は全員がパチン! からの割れんばかりの拍手で『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2026 -10th Special-』の初日は幕を下ろした。
新作の楽曲を軸に過去の楽曲を織り交ぜながら、夕暮れから夜へと移り変わる時間を音楽で彩った17曲。原がカムバックしたステージはバンアパが長年培ってきた演奏の強さと4人で音を鳴らすことの豊かさを改めて感じさせるもので、2日目への期待がより高まる初日となった。
Text by 桃井麻依子
Photo by 浜村晴奈
(2026年10月21日更新)
SE. intro(Hikawadai Line)
01. 約束は緑色
02. やぶ忠/YABU-CHU
03. 昼下がりのボヤージュ
04. 8月
05. 妄人街
06. 中毒
07. higher
08. Eric.W
09. Prime minister
10. かなしい
11. The Ninja
12. Mercury Lamp
13. 氷川台DAYZ
14. 夜の向こうへ
15. Tuesday Night
16. Footsteps in the snow
en. K. and his bike
発売中
asg-065/3000円(税込)
01. Intro (Hikawadai Line)
02. 氷川台DAYZ
03. 約束は緑色
04. やぶ忠 / YABU-CHU
05. 昼下がりのボヤージュ
06. 中毒
07. 妄人街
08. かなしい
09. Tuesday Night
10. Footsteps in the snow
【東京公演】
▼10月24日(土)・25日(日)
荒川戸田橋緑地 バーベキュー場
[24日(土)出演]the band apart/□□□/Suspended 4th/SATURDAY GOOD-BYES/sans visage/cinema staff/ストレイテナー/フルカワユタカ/ルサンチマン/LEGO BIG MORL/LOSTAGE
[25日(日)出演]the band apart [ゲスト]Keishi Tanaka/TGMX(FRONTIER BACKYARD)/フルカワユタカ/堀込泰行/渡邊忍
【岩手公演】
▼11月14日(土) KESEN ROCK FREAKS
【青森公演】
▼11月15日(日) KEEP THE BEAT
【北海道公演】
▼11月27日(金) cube garden
【岡山公演】
▼12月5日(土) YEBISU YA PRO
▼12月6日(日) 17:00
EVANS CASTLE HALL
スタンディング-5000円(整理番号付き、ドリンク代別途要)
※小学生以下は無料。ただし、保護者同伴に限る。
[問]GREENS■06-6882-1224
【2027年】
【愛媛公演】
▼1月30日(土) WstudioRED
【鳥取公演】
▼1月31日(日) 米子laughs
【愛知公演】
▼2月12日(金) 名古屋クラブクアトロ
【新潟公演】
▼2月14日(日)LOTS《振替公演》
【福岡公演】
▼2月21日(日) Fukuoka BEAT STATION
【香川公演】
▼2月23日(火・祝) DIME
【宮城公演】
▼3月13日(土) 仙台 darwin《振替公演》
【岩手公演】
▼3月20日(土) club change WAVE
【宮城公演】
▼3月21日(日・祝) BLUE RESISTANCE
【東京公演】
▼3月27日(土) 豊洲PIT