ホーム > インタビュー&レポート > 「生きてて良かったと想う日は、たまにある。それが今日だよ」 衝動と全方位へのやさしさが交錯した、銀杏BOYZツアーファイナル
開演時間18時30分、客電が落ちて、この日も登場SEとして流れたのは、今回のツアーでシンセサイザー・パーカッション・コーラスなどで参加したサポートメンバー、UCARY & THE VALENTINEが歌う『いちごの唄』が流れてくる。山本幹宗(Gt)・藤原寛(Ba)・岡山健二(Dr)・加藤綾太(Gt)が登場して、各々楽器を鳴り響かせていく。ゆっくりと峯田和伸も現れる。1曲目は『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』の改題未発表Ver『神の左手 悪魔の右手』。2階から観ると、始まったばかりなのに1階フロアは満杯の観客たちが横に揺れている。峯田は観客に背を向けて歌い、すぐに前を向くが、正面を凝視して歌う。リバーブがかかった歌声は重たく響くも溶けるように聴こえる。袖を切り取って両腕丸出しでDinosaur Jr.のTシャツを着る峯田は、軽く指を指しながらマイクのみで軽やかに歌う。軽やかなのに重厚感があるのも凄みだ。

ギターを持ち、『東京から来ました銀杏BOYZです。今夜、大阪ゴリラホールをぶっ壊します。』と名乗る峯田は、『若者たち』へ。1曲目から向き合ってギターを弾きまくっていた山本と加藤だが、ここでも狂い弾き! 『パンクロックを聴いた』と歌詞が飛び込んでくるが、まさしく今その状態であり興奮してしまう。すると峯田がギターを、マイクスタンドを突然観客に向けて投げ込む。思わず『わっ...』と驚いて声が出てしまうが、何事も無かったかのようにギターもマイクスタンドも戻されてセッティングされる。その衝動の迫力に涙腺が緩んでしまう...。まだ2曲目なのに、ここまで感情を持っていかれるのが不思議だが、ちらりと周りを見渡すとみんな同じような表情をしている。気が付くとマイクスタンドがぶっ倒されていて、本当に気が抜けないライブ。峯田の一挙手一投足から目が離せない。

真っ赤な照明に舞台が包まれて、激しく歌われるのは『NO FUTURE NO CRY』。『気が狂いそうな夜を何度も越えて おまえに会いたくて ここまで来たんだ』の歌詞は、最後が『大阪に来たんだ』と歌われる。何度も繰り返される『NO FUTURE NO CRY』。訳すと『未来はないけど泣いちゃだめさ』...、とにかく突き刺さる...。またギターもマイクスタンドも観客へと投げ込まれる。戻ってきたギターはアンプにこすりつけられている。気を抜くつもりは全く無いが、本当に気が抜けないライブで、生きているということを実感出来るライブ。爆発音みたいな地鳴りみたいな音が鳴り響く、『俺は命を捧げる』と歌われる。命がけで『NO FUTURE NO CRY』を峯田が歌っていることが否が応でも伝わってくる。腕を大きく振りかざすよう動いて倒れ、後転するように勢いよく立ち上がり、すぐに飛び跳ねる。まるで蠢く生命体...。

『いつのひにか ぼくらがこころからわらえるように』という歌詞が心に残る『大人全滅』。終わり、峯田が喋り出す。全国、色々なところでやってきて怪我とかありながら、何とか来ることが出来たと喋る。平日のこの時間帯からライブを観に来れることを、『よっぽど暇人!』と笑う。続けて、学校に行けない、家庭に居場所が無いなどの話もあったが、銀杏BOYZは、そんなみんなの居場所なんだと改めて想う。かつてのGOING STEADY時代から観続けている人、今日初めて銀杏BOYZを観に来た人と呼びかけながら、歌いたい人は歌って結構、踊りたい人は踊って結構、ひとりで黙ってみたい人は黙って観てもらって結構と更に呼びかける。全方位への思いやり、これが本当のやさしさではないかと想う。
『ロックンロールは世界を変えて』
『エンジェルベイビー』で叫ばれる。『hello my friend 君と僕は一生の友達さ』という言葉も先程の全方位への呼びかけを想い出してグッとくる...。観客を指差して語りかけるように歌われる。観客の手もしっかりと握りしめる。歌い終わり、深く頭を下げたが、紛れもない誠実で真摯な想いが感じ取れた。


続いて、加藤のギターカッティングから歌われたのは『二人のために』...、そうGOING STEADY時代に歌われた25年前の楽曲『佳代』。ライブで歌われるのは珍しいし、何よりもメロディアスな良い歌だと聴き惚れる。まさにロマンチック。

ここでUCARYが舞台に上がる。峯田は、ガガガSP・桑原康伸、関西で自主イベントを催していた落合カーニバル・落合まことといった若くして亡くなった関西の友達たちの名前を出す。『このまま僕等は大人になれないまま しがみついて忘れないんだ』と歌われる『漂流教室』。それこそ『佳代』が歌われた頃は生まれていなかった少年少女たちもたくさん来ていたが、そんな若い世代が峯田を通して、関西のカルチャーシーンで生きていた人々のことを今からでも知ってくれたら嬉しいなと、同時代を生きた人間として強く願ってしまった。

昨日、大阪のホテルで熊本の大きな地震をニュースで知ったと話す。山田五郎さん、チバユウスケさんを偲び、『長い旅に出て』と表現して、『いつかまた彼らの歌が聴こえれば』と『夜王子と月の姫』へ。『世界の終わりが来ても 僕等ははなればなれじゃない』と観客みんなも歌い出す。


曲の途中だが、山本が峯田に近寄り声を掛ける。ここで演奏が止まる。観客のひとりが体調を悪くしたとのこと。『大丈夫か?』と峯田は心からのやさしい声を掛けて、何かあった場合は、『演奏を止めるから言って』と話しかける。続けて、1999年、生駒山で野外フェスティバルが開催され、GOING STEADY時代に出演した際、緩やかな傾斜がある芝生広場で将棋倒しが起こり、女の子が怪我したことを振り返った。翌日、スポーツ紙に掲載され、その後は2005年にもスポーツ紙に掲載されたなどと笑いながら話して、観客を和ませる。もう一度、演奏が始まる。途中止まったはずの曲がより沁みるのは素敵すぎた...。何と言うか、この日は峯田のやさしさをとても感じる。

舞台後方の幕が開き、スクリーンが現れる。『今日は大変だよ。酸素足りなくて大変だよ』とぼやきながら、『もうひとりのボーカルを紹介します』と普段はシンガーソングライターとしても活動する岡山を紹介する。ふたりともにアコギを弾いて歌い、藤原はマラカスを鳴らし、UCARYはタンバリンを叩く。それこそ、やさしい雰囲気に包まれて、『東京タワーのてっぺんから、大阪城までジャンプする』と歌われて微笑ましくなる。そのまま峯田はアコギをコンコンと叩き、『ナイトライダー』へ。これまたやさしい歌で泣けてくる...。途中、岡山はドラムセットに戻り、そこでも歌い、ドラムを叩き出した瞬間、後方スクリーンに峯田の顔がドアップで映し出される。一生懸命歌う表情がドアップで心に届けられ、やはりぐっとくるものがあった。『ロックのコンサートに行かなくなっても、ロックは僕らを、この日の僕らを忘れないから』と語りかけて、『恋は永遠』が歌われる。『やさしくって やさしくって』という歌詞が、この日の峯田と重なる。UCARYも歌い出すが、そのキュートボイスはたまらない。

『天国のどん底ではしたないキスをして血がにじむほど叫んだ さめない夢で』
あくまで私が書き起こした歌詞ではあるが、峯田はアカペラで歌い、『パラダイス・ロスト』とタイトルを告げた。峯田は低い椅子に座り歌い、UCARYも歌う。未発表の新曲。貴重なものが聴けていると耳を澄ますが、最後に峯田はスタッフから酸素吸入器を渡されて吸い込む。『ちょっとだけ1回休んでいいですか...』と峯田は言い、倒れながら、よろめきながら袖へと向かう。開場時のBGMが流れ、急遽休憩へ。この日は観客も倒れた状況であるし、峯田の『酸素が足りなくて大変だよ』は本当だったのかと心配になってしまうが、ただ待つしかない。10分弱経ち、峯田は戻ってきて『脱水だ!』と笑いながら頭にタオルを被った状態で椅子に座りアコギを持つ。『それでは後半戦をやらせてもらいます』と宣言すると、後方スクリーンに満天の星空が映し出される。バンドサウンドで壮大感ある『新訳 銀河鉄道の夜』。『世界はいつもとりかえしがつかなくて 僕たちは...』という語りも入る。スクリーン満天の星空に流れ星の様な照明も当てられていく...。

『今、僕の頭の中は自分の声は聴こえなくて、不思議なことに、あなたたちの声は聴こえるんです。どういう状況なんでしょうか』と峯田は言って、そして、こう語り出した。
『この世界からひとつでも核兵器が無くなりますように。本当の意味での世界平和が、僕たちに降り注ぎますように。歌います『人間』』
アコギで峯田は歌う。
『戦争反対 戦争反対 戦争反対 戦争反対 戦争反対 とりあえず戦争反対 戦争反対』
『とりあえず戦争反対って言ってりゃあいいんだろう』と以前は歌われていたが、ずっと戦争反対と歌われる。そして、ドラムが叩き込まれ、全ての楽器が鳴り出して、峯田は椅子に座りながらだが、マイクスタンドを掴み力強く歌う。峯田はよろめきながらも立ち上がり絶叫する...。『まるでアナーキー・イン・ザ・UKのように』との語りも入る。この未発表Verを聴くのは二度目だが、多くの人に聴いて欲しいし、世代問わず打ちのめされるはずである、この歌には。
『すべてのことが起こりますように』

そうつぶやき、歌われるのは『GOD SAVE THE わーるど』。やさしいメロディー...。簡単に訳すならば『神よ世界を守りたまえ』とでも言おうか。『人間』を聴いた後だけに、より心が浄化される。峯田は笑顔で左手でピースサイン! 美しくて素晴らしい光景だった。
『こんな息も絶え絶えのライブは初めて。今日は怪我人、途中で倒れる人も多いライブ。僕も含めて。アルバムを作って全国ツアーで大阪に来ますので。ごめんね。今日は、こんな体で。足が立ってくれなくて』

満身創痍の状態で僕らに必死で歌と想いを届けようとしてくれている。『峯田!』という声援で気が大きくなることもあると素直に打ち明けながらも、『僕もあなたたちと何も変わらない、ただの音楽好き、ロック好き。毎日楽しいわけでもなく、生まれてきて良かったと想える日はない。でも、生きてて良かったと想う日は、たまにある。それが今日だよ』。そして、歌い出したのは『夢で逢えたら』。急に吠え出して、観客にマイクスタンドを投げ込み、水もかける。激しくなる演奏。スクリーンに峯田が映る。峯田が立ち上がろうとする。その姿は困難に立ち向かう絶体絶命の危機的状況のアニメ主人公が立ち上がるような...、そんなドラマチックな感動的光景であった...。

アコギを持ち、『BABY BABY 抱きしめてくれ』と歌う。『2026年7月29日。僕はこの曲を大阪に置いていきます』。観客の顔もスクリーンに映し出される。みんな歌っている『BABY BABY』。ひとつになるって、こういうことかと感心してしまうほど、ひとつになっていた。
『夕焼けに照らされちゃって』
そう峯田が言うと、スクリーンには夕焼けが映し出される。ダンサンブルナンバー『ぽあだむ』。心躍る。みんな嬉しそうで、みんな幸せそう。
『あなただけ』
振り絞る声で叫ぶ。『ボーイズ・オン・ザ・ラン』。峯田は立ち上がり、カンフーポーズの如く立ち振る舞い、センターマイクを掴み歌う。マイクスタンドを逆さまに立てて、右手で持ち頭を下げる。右腕を振りかざし切って終わり、バスドラ前にへたり込む。立ち上がり、頭を下げて去っていく。全身全霊のライブとは、このこと。

『銀杏BOYZ!』コールが起きる、アンコールを求めて。峯田がスタッフの肩を借りて舞台に再び戻る。椅子に座るも倒れそうになるが、エレキを掻き鳴らす。峯田が、銀杏BOYZが疾走し始める『少年少女』。これこそロックンロール...、ロックが転がっている...。

山本と藤原が舞台を去る。峯田はマイクのみ握りしめる。加藤のファンキーなギターカッティングからドラムも叩き込まれる。ストロングスタイルなHIPHOPがぶちかまされる『DO YOU LIKE ME』。吐き捨てるように歌われてもいく。『どうもありがとう』と〆た後も、『承認欲求の向こうへ』とひとり残りラップして、マイクを床に叩きつけて、観客へ手を合わせて感謝を伝えて舞台を去る。

退場BGMとしてRCサクセション『スローバラード』が大きめの音で鳴り響く。不意を衝かれるが、正しき日本語ロックの伝承を感じた。余韻に浸りながらも、まだまだ放心状態...。会場を出てからも、電車に乗ってからも、同じように紅潮した若者たち少年少女たちを年齢問わずたくさん見かける。それだけのライブだったのだ、しみじみそう想った。
Text by 鈴木淳史
Photo by キョートタナカ
(2026年8月 5日更新)
01. 神の左手 悪魔の右手
02. 若者たち
03. NO FUTURE NO CRY
04. 大人全滅
05. エンジェルベイビー
06. 佳代
07. 漂流教室
08. 夜王子と月の姫
09. 骨
10. ナイトライダー
11. 恋は永遠
12. パラダイス・ロスト(新曲)
13. 新訳 銀河鉄道の夜
14. 人間(アナーキー・イン・ザ・夕景)
15. GOD SAVE THE わーるど
16. 夢で逢えたら
17. BABY BABY
18. ぼあだむ
19. ボーイズ・オン・ザ・ラン
En 01. 少年少女
En 02. DO YOU LIKE ME
セットリストプレイリスト
https://gingnangboyz.lnk.to/260729
銀杏BOYZ 公式サイト
https://gingnangboyz.com/
銀杏BOYZ スタッフ X
https://x.com/gingnangboyz_mv
峯田和伸 Instagram
https://www.instagram.com/mine.minet/
銀杏BOYZ YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/GINGNANGBOYZofficial