ホーム > インタビュー&レポート > 「デビューして25年経ったからできるチャレンジ」 二挺の三味線のみで演奏する 47都道府県ツアースペシャルin 大阪 吉田兄弟-極生-THE MOMENT フェスティバルホールで過去最大規模のスペシャル公演開催
津軽三味線の自由性と面白さ
そのカッコイイところを広めていきたい
――2025年にデビュー25周年を迎えられました。
健一「おかげさまで、僕らもこんなに続けられるとは思ってなかったというか。昨年は、『M-1グランプリ 2025』にシークレットゲストで出させてもらいまして、普段の自分たちのお客さまとは違う場所で緊張しましたが、そういう場所でチャレンジできるのはありがたいですね。自分たちを試せる場所をもらえないと未来の開拓も難しいと思うので」
良一郎「三味線は5歳から始めてますけど、小学生の頃の友達は、"なんでそんなのやってんの?" みたいな反応だったので、ダサいのか...、やめたいなと思うこともありましたが、中学生になって津軽三味線に出会ってからはカッコイイことに気づいたんです。津軽三味線はちょっと別物で、普通の三味線とは歴史も違うし、構え方や弾き方もまったく違います。その難しさと面白さと自由性に驚きました。他の民謡は譜面があって大体弾き方も決まってるんですが、津軽三味線で一番有名な『津軽じょんがら節』は弾き方が決まってないんです。時代とともに常に変化してますし、僕と弟(健一)ももちろん違います。大会に100人出たとしたら、フレーズもリズムも全員違うんですよ。その自由性というか面白さにどんどんハマっていきましたし。それを伝えたいと思っていたところに、(1999年に)デビューすることができて。自分たちが感じていた津軽三味線のカッコイイところを広めていきたいっていうのは今でも変わってません。その思いがあったから、今まで続けてこられたと思います」
――ご兄弟で活動されているというのも強みだと思いますか?
健一「そうですね。兄弟で始める方はほかにもいらっしゃると思うんですけど、どっちかが辞めてしまうっていうことがよくあるようで、僕らもどっちかやめてたら、たぶん続いてないとは思うんですけどね」
――2003年には全米デビューをされて、海外でも演奏活動されています。
健一「2003年頃はアメリカでも僕らはまだ無名だったので、インストアライブから始めました。日本ではある程度、名前が知られていても、海外でゼロから"吉田ブラザーズ"という名前を構築するにあたって、ゲームのCMソングで使ってもらったり、けっこう地道に毎年全米ツアーをやっていく感じでした。
デビューした頃はアメリカが中心でしたが、僕は今、スペインのバルセロナに軸があり、10年ぐらい前からバルセロナの音楽大学で三味線を教えてるんです。そこの元生徒で、今はプロで活動してるミュージシャンと2人で、サグラダ・ファミリアで三味線を弾くという活動を続けてます」
――現地でフラメンコと共演したりも?
健一「僕は22、3の頃に初めてスペイン行かしてもらって、現地の民謡酒場みたいなところに飛び入り参加して三味線を弾いたんですけど、玉砕して帰ってきました(笑)。フラメンコは三味線と近いものがあるのですが、当時はフラメンコのルールが全然わからなくて、拍が取れなかったんです。それが悔しくて、帰ってきてから『陽炎』というフラメンコ調の曲を三味線で作りました。リベンジしたくて、それをスペインに持って行ってプロダンサーに自分の曲で踊ってもらいました。今は現地でラファエル・アマルゴという有名なフラメンコダンサーと対バンみたいな形で一緒にやっています」
――国内外で活動している中で、なにか変化を感じることはありますか?
健一「近年はインバウンドで海外から日本に来られる方が多いので、"今度、日本に行った時に吉田兄弟のコンサートに行きたいんですが..."というような、問い合わせがホームページに直接来るようになりました。一昨年、六本木のサントリーホールでやらせてもらった時も、3割ぐらい海外のお客様で、前の方の席は、"ここは日本かな?"って思うぐらい多かったですね」
――ネット配信などはあまりしてないのですか?
健一「実は、和楽器は配信に向かないんですよね。三味線もそうですけど、(弦を弾いた時の)音の振動で一番伝わるので、配信ではバーンって空気が揺れるあの感じが伝わらないんです。だからこそ、生の価値が出てくると思います」
『極生』ツアー自体は3年目
これ以上ない生音の真髄を体感して
――楽器とホールの響きだけでパフォーマンスを行う全編生音公演『デビュー25周年 47+1 都道府県ツアー吉田兄弟-極生-』(以下、『極生』)を始めたきっかけは?
健一「コロナ禍の頃に、今までのエンタメのシステムの中で、どうすれば自分たちの居場所があるのかと考える時期があって。自分たちで主催して、生を届けるっていうライブを単発で実験的にやってはいたんですが、実際ツアーとして回り始めたのは2024年からですね。それまでは、お客さんにライブに来てもらってたという印象だったんですけど、このツアーは逆に(吉田兄弟が)届けに行くというのがテーマなんです。基本的にふたりの三味線二挺だけで、いろんな場所に行けるので。今まで届けられてなかった人にも聴いてもらえるというのはすごいメリットあるかなと思います」
――おふたりだけで、47都道府県に出向かれるというのはこのツアーが初めて?
良一郎「47都道府県を全部回ったのは25周年のタイミングが初めてです。(それまでは)大きなホールでやることが多かったので、小さいホールにも行けるっていうのがこの『極生』は良いところですね」
健一「今年が3年目なんですけど、2年目以降は毎年47箇所全部回ってるわけじゃなくて、"47都道府県の皆さんに音を届けるというテーマ"で行ける場所を決めてやってるので、今年でだいたい100公演を超えるかなっていう感じです」
――これは完全におふたりのみで演奏されるんですね。
健一「はい、スピーカーは一切使わずにやってます。やっぱり生音なんで、(キャパは)1000から5、600ぐらいがちょうどいいんですけど、音響が良いホールであれば無限にできるので」
――『47都道府県ツアースペシャルin 大阪 吉田兄弟-極生-THE MOMENT』と題して、9月に開催される大阪フェスティバルホールは2700人キャパということで、これまでで最大規模の会場になるんですね。
健一「そうですね、僕らが今までやってきた中では最大キャパのホールになるので、またひとつのチャレンジになります」
良一郎「やっぱり25年経ったからできるというか、デビュー当時だったらやってないでしょうね。まだ自信がなかったですし、他の楽器が入って一緒にセッションしないと1時間半~2時間もできなかったと思うんですけど、『極生』は1時間20分ぐらい演奏します」
健一「通常のコンサートより体力を使うんですよね。マイクというものが一切ないので、大きなホールのお客さま全員に届けようと思うと、普段よりも疲労度が高くなります」
――実際にどういった構成で演奏されますか?
良一郎「基本的には、前半はほとんどオリジナル曲で、お客さんが、えっ?と思うような、津軽三味線でこういうアプローチもあるんだっていう革新的な部分を前半で観てもらって、最後に『津軽じょんがら節』で締めるという構成になります。やっぱり『(津軽)じょんがら節』って、僕たちにとっても永遠のテーマであり、お客さまが求めてるところもあるんですよね」
健一「オリジナル曲は民謡を土台にして作っていて、カバーはほとんどやっていません。三味線は単音楽器なので、(民謡以外の)カバーをやっても、三味線のいいところが出てこないんです。やっぱり三味線である必然性と、僕ら兄弟でやる意味っていうのは大事にしなきゃいけないところかなと思います。
ぜんぶ三味線二挺で演奏するので、曲のバリエーションとか演奏の方法によって波を作っていきます。デビュー当時の僕らではそういうことができなかったけど、今は生音でもそれができるという自信があります。特に『極生』のツアー自体は3年目なので、一番大きい音から小さい音をどれだけ出せるか、その幅を感じていただけたらと。生音がダイレクトに伝ってきて、三味線ってこんなことができるんだねっていう発見があると思います」
――そういうお話をお聞きしていると、これはぜひ生で体験しなければ!という気持ちになります。
健一「実際、会場内では歩く音もぜんぶ響きますから、お客さまも最初は緊張されてるようですが、フェスティバルホールの音響は、(音が)上から降ってくるような環境に近いと言われています。たぶん僕らもそれを感じながら演奏すると思いますし、それがフェスティバルホールの面白さでもあるのかなっていう気もします。ここでしか聴けないいこの日の演奏をぜひ体感していただきたいですね」
――やっぱりホールによって音響が違うんですね。
健一「ぜんぜん違います。元々クラシックホールは洋の楽器のために作られてるホールですから、僕らの楽器はアタックがすごく強くて、ちょっとパーカッシブなんですが、それがどういう風に響くのか。去年一度試し弾きをして、実際にホール内での響きを全部確認しています。同じホールの中でも聴く場所によって音の響きが違います。お客さまも反響の一部になるので、服装とかによっても変わりますし、天気によっても大きく左右されるようです」
良一郎「マイクを通すといくらでも大きい音は出せるんですけど、やっぱり音の揺れと言いますか、僕たちが5歳から感じてきた三味線の生の音色ってのは、なかなかマイクを通しちゃうと伝えられないので。それを25周年のタイミングから伝えていきたいなということで始めたツアーなので、ある意味これ以上の生音の真髄はないわけで、それを存分に感じてもらえるのがこの『極生』の醍醐味かなと思います」
――普段はマイクを通してスピーカーから鳴らされる音に慣れているので、そうではない三味線の生の響きっていうのはまたぜんぜん違う感動がありそうです。
健一「はい、『極生』を観に来た方は、最初は音が小さいなって思うらしいんですよ。ですが、聴いてる側も徐々に研ぎ澄まされてくるようです」
良一郎「日本の楽器ってこんな音が出せるんだっていう音の揺れ、音の波動を本当に感じてもらえるのが『極生』です。日本人でも知らない人がたくさんいるので、自分たちが5歳から感じてきたカッコイイなっていう三味線の音の生の迫力を、日本の楽器の凄さを感じてもらえるコンサートにぜひ来てほしいと思います」
Text by エイミー野中
(2026年7月 8日更新)
よしだきょうだい…吉田 良一郎(兄) / 吉田 健一(弟)北海道登別市出身。津軽三味線の第一人者。ともに5歳より三味線を習い始め、1990年より津軽三味線奏者初代佐々木孝に師事。津軽三味線の全国大会で頭角を現し、1999年アルバム「いぶき」でメジャーデビュー。2003年の全米デビュー以降、世界各国での演奏活動や、国内外問わず様々なアーティストとのコラボレーションも積極的に行っている。2020年、デビュー20周年記念アルバム「THE YOSHIDA BROTHERS」を発売。2024年、初の試みとなる楽器とホールの響きだけでパフォーマンスを行う全編生音公演『デビュー25周年 47+1 都道府県ツアー吉田兄弟-極生-』全49公演を完遂。2025年、デビュー25周年を迎え、同年12月、『M-1グランプリ2025』、生演奏で出演。世界に通用する唯一無二の津軽三味線アーティストとして、日本伝統芸能の枠を超え、幅広い活躍が期待されている。
▼7月12日(日) 14:00
あいの土山文化ホール
全席指定-5000円
[出演]吉田兄弟
※小学生以上はチケットが必要。未就学児の入場はご遠慮ください。
[問]甲賀市あいの土山文化ホール■0748-66-1602
【青森公演】
▼7月18日(土) 三沢市公会堂
【秋田公演】
▼7月19日(日) ほくしか鹿鳴ホール (大館市民文化会館)
▼9月6日(日) 15:00
フェスティバルホール
BOXシート-8000円
プレミアムシート-7000円(前から5列目以内)
指定席-5000円
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
【岐阜公演】
▼9月20日(日) 岐阜市文化センター 小劇場
【沖縄公演】
▼10月3日(土) パレット市民劇場
【島根公演】
▼10月18日(日) 出雲市民会館 大ホール
【愛媛公演】
▼11月23日(月・祝) 松山市総合コミュニティセンター
Web Site
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