ホーム > インタビュー&レポート > HOMEが語る新曲「Deja Vu Slider」 異なるルーツと感覚が重なり合う、3人の現在地
――今回は『FM802 MIDNIGHT GARAGE presents ホームルーム Supported by ROOKIE A GO-GO』の翌日にお話を伺っています。まずは昨夜のライブの感想から聞かせてください。
shunta higa「実は3日連続のライブで、1日目が福岡、2日目が東京、3日目が大阪という日程でした。昨日がその最終日だったんですが、最初は疲れが出ちゃうかなと思っていて。でも、いざやってみると、いい意味で肩の力を抜いてやれましたし、大阪のお客さんがすごく温かく盛り上げてくれて、それにかなり助けられました。良いライブができたんじゃないかと思っています。」
――このイベントはフジロック・フェスティバルのROOKIE A GO-GOがサポートしていますが、HOMEは2024年にROOKIE A GO-GOに出演されていますよね。あの経験は、バンドにとってどんな出来事でしたか?
seigetsu「普段、自分たちが聴いているような人たちと同じ場所に立てたことは大きかったです。あれがきっかけになって、聴いてくれる人も増えましたし、すごく良い経験でした。」
o-png「ステージの音がめちゃくちゃ良かったという記憶がありますね。日本だけでなく、アジアのいろんなフェスや会場でライブをやっていますが、その中でもROOKIE A GO-GOのステージは特に音が良かった気がします。今まで出演したステージの中でも一番良かったかもしれません。フジロックって、わざわざ遠くから苗場の山の中まで音楽を聴きに来るくらい、音楽が好きな人たちが集まるじゃないですか。しかもROOKIE A GO-GOまで足を運ぶ人たちって、相当ディープな音楽リスナーだと思うんです。そういう濃いお客さんの前でやれたのは今までになかった体験で、これまでで一番手応えがあったライブだったと思います。」

――昨日のイベントには、Black Petrolや北村蕗さんも出演されていました。Black PetrolはHOMEと同じ2024年、北村蕗さんは2023年にROOKIE A GO-GOへ出演されていますし、同じROOKIE A GO-GOを経験した近い世代のアーティストという印象もあります。刺激を受ける部分はありましたか?
shunta higa「昨日のライブは三者三様の面白さがあって、すごく刺激を受けました。見たものや感じたものは残ると思うので、あとから何かの形でHOMEの音にも影響が出てくるかもしれないですね。」
――みなさんはそれぞれどんなアーティストから影響を受けているのでしょうか?メンバーごとに違いますか?
o-png「かなり違います。僕はダンスミュージックが好きです。最初はスクリレックスから始まって、その後ダブステップを深掘りしていって。UKダブステップからルーツっぽいところまで行って、今はダブにハマっています。HOMEをやるまでは、あまりバンドサウンドは聴いてこなかったんです。HOMEが最初にリリースした「Lucy」はshuntaが作った曲なんですけど、それまではああいうインディーサウンドにあまり馴染みがなくて。でもライブで演奏していくたびに、その魅力が少しずつわかっていきました。そこからshuntaにおすすめされたインディーロックのバンドを聴いて、ハマっていきましたね。」
――shuntaさんは、インディーサウンドからの影響が大きいのでしょうか?
shunta higa「そうですね。特にイギリスの音楽にはかなり影響を受けています。大きいのはパンクとシューゲイザーですね。最初はTHE BLUE HEARTSから入って、そこからグリーン・デイ、ザ・クラッシュ、ラモーンズにいきました。クラシックなパンクも好きですし、ポップパンクも聴いていました。そして中学の頃にライドを知って衝撃を受けて、そこからシューゲイザーの耽美さや音の質感にハマっていきました。そこからギターポップが好きになり、ギターの音色が美しいサウンドに惹かれるようになっていきました。そこで、自分の中でパンクとシューゲイザーの間が埋まっていった感覚があります。今、自分が書いているHOMEの曲は、ニューウェーブやポストパンクの流れを感じるサウンドが多いんですけど、それも自分の中では、パンクとシューゲイザーの間を行くような感覚なんです。」
――確かにHOMEの楽曲には、ニューウェーブの流れを感じるサウンドが多いですよね。
shunta higa「そうですね。80'sのサウンドは好きなんですけど、メインストリームの80'sを通ってきたというよりは、ザ・キュアーやニュー・オーダー、ザ・スミスみたいなバンドの方が自分の趣味に近いです。最近は「ポピュリズム的ではないポップス」ということを考えたりします。言葉としては矛盾しているかもしれないですが、売るために計算されたキャッチーさではなくて、自分が本当にきれいだと思えるメロディや響き、自分が信じられるきらめきみたいなものを曲の中に入れたいんです。もちろん、メインストリームの音楽を否定しているわけではないですし、ピンとくるものがあれば聴きます。実際、最近はオリヴィア・ロドリゴのニューアルバム『you seem pretty sad for a girl so in love』もいいなと思いました。」
――オリヴィア・ロドリゴの新作には、ザ・キュアーのロバート・スミスも参加していますよね。「ポピュリズム的ではないポップス」という言葉もすごく印象的です。HOMEにとって、"ポップ"であることは大事なのでしょうか?
shunta higa「僕個人としてはすごく大事だと思います。みんな的にはどう?」
o-png「僕にとっても大事ですね。僕はアートワークのデザインもやっているんですが、そこでもポップさは絶対に主軸にしたいと思っています。今回の新曲「Deja Vu Slider」のアートワークで使っているネジも、モチーフとしてはすごく身近で、ありふれたものじゃないですか。でも、形をねじったり、色を変えたり、見せ方を変えることで、ただの日用品ではなく、ポップなビジュアルとして立ち上がってくる。その感覚が面白いんです。ポップさを残しつつ、いろんな表現ができたらいいなと思っています。」
――メンバーそれぞれ、ポップに対する感覚も違いそうですね。seigetsuさんは、どんな音楽から影響を受けているのでしょうか?
seigetsu「僕はブラックミュージックが好きで、特にマイケル・ジャクソンは小さい頃から好きですね。」
――seigetsuさんは、フロントマンとしてのパフォーマンスもすごく印象的です。パフォーマンス面で影響を受けているアーティストはいますか?
seigetsu「いろいろあるんですけど、スターが好きなんです。特定のジャンルというより、スター性のある人に惹かれるというか、美しいものに惹かれる感覚ですね。いろんな人を見て、学んで、吸収しているんだろうなと思います。」
――HOMEでは、音楽制作における役割は明確に分かれているのでしょうか。
shunta higa「作詞と歌のメロディーメイクはseigetsu、デザインやアートワークはo-pngというのは明確に決まっています。作曲に関しては3人ともできるので、それぞれが持ってきたものをもとに制作することが多いですね。そこからセッションで膨らませていくこともあります。」
seigetsu「作詞は、セッションの中で浮かんだフレーズを入れていくことが多いです。基本的にはメロディーが先で、メロディーの輪郭がある程度できてから言葉を乗せていくことが多いですね。ただ、曲によって制作方法は変わっていく感じです。」
――2023年から2025年にかけて「HOME EP」「HOME EP2」「HOME EP3」と3枚のEPをリリースして、今年5月にはそれらをまとめた『HOME COLLECTION』が出ました。「第一シーズンを終えた」という言い方もされていますが、自分たちとしてもそういう感覚はあるんですか?
shunta higa「「第一シーズンが終わった」と書かれていて、こちらが意図していたわけではないんですけど(笑)。EPを3枚に分けて出したのは、最初からいきなりアルバムを作るのは難しいと思ったからなんです。アルバムを作るなら、ただ楽曲を並べるのではなく、1枚の作品としてひとつのムードや世界観が通っているものにしたかったんです。でも、それを考えたときに、当時のHOMEではまだ難しいなと思って。Rideが最初にEPを3枚出して、その後にアルバムを出していたので、その流れを参考にしました。」
――2023年の「Lucy」以降、活動初期からアジア各国のフェスやイベントへの出演も多かった印象があります。最近は『バズリズム02』の『今年コレがバズるぞ!2026』に選出されるなど、国内での聴かれ方も変わってきている感覚はありますか?
seigetsu「少しずつ聴いてくれる人の年齢層が下がってきた気がします。「Lucy」で注目されていた時は、音楽にかなり詳しい大人というか、そういう層が多かったんですけど、今は単純に「面白い」「かっこいい」と思ってくれる若い層も増えてきた感覚があります。」
o-png「海外だと「skin」のMVが伸びていて、特に韓国からの反応が多いです。」
――いろんなライブを経験して、出会いも増えていく中で、自分たちのやりたいことも変わってきていますか?
shunta higa「やりたいことは結構変わっていますね。一貫した方向に進んでいるというより、その時その時でやりたいことが違いますし、もっと言うとメンバーそれぞれのやりたいことも違うと思います。それぞれがぶつかり合いながら進んでいく中で生まれてきたものが、今のHOMEの過程だと思っていますし、これからもそうだと思います。」
――新曲「Deja Vu Slider」について聞かせてください。今回は初めて外部プロデューサーとしてJNKYRDさんを迎えています。HYUKOH、BTS・RM、Balming Tigerなどの作品でも知られる方ですが、彼を迎えたきっかけを教えてください。
shunta higa「今まではセルフプロデュースでやってきたんですが、次は違うことを試してみようという話がありました。そこで、自然な流れでJNKYRDさんを迎えることになりました。実際にやってみると、アレンジがすごくうまい人だなという印象がありましたね。自分たちだけでは足せなかった要素を、音の配置や音色、フレージングといった部分で、外からの目線で加えてくれた感じです。ソングライティングは基本的に僕が担当して、それをHOMEの3人で膨らませて、そこからJNKYRDさんにアレンジしてもらいました。」
――サウンドメイキングについても聞かせてください。プリファブ・スプラウトやスタイル・カウンシルのイメージがあったとのことですが、もともと影響を受けていたんですか?
shunta higa「プリファブ・スプラウトはもともと好きで、特にアルバム『Steve McQueen』のA面の曲構成が好きなんです。さっき話した「ポピュリズム的ではないポップス」の、ひとつの例だと個人的には感じています。」
――そのあたりのサウンドのイメージについて、JNKYRDさんとは事前に話していたんですか?
shunta higa「いや、そこまで具体的には話していなかったですね。でも韓国でのレコーディング前に一緒に海鮮鍋を食べたんですが、そのときに「来る途中で曲を聴いていたけど、ザ・スミスのムードやバイブスをすごく感じる」と言ってくれて。こちらから細かく説明しなくても、汲み取ってくれていたのかもしれないなと、今振り返ると思います。」
――作詞はseigetsuさんですね。「Deja Vu Slider」というタイトルは、どういうところから生まれたんでしょうか?
seigetsu「歌詞を先に書き、タイトル自体は、あとから出てきました。」
――資料にあったコメントで、日常の中でふと浮かぶ直感的なものを大事にしている、という話がありました。そういう直感が、聖書やお経に既に書かれていたりする、と。
seigetsu「そうですね。日常の中で、ふと「これってこういうことじゃないか」と思う瞬間があるんです。例えば「怒りの正体ってこれなんじゃないか」とか。自分の中では発見した感じがあるんですが、調べてみると、仏教の言葉や昔からある思想の中で、もう似たようなことが言われていたりするんですよ。そういうときに、「もうあったのかよ」と思うというか(笑)。自分が思いついたと思っていたのに、もう誰かが言っていてちょっと悔しい。そういう感覚が、「Deja Vu Slider」につながっているかもしれません。」
――アートワークはo-pngさんが手がけていますよね。seigetsuさんの歌詞や話を受け取って、そこからビジュアルにしていくんでしょうか?
o-png「はい。seigetsuの話を聞いて、それを自分なりに解釈しました。「逃げられない今の状況」みたいな。」
――seigetsuさんの言葉を、そのまま説明するというより、o-pngさんの中で別のイメージに変換されているんですね。
o-png「そうですね。」
――今日お話を聞いていると、3人それぞれに解釈があって、それがサウンドや歌詞、ビジュアルの中で共存している感じもあります。
o-png「そうかもしれないです。僕はこの曲を聴いて、「突き進め」という曲だなと感じたんです。今あるしがらみも気にせずに突き進め、というムードを感じたので、尖ったモチーフがいいなと思いました。ネジって、締めていくと突き進んでいるようにも見えるけど、同時に周りに固定されていくものじゃないですか。人生も、進むたびにいろんな物事が固まっていって、身動きが取りにくくなっていく。でも、それでも突き進むというイメージで、ネジをモチーフにしました。最初はまっすぐなネジのモチーフも考えていたんですけど、現実ってもっと複雑で、いろんなものが絡まっている人も多いと思うんです。だから、絡ませたネジにしました。ネジをねじるというか(笑)。少し笑える感じというか、コミック的な要素があるのもいいかなと思って。」
――ミックスはNewJeans、ムラ・マサ、ニア・アーカイヴスらの作品にも参加しているネイサン・ボディ、マスタリングはザ・ウィークエンド、FKAツイッグス、ザ・キラーズらの作品も手がけるジョー・ラポータが担当しています。HOMEのサウンドとも共鳴しそうなアーティストを手がけている方々ですが、完成した音を聴いて、どんな変化を感じましたか?
shunta higa「「Deja Vu Slider」自体には、80'sのシティポップやインディーポップにも通じるクラシカルな要素があると思うんです。ただ、それをそのまま懐古的なムードで終わらせたくはなくて。だからミックスやマスタリングは、モダンな質感に仕上げられる人にお願いしたかったんです。完成した音は、クラシカルな要素を残しながらも、懐かしさだけではないサウンドになったと思います。ミックスによって、曲の幅を広げてもらった感覚がありますね。」
――最後に、これからの活動については、どんなイメージを持っていますか?
shunta higa「アルバムに向かっていく予定です。」
――3人はもともと高校の同級生ですよね。音楽以外の時間も、一緒に過ごすことはあるんですか?
shunta higa「たまにですね。そんなに多くはないですけど、この間はラウンドワンに行きました(笑)。もともと高校の同級生で、卒業してもう5年になりますけど、今も沖縄をベースに活動しています。将来のことはなかなか予測できないですし、いろいろ変わっていくとは思うんですけど、今の自分たちにできることを最大限に発揮していく。そういうスタンスでやっていきたいと思っています。」
Text by 竹内琢也
(2026年7月17日更新)