ホーム > インタビュー&レポート > 懐かしくて、新しくて、極上に心地いい。 ポップス・サイケ・シティソウルが交錯した、 梅田Zeelaの一夜をプレイバック
◼︎Mama Rag
身体に心地よく"しゅんで"いく、ノスタルジックでブランニューなポップ・ミュージック
本日の一番手を担うのは2023年結成、関西発のポップ・バンド、Mama Rag。バンド名の由来にもなっているThe Band「Rag Mama Rag」をSEに登場した彼ら。Vo.寺田涼太が今日のメンバーを紹介しながら始まったのは「Skip Skip」。寺田の叩くリズミカルなカウベルのサウンドと、軽やかなドラムのキックが折り重なり、フロアのオーディエンスの心を早速弾ませていく。キャッチーながらもギミックに富んだビートがスパイスとなり、Mama Rag流のスキップを魅せる。

続く「麗らか」ではグッとアップテンポなビートに乗せたグループサウンズ的なアプローチのコーラスワークがキラリと光る。クラシックロック/ポップスへのリスペクトをしっかりと見せながらも、Mama Ragとしての好奇心をふんだんに盛り込んだ楽曲が、オーディエンスの耳を釘付けにし、目を輝かせていく。

そしてスタンドマイクに持ち替えた寺田が「楽しい曲が2曲続いたので、次はしっとりめの曲をやります」と始めるのは「星に見えてた」。The Bandへのオマージュも忍び込ませた洒脱なサウンドの中、Gt. Saboのボトルネック奏法のスムースなプレイが甘く響くミッドナンバーだ。そして、この楽曲ではGt. Saboが特に光る。後半からのジャジィなバッキングの上で深い残響音を木霊させながら、水溜まりに雨粒が波紋を描く様をギターで表現していくようなプレイは間違いなくこの日のハイライトのひとつであった。

「今の曲はキャロル・キングの1stか2ndアルバム聴いていた時に作った曲です。こんな風に色んなルーツとなる好きな音楽がありまして。それを自分なりに作ってみるというスタンスでいます。」「次の曲は70年代のレイ・チャールズやビリー・ジョエルのようなブルースを、そしてそんな彼らの曲を聴いていたであろうケン田村のような日本のシンガーの曲を聴いて、自分で作ってみたムーディな曲があるので、聴いていただければと思います」

先人たちへのリスペクトに溢れる寺田の言葉から幕を開けるのは「同じ顔」。関西弁のリリックを情感たっぷりに歌い上げる様は、寺田と同じくレイ・チャールズらに影響を受けた往年の日本のシンガー達の姿を彷彿とさせる。そしてブルースに欠かせないのはなんといってもギター。ここでもSaboの骨太なソロがオーディエンスの心を震わせる。ここで寺田がギターを持ち、おもむろにコードを掻き鳴らして始まるのは、カントリーライクでオールドスクールなロックンロール「サボタージュ」。バンド編成でのアレンジになることでよりロックで猛々しいアレンジとなった楽曲で一気にフロアの熱量を上げていく。

そしてラストを飾るのは「Clock Out」。「この曲は盆踊り、河内音頭を聴いて、そのリズムパターンを打ち込んで作曲をしていったので、その懐かしさを、特にAメロが気持ちいいので、体に"しゅまして"聴いてもらえればと思います」という寺田の言葉の通り、我々に深く馴染んだ節回しがありつつも、盆踊りのリズムパターンを打ち込んでいるとは思えないほど重厚なビートの中に、ライドシンバルを使ったフィルといったさりげない箇所に潜む盆踊りエッセンス。思わず唸ってしまう!

そしてリスペクトをリスペクトに終わらせず、独自のアレンジをしっかりと効かせているからこそ、懐かしくも新しさを持って彼らの音楽が響いているのだと気付く。この音楽を鳴らしているのは、紛うことなく、今この時代を生きているMama Ragなのだ。初めての梅田Zeelaでのライブながら、オーディエンスをしっかりと飲み込み、自分たちのサウンドをしっかりと染み込ませ、ステージを後にしたMama Ragに大きな拍手が響き渡った。
◼︎ZenPal
内なる禅性に目覚めましょう。極上のサイケデリック・ロック無常空間
二番手は2025年大阪にて結成の5人組サイケデリック・ポップ・バンドZenPal。「内なる禅性に目覚めましょう」と多言語で繰り返し語りかけるというトランシーなSE。先のMama Ragとの雰囲気の違いに、早くもこの企画の面白さに会場のボルテージが上がっていく。そんな中、スロウテンポで揺蕩うような壮大なナンバー「Another Piece of Peace」で幕を開けた彼らのステージ。重厚なベースの開放的な響きと、伸びやかなヴォーカルが蜃気楼のようにゆらめいてオーディエンスをその世界へと誘っていく。

続く「All That Mattered To You」では一転、分厚いコーラスに加え、後期The Beatles〜ジョージ・ハリスンを彷彿とさせるサイケデリックでブライトな音像がフロアを心地よく揺らす。結成して1年ほどとは思えない盤石のサウンドとアプローチの多さに思わず舌を巻く。ここから更に夢幻の扉が開き続ける。エスニックなフレージングに重心を置いた「Mickey」で醒めることのない夢の世界を描いていく。ドリーミーなキーボードとファジーなギターが絡み合うセクションでは思わず宙を見上げて心地よい音の渦に身を任せてしまう。続く「Let The Sun」ではダンサブルな変拍子に乗せた幻想的なコーラスワークで、より一層の深みへとフロアを誘っていく。まるでビーチに沈む夕日を幻視するかのようなサウンドに、思わず目を閉じて音に浸らずにはいられない。

「新人発掘型のイベントということで、新人というには歳を取りすぎているバンドなんですが、楽しく最後まで観ていってもらえたらと思います。」「FLAKE RECORDSという名店からカセットをリリースしていまして。そのカセットから一曲やります。」というVo. Koji Kuroyanagiの言葉から始まったのは「Alright Song」。Tame Impalaへのリスペクトも感じる穏やかでメロウなグルーヴを響かせる。この音に身を委ねているだけで"Everything is gonna be alright"な気がしてくるのだから、全くもって音楽は不思議な力に満ちている。

そしてアウトロのギターソロが心地よくリラックスした身体に再び熱を宿し、続くソフトロックな「New Room For Rent」へとスムーズに音を繋いでいく。心地よいテンション感のキーボードのバッキングと端正なリズムセクションが幾重にも重なったコーラスワークと混ざり合い、軽やかなギターフレーズが華を添え、アーバンなムードを生み出す。

「早いもので次が最後の曲ですが」というKuroyanagiの言葉通り、気付けばあっという間にラストの「Is Green She」へ。エスニックなヴォーカルラインと揺れの効いたキーボード&ギターが耽美に絡み合い、これまた極上のサウンドスケープが広がる。まさに時間の概念を忘れさせる「永遠の一瞬」とでもいうべき無二の空間だった。
◼︎春風レコード
涼しげな風を運ぶグルーヴィなシティ・サウンド
本日のトリを飾るのは東京より、2023年結成、シティポップ〜ミレニアルなソウルR&BルーツのJ-POPを鳴らす春風レコード。「エンドロール」のイントロを楽器陣が刻み始めたところでVo.池田 春がステージに上がり、早くもフロアから大きな拍手が湧き上がる。その拍手からオーディエンスの期待の大きさを物語っていた。一曲目から「エンドロール」というタイトルの楽曲を歌い上げるというオツなセットリスト。池田のハスキーで甘い歌声がメロウなリリックを切なく歌い上げ、フロアを春風レコードの世界へ染めていく。

「大阪のみなさん春風レコードですよろしくお願いします!今日は最後まで春風レコードと一緒に楽しみましょう」という池田の言葉に続いて、ダンサブルなビートとグルーヴィなBa.宮崎龍一のベースで幕を開けるのは「caramelラテ」。キャッチーなメロディに会場も軽やかに揺れながら、初めて春風レコードを観るであろうオーディエンスたちもサビの「caramelラテ君が淹れて」のフレーズを口ずさんでいるのが印象的であった。

続く「ブルーライト」ではハスキーな池田のヴォーカルと山下達郎へのリスペクトに溢れたGt.白瀧翼のギターリフがぐっとフロアを引き込み、メロウな音に酔わせていく。アウトロではコーラスの効いたギターソロでステージのボルテージを上げていき、勢いそのままに、ファンキーなベースラインとトロピカルなキーボードがリードする「WAVE」で畳み掛けていく。ここでクラップがフロアに響き渡り、一体感を高め合う。

「今日はGrasshopper WEST vol.8にお越しいただきありがとうございます」「去年から大阪に遠征に来させてもらっているんですけど、今日は何を食べたか発表させていただきます。大阪なのにびっくりドンキーに行きました」とゆるやかなMCで場の雰囲気を和ませつつ、ステージは佳境へ。

Key.やまもとゆきこの煌びやかなキーボードのメロディがZeelaに「夏風」を連れてくる。そして冒頭の「最低な夏が始まるよ 最高に色褪せた」「最低な夏の始まりに 最高なお知らせを」というパンチラインでグッと会場を引き込む。春風レコードの描く季節にはどれも一筋縄でいかない、複雑に絡み合った情感が潜んでいる。オーディエンスもそれぞれの夏を感じるようにゆるやかに身体を揺らしながら、エモーショナルに歌う池田の姿が眩しい。

気付けばあっという間に最後の曲「春愁」へ。テンポを落としたメロウで切ないアレンジが、今日この日の春風レコードとフロアのムードとマッチする。この夜を分かち合うような穏やかな空気に包まれながら、甘く心地よい余韻を残してステージを締めくくった。

長いポップミュージックの歴史を辿るかのように、多様なアイデンティティを持った3バンドが一堂に会した今夜。それぞれのバンドが高く飛び立つその先では、一体どんな景色が広がっているのだろうか?Mama Rag、ZenPal、春風レコードが刻んでいくこれからの音楽の未来の予感に、胸が高鳴ってやまない。
Text by 伊藤博明
Photo by 桃子
(2026年7月29日更新)
01. Skip Skip
02. 麗らか
03. 星に見えてた
04. 同じ顔
05. サボタージュ
06. Clock Out
01. Another Piece of Peace
02. All That Mattered To You
03. Mickey
04. Let The Sun
05. Alright Song
06. New Room For Rent
07. Is Green She
01. エンドロール
02. caramelラテ
03. ブルーライト
04. WAVE
05. 夏風
06. 春愁
Grasshopper
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