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「“不完全”なところが人間らしくて、素晴らしい」
ニューアルバム『imperfect』で追求したもの
その制作の裏側とバンドの在り方
androp 内澤崇仁 インタビュー

デビュー15周年の集大成となった前作『hooray』から約1年半振りとなるニューアルバム『imperfect』が遂に完成。ダンサブル、チル、ゴスペル、ミクスチャーロックなど多彩な音楽性を内包しながらも、聴き終えたあとは温かくやさしい余韻が残る一枚となっている。7月15日のリリースに先駆けて、5月9日から7月3日にかけて開催されたツアーでは、アルバム収録曲を全曲披露するというandrop史上初の試みに挑戦。今回ぴあ関西版WEBではボーカル&ギターの内澤崇仁にインタビューを行った。リリースを延期してまで、制作面で妥協すること無く追及し続けたものとは何だったのか。創作の核を担う内澤の言葉から、バンドの現在地と根底にある人間性が見えてきた。

ライブでダイレクトに受け取ってもらえる言葉を
探すようになった



――今回のニューアルバム『imperfect』の制作において、内澤さんが一番時間をかけたのはどの部分だったのですか?

「それは歌詞ですね。今年の1月にオケは全部録り終わっていて、歌だけが残ってる状態だったんですけども、2月になっても納得できる歌詞を作ることができなくて、ずっと試行錯誤していたって感じです。アルバムのタイトルをつけるきっかけにもなった『imperfect』にも繋がるんですけど、今の時代は便利になって演奏や歌も後から全て直すことができるようになりました。そういう完璧なものが作れる状態の中で、自分たちは音楽を続けていく上で何を残すべきか、何を表現するべきか、何を伝えるべきかっていうのをすごく考えるようになったんです」

――アルバムタイトルは"不完全"という意味ですね。

「そう、不完全っていうところが人間らしいし、オリジナリティーであって、それが素晴らしいところなのかもしれないと思って、アルバムタイトルを『imperfect』にしようと思ったんです。歌詞においても伝えすぎると伝わらないものがあるし、でも表現しなければ全然伝わらないっていう、そのいい塩梅をいつも探してるんですけども、そこがより難しいなって感じるようになって。いろんな音楽がある中で、andropを聴いてもらうためには何を伝えるべきか、そこを考えているとわかんなくなるんですよね。これは僕じゃなくても伝えられるんじゃないかって...」

――歌詞は全体的に言葉数がかなり少ないように感じました。

「 そうですね。ここ数年、ライブでダイレクトに受け取ってもらえる言葉をすごく探すようになったんです。目の前にいる人に届けたいっていう思いが強くて」

――ライブで聞いた時にすっと意味が伝わるように?

「その瞬間に伝わるみたいなのが1番理想的で。ただ、なんかに似てるとか、ありきたりなものにならないようにっていうところで戦わなければならないと思います」

――なるほど。音楽性についてお聞きしたいのですが、『Chronicle』(M-9)のコーラスはクワイアが似合いますね。ちょっとゴスペルちっくな曲にしようと意識されていたんですか?

「はい、そうですね。クワイアって神聖なイメージがあるんですけど、音数を少なくして、コード感をクワイアでやってみたいなって。この曲では時間の経過を表現したかったので、転調することで時系列を変えていくようにアレンジにしました」

――こういうブラックミュージックに通じるような曲は内澤さんの中にずっとあって、自然に生まれてきたのですか?

「僕もメンバーもけっこう雑食というか、本当にいろんな音楽が好きだったりするので、自然に出てきた感じです」

――楽曲のアレンジに関しては、メンバー全員でやっているのですか?

「基本的には自分が作り込んだ上で、それを生楽器に差し替えていくので、そこはメンバーに考えてもらってる感じです」



自分を鼓舞して、戒めとして歌っていけるものを
イメージした『Japanese POP』(M-2)



――ニューアルバムの話から少し外れてしまいますが、制作以外ではメンバー間でどんな話をされているんですか?

「友達とずっと一緒にいるような感じですね。僕なんか音楽を作る以外は本当にポンコツの人間なんで(笑)、何もできないんですけど。(他のメンバーから)いろんなことを勧めてもらったりしてて。色々アイデアもくれるし、楽しいですね。メンバーみんなでサウナに行ってそこで打ち合わせしたりすることもあります(笑)」

――アイデアもメンバーによって違いますか?

「そうですね、例えば"最近こういう曲が流行ってるみたいだけど、どう思う?" みたいな感じで教えてくれたり、"こういうアーティストがカッコイイと思うんだけど、聴いてみて"とか。本当に学校の休み時間みたいな話をずっとしてて。 "このピックを使ったらこういう音出るよ"とか、"このシールドを使うといいよ"とか、"このギター持ってきてみたんだけど、弾いてみて"...みたいなことをずっとやってます(笑)。ドラムの伊藤は"ドラムですごい人が出てきた"とか、ビートに関する流行りを教えてくれたり、映像面のクリエイターとかジャンル的な部分はベースの前田が教えてくれたり、佐藤はアーティストの人間性とか繋がりを教えてくれることが多いですね」

――そういう感じで楽しく情報交換をしてるんですね。

「はい、"ライブでこういう曲やってみたいんだよね"っていう提案があれば、それに応える形にしたり。僕もメンバーに喜んでもらいたいし、メンバーがやりたい音楽を作りたいので。
今はインディペンデントでやってる部分が多いので、自分たちでやるしかないっていうところもあって、お互いを尊重し合ってやってます」

――自主レーベル「image world」を立ち上げたのは2016年ですね。

「そうですね。独立して自分たちで事務所を構えてやるようになってから、全てに対してより責任感を持ってやってます」

――アルバムの話に戻りますが、先ほど触れた『Chronicle』もそうですし、今作を聴いた後には温い余韻が感じられました。これはandropのバンドとしての成熟と捉えてもいいですか?

「成熟なのか、わかんないですけど...、バンド全体の考えとして、ずっと止まっていたくないし、みんなで変化をし続けたいと思っているんです。その中で、年を取るといろんな表現もできるようになってきましたし、それぞれが成長していろんな考えもできるようになってきていて。僕は音楽は人だと思ってるんです。同じ人でも、その人の中身が変化していけば音楽も変わっていくと思っていて。それは成長なのか成熟なのかわかんないですけど、やっぱ変わり続けていってるんだと思います。同じようなことをしたくないと思いますし、周り回って、"前やったことだよね"...だったら結果として同じことでもオッケーなんですけど、前と同じことをしようとしてするのは良しとしてないです」

――それは変化であり、進化であり...

「もしかしたら退化かもしれないです。受け止めるとか、認めるというところにおいて。年を取ると、昔のように早いBPMで叩くのも大変になるでしょうし、高い声を張り上げるのもだんだんできなくなってくるし、でもそこで(バンドを)やめようじゃなくて。その中でできることもあるし、年を取ることによって気づくこともあるので、それはまず認めることによってできることだと思うんで。退化だけども、進化かもしれないと思います」

――なるほど。個人的には『Japanese POP』(M-2)が刺さりました。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンをホーフツとさせて(笑)、エッジが効いてるなと。

「そうですね。これはミクスチャーですね」

――こういう攻撃的な曲が2曲目に配置されているのも効果的ですね。

「"え? andropなの?"って(聴いたひとが)思うんじゃないかなと思って。びっくりさせたいなって。そういう曲もメンバーみんな好きですし、これもまたandropの表現の中にあるものなので」

――この歌詞は、J-POPに対する辛口メッセージのようにも聞こえました。

「そうですね...、最初はすごく否定的な歌詞を羅列してたんですけども、否定で始まって否定で終わる曲を作っていいのかっていう葛藤があって。そこで悩み出したんです」

――勢いで書いたというよりも、けっこう熟考して?

「はい、最初は勢いでしたけど、もうちょっと自分を鼓舞するようなものとか、自分への戒めとして歌っていけるようなイメージに作り変えていったって感じです」

――リリックにある<革命的一瞬を>というフレーズはご自身にも向けられているんですね。

「そうですね、100年先はもしかしたら人間が音楽を作ってないかもしれないけど、その100年先まで鳴らせるような音楽を作っていけるのかと、そういうのを常に考えていたいって思ってます。あと、(J-POPを作ってきた先達への)リスペクトもありますし。J-POPというところに身を置いてる者として。でも、それって別に音楽やってなくても、他の普通の生活の中でも考えることだなって思ったりしてます」



聴く人が前向きな気持ちに変わるように
リボンを着けて渡すような感覚で作った
『Present』(M-10)



――『Blanket』(M-6)はチルというか、ジャジーなサウンド感で、揺らぎとか余白を感じました。

「ああ、まさにそうですね。余白を感じられるテンポ感で、多くを語りすぎないようにはしました。あと、アレンジに関しても、すごい劇的に変わるっていうわけでもなく、チルい感じっていうのは生かしたいと思いました。『Blanket』って、毛布で包まれるみたいなイメージと、空白っていう意味のブランクから、自分の中で大切だと思ってるものを無くした時に、心の中に空白ができる感じがあるのと、それでも思い出すと心が包まれるような温かさがあったりするっていうような意味も込めているので。喪失してる悲しみみたいなのが描けたらいいなって...」

――簡潔な言葉の中に深い思いが込められているんですね。

「<いつかは還るから そのまま還すから>っていうラインをライブで歌った時に、"返す"ではなくて、"あの世に還る"っていう意味がどうやったら表現できるんだろうってすごい悩みました。この歌は僕らはいつか死ぬ...という意味を込めているので」

――ラストの『Present』(M-10)は?

「『Present』はアルバムの1番最後に制作してたんです。今まで続けてこれたのも、自分たちの力だけでは絶対に無理だったという思いもあって。聞いてくれている人たちに何か返したいと思って。この曲も、聴く人がワクワクするような、前向きな気持ちに変わるプレゼントになり得るんじゃないかなって思って。そんなプレゼントをリボンを着けて渡すような感覚で作りたいなと思って作った曲です」

――まさに"プレゼント"ですね。

「はい。(聴いてくれる人とは)ライブ以外では物理的な距離は遠いかもしれないけど、僕らの音楽はいつでも近くにいますというような思いを込めて」

――『Present』の歌詞は本当に書き手(送り手)の優しさが綴られていて、泣きそうになります。

「僕もライブで歌いながら泣きそうになってます、いつも。こういう思いを伝えたいんだっていう風にやってると空回りして、自分で泣いたりしたりすることが多くて」

――そうなんですね。

「コロナ禍を経て、いつまでも元気でいてくれると思ってた大切な人が急に亡くなるような経験をしたので、心の中で思っていたとしても言わなかったことだったり、隠していた気持ちっていうのは言える時に伝えないと、後々自分が後悔するなって。そこからちょっと変わってきましたね。もっと素直に"ありがとう"とか、"おめでとう"とか、"ごめんね"って言おうって思いました」

――この曲を聴いた人もそう思うかもしれないですね。

「バンドも急に解散することもあるので、続いてるだけで素晴らしいと思っちゃいます。だから、(同世代のバンドが)なんかあったら助けたいと思ったりするし、自分にできることがあればやりたいなと思ったりしますね。昔は負けないように頑張ろうとか、張り合ってたとこもあったりするんですけど。やっぱり、年を取ったということだと思います。それで色々考えるようになったし」

――近年はコロナもあったり、国内外の情勢が不安定だったりして、なかなか心が休まらないから、みんなどこかで安らぎや優しさを求めてるのかなって思います。

「すごくそう思います。作る側としてもこんなに世の中は辛いのに、音楽くらい幸せなことを伝えたい、喜ぶようなものにしたいって思っちゃうんですよね。変に尖ったりする必要もないのかなって。無理にカッコつけてる人がカッコイイと思えないっていうところもあったりするし、ちゃんと伝えるために、ちょっとカッコ悪くても、それを伝えるために必死になってる人の方がカッコイイと思っちゃうっていうか...」

――内澤さん自身もそういう生き方をされてると?

「僕もそうでありたいと思います」



ジャイガは第一回目から出演
10周年でまた呼んでもらえて嬉しい



――このニューアルバム『imperfect』の曲がライブでどんなふうに演奏されて、どんなふうに歌われていくのか楽しみです。HPで内澤さんが『Easy』(M-3)は「動き出した先で見えてくるものや、考えるより先に体が反応する瞬間を歌った曲です。ライブでこの曲がどう変わっていくのか楽しみ」と綴られていましたね。

「家で聴く環境と、ライブで聴かれる環境って違うから。表現も違っていていいと僕は思っていて。ライブで余韻も楽しみたいんだったら、アウトロを長くすべきだし。サブスクで聴く時はワンクリックで次の曲に飛ばされてしまうから、飛ばされないようにミックスとかアレンジとか、聴かれ方を考えたりするんです」

――今後も変わっていきそうですね。

「変わっていくと思いますね。メンバーが楽しめる部分だったり、面白い部分が有機的に変わっていくと思います」

――今月は7月26日にOSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2026』(以下、ジャイガ)に出演されます。

「ジャイガは第一回目から出させてもらってるので、けっこう思い出深いですね。1回目に出た時は夕日がすごい綺麗だったんです。照明の人も、""夕日が綺麗だったから照明をつけなかったって言ってたくらいで、会場の環境と音楽とお客さんがすごく印象的でした。今年はジャイガ10周年で、また呼んでもらえたのでとても嬉しいです。andropを知らない人も巻き込めるくらい楽しいライブにしたいと思ってます」

Text by エイミー野中




(2026年7月 8日更新)


Release

NEW ALBUM 『imperfect』

2026年7月15日(水) 発売

■初回生産限定盤 (3枚組)
15400円(税込) / PECF-9072
■通常盤
3300円(税込) / PECF-3305

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Profile

アンドロップ…内澤崇仁(Vocal&Guitar)、佐藤拓也(Guitar&Keyboard)、前田恭介(Bass)、伊藤彬彦(Drums)による4人組ロックバンド。2009年12月に1stアルバム『anew』でデビュー。 メジャーデビューから3年で国立代々木競技場第一体育館で1万人を動員する単独公演を開催。数々の映画やドラマ主題歌、CMソングを手掛けるなど楽曲の注目度は高く、ミュージック・ビデオもカンヌ国際広告祭(フランス)、One Show(アメリカ)、Webby Awards(アメリカ)ほか国内外11のアワードで受賞するなど、その映像世界やアートワークでも 世界的な評価を得ている。2016年にレーベル「image world」を設立。2024年12月、デビュー15周年の集大成となるアルバム『hooray』をリリース。2026年7月15日、ニューアルバム『imperfect』リリース。

Live

androp one-man live tour “angstrom 2026”

【大阪公演】
▼10月17日(土) 梅田クラブクアトロ
【愛知公演】
▼10月18日(日) 名古屋クラブクアトロ
【東京公演】
▼10月31日(土) 渋谷クラブクアトロ


androp -17th Anniversary Special Live- at Billboard Live

【神奈川公演】
▼12月7日(月) Billboard Live YOKOHAMA


『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2026 -THANKS 10TH GIGA-』

▼7月25日(土)・26日(日) /8月1日(土)・2日(日) 舞洲スポーツアイランド

※andropは7月26日(日)15:20~SKYARENA STAGEに出演予定


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