ホーム > インタビュー&レポート > 大阪は、ずっとずっと彼らを待っていた Suchmos『The Blow Your Mind TOUR 2026』 @Zepp Osaka Bayside DAY.1ライブレポート
「Suchmosが」
「大阪で」
「くるりと」
「ライブを行う」
文字にするとなんてことないが、この夜のZepp Osaka Baysideにどれだけの人の "待ってました"の気持ちが溢れていただろうかと、今考えても震える思いがする。
それには訳がある。先ほども述べた、幻の『The Blow Your Mind TOUR 2020』は今回と同じZepp Osaka Baysideで開催予定だったことが挙げられる。いまいち正体と怖さを掴みきれないコロナウイルスに阻まれ、叶わなかったツアー。6年という膨大な時を重ねて、ようやくこの場所へとつないだことは大きい。そして大阪に限定すると、まだまだストーリーがある。2018年、大阪・泉大津で企画されていた野外音楽フェス『OTODAMA'18』は活躍の勢い止まらぬ当時結成6年目だったSuchmosに白羽の矢を立て、彼らは大浴場ステージのトリを務めることが決まっていた。ところが開催前日に発生した台風21号の影響で会場設備が損傷。それにより開催を中止せざるを得なくなってしまった。その後Suchmosは2021年に「修行の時期を迎えるため」としてバンド活動の休止を発表。2024年にバンド活動再開を発表し、2025年に横浜アリーナで復活ライブを行うまで長い時間を要した。
彼らの活動再開に伴って2026年5月上旬、『OTODAMA'26』にSuchmosが出演すると発表された。大阪で、しかも泉大津で、準備は整った。完璧に整っていたのだ。ところが無情にも開催前夜に吹き荒れた暴風により会場設備が損傷し、またも開催中止が決断された。彼らが立つ予定だった初日のジェットバスステージにはくるりも出演予定で、今回の公演を前にSuchmosとくるりのライブを同じ会場で見られるチャンスはあるはずだった。
だからこそ会場内に渦巻いていた "待ってました"の想いは天井知らずで、観客はもちろん、この公演を実現まで導いた在阪スタッフ・関係者全員の待ち焦がれた気持ちもこの場の高揚感を作り出していた。
●くるり
この日のくるりは、岸田繁(Vo&Gt)と佐藤征史(Ba)に加え、松本大樹(Gt)、野崎泰弘(Key)、senoo ricky(Dr)の5人編成。ギターのイントロだけで雑多なアジアの街の香りが漂ってくる「琥珀色の街、上海蟹の朝」でライブが始まった。岸田はハンドマイクを握りしめ、言葉をひとつひとつ丁寧に放っていく。気だるく、湿度を感じるゆったりとしたスタートだ。そして岸田がアコースティックギターを持ちポロリポロリと情感豊かな音と歌が心を奪う「The Veranda」へつなぐ。

ここからが怒涛だった。イントロたった2秒で歓声と手拍子を誘った「ばらの花」、そして初期のくるりを代表する1曲である「虹」からいつ・どんなシチュエーションで聴いてもエモーショナルな気持ちを呼び覚ます「東京」へ。そしてクラシックの要素を大胆に取り入れ、ゆったりと壮大なサウンドスケープを描く「ブレーメン」だ。大胆で無骨なバンドサウンドで奏でられ、岸田が歌う言葉がより強固なものとして心に響く。そして極め付けは、「ロックンロール」である。もちろんくるりを聴いてきた者にも歓喜の構成だが、世代が異なるSuchmosのファンにも「ね? 聴いたことあるよね?」と肩を揺さぶりたくなる彼らの珠玉の名曲が次々耳と目に届く。1990年代から2020年代の曲まで、本当に幅広く。それはもう、歓喜でしかない。

合間のMCでは、Suchmosはいいバンドで好きだったこと、そして呼んでくれたことへの感謝を伝えた上で...「実は今日初めて喋ったよね」という岸田と「これまであんまり、会ってないですね」という佐藤の発言に会場がざわつく。え? そうなん? という反応だ。フェスでは顔を合わせていたものの、話し込むチャンスはなかったらしい。そしてこの日が、実質ガッツリと初対面。「俺、一方的に聴いてますって言ったら、新しいアルバム(2月に発売した『儚くも美しき12の変奏』)めっちゃよかったですって言ってくれはって」と言う岸田に、「ありがたい話です。呼んでいただいて、本当にありがとうございます」(佐藤)と感謝を述べる。

このツアーを前にSuchmosが公式Xに投稿したメッセージはこちら「"2マンで"ご一緒」するのが初めてかと解釈していたが、本当に初対面だというのは確かに意外だ。『OTODAMA'26』が開催されていたら、Suchmosとくるりの面々はあのだたっぴろい泉大津フェニックスでビール片手にこのツアーの話をしていたのではないかという想像もしてしまうが、この日初対面が叶ったのだから何よりだ。この日から彼らの関係性が始まるのだから。

そんなことを考えていたらラストソング「潮風のアリア」が始まる。この日のくるりのライブは歌だけでなく、歌のないイントロやアウトロ、間奏など演奏を聞かせる部分にもハイライトが数多くあった。5人それぞれの楽器がしっかりと大きな音を出しながら、調和したアンサンブルを奏でる。演奏で聴かせ、魅せることの凄み。それは「潮風のアリア」のラストに色濃く、5人の後奏はどう考えても余韻が残るとわかる音をしていて、体内に蓄熱するように音が溜まっていくのを感じる数分間。すると突然、全員がスッと下を向くと音が途切れ、ステージの照明も落ち、演奏を終えた。この効果が凄まじく、余韻すら回収するような終わり方で驚いた。一瞬何が起こったかわからないほど、音がいなくなった。あぁ、また新しい体験をした...! 何度見ても、斬新な驚きを示してくれるのがくるりのライブだ。この夜のくるりの奏でた音を、Suchmosのメンバーはどう受け止めただろうか。

●Suchmos
2026年2月に正式加入した山本連(Ba)を迎えたYONCE (Vo) 、TAIKING (Gt) 、TAIHEI (Key)、 Kaiki Ohara (DJ) 、OK (Dr)ら新生Suchmosのライブは、冒頭3曲に"今・ここで"披露されることの意味を大いに感じるものだった。YONCEが「Suchmosです、よろしく。ご自由にどうぞ」と始めた「MINT」の曲中では「気の抜けたコーラでも飲んで」という一節を「冷えたジンジャエールでも飲んで」と、くるりの名曲にかけて歌い替える。その驚きは、隣の見知らぬ方に「今、ジンジャエールって言いましたよねっ?」と話しかけそうになったほどだ。曲は「戦争は儲かるか? 平和はゴミか?」という歌詞が叫ばれる「Alright」へ。2026年の今あまりに生々しく響くフレーズだが、若い世代にも絶大な求心力を持つ彼らに世の中への視点があることを感じさせる大事な曲だ。そして昨年リリースされた「Whole of Flower」が続く。ゆったりとした音の余白が感じられる、バンドの新しい一面を提示したシティポップサウンド。バンドを再び動かすことの決意が滲む歌詞を、YONCEの歌声でなぞっていく。

YONCEはくるりを「めちゃくちゃかっこいい先輩バンド」と讃えながら、10年前のエピソードに触れた。2016年にFM802らが主導して企画された春のキャンペーンソング「Hello Radio」。
楽曲を制作したのがくるりの岸田で、その歌唱チーム「ザ・プールサイド」に木村カエラやKREVAらと共に参加したのが、駆け出し頃のYONCEだ。「尊敬するシンガーソングライターの曲を歌うことに緊張感もあったし、光栄であると共に大丈夫かなぁと思いながら。あの時はまだプロとアマチュアのはざまの時期だったのかもしれないけど...今も変わらない気がする」と語った言葉がそのまま歌詞にも綴られている「DUMBO」へとつなぐ。

中盤では「Fruits」、どこかサイケな香りを放ちつつ都会的な夜のニュアンスを併せ持つ新曲も披露。ここまで体を揺らして楽しんでいた観客たちはピタリと動きを止め、新曲の1音1音まで聴き逃すまいとする姿は、彼らの最新形への期待の表れだ。後半に突入し「A.G.I.T.」「YMM」では一転して演奏の攻撃性が前面に出て、ガンガン観客を煽る。


そしてやはり「STAY TUNE」の"ギュゥーン"が鳴った瞬間の高揚感は、ここに集まった全ての人にとって特別だった。Suchmosを世に知らしめた代表曲だが、その意味合いは少し変化したように見えた。かつては"東京的/都会的クールネス"の象徴となっていた曲が、YONCEの感情を露わにした歌い方とバンドの剥き出しの音とパフォーマンスが、より泥臭く人間的な熱を帯びたものに思えたからだ。曲が「GAGA」から「VOLT-AGE」へ向かうラストスパートでは、バンドのフィジカルな強度がよりむき出しになっていく。ひとりひとりの演奏力が極めて高いからこそ成立する爆発力。特に「VOLT-AGE」でのYONCEの絶唱は圧巻で、活動再開を機に新しい"Suchmosが始まっている"ことを強く感じさせるクライマックスだった。


アンコールではYONCEが大阪にまつわる話をする場面も。中でも『OTODAMA'26』が中止になってしまったこと、さらに8年前の中止にも触れて「非常に無念だったので、来年なのか再来年なのか、(清水音泉の)清水さんがその気になったら呼んでいただきたいと思います」という言葉に大きな拍手が送られる。では最後に1曲と演奏されたのは「Life Easy」だった。TAIHEIのピアノの音がなめらかに響くジャズアレンジで、大阪公演初日をやわらかく締め括った。

実は本編ラストの「VOLT-AGE」は5人の楽器の爆音が渦を作り出し、自分たちがまるで台風の目の中に取り残されてしまったような終わり方をしたのがとても印象的だった。メンバーがステージ袖へと去り、照明が落ちる。するとステージに掲げられたバックドロップに印刷されたSuchmosの白いロゴがぼんやりと暗闇に浮かんでいた。真っ暗な会場、「VOLT-AGE」の音の余韻、アンコールを求める手拍子。会場の照明が灯った瞬間目に飛び込んできたのは、Suchmosのロゴに重ねてプリントされていた『The Blow Your Mind』というツアータイトルの赤いロゴだった。ライブ中もずっと目に入っていたが、会場が一度暗転して再び明転したことで鮮烈にこの赤が目に飛び込んできたらしい。まさにこのタイトル通り2組の楽曲とパフォーマンスに感動し圧倒され続けた約3時間。この『The Blow Your Mind TOUR 2026』は、7月2日(木)ゲストにFujii Kazeを迎える東京・Zepp Haneda公演まで続いていく。

この大阪公演を経て、Suchmosとくるりが紡ぐ新しいストーリーにも大いなる期待を寄せて。
https://x.com/Kishida_Qrl/status/2059858408128565479
https://x.com/Kishida_Qrl/status/2059860877147602992
https://x.com/Sato_Qrl/status/2059288053748039913
https://x.com/Sato_Qrl/status/2059618777931862158
https://x.com/suchmoz/status/2059633959915655501
https://x.com/suchmoz/status/2059268976711241766
取材・文/桃井麻依子
(2026年6月 3日更新)
発売&配信中
[CD]2200円/KSCL-3600
[収録曲]
01. Eye to Eye
02. Marry
03. Whole of Flower
04. BOY
配信リンクはこちら
【神奈川公演】
▼5月14日(木)・15日(金) KT Zepp Yokohama
[共演]IO
【愛知公演】
▼5月20日(水)・21日(木) Zepp Nagoya
[共演]GLIM SPANKY
【大阪公演】
▼5月26日(火)・27日(水) Zepp Osaka Bayside
[共演]くるり
【福岡公演】
▼5月29日(金)・30日(土)Zepp Fukuoka
[共演]長岡亮介
【北海道公演】
▼6月4日(木)・5日(金) Zepp Sapporo
[共演]cero
【宮城公演】
▼6月13日(土)・14日(日) SENDAI GIGS
[共演]ハナレグミ
【広島公演】
▼6月20日(土)・21日(日) BLUE LIVE 広島
[共演]GRAPEVINE
【新潟公演】
▼6月25日(木)・26日(金) NIIGATA LOTS
[共演]The Birthday
【東京公演】
▼7月1日(水)・2日(木) Zepp Haneda(TOKYO)
[共演]Fujii Kaze
※全公演予定枚数終了
【宮城公演】
▼2027年3月13日(土)・14日(日) ゼビオアリーナ仙台
【福岡公演】
▼2027年4月16日(金)・17日(土) マリンメッセ福岡B館
【神奈川公演】
▼2027年4月24日(土)・25日(日) Kアリーナ横浜
▼2027年5月1日(土) 18:00・2日(日) 16:00
GLION ARENA KOBE
全席指定-15000円
Under18-10000円
※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)、大人1名につき子供1名まで膝上可。但し座席が必要な場合はチケット必要。入場時に生年月日の確認を実施いたしますので必ず身分証をご持参下さいませ。該当する年齢の身分証が無い場合は入場できません。その際の払い戻しは致しません。あらかじめご了承ください。
[問]清水音泉■06-6357-3666