ホーム > インタビュー&レポート > 「“それでも一緒にいる”ことを鳴らしたい。 葛藤も衝突も抱えながら、4人で進み続ける」 20周年を経たThe Novembers、 新EP『合奏する、エンジン』を携えツアー開催
――まずは昨年11月、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)の感想からお願いします。
高松「20周年記念公演で、そういう日にたくさん人が集まってくれたことがとにかく嬉しくて。最初から最後まで、ただ感謝でしたね」
ケンゴ「そうだね。感謝しかないのと、これからもよろしくって感じでした」
吉木「うん、自分たちらしさが出てたんじゃないかなと思います。あと、小林くんが終わった後に言ってましたけど、まだもっとやれそうな感じもしたし」
小林「そう。僕が憧れてきた先人たちの渋谷公会堂、そのステージと比べてどうだったのかなって意識しちゃうんですね。全然まだ話になんない、もっともっと何かできたんじゃないか、っていう気持ちになったし、The Novembersには渋公ちっちゃいな、って言われるくらいにならないと。その意味で、もっと楽しませたい、まだやることがある、次のチャレンジを何かやらなければっていうモチベーションがすごく湧きましたね」
吉木「そうね。落ち込むっていうよりはエネルギーが湧く」
小林「落ち込んだけどね、俺は(笑)」
――あのライブが終わった時点で、次のヴィジョンは決めていました?
小林「実は今回のツアー日程はすでにあったんですけど。ただ、これを何のツアーにするのか、僕たちが決めあぐねていたところがあって。20周年がひとつ区切りになったこともあって、そこからはバンドそのもの、あとはそれぞれの価値観とか人生観を反芻する数ヶ月だったんですね。それは必ずしもポジティブなことばかりじゃなくて。40代になったそれぞれの葛藤だったり、超えなきゃいけないハードルだったり。20年間培ってきたもの、20年間溜まってきたものが四者四様あったのが正直なところで」
――......どういうことでしょうか。
小林「僕らは学校のクラスメイトからスタートしたぶん、たぶん他のバンドよりも価値観の衝突が、よく言うとマイルドなんです。悪く言うと "まぁいっか、あいつああいう奴だし"みたいな、甘えとも依存とも言えるものがあって」
――とはいえ衝突って、今さら喧嘩とかしないですよね。
ケンゴ「今さらするんですよ(笑)」
小林「どこまでもバンドだな、どこまでも人間だなって思う。いい音楽を作るだけだったら、葛藤はたぶんないんですよ。どれだけ辛くても行きたい場所に向かって頑張ってる、人生はそういうもんだって思えるから。そうじゃなくて、人間模様で、ただ喧嘩をしてました(笑)」
――もう少し具体的に教えてもらえますか。
吉木「まぁ俺が起因になって不穏になることが多いんですけど。さっき小林くんが言ってた、クラスメイトだから衝突がマイルドになるっていうの、俺はもうやめたいなと思っていたんですね」
小林「うん。吉木くん、去年の3月くらいから"渋公をどう成功させるかによっては進退考えようぜ"って言ってたもんね」
吉木「そう。これは俺も含めて全員に言えることですけど、コロナ禍の後またThe Novembersで集まったけど、活動と生活スタイルが多少変わったんですよね。それぞれ生きていかなきゃいけないし。そこでスケジュールを合わせるのが難しくなってきた。ライブ前にリハ入るのも難しかったりして。そこに僕がものすごくモヤモヤしてきて。"こんな活動ペースだったら俺もうやれないっすよ。1回休みたい"って話を3人にしたんですね。"みんなの人生の軸足ってどこなんですか?"っていうことも話したし。単純に言うと、もっと頑張んないとヤバい、ナァナァでやっていくのはどうなんだ、みたいな。ただダラダラ続けるんだったらやりたくなかった」
――膝を突き合わせて話し合ったんですか。
小林「そうですね。青春の延長として僕らを包んでくれていたもの、純粋さとか、何とかなるでしょみたいなケセラセラの精神が今まであったと思うんです。それを失ったわけではないけど、でもそれだけでは立ち行かなくなることが増えていて。その危機感を察知するの、たぶん吉木くんが一番早かった」
――もうバンド内は大丈夫なんですか?
ケンゴ「んー、でも個人的に言えば、バンドが大丈夫だったことなんてないんです。今大丈夫だなって思いながら続けてなかったし、大丈夫になることが目的でもなくて」
高松「うん」
小林「その検証すらしてなかった、っていうのがこれまでだよね」
ケンゴ「ただ、祐介が今言ったように、それだけじゃ立ち行かなくなることはあるのかもしれないって思ったところはあった」
――高松さんはいかがですか。
高松「.........大丈夫じゃないですかね?」
一同「ははははは!」
高松「ケンゴくんの言う通りで、それぞれに大丈夫じゃない時期、危ない時期はあったと思うし。ただ、大人になってくるとぶつかる内容が変わってきたのかな。それぞれ違う人間が集まってるんだって、年を取ってよけい感じるようになってますね」
――このEPがこういう作品になったのはわかる気がします。ポジティブ一辺倒では決してない、苦しさや切なさも滲む4曲。
小林「葛藤の中で絞り出したというか。11月にアルバムをドンと出す案もあったんですけど、ただ、今何かアクションを起こしたかった。アイディアは吉木くんから出たんですけど、今の気持ちが入ってるこの曲だからこそ、コンセプチュアルにEPでまとめたい気持ちがあったんですね。自分たちの人生模様をちゃんと表現できる作品にしたいっていう思いもありましたね」
――小林くんのコメントには「それぞれのパーソナリティが反映された」という言葉もあります。そこも選曲ポイントになってます?
小林「もちろんあります。たとえば1曲目の「HERO」は吉木くんがすごくよかったって言ってくれて、じゃあもっとこうしようかなって思い直せた曲だったし。この人がこの曲をリードしてくれたとか、この人の持ってる美学に影響を受けたとか、モチーフになってる言葉があるとか。そういうところから決めていきましたね」
――それぞれ聞いていきます。「HERO」は吉木さん推しの曲。
吉木「そうです。小林くんのデモって二種類あるんですけど、もともと曲が強いものと、作りながら完成した時に一気に力が宿るものがあって。これはもう圧倒的に前者だったんですよ。デモの段階からすごくパワーがあって、手を加える前から普通にいい曲。エネルギーがすごくあった」
ケンゴ「突破口になりうる曲。そういう予感はビンビンでしたね」
小林「これ、シンプルに、アルバム『The Novembers』の次に再生される曲っていうイメージだったんですね。仮タイトルは「New horizon」、新しい地平で。たぶん今、バンドがそういうものを求めているんだろうなっていうテーマで作り出していったんです」
高松「今までのThe Novembersって、正義感とか使命感があるものを避けてきたんですよ。でもここに来てこういう曲ができるようになって。新しいThe Novembersが来たな、って感じでしたね」
――これはたぶん、今だから書けた歌詞ですよね。先人たちから受け取ったものを、次は自分たちがヒーローとなって与えていく。
小林「そうですね。あと僕らが思ってる以上に、強者と弱者の構造って簡単ではなくて。じゃあヒーローは誰が救ってくれるんだ?みたいなところから着想を得てるところもあります。最終的には誰もが葛藤しているし、誰もが問題を抱えているっていうテーマになった気がしますね。世界は救えないかもしれないけど、目の前にいるこの小さな子供だけは絶対に守る、この子にとって自分は絶対的なヒーローであるべきなんだ、みたいな、一人の人生に立ち返ることでしか今の世の中って希望がない気もするし。紛争とか政治のことを考えていくと、世界の構造含めいろんな病理が極まってる時代だと思えちゃうんですよ。考えれば考えるほど辛くなる。そのやるせなさも書いた気がします」
吉木「この歌詞読んだ時さ、フレーミング・リップスの「Waiting for a Superman」を思い出した。あれって"スーパーマンの苦悩を誰が理解してあげられるんだ?"っていう歌詞で」
小林「あぁ。近いかもしれない」
――この曲はゲストに阿部芙蓉美さんが参加しています。
小林「芙蓉美さんのファンが多いんですよ、このバンドは。交流もありましたし。だから、コラボしできたらいいんじゃないか、コーラスで参加してもらったらいいんじゃないかって話は以前からあって」
――温めていたアイディアがようやくハマった。
小林「そうですね。もともとはソウルフルなバックコーラス、ゴスペルみたいなものをでっち上げてたんですよ。でも、自分たち独自のアンニュイさが勝手に出てきてしまうところもあって。そこを芙蓉美さんが守護天使みたいなイメージで仕上げてくれて。すごくよかったです」
――続いては「The Singing Engines」。
小林「これは高松さんがテーマになってる曲」
高松「なんでなの? 俺、理由は知らないから」
小林「もともと僕と高松くんはDIR EN GREY とか黒夢とか、ゴスの世界からやってきた子供達でもあって。あとは高松がプチブラ(Petit Brabancon)やってることで得たヘヴィネス。この曲は作ってる段階からそういうニュアンスを帯びていたので、高松くんがプチブラから持ってくるヘヴィネスを存分に表現できないかと思ったんですね。The Novembersでこういう曲をやるのって初めてなんですよ。メタルっぽい曲とかハードコアっぽいものはやってきたけど、ヘヴィロックの方向に振り切れるのは、実はやったことがなくて」
ケンゴ「うん。すごくボトムが低くて、でも綺麗で。そういう曲が初めて作れたなって思った」
高松「意外と僕は違和感なかった。でもすごい格好いい曲になったから嬉しいです。4曲の中でもこの曲だけいいスパイスになってると思う」
吉木「僕はこれが一番難しかったですね。最後の最後までずっと小林くんと話してた」
小林「とにかく生ドラムで何が起こせるか。今回マシンはあえて使わないようにしていて。吉木くんが持ってる人間のリズム、感情とか。人の躍動感とテンションをどれだけ音そのものに宿せるのか、すごく試された曲ですね」
――対照的なのが「遥か彼方」。綺麗な曲です。
小林「これは僕がパーソナリティの設定になっていて。僕の人生って、けっこうボーイ・ミーツ・ガール的なものが大事な原風景としてあって。もちろん人が人に恋することに性別も条件もないんですけど、少年が誰かに恋をすること、すごく僕の人生を左右してきたんですね。ただ、ボーイ・ミーツ・ガール的な青春って平和の中で守られてきたことでもあって。今、"あの子に会いに行こう"ってドアを開けた瞬間、銃弾が飛び交って、その瞬間人生が終わってしまうことも容易に想像できる世界じゃないですか。もうそれだけで胸が苦しくなるし、この少年は何のために生まれてきたんだろうって気持ちになっちゃうんです。それを構造のせいにして憎むだけでは到底納得できないし、もちろん解決しない。そういう葛藤だとか、勝手に出てきてしまう悲しみとか、ポップな曲調だからこそ色濃く出たと思いますね」
――〈消えそう/消えそう/消えないでよ〉の一言が沁みます。ただ好きな子に会いたいな、という歌ではない。
小林「そうですね。ほんと考えていくと頭がおかしくなりそうだけど。でも、たとえばケンゴ少年がドアを開けて好きな子に会いに行こうとした時に、世の中の不条理で、会いに行くことも叶わないかもしれない。もちろん今ケンゴくんはこうやって現実世界を生きてますけど、そういうパラレルワールドを考えていくと、海外の紛争地域にもケンゴ少年はいるわけですよね」
ケンゴ「そうね、わかる」
小林「全部の少年と俺は繋がってるんだ、みたいな気持ちになるし。そういう当事者意識をみんなが持っていたら"こいつは俺なんだから傷つけちゃいけない"って言えると思うはずなんですよ。本来、人って」
――最後は「合奏-Hold me Hold me Hold me-」です。
小林「ケンゴ・パーソナリティですね。ケンゴくんが持ってる詩人としての佇まい。これは土屋昌巳さんの言葉ですけど、"ケンゴくんは詩人だ、詩人とは生き方の話で、職種ではなく哲学なんだ"って。ケンゴくんって、コンテンツ消費と体験の違いを体現してる人なんですね。本を読んだりするのもそのひとつですけど、そこで味わった何かが間違いなく人生に爪痕を与えていて、それに対して体がちゃんとリアクションを起こしてる。ただ消費されていく何か、に終わらせてない。普段から"バンドってこういうもんじゃねぇのかよ"みたいな話をするのはケンゴくんが多いから」
――この曲、びっくりしたのがギターの音色です。こんなエレキギター然とした音がノベンバから聴こえてくるんだと思って。
ケンゴ「あ、確かにね」
小林「あえて、ね。エフェクターをドーンと持ってきてもらって......」
ケンゴ「どれも使わない(笑)」
――ギミックのない、ロックバンドらしい合奏を感じます。
小林「そうですね。合奏を大事にしました」
――あと気になったのが歌詞。なんで〈ここにいたんだよ僕らは〉って過去形で書くんですか?
小林「あぁ......そっか、そう言われると遺言みたいに取れますよね(笑)。それよりは、自分たちでこれまでの自分たちを発見してる感じなんですよ。"あ、俺たちここにいたじゃん。音楽が流れるたびに息を合わせてたじゃん"って。それこそ高松くんが言った、大丈夫、っていう考え方に近いのかな」
――呼吸を合わせて演奏することは、かつて「ANGELS」でも歌っていました。あれから時間が経って、今の気持ちって変わるものですか。
小林「そうですね。より、これってすごく素敵なことなんだ、これはいろんな人たちが必死こいてやってることなんだって、強く感じてるかもしれない。バンドに限らず。たとえば7人で無人島に遭難して生き残るみたいな冒険活劇ってよくありますけど、"こいつパッとしねぇな"とか"こいつトラブルメーカーだな"みたいな奴が、要所要所で、そいつがいなかったら解決しなかったシーンがあるんです。この7人だからちゃんと生きて帰ってこれた。そのドラマって、"それでも一緒にいられるかどうか"が結末を決めることで」
――合わないところを認め合えるか。もしくは、一緒にいようとする努力を続けられるかどうか。
小林「そうです。現代人って効率化とか最適化ばっかり重視してて、"この時間になんか意味あるんですか?"ってよく言うし。人とはあんまり深く関わらない、無味無臭な生き方がスマートとされるじゃないですか。僕はむしろ昭和的な価値観に立ち返ったほうがいいことが起こるんじゃないかなって思うんです。もちろん昭和のダメなところは過去に置いてきていいと思うけど、人と人が一緒にいるって、淡白な態度だけでは何も起こらないし。そんな人生まっぴらごめんだよっていう気持ち、みんなどこかにあると思うんですね。時代錯誤かもしれないですけど、不器用だけど、人間臭さが凝縮されて、それぞれの実体がある生き方。そういうものを今後のテーマにしたいっていう曲でもありますね」
ケンゴ「うん。もうバンドに限らない話だと思います。全然違う人間が、ひとつのことに対してそれぞれアプローチして、ズレが生じるからこそ熱を帯びること、何にでもあると思ってる」
吉木「それって、社会、って言葉になると思うんですね。誰かと合奏してると、ほんとその人のパーソナリティが演奏に出てくるんですよ。性格そのものが出てくる。逆に自分のドラムを家で録音して全部クリックに合わせていくと、そっちのほうが全然面白くないなと思ったり。生きていくってそういうことの連続で。他人とズレること、それでもこの4人が集まってることも含めて、この社会を感じる言葉だと思いますね」
――いいタイトルですよね。『合奏する、エンジン』。
小林「一緒にいよう、っていうことですよね」
ケンゴ「Be Togetherってこと」
――ここからツアーが始まります。かなり久しぶりですね。
小林「ツアー自体、去年はしてないからね。2年ぶり、2024年のリリース・ツアー以来で。久しぶりのツアーであることの意味と価値は、セットリスト、演奏そのものからも感じてもらえると思うんです」
――新曲は4曲とも聴けますか。
小林「聴けます。あと、今のご時世を考えた時、僕は毎回これが最後になるかもしれないっていう実感があるんですよ。だから後悔のないライブを1日1日積み上げていきたくて。渋谷公会堂の時みたいに、もっとこうだったら、みたいなことがないように。ちゃんと本当の意味でありがとうって言ってステージを降りられるような、そういうライブを重ねていきたいですね」
ケンゴ「うん。20周年でいったん区切りがついたから、これからのモードをしっかり見せるライブをして帰りたいと思います」
高松「そうですね。自他共に楽しめるツアーにしたいなと思ってます。21年目のThe Novembersをちゃんと語っていきたいなと」
吉木「ライブは一生懸命やるだけですけど、20周年を経て、またちょっと新しいものが見せられるような、ちゃんと階段を登ってるところを見せられる予感はありますね。セットリストも面白いんじゃないかな」
Text by 石井恵梨子
(2026年5月22日更新)
[Track List]
01. HERO
02. The Singing Engines
03. 遥か彼方
04. 合奏 -Hold me Hold me Hold me-
配信リンクはこちら
小林祐介(Vocal & Guitar)、ケンゴマツモト(Guitar)、高松浩史(Bass)、吉木諒祐(Drums)。2005年結成のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTより1st EP『THE NOVEMBERS』でデビュー。2013年10月には自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、以降も精力的にリリースとライブ活動を重ね、「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする数多くの国内フェスティバルに出演してきた。また、国内にとどまらずタイ、中国で2年連続のツアーを敢行するなど、アジア圏へも活動の幅を広げている。2025年に結成20周年を迎え、11月20日には渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)にて、単独公演としてはバンド史上最大規模となる結成20周年記念公演「Your November」を開催し、チケットは完売を記録した。
【北海道公演】
▼5月22日(金) 札幌近松
【愛知公演】
▼5月27日(水) 名古屋クラブクアトロ
▼5月28日(木) 19:00
梅田クラブクアトロ
スタンディング-5500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学割スタンディング-2500円(当日要学生証、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
※学割チケットは当日、学生証の提示が必要です。提示のない場合は一般チケットとの差額\3,000をお支払いいただきますので予めご了承ください。
[問]GREENS■06-6882-1224
Official Website
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