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“めったにない”組み合わせ、
向井秀徳アコースティック&エレクトリック×柴田聡子
『めったにない』ライブレポート

“めったにない”組み合わせによる心斎橋JANUSの弾き語りツーマン企画…、その名も『めったにない』。小原綾斗(Tempalay)×さかしたひかる(ドミコ)、清水英介(Age Factory)×サイトウタクヤ(w.o.d.)、君島大空×柳瀬二郎(betcover!!)、TENDRE×藤井怜央(Omoinotake)などの名勝負も記憶に新しいが、4月6日の今回は向井秀徳アコースティック&エレクトリック×柴田聡子。

【柴田聡子】

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19時5分。先攻の柴田が舞台に現れる。『こんばんは、柴田聡子です。「HAPPY DAY」という曲です』。簡潔な言葉から、ゆったり落ち着いた声で歌われて穏やかに始まる。曲終わり、『ありがとうございます』とひとこと。バンドセットでは曲終わりに『センキュー』と言われるが、同じ意味の言葉でも英語と日本語では受ける印象も違う。でも、全体的に低いトーンは変わらない。『次は「ニューポニーテール」という曲です』。ハミングが聴こえてくるが、先程よりは少し高めの声であり、ギターの鳴りも響く感じ。一般的にはPAとも呼ばれる客席後方に設置されたミキシングコンソールを操るのは、Dub Master X(FOH)。日本のサウンドエンジニア界における大御所だが、刻み響くギターリフなど、じっくり一音一音を聴かせてくれる。全体的に可愛らしい歌詞だが、終盤の『さんご・ダイヤモンド・パール・プラチナ』という歌詞は特に印象に残った。曲終わり、観客から野太い声援が飛ぶ。柴田も『ありがとう! ありがとう!』と返した後に、『元気のいい人みたいですね。そんな元気な...、いや元気かも』と笑う。『『めったにない』ということで、めったにない...、素晴らしいです』。めったにない組み合わせを、本人自身が喜んでいるのが誠に良い。

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『次は「涙」という曲です』と緩やかに弾き語っていく。歌いかけるような歌。『ありがとうございます。次は「いじわる全集」という曲です』。つぶやき歌いかける。ずっと緩やか穏やかにじっくり歌いかけられるが、同じ歌いかけるでも、それぞれの曲から色々な顔が見えてくるから不思議だ。『ありがとうございます。次は「~~」という曲です』と規則正しい言葉の繋ぎによる様式美も聴いていて心地良い。ハミングも特徴的であり、吟遊詩人感もあるが、言葉に変に当てはめようとするのは野暮なので此処らで止めておきたい。

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次の曲「Side Step」について記していきたいが、本来のダンサンブルナンバーとはまた違う弾き語りならではの雰囲気を感じる。声が反響して溶けていく。聴き逃したくなくて、じっと聴き入る。『ありがとうございます。次は「後悔」という曲です』。気付くと早くも折り返し地点の6曲目。リズミカルなギターリフで、よりメロディーが際立って聴こえてくる。観客たちも自然に体を揺らしている。曲終わりの『ありがとうございます』に、一段と大きな拍手が起きる。『次は「雑感」という曲です』。言葉ひとつひとつが踊っているように聴こえてくるメロディー。『どんな私でも羊は羊です』という柴田にしか書けない美しい言葉。『来てみただけです 来てみただけです』という最後の言葉も耳に残る。『ありがとうございます。次は「ワンコロメーター」という曲です』。観客から拍手が起きる。今日一番強くて速いギターカッティング。『ワンコロメーター』という独自性溢れる言葉が素早く耳に飛び込んでくる。

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曲終わりに観客から野太い声援が飛び、熱気に包まれ始めた中、柴田は『ありがとうございます』と言って、静かに舞台下手のグランドピアノへと移動する。『次は「Your Favorite Things」です』。『息も詰まる夏』という美しい言葉が美しい声で歌われる。全体的に感じていた美しさが、もっと美しさを増す。『きみの好きなロックンロールをひとりで見ているよ』という描写にも美しさしかなかった。最後、少し間が空き、少しして照明が暗くなる。

『次は向井秀徳さんです。本当に楽しみです。むちゃくちゃ楽しみです。嬉しい!』

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喜びが込み上げてくる感じがとてもとても良かった。ラストナンバー「Movie Light」。静かなる歌がグランドピアノで奏でられて、まっすぐに歌われる。ただただ染み入る観客たち...。声の反響が凄くて心地好すぎる。終わり、グランドピアノから立ち上がり、舞台正面に来て2回お辞儀。めったにない凄みありすぎる大先輩との競演を静で貫き通して魅了した姿勢は潔すぎた。


【向井秀徳アコースティック&エレクトリック】

後攻の向井。舞台転換で緞帳が閉められていたが、いつの間にやら開き、向井が片手に1本ずつ缶ビールを持って現れる。グランドピアノ以外では立って歌っていた柴田とは対照的に椅子に座る向井。『Matsuri Studioからやって参りました。This is 向井秀徳』というお馴染みお決まり口上が発せられるが、付け加えて、『これいうところのひとつのThis is 迎い酒』とも発せられる。『まあまあ昨日の酒残ってますね。This is 迎い酒、結局ね』と説明してから、ギターを爪弾き、軽く叩き、吠えるように歌い出す。いわゆる迎え酒、つまりは二日酔いの人の迫力では無い。ド迫力...。それもバンドセットでは無く、弾き語りでだ...。

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『くりかえされる諸行無常』という言葉が吐き出されて転がり出していく。音の出、声の出、全てが規格外。音も声も襲い掛かってくる。バンドでは無くて、弾き語りで、こんな現象に巻き込まれるのは、それこそ滅多に無い。ギターも軽く叩きと書いたが、鈍い音であり、だが、その鈍い音によりリズムビートが生まれている。曲中の掛け声ひとつ取っても凄みしか無く、最後は右手で軽く顔を隠して、1曲目「Crazy Days Crazy Feeling」が終わる。曲終わりも『This is 向井秀徳』。頭も体も心も全て向井秀徳で支配された気分、それものっけから。

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『夕暮れ空にからまって環八道路が溶けていく。チャイコフスキーでよろしく』。そう言って、「チャイコフスキーでよろしく」が『夕暮れ空にからまって環八道路が溶けていく』と歌い出される。これまた右手でギターを軽く叩くが、これまた鈍い音がする。凄みある声が押し迫ってくる。『俺は泥まみれ』と歌われる声は獣の様で迫力の上に破壊力まである。『This is 向井秀徳』という言葉がはさまっていくが、柴田で感じた言葉の繋ぎの如く、タイプは違えど、ふたり共に様式美の世界を感じる。『錆びついた思い出がこびりついている。そういった内容の「ブルーサンダー」という曲を試しに歌います』と『錆びついた思い出は』から歌い始まる「ブルーサンダー」へ。ギターカッティングからして切れ味鋭くて重い...。座っての弾き語りなのに、この鬼気迫る感じは一体何なのだ...。加えて、躍動感と疾走感も半端ない。心がざわつき踊り出す...。1983年・1988年・1996年と歌詞に出てくる時代に聴いているだけでトリップしてしまう...。センチメンタルでもあり、涙腺を刺激してくる驚嘆の歌。

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何気ない向井のMCでの言葉にも観客は沸き、向井は缶ビールをぐびりと呑み、また歌い出す。声の出はそのままながら、『深夜2.5時』とじっくり歌いかけていく。まるでこぶしの様な歌い方であり、あまりの凄みに観客も曲中に笑う。本当の凄みとは思わず笑ってしまうものなのだ。『美しく感じた、闇に写る光』という歌詞の情景描写にも取り憑かれてしまいそうになる「Water Front」。曲終わり、『This is 向井秀徳』と言葉がはさまり、『大阪CITY!』とも呼びかけて、柴田との競演、企画したJANUS、何よりも観客たちへの感謝も述べる。向井のライブは何度も観ているが、これだけの凄みあるライブを魅せられた上で、ここまでの丁寧で真摯な感謝を述べられると恐縮してしまうし、何よりも背筋が伸びて襟も正される。

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客席を指差す仕草をしつつも、特に意味は無いと言った後、『懐かしい歌でも歌ってみようかなと思います』とギターを少し弾き出す。しかし、弾くのを止めて、『懐かしいと言っても何だろ。知ってる人しか知らないよね』と『真っ昼間から』と歌声が...。観客から歓声が起きる。そりゃそうだろ、ナンバーガール25年以上前の楽曲。『諸行の無常』という向井と言えばの言葉も突き刺さってくる。昔の歌だが全く懐かしいとかでは無いし、全く色褪せてもいないし、逆に研ぎ澄まされて間違いなく更新されて現代に甦っている。

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アコースティックからエレクトリックへとギターを替える。弦にスプレーを吹きかける。『あの~バーカウンターはあちらにございます!』と去年夏にZAZEN BOYSでJANUSに初登場した時にも言っていた場内説明。一転して、『ワンツースリーフォー!』と「SAKANA」へ。ルーパーエフェクターでギター二重奏な音を築き上げていく。向井いわく俺の友達である    LEO今井と制作した「YURERU」と、エレキギターに持ち替えてからも独自の世界へと惹き込んでくれる。再びルーパーで音を奏でていく「The Days Of Nekomachi」。吉原、チョンの間、日本刀...、猫街へと時間旅行で、いにしえの日本に連れて行かれてしまう...。ギターカッティングが鳴り響き、瞬間光に照らされて、狂い弾かれる狂い歌われる。『くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動』...、向井の代名詞の様な言葉も繰り出されて、音と言葉の衝撃を食らいまくる...。

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『あなたのお母さんは』と歌われていく「永遠少女」。1945年の世界を絶対的に考えさせられてしまう歌の凄み重み...。脳と心臓が鷲摑みにされる...。まだ余韻が残りまくっているが、『今日はみなさんありがとうございました』とラストナンバー「はあとぶれいく」へ。赤い光に照らされた向井が軽やかにエレキギターをカッティングしていく。『なーんか無性にささくれ立って』という歌と共に音も跳ね返っている。リズムビートメロディー全てが素晴らしい。始まりと同じく終わりも『Matsuri Studioからやって参りました。This is 向井秀徳』と口上を述べて、『またやりましょう』と深くお辞儀する。

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アンコールを求める拍手が鳴りやむわけがない。舞台が明るくなり、ふたりが現れる。軽く肩を組んだりしながら、『柴田聡子!』・『向井秀徳さん!』と呼び合う。向井が『本当にこうやって御一緒させて頂きまして嬉しい。歌も聴いてるし、ライブも拝見してるし。ピアノ弾き語り初めて観たわ。透き通ってるわ』と柴田について感想を。柴田は『むちゃくちゃ嬉しい!』と心から喜ぶが、向井は『ただの感動の感想。ゆらいでるわけです。ビブラートとかでは無く、ハートがゆらいでる。Sぶんのゆらぎ。柴田のS、聡子のS』と感想が止まらない。まるでエフぶんのいちゆらぎ(1/fゆらぎ)みたいなSぶんのゆらぎという最高最狂の褒め言葉に、柴田は両手を上げて喜び嬉しさを大爆発させている。

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忘年会で上司に無理やり歌わされる女子社員という向井特有にユニークな例えから、『季節変わりました。春となりました。つまり福岡の後輩の歌を歌います』と宣言。座ってギターを持つ向井の横で歌詞の紙を持って立つ柴田。この構図は何故だか微笑ましい。向井がギターを弾き出して、向井の爆裂イントロハミングが暴れ放たれる。終演後、柴田は楽屋裏で『スキャットみたいでしたよね!』と言っていたが、確かにスキャットである、後から考えたら。なので、爆裂イントロスキャットでYUI「CHE.R.RY」カバーがぶっ放される。そして、柴田が透き通った声で歌っていく。とんでもないコラボセッション...。サビは向井も歌い、2番はふたりで歌う。歌い終わり、ふたりは両手を広げて、おどけたポーズをして去って行った。観客は大興奮のあまり呆然としながらも、やはり大興奮している。向井の爆裂イントロスキャットが耳にこびりつくどころかへばりついて離れない...。

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実にめったにない夜。そういや4月6日は心斎橋JANUSの16周年記念日。本来ならば周年イベントと銘打って公演しても何もおかしくないのに、全然銘打たない。そこも粋で素敵じゃないかと想いつつ、その日は寝るまで大興奮が冷めやらなかった。それは、あの場にいた全ての人がそうであろう。改めて、めったにない弾き語りツーマンを魅せてくれた心斎橋JANUSに感謝したいし、何よりも16周年おめでとうございます。これからも、めったにないを大期待しております。

Text by 鈴木淳史
Photo by 松本いづみ




(2026年4月16日更新)


Set List

●柴田聡子

01. HAPPY DAY
02. ニューポニーテール
03. 涙
04. いじわる全集
05. Side Step
06. 後悔
07. 雑感
08. ワンコロメーター
09. Your Favorite Things
10. Movie Light

●向井秀徳アコースティック&エレクトリック

01. Crazy Days Crazy Feeling
02. チャイコフスキーでよろしく
03. ブルーサンダー
04. Water Front
05. 真っ昼間ガール
06. SAKANA
07. YURERU
08. The Days Of Nekomachi
09. 永遠少女
10. はあとぶれいく
EN. CHE.R.RY (YUI) cover with 柴田聡子

Link

柴田聡子 Web SIte
https://shibatasatoko.com/

向井秀徳 Web Site
https://mukaishutoku.com/

心斎橋JANUS Web Site
https://janusosaka.com/