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自発的な引きこもり生活を経て見えてきた
世の中への提案、自らの表現と音の作り込み…
1stフルアルバムには「感情を収め切りたいと思った」
Enfants・松本 大インタビュー

2021年に前身バンドであるLAMP IN TERRENの活動を終え、翌年から目立つ発信をすることなくライブ活動のみを訥々と1年間続けた後、2023年からEP三部作をリリースしてその活動を本格化させていったバンド・Enfants(アンファン)。活動を始めてからリリースとライブを着実に重ね、迎えた2025年は東名阪でのワンマンやアメリカや韓国でも公演を行うなど彼らの歩みの確かさを示すような1年だったようだ。そして2026年2月、初の全国流通作品となる1stフルアルバム『Bedford Hedgehog』をリリース。この作品は生々しく時に心を抉るような言葉選びと分厚いという表現がピタッとくるサウンドで、“これがEnfantsだ”と脳内に音をブッ刺すように示してくる。そんなバンドの中心人物である松本 大(Vo&Gt)がアルバムプロモーションで来阪。バンドスタートからの約3年半の日々について、そして1stフルアルバムについて、じっくりと話をしてもらった。

「みんなもっと怒っていい」と言いたい



――今日はよろしくお願いします。関西プロモーションは久しぶりですか?

「5年ぶりですね。...喋り下手になったなぁと感じます。この5年いかに自分に都合よく人生を進めるかを考えていたので、社会性をなくしたところもあって」

――自分に都合よく人生を進めたいと思ったのは...。

「Enfantsを始めるにあたって、自分の中にテーマを設けてやっていきたいと思ったんです。20代後半でバンドをまた始めるのなら、結果を出すことを含めて相当な覚悟を持ってやらないといけないと思いました。だからこそ自分の行動に意識が向いて。それで辿り着いたバンドのテーマが"怒り"だったり、肯定も否定もしない"孤独の許容"でした」

――とことんバンドをやるためにも。

「そこからさらにロックの定義にまで思いが至って、自分にとってロックとは楽曲が素晴らしいのはもちろん、それを歌う人間が曲と同じくらいパワーを持っていることかなと。楽曲と人物が結合している状態でありたいと思って、そこからわざと自分を引きこもり状態に持っていったんですよ。それで社会性をなくしたといいますか」

――どういうことですか?

「昔は気が乗らない誘いにも乗って外出していたけど、社会と繋がりたくないと感じた時にはスッと閉ざすようにして家からも出ず。自分をそういう状態にすることで生み出される表現もあるんじゃないかなと思ったんです。それはある意味賭けで、アルバムを作るまではやってみようという感じでした」

――やって良かった点というと...。

「納得して人と関われるようになったかな。言いたいことをきちんと残していける感覚があるので、自分が存在している実感も持てているかな」

――そういう心持ちでEnfantsをスタートさせて、約3年半が経ったところで1stフルアルバムをリリースされましたが、ここに至るまではどういう日々を重ねていたのでしょうか。

「本当に自分改革の日々でしたね。もう一度音楽を作る場所を設けて表現を形作っていくのなら、圧倒的に自分に自信が必要だと思いました。そういう確固たる自信を得るために生きてきた。本当にそれだけです」

――まだインタビュー冒頭ですけど...、すごくEnfantsをやることへの意志の強さを感じます。お話を聞いているとアルバム制作は割と早い段階から念頭にあったのかなと思うのですが、それが今になった理由は?

「実はEnfantsの1stソングの「Play」を作った時には、いつか作るアルバムとして『Bedford Hedgehog』とタイトルも早々に決めていました。とにかく自分の中で区切りがつくまでは同じことについて考え続けるということも自分に課していたので、考えてアルバムを出そうと思ったというよりは区切るべきタイミングが来たというだけです」

――Enfantsのスタートからここまでに、アルバム制作で一度線を引くようなイメージで。

「引きこもりつつ社会で生きていく一員として、いろんなことに怒ったり虚しくなったりした感情を収め切りたいと思ったし、それを音楽に変換する面白さも表現してみたいと思いました。自分の中では...外に出てのつながりや恋愛みたいなプラスのポジティブなことは音楽では一切触れずにアルバムを制作することによって、バンドの方向性も見えてくるのではないかと考えたところもありました」

――ちなみに先ほどおっしゃっていた"同じことについて考え続けるということも自分に課していた"というのは、考え続ける中で想いが湧き上がって出てくる音が曲になっていくことを期待したという解釈は正しいですか。

「そうですね...というよりは、唯一無二のロックバンドになりたかったら、それくらい極端なことをした方がいいだろうなと」

――同じことについて考え続けるというのは、精神的に負荷がかかる時間だったのでは? と推測してしまいます。

「まぁかなり失ったものもあるけど、表現を突き詰めたいと思って。とにかく極端な方向に進むことで表現活動をする上での確固たるものを持ちたかったんですよ。聞くと辛そうかもしれませんけど、家から出ないことは自分の性質には合っていたかなと思います」

――それはコロナの蔓延が引き金になっていたりもしますか。

「いや、コロナ中はみんな"いかにもう一度社会を取り戻すか"を考えていたじゃないですか。でも今回は"みんなもうちょっとわがままに生きた方がいいんじゃない?"という提案であるというか、こういうふうに引きこもりの生活を良しとするのもひとつの社会性なんじゃない? ということと、すごく言いたいと思ったのは、みんなもっと怒っていいということなんですよ」

――もっと怒っていい?

「体温のない会話というか。SNSが発達して、匿名で物事は言えるけど対面ではなかなか腹を割って話すことができない印象を感じています。社会で生きていくにはある程度社会性も必要で、そのために言葉にしないと判断する事の重要性もわかっていますが、自分の正直な気持ちを、温度のある言葉で話す事も必要だと思うんです。でもそれができないのは、みんなどこか自信がないまま生活をしていて、虚無感を感じていて、その発散方法がわからないところにあるんじゃないかと思いました。だからこそ、それを体験しようと思ったのが引きこもった最大の理由かもしれないです」

――そういう覚悟を秘めた体験をもとに曲を書きライブを積み重ねて、アルバムを作ろうとした時に、どうやって作品を構築しようと思われたのでしょうか。

「今回はすごくベストアルバム的な作品で、そもそもアルバムを作るという意識じゃなかったかもしれないですね」

――まずは既発曲から収録したい曲をセレクトして、浮かび上がったアルバムコンセプトに必要な要素を曲にして足していくような考え方ですか?

「いや、アルバムとしてのコンセプトも持ちたくはなかったのかな。むしろそこまでの毎日で引きこもることにちゃんと意味があったので、さらにアルバムにコンセプトを持たせることをせずともその意識で生きてきた上で作った曲には自ずと統一感が出るだろうと」

――先ほどベストアルバム的だとおっしゃいましたが、どのような曲を選んだか言葉で表現するのは難しいかもしれませんがお話いただけますか。

「どちらとも取れる、幅のあるものを選んだ気がします。 "良くも悪くも"っていう言葉があるじゃないですか。それみたいに対局のものを表現できる曲を選んだかな」

――それは想いの両極を捉えて欲しいから?

「いや、両方あった方が楽しいからという感じですね。怒りと喜びを両方表現していたり、暗いメロディーなのに明るいことを歌っていたり。ふたつの性質を合わせて作っている曲が自分のやりたいことでもあって、表現の幅を見せるという意味でも見せたいものだったのかなと」

――ちなみにアルバムの収録曲のうち約半分が2025年に制作されたもので割合として多めなのですが、特に2025年以降の音楽制作においてはどんなことにポイントを置かれていたのか、制作中の松本さんのモードを知りたいと思いました。

「んー、2025年がどうというよりは...2024年が本当に曲を書けない年だったんですよ」

――その原因は?

「引きこもって自分改革に取り組んでいた分、自分に負荷がかかりすぎていたのかな。それと並行するようにずっと自分に染み込んでしまっていた負け犬根性みたいなものを、抜く期間にも充てていたというか」

――1年をかけて。

「2024年はそういう年だったからこそ、曲が作れなかったのかなと思います」

――2024年は書けずにいたけれど、自分の良くない部分を抜くことに成功したからこそ、2025年は進めるようになったわけですよね。

「そうですね。曲を作る面白さを取り戻せた感覚はありました。元々の自分だったらこういうインタビューでここに至るまでの話も全然できなかったと思う。でも自分の日常のいかにもしょうもないことをテーマにして、それを拡張していけるような曲を作りたいと思ったから進めるようになったのかな。やっぱり音楽制作に対しては根底には自分のしょうもない日常があるから、それをいかに面白おかしく表現するかが一番やりたいことだとわかったのは大きかったですね」

――そういう気づきもあって2025年には曲が書けるようになった、と。

「書けるようになったというか、書かざるを得なくなったとも言います。曲ができない状態がずっと続いて、バンドがプロジェクトとして進まないっていうのは...ねぇ? そうしているうちに書かざるを得ない状態になるんですよ。気づきもありつつ、進まないとやっていられなかったのもあります。締め切りも設けられて、とりあえずやってみる期間が2025年は多めにありました」

――そういう状態で作った2025年の曲を俯瞰してみると、何か共通したムードは見えてきますか。

「ムードというよりアルバム全体を通して聴いてみると、結果的にあそこで妥協しなくてよかったなっていうのはありますね」

――あそこというのは"2024年の書けなかった時"ですか?

「それもあるし...今回既発曲もリミックスをし直しているんです。現状のベースに、支えになるようなシンセベースを追加したり。明確に"あの音が増えたよね"とは悟られない程度ではありますけど。最近のサブスクでの音楽は打ち込みが多用されているので、その中で生音だけだとちょっと負けるんですよね。時代的に」

――それは音が軽い、みたいな印象になってしまう?

「軽いというか細いというか。打ち込みのバスドラムの音だと、点より面で聴こえる印象なんです。パワーがあるというか。それによって損なわれるスピード感ももちろんあるけど。このバンドを始めた時は生音で勝負するのがかっこいいと思っていたんですけど、時代が進む中で音をこういうふうに盛り込んだら面白いみたいなことを世界的にいろんなバンドがやっていて、それに面白みを感じつつ自分のアルバムをもう1回見つめ直してリミックスをやりました」

――そうやって制作を進める中で、「この曲がアルバムの方向性を指し示した」と思えた曲はありましたか? 

「その役割が全曲平等にあった感じなんですよ」

――それがベストアルバム的だともおっしゃったことにもつながりますね。とはいえ1曲目の「Play」の、曲としての強さがすごく強調されるアルバムの構成だと思いました。そこから4曲目の「デッドエンド」までその強いテンションが続くのも、作品としての強さを感じました。

「「Play」はやっぱり切り込み隊長的な存在でもありますし。そういう意味であの曲は自分達を表現する上で硬派な部分と、楽しいと思わせられる部分のバランスがすごくよくできていると思っているんです。"Enfantsといえば「Play」"と思ってもらっているし、ライブでも一番盛り上がる曲で、役割としてこれ以上の曲はないなとも思います。...だから「Play」がそうだと言ってもいいかな」

――アルバムの旗振り役が「Play」であるとヒシヒシ感じる上で、通して聴いていくと「デッドエンド」と「R.I.P.」の間で、スッとアルバムの空気感が変わるのも面白い点でした。前半を経てだんだん柔らかさが出てくるというか。

「うん、それはそうですね」

――それ、何か意図はありましたか?

「バランス的にここがちょうどよかっただけですけど、ソングライターとしての指標というか自分のこのアルバムに対する空気感を掴めたのは「デッドエンド」でした。この曲ができて、自分の中で音楽を創作する上でのこのバンドの持ち味みたいなもの...いろいろなアイデアを持って1曲に向き合って、なぜこのフレーズなのか、なぜこのビートなのか、なぜこのメロディーなのか、なぜこのミックスなのか、この広がり方にしたのか。全曲説明ができるんですが、この曲ができたことが一番大きかった気がしています」




このバンドでは、できるだけ音を少なくしたい



――今回のアルバム、私はイヤホンを使って聴かせていただいていたのですが、すごく音...バンドサウンドとして全ての楽器の音が合わさった時の太さのようなものをすごく感じました。特に前半の4曲はその音の印象が強かったので、どのように音を作っていったのかをすごく知りたいなと思いました。

「そんな専門的な話、して大丈夫ですか?」

――難しすぎない程度にぜひ!

「そもそもこのバンドを始める時に、ドラムをレコーディングする環境として日本は良くなさすぎるなと思っていたんです。技術面での話ですけど」

――それは日本特有の湿度ですか?

「湿度もあるけど、騒音問題があるので防音しっかりのスタジオしか基本的に存在しないんです。アメリカでもレコーディングをしたことで確信になったんですけど、あっちで録ったものはドラムの音の響き方が全く違うんですよ。建物に使われている素材もあるとは思うけど、すごく反響するし、ドラムだけで聴いていても何も不安にならないんです」

――日本で録ったドラムの場合だと...。

「もう少し音を足したい気持ちになるというか。それでなのかはわからないけど、日本の音楽はすごく音が重なっているんです。それが悪いわけではないですが、同じバート、同じバッキングが重なっているなんてよくあるし。ギターの音が重なればその分ドラムの音が小さくなって、今度はドラムの音を機材の力で上げると厚くなるにつれて損なわれることもある。このバンドを始めるにあたってはできるだけ音を少なくしたいというのがありました。多くても10トラック以上は入れていないんです。これ、今の日本の音楽で考えるとかなり少ないと思います」

――そういうことって、全く気付かずに曲を聴いていると思います。

「ギターをたくさん鳴らさないと安心できない環境が日本にはあって、重なったギターが鳴るとベースがどんなリズムを弾いても捉えにくいし、リードギターがどれだけテクニックを発揮しても轟音の中だと上手く聴こえてこない。それを間引くほどにリズムも見えてくると思うんです。本来メロディというものにはリズムも含まれると思っていて、僕はどの楽器もきちんとメロディーが鳴っていて思っているので、抜くところは抜いて、バッキングもメロディーに聴こえるように作っているところはあります。そんなふうに支え合う感じで音を配置していくと、相互作用的に音圧が稼げるというか。音が太いと感じられたのはそれかもしれないですね」

――トラック数が少ないのだとしたら、音源のライブでの再現性はかなり高いのではないですか。

「それはすごくあります。例えば高校生が僕らに憧れてくれたとして、コピーバンドをやりたいと思ったら、メンバー4人いればちゃんと成立するんですよ。そういう音作りをしたかったのはあります」

――それだけの音のこだわりを持って、そして3年半という長い時間を要したアルバムでどんなことが伝わって欲しいなど思いはあるでしょうか。

「それは...自由ですね。明確に提示したくはないというか。僕が思っているのは、ただこのバンドを聴いて超かっけぇなと思って欲しい、それだけですね」

――そしてこのアルバムを携えて、2月21日に東京でワンマンを行って、その後アルバムのリリースツアーも予定されているそうですね。

「ツアーのタイトルはLoneliness, Social Interactionになる予定です」

――すごく哲学的ですね。

「"孤独と社会的相互作用について"という意味を持たせています。硬いですけど、引きこもりを経て表に出て自分達がいよいよバンドとして世の中に関わっていくよという姿勢も含めて。ツアーまでアルバムのリリースから半年ほどあるので、その間に自分達がどう変容していったのかも含めて、表現できるようなツアーになればいいなと思っています」

取材・文/桃井麻依子




(2026年4月 7日更新)


Release

1st Album『Bedford Hedgehog』

発売中&配信中
4400円(税込)
MASHAR-1011
MASH A&R

《収録曲》
01. Play
02. HYS
03. Punk Head
04. デッドエンド
05. R.I.P.
06. Dying Star
07. 天国に生まれた僕ら
08. 惑星
09. Good News
10. 星の下
11. Kid Blue
12. Midnight Yellow

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Profile

アンファン…バンド名はフランス語で"子供たち"。2022年に活動を開始。オルタナティブロックバンド。衝動と開放感を日本語詞の繊細な情緒表現と融合させ、独自のサウンドを鳴らす。フロントマンの松本 大が書く歌詞は、感情的であることを否定する社会への抵抗を掲げ、見過ごされがちな「弱さ」や「歪さ」を力に変える。生々しいライブステージで、感情の爆発そのものであり、経験としての音楽を生み出す。Enfantsの音楽は、生きづらさを抱えた人々のためのアンセムであり、感情を押し殺して生きる若者への静かな革命である。

Live

Enfants "CUSTOM 4"

▼4月30日(木) WWW X
[共演]SHE’S


One Man Tour 2026 "Loneliness, Social Interaction"

【愛知公演】
▼7 月19日(日) ボトムライン
【岡山公演】
▼7月20日(月・祝) IMAGE
【宮城公演】
▼7月25日(土) LIVE HOUSE enn 2nd
【北海道公演】
▼8月1日(土) SPIRITUAL LOUNGE
【大阪公演】
▼8月7日(金) BIGCAT
【福岡公演】
▼8月10日(月) DRUM SON
【東京公演】
▼8月13日(木) LIQUIDROOM

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Live

Enfants オフィシャルサイト
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