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「自分をすごい割いて人間味を出した」
『dress』と『nude』という対になるEPを連続リリース。
3月にはワンマンライブを開催!
注目のシンガーソングライター フジタ カコ インタビュー

芯のある歌声と等身大の言葉で同世代の共感を集めるシンガーソングライター、フジタ カコ。昨年10月リリースのデジタルシングル『エミリー』では岡峰光舟(THE BACK HORN)やキダモティフォ(tricot)をゲストミュージシャンに迎えてサウンド面もより強化。その後、12月には個性派ミュージシャンたちとバラエティ豊かな楽曲アレンジで聴かせるEP『dress』、2026年1月には全曲生楽器のみの生々しい音と言葉で爪痕を残すEP『nude』がリリースされた。「このEPの蓋を開けたらワッと出てくる空気を何回でも吸いに戻って来たい」と話す2枚の対になるEPはどのような制作過程を経て誕生したのか? ぴあ関西版WEB初登場となる今回のインタビューでは自身の言葉をひとつひとつ確かめるように明かしてくれた。その音楽的なルーツから現在の心境に迫る。

歌にして自分の意思を表現しようとしていた



――フジタさんは中学生の時に合唱部に入っていたそうですね。

「中高6年間合唱部でした。その顧問の先生がいろいろ叩き込んでくれたのが今に生きてるかもしれないですね。最初にパート決めのボイスレッスンで声を出した時にすっごい褒めてくれたので、そこから"私は歌えるんだ"と思って」

――それまでは?

「もう全然。歌うことも別に好きじゃなかったし、合唱部に入ろうとも別に思ってなかったんで、そこで褒められてなかったら今のように歌ってないと思います」

――意外な気もしますが、ちっちゃい頃から私は歌手になるんだっていうタイプではなかったのですか?

「まったく違いますね、弁護士になろうとしてました」

――おお、スゴイ!

「うちの父が弁護士を目指してたんですが、途中で辞めちゃったんです。それで私はお父さんの代わりに弁護士になるんだって、勉強してたのが小学校6年生です。でも、音楽活動を始めたので弁護士の夢は手放しました(笑)」

――歌うことにおいて、影響された人は?

「自分でギターを弾くようになってからは阿部真央さんとかYUIさんとかを聴いてました。自分で歌を作り始めたのが中学校2年生なので、そのタイミングで聴き始めました。ツイキャスを中学校2年生ぐらいの時に始めてから、自分の歌をちょっとずつ歌うようになって、ネットで友達ができて。その友達がみんな自分で曲を作ったりしてたんで、私も作ってみようと作り始めたんです」

――その頃からシンガーソングライターを目指そうと思ったのですか?

「その時は目指すっていうところまでも行ってなくて...。ただ、ネットの友達と喋る話題がほしいみたいな軽い気持ちだったんです。本格的に目指し始めたのは高校1年生の時です。高校に入ってからもっと人前に立ちたいな、もっといろんな人に自分の歌を聞いてもらいたいなっていう気持ちが芽生えてきてから...」

――ご自身で歌詞を書くようになったのは、伝えたいことや訴えたいことがあって?

「そうです。人前に立つのが元々好きなので。委員長とか部長とかも率先してやったりしてたんです。そういう延長線上に歌があって、最初は自分の意見を聞いてもらう場所として音楽があったと思います」

――自分で歌を作るようになって自己確認できたことは何かありますか?

「なんだろう...本当ちっちゃいことですけど、同じクラスの子とか同級生とかに、"あなたはそのままで大丈夫だよ"とか、"もっとこうしなよ"って思ってることがめちゃくちゃあったんですけど...、それを直接本人に伝える度胸はなくて。だから歌にして自分の意思を表現しようとしてたのかな」



鎧とか殻を増やして着飾った『dress』
むき出しになった核の部分が『nude』



――12月に『dress』、1月に『nude』という対になる2枚のEPがリリースされました。これを聴いてちょっと前の世代のシンガーソングライターのような生々しさや強さを感じました。

「私自身は、本当に普通の人間なんですけど、生々しさとか感じてもらえてるのはすごい嬉しいです。一緒にやらせてもらってるアレンジャーの皆さんの影響も多分めちゃくちゃあって。私は音楽やバンドというものに対してぜんぜんガツガツしていなかったんですけど、この『dress』と『nude』を制作してるうちにけっこう目まぐるしく自分の感情とかが変わっていってる部分があって。その前の『エミリー』もそうなんですけど...」

――そういう意識の転換点になったのが『エミリー』なんですか?

「そうです。『エミリー』が最初でした。そこから自分のフジタ カコに対する気持ちがどんどん深くなっている感覚はすごいあります。すごい抽象的なんですけど、フジタ カコっていう人間を自分でどんどん掘り下げられるようになってきました。自分を着飾ったり守ったりして、鎧とか殻を増やして増やして出来上がった硬いものが『dress』で、それを全部剥いだ状態のむき出しになった核の部分が『nude』なんです。この2枚があって完成しているっていう対の見せ方ができてたらいいなとは思うんですけど」

――その両方あってのフジタ カコさんっていくことですね?

「そうです」





自分の心臓に近い部分を、
みんなもすごい自分の心臓に近い部分で
聴いてくれている



――この2枚のEPに収録されている曲はいつ頃作られたのですか?

「去年の6月頃までに書いた曲です。やっと出せました。今までもやりたいこと自体はずっとできてたんですけど、このきっかけで変わったのは伝わり方の深さというか、広がり方というか。それまでは自分が丁寧に作って完成した作品を出しているっていう感じだったんですけど、『エミリー』をきっかけに、『dress』と『nude』は自分をすごい割いて、フジタ カコっていう人間が出た作品だなっていう違いはすごいあります。だからこれからの作品もより人間味のある作品にはなると思っていて、そういう違いが自分の中ではけっこう大きくあります」

――そういう歌の主人公はフジタ カコさんご自身と捉えていいですか?

「どうなんだろう...、『すっとんきょう』とか、『非才能宣言』とかはぜんぜん自分をモチーフにして書いてないんです。ただ、その根底には自分の思った感情がいるので。自分から根が生えてて(曲が)できてるっていうことには、これからも変わりはないかなと思います」

――『nude』っていうタイトルから、このEPの曲は全部さらけ出して自身の赤裸々な思いを歌われてるのかなと思って。

「うんうん。『nude』に関しては結構それに近いものがあります。確かに今まで出して来なかったような自分の考えてる部分を出したので。『非才能宣言』は高校生ぐらいの時に書いた曲なんです。今回のEPの新曲として収録するにあたって、最初はハッピーな終わり方にしてたんですけど、それをまた元のあんまりハッピーじゃない歌詞に戻して完成させました。当時のオリジナルのまま出すっていうことに私はすごい意味を感じたんです。だから、この曲だけは昔の曲ですけど、自分がその時思ったことに変わりはないので」

――<誰もまだ私を知らないが 私もまだ私を知らない>と綴られている『未完』はどうですか?

「『未完』はまさに自分のまんまというか。もう本当に誰かに伝えるということを一旦置いておいて、自分が常日頃思っていることで。出来上がった歌詞を見てたら、すごい"ろくでもない人間"に見えてきて、自分で自分にショックを受けたんですけど。さっき言ったように、『nude』は、自分の思っている根底の核の部分をむき出しにするっていうコンセプトで作ったので、その通りに何が言えるかなっていうのを考えて。これが誰かにちゃんと伝わるんだろうか?...って思ってたけど、出してよかったなと思います」

――なんか良い反応はありましたか?

「はい。自分が思ってた以上に、リスナーのみんなが歌詞をすごいしっかりと聴いて大事にしてくれていて、これは誰かに伝えるとかじゃなく、自分のためみたいに思って書いた歌詞だけど、みんなにもちゃんと伝わるんだなっていうことがわかったので、すごい自分の中では大きい心の出来事でした。自分の体感ですけど。昔とかに自分が出している曲とかよりも、自分の心臓に近い部分を、みんなもすごい自分の心臓に近い部分で聴いてくれてるっていう感覚がすごいあって、それがすごい嬉しかったです。それはすごい励みになりました」

――確かに、こういう曲を耳にすると本当に聞き流せないです。すごく覚悟を持って、この曲を歌ってくれてるんだろうなって思って。

「うんうんうん、嬉しいです。『未完』を聴いてくれてる人たちはそう思ってくれてるんだろうなって思うと、すごいありがたいなと思います(実感こめて)。今までけっこういろいろ綺麗に重ねて、こういう像を見せたいっていうのを見せてきたんですけど、たぶん本当にこれからは自分が自分であることしか表現できないと思うんで。無理してすごい勇気のある人に見えてほしいなって思っても、私は実際は勇気がなくて、度胸がないんだったら、多分そういう風にしか伝わらないだろうし。だからすごいそのままどんどん伝わっていってほしいし、そうやってそのまま伝わっても魅力的な人でいられたらいいなと思います」

――これからリスナーに対してどんな存在になりたいと思っていますか?

「前までは色々思ってたんですけど、今はみんながそばに置いておきたいなって思える音楽だったら嬉しいし、そういう人間で入れたらいいなと。やっぱり移り変わりはもちろんあると思うんですけど、生活の中でふと聴きたくなるような音楽を作りたいなと思います」

――ここまで歌詞を中心にお聞きしましたが、音楽面は基本的にバンドサウンドで構成されていて、特に『nude』のギターの音がすごく耳に残りました。

「『nude』のギターはキダ モティフォ(tricot)さんと(奥村)大(wash?)さんです。大さんはプロデュースもしてくださってるんですけど、おふたりは自分の体が鳴ってるみたいなギターを弾くので。そういう体から鳴ってる叫び的なものがそのまま出てるような感じがします」

――だから音も生々しく聴こえるんですね。私もこういうギターが大好きです。

「めっちゃいいですよね。ほんとすっごいカッコイイし。『nude』はすごいギターの音自体も大きくしていて、そのサウンドの組み立ても大さんが作ってくださったので、それも含めてめちゃくちゃパンチがあると思います」

――『nude』はオルタナ寄りの力強いギターロックサウンドという印象ですが、『dress』の方は軽やかな曲もあるし、それぞれ曲調が異なりますね。

「そうです。『dress』の方は(長峯)雄也さんがプロデュースしてくれて、雄也さんのギターは、キダさんや大さんともまた全然違う音で。私はキダさんのギターを"羽ばたいている"と呼んでるんですけど、雄也さんのギターはすごいキラキラしてて。別の意味で、雄也さん自身の音が鳴ってるというか、強く引っ張られる希望みたいなものをすごい感じるんです。そんなギターを『dress』で弾いてもらえてるのもすごい嬉しいし、そういう意味でも、『dress』と『nude』は全然違う方向にいるなと思います」

――ご自身にとって、この2枚のEPはどんな作品になったと思いますか?

「今までの作品もそうですけど、いろんなところに届いてほしいし、遠いところまで行ってほしいなとは思うんですけど、音源としての存在だけじゃなくて、このEPの蓋を開けたら、すごいワッと出てくる空気を何回でも吸いに戻ってきたいなって。そういう帰る場所にはなりました。なんか故郷っていうほど懐かしむとかでもなく、"基地"みたいな言葉が一番近いんですけどね」



ライブはその日限りのお祭りではなく
その先も生きていける集合場所に



――3月には東阪で[フジタ カコONE MAN LIVE 2026 -dress/nude ]が開催されます。このライブの編成は?

「次のワンマンもバンド編成で、ギター2人とベース、ドラム、コーラスも入れたバンドセットで、キダさんも参加しています。去年の夏、秋ぐらいから、今回のワンマンと同じバンドセットのメンバーでいろんなライブやサーキットイベントも出させてもらう機会がたくさんあって。私は今まで自分でバンドを組んだことがないんですけど、ひとつのチームでこんなに長い間一緒にやって、おなじメンバーでワンマンをやるっていうのが単純にめちゃくちゃ楽しみです」

――どんなライブにしたいと思っていますか?

「今回は『dress』と『nude』を引っ提げてのワンマンなので、この2枚のEPがさっき言ったみたいに私の基地みたいな、いつでも帰ってきたいって思える場所になったからこそ、ワンマンもその日限りの祭りみたいなだけじゃなくて、ワンマンの後、みんなの中で続いてく生活があり、私も生活が続いてくし、その先もちゃんと生きていけるような、集合場所みたいな日になったらいいなと思ってます」

――今回、初めて披露される曲もあったりしますか?

「『未完』も初めて披露します。これは5分半ぐらいあるとにかく長い曲なので、じっくり聴いてもらうには、ワンマンがやっぱり一番いいかなって。昔の曲も違うアレンジにしたりして、今までできなかったことをやったりとかもします。どんどん進化してるチームとしてのフジタ カコバンドでのワンマンは面白さも楽しさも全部パワーアップして、ひとつの塊になったワンマンにできたらいいなと思ってます。私の歌声もライブではより強く感じてもらえると思うし、私以外のメンバーは元々バンドマンなので、とにかくライブだとぜんぜん面持ちが変わるし、雰囲気も変わるので。音源を聴いてライブに来てもらえたら多分すごいびっくりすると思います。ぜひライブに来て、歌とバンドの火力の強さをめちゃくちゃ感じてほしいです」

Text by エイミー野中




(2026年3月 4日更新)


Release

Digital EP『nude』

配信中
HABIEOT LABEL
NexTone / ArtLed

[Track List]
01. ある流星群
02. 非才能宣言
03. 未完

配信リンクはこちら

Digital EP『dress』

配信中
HABIEOT LABEL
NexTone / ArtLed

[Track List]
01. long time no see
02. すっとんきょう
03. がらんどう

配信リンクはこちら

Profile

ふじた かこ…シンガーソングライター。力強い歌声と同世代にも支持される等身大の歌詞が特徴。2024年12月4th EP「ねてもさめても」を配信リリース、 『音楽なんか聴かなくていいように』『またどこかで』の2曲がSpotify公式プレイリスト” RADAR: Early Noise” に IN、 12月度2週に渡り、プレイリストカバーに選出。2025年10月リリースDigital Single「エミリー」では、ゲストミュージシャンとして、ベースに岡峰光舟(THE BACK HORN)・ギターにキダ モティフォ(tricot)を迎え、他の女性シンガーソングライターと一線を画すサウンドでも注目を集めた。12月24日にデジタルEP『dress』をリリース。2026年1月28日にデジタルEP『nude』リリース。3月に大阪・心斎橋ANIMA、東京・下北沢シャングリラにてワンマンライブを開催。

Live

フジタ カコ ONEMAN LIVE 2026「dress/nude」

【大阪公演】
▼3月21日(土) LiveHouse Anima
【東京公演】
▼3月27日(金) 下北沢シャングリラ


Link