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音楽を表現する者としてマルチに活躍中!
杉本雄治のソロプロジェクト・ONCEが心の軸だと話す
「概念を壊していくことと生み出す音楽への覚悟」

杉本雄治が長年にわたる3ピース・ピアノロックバンド WEAVERでの活動に終止符を打ち、ソロプロジェクトONCEをスタートさせて今年の夏で3年が経つ。新しい音楽表現を追求し続けることを命題に活動を行う傍らで、さまざまなアーティストへの楽曲提供や編曲・プロデュース、サポート、舞台への出演や劇伴の制作、そして昨年はテレビドラマの音楽制作サポートなどその才能を多方面で発揮している。あまりに多彩な活動ぶりゆえに、久々となったONCEとしての東京・大阪2カ所でのワンマンツアーが開催されることとなった。そんな杉本は2025年にどんな思いを抱きながら音楽活動に取り組んでいたのか、そしてその経験と学びを経て今回のツアーではどんなことを表現したいのか――ぴあ関西版WEBでは1年ちょっとぶりとなるインタビューで解き明かすことができたらと思う。

なぜONCEをやっているのか、明確にしたいと思った



――今日はアルバム『Wandering』のリリース前に取材させていただいて以来になります。あのアルバムを発表して、杉本さんの中にどういう思いが生まれたでしょうか。

「ONCEを始めて、1stアルバムを作ってそのあとにバンド編成でツアーを回る中で、音楽のあり方やライブでどう伝えるかについてすごく考えるようになりました。純粋に聴いてもらう人の人生を彩ることができる音楽を作っていけたらという思いが生まれましたね」

――アルバム制作からツアーまでの1ターンを終えて、ONCEとしてのネクストステージは見えてきましたか?

「バンド編成でのライブというのは、どこか自分が今までやってきたことの延長線上にあるんです。実はONCEを始める時に、"今までは表現してこなかったことをいろいろできる場所にしたい"と考えていました。だからバンド編成でのライブを終えて、みなさんに"こんな音楽の表現があるんだ...!"と思ってもらえることをやりたいという気持ちが生まれて。それが昨年2月のビルボードライブ公演につながったのかなと思います」

――アルバムとライブ、一連の流れがあったからこそビルボード公演が実現したということですか?

「いや、ビルボード公演は決まっていたものです。ただ、そこで何をするかは定まっていませんでした。『Wandering』のライブを終えてみて、もっと違う表現を突き詰めたいと思ったし、自分のアイデンティティというか、僕が得意なことってなんだろう? と考えて」

――その問いかけで見えてきたことというと...。

「編曲やアレンジを手がけられることです。これは大きな強みだなと思いました。それを掘り下げて新しいものを見つけていきたい、ONCEの表現の幅を広げたいというか、なぜONCEをやっているかを明確にしたい思いがビルボードの前にはありました」

――なぜONCEをやっているか、その時点での答えは?

「ONCEでは自分のやりたいことを形にできていましたけど、客観的な意見もいただく中で"新しい杉本を見たい"という声もいただいたことでハッとして"落ち着くには早いな"と思うようになりました」

――アルバムとその後のライブで見つけたことは、自分がもっといろんなことがやりたいし、やれるだろうという可能性というか。

「そうですね。武器をもっと増やしたい気持ちが強かったかな」

――そこからビルボード公演の内容を構築していったわけですよね。

「はい。ストリングスとタップダンサーを迎えようと考えました」

――タップダンサー!?

「ゲストにタップダンサーを招きたいというのは1年ほど前から考えていたんです。自分がサポートで入らせていただいた現場に才能あふれるタップダンサーの方がいて、何か一緒に面白い企みをしたいなと思っていたのですが、それを実現するのにビルボードはうってつけの場所じゃないかと」

――ステージと客席の距離が近い分、タップダンサーの足元もじっくり見てもらえますし。

「タップダンスって、ダンスでもあるけどリズム楽器である部分も大きいことにその人との共演で気がついて。バンドだとドラムやベースと一緒にやるのはポップスのスタンダードとしてあるので、タップのリズムを取り入れることでスタンダードを破壊してどんな新たなものが作れるかに期待しました。もちろん視覚的に面白いものが作れそうという思いもありました。とにかくスタンダードな楽器がない編成でどんな音楽が生まれるか。僕も知りたかったし、ライブに来てくださるみなさんにも体感してもらいたいと思いました」

――ビルボード公演はいかがでしたか?

「ONCEの中での刺激的なスタイルがひとつできあがった手応えはありましたね」

――それこそ新たな発見がたくさんありそうな取り組みですね。

「特にONCEを始めてからの作品は、パソコンを使って音を組み立てるものが多かったんです。デジタルの技術を駆使して、一定のテンポに縛られた音楽を当たり前のテンプレの中で作ってきたものがたくさんありました。でもビルボードに関してはデジタル音もクリックもなく、生であることを重視しました。そもそもそういうスタイルでやっていましたけど、久々にやってみて改めて人間が生み出す空気感みたいなものがこれからの時代で大事になっていくんだろうなと感じましたね」

――DYGLの秋山さんも以前取材の際に似たようなことをおっしゃっていました。

「そうですか! そういうテンプレ化されたポップスは誰でも作れる世の中になりました。だからこそミュージシャンたち...というか人間が何を表現していくかを考えたら、人間らしさ・ぬくもり・あたたかさをどう音楽に落とし込むかがすごく大事になると思って」

――それはデジタルとアナログでの音楽制作の両面を知っていないと気付けないことかなと思います。その思いに気がついたのは、バンド編成でのライブのタイミングですか?

「うん、そこですね。ただONCEを始めてから、自分はこうあるべきみたいなものを一度捨ててここから10年20年と音楽表現をしていく中でどんな可能性があるだろうということを常に考えていました。それと、サポート現場が増えたことで現場ごとに新たな気づきを積み重ねたことも大きかったと思います」

――ちなみに、こうあるべきという考えを捨てようと思えたきっかけはありました?

「この先長く音楽を続けていくために出した結論(WEAVERの解散)が今の活動につながっているので、そのことは自分の中にあるものを壊さないといけないと考えるきっかけになっていますね。それがもう少し若い時だったら、そもそも壊すという思考はなかったです。年を重ねて視野も広がったことをすごく実感しています」



自分自身が新しく生み出す音楽により覚悟を持ちたい



――2025年はビルボード公演に加えて、TBSドラマ『対岸の家事』の音楽制作にサポートで加わったこともトピックでしたね。

「メインでの制作はflumpoolの阪井一生さんがされて、アレンジや曲によって一緒に制作させていただきました」

――ドラマも好評でしたよね。制作はどのように進行したのでしょうか。

「基本は阪井さんが進めるのですが、僕が得意なアレンジなど、楽曲によって色々サポートさせてもらいました。」

――杉本さんは一昨年にも舞台の音楽を手掛けられましたが、舞台とテレビドラマは似ているようで異なるエンターテインメントで、セリフに合わせてドラマチックな曲の展開が必要なのが舞台、ドラマはBGMのような役割のように感じるのですが決定的な違いはありましたか?

「ミュージカルの場合お客さんの熱量を感じながら役者が演じるので、話の流れをいかに音楽で気持ちよく誘導していけるかが重要です。ドラマは...今回制作サイドからすごく明確なリクエストをもらいました。このシーンではこういう曲が欲しいとか。シーンとリクエストがピンと来なかったこともあったんです。例えば真面目なシーンで音はコミカルにしてほしいとか。これで大丈夫? と思いながらだったけど、俳優さんが演技されている映像に合わせるとマッチするんです。ドラマは予想もしない音が合わさることで、感情の変化をつけてくれるんだというのは勉強になりました」

――なるほどー! それは大きな違いですね! ちなみに阪井さんとの共同作業の中で、ONCEの活動にも反映できると思えたことはありましたか。

「枠を取っ払う概念は一生さんとの共同作業で養われましたね。一生さんはそれがめちゃくちゃ得意で、思いっきりやれる人。僕は舞台音楽を手がけた経験上、登場人物の心情を汲んで流れが気持ちよくなるようにしか作れていませんでした。だからこそ概念を壊す大切さを教えてもらいました」

――杉本さんの活動が舞台やドラマの音楽制作、サポートミュージシャンとしての活動など多岐にわたる中で、ONCEとしての今はどんな感じですか。

「2025年に入ったタイミングでは、今年はもう少しONCEの活動を進めよう! と思っていましたけど、思った以上にいろんなところで僕を必要としてもらえる機会が増えて、2025年は10年20年先を考えた時にどういう音楽表現をしていきたいか模索していく日々にしたいと考えが変わって」

――インプットと模索の1年というか。

「10月に東京でライブを1本やってそこで新曲を披露したりもしましたけど、やっぱりこの1年ちょっとは今の時代に新しい曲を出す意味ってなんだろうということを含めてすごく考える日々でした」

――曲をリリースするのならば、自分の中で意味づけが重要ですか。

「今、消費されていく音楽が多い時代だと思っていて。だからこそより覚悟を持ってリリースしたいなと思います。その流れもあってONCEが出す音楽がどういうものなのかをちゃんと掘り下げたいなと思う気持ちは強かったです」

――なるほど。...今こんな質問をしても変わっていく可能性があると思うのですが、これからONCEとして進んで行く中で、最新の音楽制作のモードを象徴するキーワードは頭に浮かんでいますか。リスナーへ向けてのヒントとして。

「やっぱり自分が新しく生み出す音楽に覚悟を持ちたいというのは大きいんです。30代後半に入ってきて、今後迎える40歳はひとつの節目だと思っているので、そこまでにどうなりたいか、どんな音楽を作りたいかをより明確にしないと多くの人に届く曲にはならないのかなというか」

――40歳に向けて考える日々が続きますね。

「そうですね。今年はアイドルグループの楽曲プロデュースもさせてもらうことになっていて、今までにないアウトプットの場所が増えてきているんです。アウトプットの場所が増えた分、その方法を使い分けられるようになってきてようやく定まってきた感じもあるんです。それがさっき話した覚悟とかにつながっているのかな」

――うんうん。

「自分の中でようやく見えてきたところなので、今年は何か形にしていきたいですね」

――マルチに活動をしていることが、ONCEの道筋を作っていっているのも面白いですね。そして2026年は早々にONCEの東京・大阪で単独公演が行われます。

「今日言い続けている覚悟や、これからの自分の音楽活動で大事になりそうな人間っぽさやぬくもりをちゃんと音楽に落とし込んで、それが伝わるライブになればいいなと思っています。その思いでつけたライブのタイトルが『NEW DAY』です。やっぱり自分自身も音楽も必要としてもらいたいし、それを受け取ってくれた人が明日も明後日も曲を聴きたいなとかこの音楽をまた受け取りに来たいと思ってもらえたら。明日へつなげる、明日を生きるきっかけのひとつになればうれしいです」

取材・文/桃井麻依子




(2026年1月15日更新)


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Profile

ワンス…杉本雄治のソロプロジェクト。1988年兵庫県神戸市出身。2004年から3ピースピアノバンド・WEAVERのピアノボーカルとして活動をスタートさせ、2009年にメジャーデビューを果たす。アニメ『山田くんと7人の魔女』ED曲 「くちづけDiamond」のMVが1500万再生を記録。2023年2月、神戸国際会館で行われたライブをもって解散。その後ONCEとしてソロプロジェクトをスタートさせる。さまざまなアーティストへの楽曲提供や編曲プロデュース、サポート、ミュージカル『怪人と探偵』『ソングライターズ』、地球ゴージャス作品などの音楽も担当するほかに、舞台『ちょっと今から仕事やめてくる』ではパフォーマーとして出演するなど幅広い活動を行っている。


Live

ONCE ONEMAN TOUR 2026「NEW DAY」

【東京公演】
▼1月31日(土) 渋谷STAR LOUNGE

PICK UP!!

【大阪公演】

▼2月8日(日) 17:00
Live House Anima
スタンディング-5500円(ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

チケット情報はこちら


Link

ONCE オフィシャルサイト
https://ysonce.net/

オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/sugi_weaver

オフィシャルX
https://x.com/sugi_weaver