ホーム > インタビュー&レポート > 「音楽を聴く瞬間には誰もが解放されていてほしい」 ジャズをベースに自由な音楽を追求する 韓国ソウル発の4人組 GOGOHAWK インタビュー
演奏しながら生まれるままに、
リファレンス無しで創作している。
――はじめに、GOGOHAWK(コゴハク)というバンド名の由来を教えてください。
ハ・ボムソク(vo&g)「このバンド名にはふたつの意味があります。まず、韓国語で考古学を意味します。もうひとつは英語表記で"鷲が翔んでゆく"という意味合いを含んでいます。考古学は過去を探求するものなので、過去を探求して、これから前進していくという要素が合わさった名前です」
――そもそもどのように結成されたのですか。
ハ・ボムソク「最初、僕と(カン・)ジョンホが何かやってみようっていうことでタッグを組んで、最初のアルバムは3ピースでスタートしました。その後にメンバーチェンジがあり、2023年の4月頃にユ・ビョンホンとラコブが加わって今の4人のバンドになりました」
――曲作りをする時に意識していることやこだわっていることは?
ハ・ボムソク「自分たちはジャンルも演奏スタイルも制限がないんです。リファレンス無しで創作するという姿勢で音楽を作っているので、演奏しながら生まれるままに、頭に浮かんだものを音楽にしています。ジャンルに関しては自分たちの間でも話題にしないし、本当にいろんなものがミックスしていて、それがバンドの音楽となって発信しているという感じですね。それプラス、良い演奏をするというマインドで楽曲制作しています」
――クロスオーバー・ミュージックとかフリー・ミュージック、ジャズに通じるアプローチで、オルタナティブ・ロック的な荒々しさも感じて、すごくいろんな要素が合わさってますね。
ハ・ボムソク「僕はジャンルに関しては、もうほんとに聴いた人が感じたままでいいと思っています。オルタナティブだと思ったらオルタナティブですし、ロックだと思うならロックに分類していただいていいので。自分たちでは特に固定したジャンルは意識してないし、自分たちの音楽自体がジャンルになったらいいなと思っています。なので、これを聴いた時に、"これはGOGOHAWKっていうジャンルだな"って思ってもらえればいいなと常々思っています」
カン・ジョンホ(ds)「僕たちの音楽は本当に感じ取ったままに書いてもらって大丈夫です。アルバムとライブではまた異なる魅力があるように、型にはまらずにやっていきたい。その自由さがいいかなと思います」
――それは今日のライブからもすごく伝わってきました。メンバーのみなさんはそういうバンドの自由な音楽をどのように共有されて、どういう共通認識で演奏してるのですか。
ラコブ(key)「ライブの会場毎に違う雰囲気なので、ステージに立つときの気分も異なって、ライブ毎に演奏も変わってきます。またアルバムとも違っていて、ライブで出す音に関しては、本当に素敵な自由さを目指しています」
――それは、インプロビゼーションというか、ジャズの演奏スタイルに近い?
ハ・ボムソク「そうですね。自分たちは4人とも音大出身で入試の時にジャズは必須だったので、ベースにはジャズがあります。ピアノは特にそういう要素が強いと思います」
カン・ジョンホ「自分は演奏者としてスタートしたのがソウルのジャズクラブだったんです。それがベースにあるので、自分の好きなスタイルもジャズ風になっていっていて、ロックとかいろんなジャンルを演奏しますが、先ほどおっしゃっていたようなインプロビゼーションを心がけて演奏していきたいと思っています」
ユ・ビョンホン(b)「その自由さっていう部分はひとりで作り上げるものではなくて、お互いの演奏を聴いてこそ生まれるものだと思っています。なので、メンバーがどんな風に演奏するのか、それを聴いて、自分も自由に対応していく。そうやってみんなで息を合わせて自由に演奏しています」
――ライブでも曲と曲が繋がってるようなシームレスな演奏ですが、1曲単位の長さはどれくらいを目安にしていますか。
ハ・ボムソク「現代の流れに逆らってますが(笑)、だいたい5~6分くらいですね」
――演奏もライブによって自由に変えているのですか。
ハ・ボムソク「はい、たまに10分になったりする場合もありますね(笑)。ご覧いただいてお分かりかもしれませんが、アウトロが長くなる傾向が強いですね」
――リリック面でのこだわりというのは?
ハ・ボムソク「それは曲毎に違っているんですけど、ある部分では小説みたいな要素があったりします。そこに強烈なメッセージを込めようというわけではなくて、リスナーが自由にイメージを描けるように比喩を使って表現しています。ライブを見ながら、いろんな異なる発想が浮かんでほしいなと思っています」
12月4日に新曲を2曲リリース予定。
今までより少しライトに聴けるサウンドに。
――次の新作の予定などは?
ハ・ボムソク「夏にソングキャンプ(曲作りの合宿)を行って、それがツアーの時期と重なっていたので会場毎に演奏する曲をコツコツと作っていました。今のところ、12月4日に2曲リリースする予定で、来年も配信リリースを続けていきます」
――12月にリリースされるのはどんな曲になりますか。
ハ・ボムソク「これまで自分たちの音楽に詰め込んでいたものをそぎ落とした感じで作っています。もうちょっとライトなサウンドの曲になると思います」
――どんな新曲が聴けるのか楽しみにしています。参考までに、メンバーのみなさんが気になる日本のアーティストがいれば教えてください。
ユ・ビョンホン「僕は羊文学の大ファンです」
ラコブ「自分がお手本にしているのは富田ラボさんです。いつか富田ラボさんと音楽でコラボレーションするのが夢です」
カン・ジョンホ「好きな日本のアーティストはたくさんいるのですが、その中でひとつ選ぶとするとやっぱりKing Gnuです。前身バンドの頃から、ずっと彼らの音楽を聴いていました。彼らの音楽スタイル、マインド、演奏がすごく好きですね。今は巨大な存在になってしまいましたが、いつかご縁があれば、ビールを乾杯したりしながら交流したいです(笑)」
ハ・ボムソク「僕はLampというバンドです。大先輩ですが、彼らは多様な音楽要素を取り入れていて、自分たちとすごく共通する部分があると感じています」
――最後に日本のリスナーに向けて一言ずつお願いします。
カン・ジョンホ「日本でも僕たちの音楽を聴いてくださってありがとうございます。引き続き新しい音楽を作っていきますので、また僕たちの音楽を聴きに来てくれると嬉しいです」
ユ・ビョンホン「日本でもたくさん公演ができるように、これからも頑張ります」
ラコブ「僕たちの曲は各プレイヤーの演奏に特徴があります。そういった部分が引き立つようなバンド演奏をしているので、そこに注目して聴いてみてください」
ハ・ボムソク「僕は音楽を聴く瞬間には誰もが解放されていてほしいなと思っています。部屋の明かりを暗くして、そっと集中して僕たちの音楽を聴いてみてください」
Text by エイミー野中
写真提供:FM802、撮影:田浦ボン
【LIVE REPORT】
2025.10.12. Sun. at CONPASS
「聴いていると自分の中に眠っている思い出の景色みたいなのがふわ~っと掘り起こされるような音楽。イマジネーションが膨らむすごく素敵なロックを聴かせてくれます。どんどん演奏が熱くなっていく」(FM802 DJ 土井コマキ)と紹介されて登場した韓国ソウル出身の4人組、GOGOHAWK。ロックの原始的なパワーやジャズの即興性があり、そこに印象的なリフや抒情感があるメロディーをのせて自由自在に引き込んでゆく。
冒頭からボーカル&ギターのハ・ボムソクが美しいファルセットを響かせ、憂いがあるメロディーを聴かせつつ、曲が進むにつれてエモーショナルな展開に。ラコブが奏でるジャジーな鍵盤も感情のひだに触れる。低音が強調された2曲目の『Trauma』ではユ・ビョンホンのベースやカン・ジョンホのドラムがオルタナティブ・ロックのようにソリッドに刺さる。ハ・ボムソクは心の奥の苦悩を解き放つようなボーカリゼーションで、アウトロではギターもフリーキーにかき鳴らしていた。続く『Complex』は変拍子やテンポチェンジを駆使したユニークなナンバーだ。ライブの後半では4人の演奏もさらに白熱する。まるでジャズプレイヤーのように即興的に生まれてくるフレーズやアンサンブル。その圧巻のパフォーマンスにフロアからも一際大きな歓声が上がっていた。メンバー紹介を挟み、ベースのユ・ビョンホンが代表して「今の僕の願いは日本にもう一度公演しに来ることです」と伝えると、ラストはミディアムテンポのグルーヴでフロアをゆったりと揺らしていた。聴き心地の良さとロック的なダイナミズムを生み出し、脳内の細胞が活性化するような新種のライブを体感させてくれた。

Text by エイミー野中
写真提供:FM802、撮影:田浦ボン
(2025年12月 1日更新)
コゴハク… 韓国ソウル出身の4人組。
HA BEOM SEOK / ハ・ボムソク(vo&g)、 YOU BYEONG HYUN / ユ・ビョンホン(b)、 LAKOV / ラコブ(key)、 KANG JEON HO / カン・ジョンホ(ds)
2023年4月から現在のメンバーで活動している。過去の時間を振り返り、未来を見つめる音楽集団。健全な議論と創作、そして主題の領域において一切の制限を設けない。
[11日(土)出演]
●DiAN from Beijing
●LOR from Yogyakarta
[12日(日)出演]
●EASY SHEN from Taipei
●고고학 GOGOHAWK from Seoul
[13日(月・祝)出演]
●Ardhito Pramono from Jakarta
●Everydaze from Taipei
●ゲシュタルト乙女 from Tainan
●Nunegashi from Busan
●Oh! Dirty Fingers from Shanghai
MINAMI WHEEL HP
https://minamiwheel.jp/