ホーム > インタビュー&レポート > 「コアを持った細胞たちをたくさん共鳴させて、 このイベントができている」 ハンブレッダーズとMomを迎えて開催されたリーガルリリーの 主催イベント『cell,core 2025 to 2026』大阪編をレポート
リーガルリリーが主催する対バンイベント『cell,core』。フロアに入るとまっさきに目に入ってきたのはステージ奥に掲げられたメインビジュアル。"細胞と核"を意味するイベント名にも通じる有機的な絵柄が印象的で想像力を掻き立てられる。開演前のカゲアナは、リーガルリリーのメンバー自ら担当していて、「この会場に集まったアーティスト、会場のみなさん一人一人の細胞が結びついて、今日だけの特別な1日が作れたらいいなと思います」と丁寧に挨拶してライブに移っていった。
●Mom

トップバッターとして登場したのはシンガーソングライター/トラックメーカーとして活動するMom(マム)だ。いきなりJBみたいな煽りがインパクト大のSEで引きつけて、サポートのベースとドラムと共にバンド編成で登場。ライブ前のアナウンスでリーガルリリーの海が「Momの音楽はいつも新しい気持ちを教えてくれます。ぜひ無防備な気持ちで、そこで鳴っている音楽を感じてみてください」と紹介していたように、ボーカル&ギターのMomを中心にしたミニマムな編成で独自性に富んだ楽曲を繰り出していく。『ティーンエイジ≠ネイション』から始まった前半は自らアコースティックギターを奏でて歌うスタイル。ゆったりめの軽やかなグルーヴ感が心地よい。続く『僕はラジオ』からは一転、イントロから激しいストロークをかき鳴らすカントリー調で熱を帯びて加速していく。その後も曲調が鮮やかに変化してフロアのみんなを釘付けに。メンバー紹介のバックでビリー・ジョエルの『ストレンジャー』のイントロが流れていたのも印象的だ。

ライブの後半に入るとギターを置き、ハンドマイクでより身軽になって歌い出す。『消失点{fade-out}』と『涙(cut back)』はボーカルにエフェクトをかけたヒップホップスタイルにチェンジ。赤い照明の下でフロアを煽るように歌う姿に惹きつけられた。

「今日はリーガルリリーさん呼んでくれてありがとうございます。来年はアルバム2枚出すので」という大胆不敵な告知に大きな拍手が送られ、「ほんとだぜ」と念を押すと、「最後まで楽しんで帰ってね。どうもありがとう」と言ってラストは再びアコギで歌う『#天使よりもショットガンが欲しい』。曲名にもなっているパンチラインが強烈で、Momのカウンター精神が刺さってくる。フォーキーなメロディとヒップホップ的な軽快感やギミックが効いたスタイル、どこか飄々としたキャラクター。一度目にすると忘れられない存在感を残してステージを後にした。
●ハンブレッダーズ

みんなのあたたかいクラップに迎えられて登場したハンブレッダーズ。昨年、結成15周年を迎え、3月に初の城ホール単独公演、10月には初の日本武道館公演を実施。さらに2025年10月には地元大阪、大阪城ホールで初の主催フェスも大成功に収めて快進撃中だ。「最初はグー!」とムツムロ アキラの掛け声で気持ち良く走り出して場内は一気に明るいムードに。疾走感満点の『BGMになるなよ』と2曲続けて、「リーガルリリー、誘ってもらってありがとうございます。最高の一日にしましょう! 同調圧力は一切ありません。僕たちのライブは好きなように楽しんでください。各々のダンスよろしくお願いします」(ムツムロ アキラ、以下同)と、やさしい言葉をかけて、『DANCING IN THE ROOM』を投入。親しみやすいダンサブルな曲調と共にフロアのみんなも軽やかに揺れ出す。

リーガルリリーとは2年ほど前、"米子と山口で初めてツーマンライブ"をしたそうだが、それ以前にとあるサーキットイベントでリーガルリリーのメンバーがライブ前にラジオ体操をしていたのを見て、自分たちもやるようになったと打ち明ける。後に、そのことをリーガルリリーに伝えると、今はラジオ体操はやめて、"ヨガをやっている"と返答されたので、ハンブレッダーズも「もう数年したらヨガをやるバンドになると思う」とコメントして場内の笑いを誘っていた。

そんな歓談で場内を和ませて、『プロポーズ』からのセクションからギアをアップ。『常識の範疇』では4人のプレイもさらに熱を帯びて観客の声も高まり、拍手喝采に。その後に一呼吸置いて歌ったのは、「みんな各々が暮らしている場所が思い浮かんだらいいなと思って作った」という『東京』。ささやかだけど、日々の暮らしの中で大切なことに気づかされるエモさがあり、みんなをじっと聴き入らせていた。

意外にも、大阪で共演するのはこの日が初めてとのことで、「リーガルリリー、大好きなバンドです」と改めてラブコール。さらに、「しなやかな強さというか、どんなことがあっても流されない、リーガルリリーというバンドが存在してることが嬉しい。新曲『コースター』もめちゃめちゃ良い曲」と称賛する。
終盤には新曲『ちょっとロンリー』を披露。ベースのでらしも歌う心地よく弾んだ曲調でシンガロングを誘う親近感に包まれる。歌う前に、「人間はひとつになることはなく、ひとりひとりのままだけど、ひとつになった素敵な勘違いがあるのが音楽の魅力」と述べていたのも納得だ。

アップテンポでグルーヴィーなラストの『⚡︎』では木島が力強いビートを刻み、ukicasterが艶めくギターを掻き鳴らして、各パートが掛け合うように生き生きと奏でる。「ロックバンドというのは、みんなの心のバッテリーが赤になるスレスレのところでフル充電する力がある」「いつだって再生ボタンを押してくれたらみなさんの心をビリビリさせに行く」――そんな頼もしい言葉と共に心を沸き立たせる最高の歌とバンドサウンドを脳裏に焼き付けていった。
●リーガルリリー

トリを務めるリーガルリリーは四つ打ちの『danceasphalt』からスタート。たかはしほのかが高音域のボーカルで弾むようにギターを奏で、軽やかな雰囲気だ。ベースの海が前に出て強いリフを奏でる『1997』からは景色が変わり、たかはしほのかの意思を宿したギター音が鋭く響き渡る。続く『リッケンバッカー』ではサポートドラマーのDesire Nearlyによる気迫に満ちたドラミングと共にみんなの拳も突き上がる。序盤からリーガルリリーの代表曲ともいえるパワーチューンが続いて、3ピースの躍動感と生命感みなぎるアンサンブルにフロアからも大きな喝采が湧き上がった。

しばしチルアウトするように浮遊感ある音を響かせる楽器隊ゾーンで沈静してからの『蛍狩り』も圧倒的だった。たかはしほのかのが発する<輝きを放て>という言葉が暗闇を、胸の中の空洞を貫いてゆく。『惑星トラッシュ』では一転して音量を上げてソリッドなアンサンブルを叩きつけた。
中盤のMCでは、海がMomに「ずっと好きだった。ライブも最高だった」、ハンブレッダーズには「対バンして刺激をもらった。カッコ良いバンド」「ここまでつないでくれてありがとう」と両者に感謝する。さらに、「大切なコアをもってみんなが集まってくれている。コアを持った細胞たちをたくさん共鳴させて、このイベントができている」と5周年を迎えた『cell,core』の趣旨を再確認するように同イベントのコンセプトを伝えた。

次なるセクションでは、「一度は経験した数字」という前振りから『17』と初期のナンバー『僕のリリー』の2曲を演奏。たとえ10代に戻れなくても、決して鈍ることがないリーガルリリーの感性の鋭さを再認識させられる。
しばし間を置いて、「月の裏側、忘れ物、恋人」と発するたかはしほのかの言葉に誘われて、中盤の美しいハイライトとなったのは『ムーンライトリバース』。弾き語りからバンドサウンドに転換する構成で、静と動のコントラストを効かせて観客を惹きつけ、アウトロまで深く引き込んでいった。

後半では、たかはしほのかが音楽の原体験を振り返るような場面があり、「ステージがここにあって、こういう音楽を楽しむという形に、私はとても救われてきました。そんなライブハウスの曲をやりたいと思います」といって『天きりん』を投下する。フィードバックが響き、シンプルな8ビートに乗って再び無数の拳が上がる。たかはしほのかがギターを高く掲げるようにしてプレイする姿がひときわ崇高に目に映った。自身が大切にしてきた音楽やライブハウスという存在と対峙して、言葉以上に伝わってくる思いの強さを体現しているようだった。

心地よく体が揺れてステージとフロアに一体感が生まれる『キラキラの灰』から、「最後に願い事の曲をやります。本当にありがとうございました」(たかはし)と言って『ますように』で本編を終える。
鳴り止まぬ拍手とアンコールを求める声に応えてステージに戻ってきたメンバーは、今一度、Momとハンブレッダーズにお礼を述べて、「今日のために曲を作りました」と新曲の『コースター』を披露。どれほど最低な気分に陥っても、生きていれば自分自身を何回でも再生できる。そんな気持ちにさせてくれるようで何度でも耳にしたくなるナンバーだ。

その後、「7月5日、海ちゃんが加入した日、海の日に、大阪城野音でライブをします」(たかはし)と、来たる2026年7月5日に大阪城音楽堂でワンマンライブが開催されることが発表。「夏の野外で、みんなでまた遊びましょう」(海)と声を掛けて、フロアには拍手と歓喜の声が飛び交う。ラストの『はしるこども』はたかはしほのかが高速ストロークをかき鳴らし、海はしなやかなベースラインを奏でて、どこまでも突き抜けていった。――2023年の日比谷野外音楽堂以来、約3年ぶりの野外ワンマンとなる大阪城音楽堂ではどんな景色が広がっているんだろう。さらに研ぎ澄まされたリーガルリリーのコアに触れ、そこでまた心が震える新鮮な音楽体験をしたい。

Text by エイミー野中
Photo by キョートタナカ
(2025年12月26日更新)
リーガルリリー『cell,core 2025 to 2026』大阪編
2025.12.18 Thu at BIGCAT
<Mom>
01. ティーンエイジ≠ネイション
02. 僕はラジオ
03. 冷たく燃える星の下で
04. _____identitycrisis______
05. 消失点{fade-out}
06. 涙(cut back)
07. # 天使よりもショットガンが欲しい
<ハンブレッダーズ>
01. グー
02. BGMになるなよ
03. DANCING IN THE ROOM
04. プロポーズ
05. 常識の範疇
06. 東京
07. ちょっとロンリー
08. ⚡︎
<リーガルリリー>
01. danceasphalt
02. 1997
03. リッケンバッカー
04. 蛍狩り
05. 惑星トラッシュ
06. 17
07. 僕のリリー
08. ムーンライトリバース
09. 天きりん
10. キラキラの灰
11. ますように
En1. コースター
En2. はしるこども
▼7月5日(日) 17:30
大阪城音楽堂
※小学生以上はチケットが必要になります。未就学児のご入場は、同行の保護者の方の座席の範囲内で、周りのお客様のご迷惑にならないようにご覧ください。未就学児でもお席が必要な場合は、同行の保護者の方とは別途1席分のチケットをご購入ください。雨天決行(荒天時の開催の可否は主催者判断となります。)会場内での傘の使用は禁止です。
[問]GREENS■06-6882-1224
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2025』
▼12月28日(日) 11:00
インテックス大阪
「ハンブレッダーズ ワンマンツアー “2026年 銀河の旅”」
チケット発売中 Pコード:311-255
▼2月28日(土) 18:00
ロームシアター京都 メインホール
指定席-6300円
着席指定席-6300円(ステージまたは演出の一部が見えづらい場合がございます)
注釈付指定席-5800円(ステージが一部見えづらいお席となります)
[問]GREENS■06-6882-1224