ホーム > インタビュー&レポート > “3人だからこそ“の音の出し方を追求した 8年振りとなるフルアルバム『月の裏側』 その制作で見えてきた、REGAの核と進む道
メンバー脱退&再始動でわかった
"この3人がいればREGAの音楽だ"
――REGAが活動再開して少し時間が経ちましたが、バンドはどんな状態ですか?
青木「まだまだ発展途上かなとは思いますけど、今回のアルバムで3人の音が完成した手応えはあります」
井出「4人から3人になって新しいバンドを組んだくらいの変化があったので、方法論も方程式もまっさらでやってやろうという感じでした。再始動以降ライブで重ねてきた曲を今回パッケージしたというノリなんですね。次はこうしたいという欲もどんどん出てきていた中でライブを重ねて録った作品なので、"今後こういうものはできないだろう"と思えるファーストアルバムのようなものができたかなと思います」
三宅(大きく頷く)
――活動休止期間を経て、メンバー脱退とバンドの活動再開を報告した文章で「POPアイコンを失った我々はどーするかというと3人で活動をすることにしました。」と書かれていたのがすごく印象に残っているんです。
青木「あぁ...!」
井出「そんなこと言いましたねぇ」
――3人体制になったことで、改めて"REGAの核"は見えてきたでしょうか。
青木「元々ギターは何回か変わってきたけど、この3人だけはずっと一緒にやってきました。そういう部分ではこの3人がいればREGAの音楽だっていうのはあるかな」
井出「実は"自分のバンドで最強のツインギターを作りたい"と始めたのがregaなんです。そういうバンドを作りたかったけど、ことごとくギタリストが辞めて...これはもう覚悟しないと! と思って。理想を形にできんかったなぁという思いはどこかにあるんです。でも何よりバンドがしたい気持ちが強くて、覚悟を決めて3人でやろうと」
――このメンバーの誰かが抜けていたらREGAとしては成立していなかったですか?
井出「そうですね、同郷のこの3人が残ったからっていうのもあるし」
青木「メンバーが減っても続けることに迷いはなかったですね」
井出「3ピースはバンドとして究極っていう気持ちもあるんです。そこに向き合うワクワク感もありました。同時にすごく大変でしたけど」
――先ほど"新しいバンドを作るくらいのイメージで"とおっしゃいましたけど、音の面ではどういったところから再始動したのでしょうか。
井出「3人になって、打ち込みやいろいろな形で足りない部分を補う選択肢もあったんです。でも逆にそれを全部削ぎ落とそうと思いました。特にギターは極力シンプルな感じでやってみようと」
青木「僕は3人になって、音楽を引き算で考えるようになりました。元々はツインギターだったので足し算の方程式だったけど、今は足りないとしても足りないままかっこよく表そうというか。とにかく今までのREGAを壊すつもりで始めたいと思っていました」
――音楽のイメージが変わってもそれはそれでいいというか。
青木「僕らが納得できればいいと思いました」
――三宅さんはギターが1人になったことによって、ドラムの叩き方など変化はありました?
三宅「間を詰めようと思った時もあったんです。人数が変わってすぐは、間がありすぎて不安になったんですよ。今まで音が詰まっていていろんな音に包まれていたのに、それがフッとなくなって。でも慣れですかね。今の間のままで大丈夫だと思えるようになりました」
――4人の時は"音を詰めよう"みたいな共通認識があったんですか?
青木「ありましたね。出せるだけアイデアを出して、そこから削っていく作業の方が多かったかな。そういう意味でももう別のバンドだけど、"やっぱり REGAだね"って言ってもらえるバンドでありたいなと思いますね」
アルバムタイトルを考えて見えてきた
これから進む道を照らすキーワード
――3人で再スタートしてから2023年にシングル「Rainford」をリリースされました。この曲の反応はどういったものでしたか。
井出「ライブで披露した時は、多分お客さんたちは戸惑っていましたね...。"REGA、こうなるよなぁ"という反応にも見えたし。今までツインギターで掛け合いをバシバシやっていたバンドがスリーピースになって、ギターの音も全く違うし特別ノリやすい楽曲でもなかっただろうし、そりゃ戸惑うよなぁって。その頃僕らは僕らで制作に関してもまだまだ手探りの状態でした」
――なるほど。その後REGAは精力的にライブを重ねていく方向に進みましたが、それはなぜだったのでしょうか。
青木「ライブに関しては、再スタートフィーバー的にお誘いがたくさんあったんです」
井出「ボーナスタイムみたいな感じで」
――REGAが再始動したら誘いたくなる気持ち、めちゃめちゃわかりますよ!
井出「その中で見えてきたものが大きかったですね。自分たちのここがよくない、ここが甘いとか。ライブを通して周りからも意見をもらって、演奏に関してめちゃくちゃ考えましたね」
青木「確かに今回出したアルバムの曲がライブで育っていった部分は大きかったですね。ステージで披露してから編曲に取り掛かった曲もありましたし」
――今回の『月の裏側』は8年ぶりのフルアルバムですが、まずこのタイミングでアルバムを出そうと考えた理由から伺えますか。
井出「まぁ、曲が揃えば出したい派ではあるんですよ。...あと、3人になってより曲作りが楽しいんです。新しいアイデアが湧いてくるし試したいことも増えてきていて。今回は散々ライブでやってみたし、そろそろ音源にしたいねという自然の流れもあって」
――3人での曲の作り方は何か変わりました?
井出「どうかなぁ」
三宅「変わってないんじゃん? 作り方自体は」
井出「3人になって作りたい欲が湧いているのは確かですね。人数が絞られた分、お互いのアイデアが "ピュアに届く"ような感覚があって。4人の時はアイデアに対して悩む時間が多かったんです。今ももちろん悩むけど、アイデアを形にする工程が楽しいのでそこは明らかに違うと思います」
――それは3ピースというバンドとして最もシンプルな形になったからですかね。
井出「...かもしれないですね。進むべき道は間違っていなかったなと思います」
青木「3人になったことで各自の役割がはっきりしてきた部分はあるんです。そこから曲作りとなった時に、圧倒的なアイデアがないとバンドは進んでいかないんですよ。だから今、アイデア量が増えたのは当たり前なのかなとも思います」
三宅「僕はあんまり変わってないです、マイペースです」
井出「でもアイデアを自発的に出すようになったよね」
三宅「それは大人になってきて、年齢的なものもあるのかな。ドラム練習もずっとしてきて前より上手くなっている感覚もあるから、変わらないとは言うけど...どうかわからんよね」
――変わらないと言いつつ、確実に物理的にも心理的にもたくさんの変化が起こってアルバム制作に挑んだのだと思うのですが、"曲が揃えば出したい派"とおっしゃっていたので気になったのが、曲ができればシングルで出すなりEPを作ってみるなり、配信の時代だからこそいろいろなやり方が考えられたと思うんです。でもREGAは再始動後シングルを1枚リリースしてフルアルバムへと進みました。このプロセスを選んだ理由を教えてください。
青木「今回のアルバムに収録しているのは、ライブでかなり披露してきた曲なんです。ライブにおける自分たちの持ち時間の中でお客さんに見せるためのパフォーマンスとして曲順も考えるんですけど、こういう流れでお客さんを楽しませたいとか自分が高揚していきたいという理想に対して、やっぱりアルバムくらいしっかりした曲数がないとそれを表現できないと思いました。しかもそれを通して聞いてほしい。それはEPではなくアルバムになった理由としてありますね」
――アルバムであることにこだわったんですね。
青木「まぁ僕らもアルバム世代なので、アルバムを通して聴いて得られる感動が好きなんですよね」
――じゃあ、今回はライブでどう表現するかも含めてパッケージにしたニュアンスもあります?
青木「曲順に関してはそうですね。ライブでやっている曲順に近いもので収録しています」
井出「当初ライブはライブ、音源は音源としていろいろ音を重ねて録る話も出たんです。ただやってみたけど全然しっくりこなくて。そもそも曲を重ねるように作っていなかったのもあります。とにかく今回は3人のありのままの音を録ろうという結論になりました」
――ありのままの音。
井出「一発録りです。まぁ毎回一発録りなんですけどね。例えばギターやベースのフレーズやドラムのリズムがあって、そこに対してセッションして拾えそうなところを拾っていくというのがいつものやり方で。あとはライブがプリプロみたいな存在になるというか」
――ちなみに作ってからライブを重ねたことによって大きく変化した曲はありましたか?
三宅「ガッツリ変わったのは「Secret Notebook」くらいかもね」
井出「当初激しい終わり方をしていたんですけど、ちょっと憂いのある感じというか曲の流れとして無理矢理感がなくなったと思います」
――それってライブの何曲目に演奏されていたかによっても、曲の終わり方は変化しそうな気もします。
井出「いや、曲順としてはほぼ固定していたので変わった理由としては曲が持っている力に寄り添ったらそうなった、くらいの感じですね」
――曲の持っている力と例えばその日のお客さんの反応によって、曲の始まりや終わりが変わっていって最終的なものが音源になっていると。
井出「そうですね。でもまぁ自分たちの体感が強めに反映されていると思います。やってみてこう思ったねとかそういうのが反映されていく感じというか」
――なるほど。今回フルアルバムとしてしっかりしたボリュームの、9曲入りになっていますが...。
井出「僕ら的に結構な曲数っていうイメージはないんですけどねぇ」
――ただ最近はアルバムで曲をもっと絞っているアーティストもいますしね。
井出「僕的には10曲以上がマストのイメージもあるんですけど」
――さすがアルバム世代ですねぇ。個人的には聴いた感じも含めてしっかりとしたボリュームのある作品だと感じたのですが、中でも6曲目にボーカルものが入っているというのは新鮮な驚きでした。
井出「これはCandleくんというラッパーとの出会いから始まりました。(青木)昭信が友達だったので紹介してもらって」
青木「3人になった時からいろんな人とコラボしてみたい気持ちはあったんです。4人の時代はそういうことをやってこなかったから、面白いかなというのが頭にはありました。そんな時にラップが乗りそうなトラックができたので、素晴らしいアーティストだと思っていたCandleくんにオファーしたらOKいただけて」
井出「4人の時はコラボしたいとすら思っていなかったですけど」
青木「うるさかったんじゃないですかね(笑)。4人いたから、十分足りているというか」
――"十分足りている"ってわかりやすい答えですね。
井出「コラボものは今も制作が進んでいて、ガチの地元の友達の髙橋良輔に歌ってもらう予定なんです。俺と昭信がバンドを始めた頃に隣町のスタジオに通っていて、そこのおっちゃんに見とけって言われていたバンドのボーカリストなんです。15歳くらいの時で、みんながBON JOVIやMR.BIGをカヴァーしまくっていた時代ですよね。その頃に仲良くなって、お互いバンドをやり続けてお互いに東京にいて」
――エモい話ですねぇ。
井出「そういうのも信じたいし、そういうので行きたいというか。今は"こういう曲ができたからこの人に歌ってもらおう"という発想なんですけど、これからはどうなるかわからないですね。面白いことをやれた方がワクワクするなとは思います」
――実際にチャレンジしてみてどうでしたか? ボーカルがいるって、今までのREGAからしたら異色なわけで...。
青木「曲自体は元々あって、ボーカルのために編曲したとかはないんです。僕的にはこれからもそういうネタが出てきたらボーカルなりラップなり入れられるものを入れていきたいくらいの感じですね。でもやっぱりボーカルってすごく力を持っているなというのは感じますね」
――ボーカル入りの曲があるということももちろんですが、今回のレコーディングでサウンドの新しいアプローチや、やってみて新鮮だったことはありましたか?
青木「今回1stアルバムの時と同じエンジニアにお願いしたんです。その時と一発録りというやり方は変わらないけど、当時はギターがパキパキとしたインスト全盛期みたいな音だったんです。でも今回はもう少しボトムがある感じにしてもらったのはありますね」
――そういう音に変わった意図は?
青木「単純に今3人でやっている音にハマっているというのが大きいと思います」
井出「3人になってギターの音が一番変わったと思うんです。変えた、というのが正しいかな。やっぱりギターがひとりになった分、レンジだったり厚みだったりを音圧で補強しようと思いました。まぁ、元々REGAが始まった頃ってある意味インスト音楽に対する挑戦みたいなところがあったんですよ。ボーカルがいて、そこからインストになった時点で歪んだ音をクリーンにして。なので、だんだんその原点に戻っていっている感覚ですかね。ここからのREGAの曲、もっと面白くできると思いますよ」
――活動の日々を重ねてきた結果ですね。
井出「本当にそう思います。方法論はシンプルになっていっているけど、選択肢は増えている感覚かな」
――そう思えるようになった今リリースするアルバムに『月の裏側』というタイトルがなぜついたのか、このインタビューでぜひ質問したいと思っていました。
井出「昭信の案よね」
青木「そう、僕が提案しました。ジェームズ・タレルっていう現代美術家がいるんですけど」
――金沢21世紀美術館にある《タレルの部屋》の?
青木「そうです。光と空間の美術家ですけど、彼の作品に《バックサイド・オブ・ザ・ムーン》という作品があって、タイトルはそこからきています。作品自体がすごく暗い小屋なんですけど、そこに手探りで入っていって中にある椅子に座るんです。ずっとその椅子に座っていると、ぼんやりと光が見えてくる。その光というのは小屋に入った時点でついていたものなんですが、入った時点では見えていなくて時間と共に見えてくるんです。その見え方やそこにあったのに見えてくるものというのが、曲作りや音楽の見つけ方に近い気がして。アルバムのコンセプトとしての『月の裏側』というよりは、音楽制作の総称として『月の裏側』というワードを提案しました」
――それがこれからのREGAの音楽制作のテーマにもなるような気もしますね。
青木「うん、そうですね」
井出「この話を聞いて、めっちゃしっくりきたんです。なんで俺ギターやりよんのやろ? とかよく思うんですよ。でも、元々ギターをやる人間だったんじゃみたいなことがその話を聞いた時にふっと降りてきて、すごくいい言葉やなと思ったんです。テーマとしてもすごく気に入っています」
――それ、お話を聞かないとタイトルを見ただけではそこまで推測できないですねぇ。
井出「ZINEとか作って配布したいくらいですよ」
――ジェームズ・タレルの作品にも興味が湧きます。
青木「僕、大竹伸朗さんも好きなんですけど、彼の"既にそこにあるもの"っていう言葉も好きで、それと『月の裏側』という言葉もすごくリンクして。今は見えていないだけで、自分の外側にある音楽は散らばっていて見つけてもらうのを待っているような感覚もあるんです」
――伺っているとこの『月の裏側』というアルバムは、今後のREGAの進むべき方向を指してくれている感じもしてきますね。
青木「ちなみに、次のアルバムは『月の裏側2』って決まってます」
井出「重ねていく感じです」
――あぁ、めっちゃいいですね...! そして12月にはリリースパーティが開催されます。REGAのライブなら音源を再現するというより、再構築するようなライブになるのでは...? と期待しちゃいます。
青木「音源も生々しいんですけど、僕はライブとは全く違うものだと思っているんです。生の現場っていうのはいろんな偶然も含まれてくるので、それをお客さんと一緒に楽しめたらなっていうのがすごくありあます。ライブ中に僕らがどこまで遊ぶか、とか」
――我々はその突発性を目撃しに行くんですね。
青木「相乗効果としてお客さんに突発させられている部分もたくさんあるので何が起こるか、ぜひ見にきてもらいたいですね」
取材・文/桃井麻依子
(2025年11月12日更新)
発売中
2530円/WDSR-007
WORDS Recordings
《収録曲》
01. Splendor
02. HOP
03. Cortez
04. Emerald Mountain
05. 6 Fingers
06. MONOLITH feat .Candle
07. 透明な部屋
08. Secret Notebook
09. Lightyards
配信リンクはこちら
レガ…溢れ出る感情を剥き出しに表現する凄まじいライブパフォーマンスで、各地の音好きを魅了するインストゥルメンタルバンド。バンド結成より四人編成のバンドであったが現在はギター・井出竜二、ベース・青木昭信、ドラム・三宅隆文のスリーピースで活動。オーディエンスと一体になって音と戯れるように遊び、人間の根源に潜む喜怒哀楽を剥き出しにする演奏で、これまで朝霧 JAM、TAICOCLUB、RUSH BALL、SYNCHRONICITYなど数々のフェスに出演し、FUJI ROCK FESTIVALでは前夜祭のトリを務め会場を熱狂に包んだ。一方、眼鏡市場やTOYOTA VOXY のCM音楽に抜擢されるなど幅広く活動を続けている。2017年に活動を休止したが、2023年10月6年ぶりの新曲をリリース。また2023年11月の自主企画でライブ活動を再開し、即日完売となったことも記憶に新しい。そして2026年4月に開催が予定されているSYNCHRONICITY’26への出演もアナウンスされている。
【東京公演】
▼12月14日(日) LIVE HOUSE FEVER
【大阪公演】
▼2026年1月9日(金) 19:00
CONPASS
前売-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は無料、小学生以上有料。
※客席を含む会場内の映像・写真が公開されますので予めご了承ください。
※公演の中止または延期、及び開場開演時間の変更以外による理由のチケット代払い戻しは致しかねます。
[問]FLAKE RECORDS■06-6534-7411
【愛媛公演】
【東京公演】
▼2026年4月11日(土)・12日(日) 13:00
Spotify O-EAST/Spotify O-WEST/他
2日通し券-17800円(ドリンク代別途要)
1日券-9800円(ドリンク代別途要)
[出演]渋さ知らズオーケストラ/ZAZEN BOYS/家主/奇妙礼太郎BAND/TURTLE ISLAND/SPECIAL OTHERS/toconoma/People In The Box/The Novembers/Lillies and Remains/8otto/Suspended 4th/mudy on the 昨晩/LITE/Rega/QOOPIE/chilldspot/the engy/brkfstblend/Khaki/aldo van eyck/北村蕗/HUGEN/BLACK BERRY TIMES/New Action!/他
※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)。
※開場・開演時間は変更となる可能性がございます。
※アーティストのキャンセルや変更等による料金の払戻しはございません。
※チケット購入前に、公式ウェブサイトのガイドライン・免責事項・注意事項をご確認ください。購入時点で全てに同意したものとみなされます。
公式サイト
https://synchronicity.tv/festival/
Official Website
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