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“ポップネスを躊躇なく全力でやりたい”
4ピースバンド・リュベンスが
『MELT』で余すところなく描いたクリエイティブ
11月には初の大阪ワンマンを開催。リュベンスインタビュー

セレナ(vo&g)、悦(g)、Mary(b)、まつまる(ds)からなる東京発の4ピースバンド・リュベンスが勢いを増している。2022年に大学の軽音楽部で結成、2023年4月から現メンバーで活動を開始した彼ら。源流にはインディーミュージックがありながら、ロックや歌謡曲、ポップスなどのジャンルをクロスオーバーして、独自性のある音楽を奏でている。悦が綴る儚くも切ない歌詞、その世界観を解像度高く表現するセレナの歌声、緻密に練り込まれた楽曲構成とバンドアンサンブル。昨年6月にリリースされたシングル『天使さん』は海外リスナーの耳にも届き、代表曲のひとつとなった。昨年末にはindigo la EndのライブのOAをつとめ、今年1月に東京・新代田FEVERで行われた初ワンマンはソールドアウト。今後の活躍が期待される新進気鋭のバンドだ。10月29日には、満を持して1stフルアルバム『MELT』をリリース(11月5日にはタワーレコード限定でCDもリリース)。今回はセレナと悦のふたりに、結成から『MELT』の制作の裏側までを語ってもらった。11月3日(月・祝)にはLiveHouse ANIMAで初の大阪でのワンマンライブを行う。ニューカマーながら実力派であるリュベンスの現在地を、今目撃してほしい。

ポップネスとインディーミュージックを両立させたい


――ぴあ関西版WEB初登場なので、まずリュベンスはどんなバンドかというところからお聞きしたいと思います。大学の軽音楽部で出会ったそうですが、最初に"バンド組もうぜ"と言い出したのはどなたですか?

セレナ「悦が主導で始まりました。結成が2022年なんですけど、それよりも前に私以外のメンバーが既に集まってて、最後に私も誘ってもらって4人で始めました。2023年にドラムだけメンバーが変わったんですけど、まつまるはひとつ下の後輩で、みんな大学の軽音楽部で出会いました」

――悦さんは、どういうバンドにしたくてメンバーを集めていたんですか。

「やりたいことや方向性は、今できてることに近いですね。最初ボーカル以外のメンバーが集まって。でも僕らのジャンル的に歌がすごく大事になると思っていたので、フロントマンとして技術的にもしっかり担える良い人を探してたけど見つからなくて、少し遅れて見つかったという経緯です」

――根底にはインディーミュージックの血が流れている印象ですけれども、ポップネスを追求していく感じですか。

「はい。贅沢なんですけど、どっちもやりたくて。僕もメンバーもインディーミュージックが好きなので、このメンバーでやっていく上では親和性も高いんです。でもやっていく以上、ちゃんとシーンの中で目に見えて成長していけるような活動をしたいなと思っていて。その視座で活動するのもメンバー全員の共通認識です。だからそういう意味で、ポップなメロディーラインをしっかり持った曲を作ってリリースしていきたいなと」

――最初から明確に目指すところがあったんですね。

「でも始めた時は全然そんなこともなくて(笑)。ほんとは"とにかくバンドをやりたかった"というのが1番大きいんです。定量的な目標を設けて始めたということはなくて、割と"やりたいから始めてみた"の延長で、やりながら方向性が定まっていって、ここ1~2年で、ようやく4人でそれを共有できてる実感があります」

――なるほど。質問の順番が前後しますが、セレナさんに出会った時、"歌声がハマった!"みたいな感覚がありましたか?

「そうですね。セレナはメンバーを集めてる時から知り合いではあったんですけど、歌うところをそんなに見たことがなかったんです。そこから年単位で時間が経ったある日、軽音楽部でセレナの歌を聴いて、"思ったより良いな。何で忘れてたんだろう"みたいな(笑)。ほんと、"良い人いたな"って(笑)」

――セレナさんは誘われてどうでしたか。

セレナ「私もずっとバンドが憧れだったんです。軽音楽部はコピーバンドで1回集まってもうそれきりという感じだったので、"オリジナルでやってみたかった"という気持ちが強くて。軽音楽部の中でもみんな上手かったので、"ついていけるかな"という不安もありつつ、誘ってもらった時は本当に嬉しかったです」



喪失や別れ、2度と戻らないものに心惹かれる


――基本的にバンドの中でイニシアチブをとっているのは悦さんですか?

「曲の制作ではそうですね」

――どういう時に曲を書かれますか?

「大きく見れば全然制作してない1ヶ月があったり、ムラはあるんですけど、インプレッションを受けた時にしか作らないのではなくて、なるべく作るようにしてますね。歌う人が僕じゃないので、歌詞はすごくいろいろ意識しながら書いてます。歌詞における考え方やできていることは、最新曲までずっと変化してるんですけど、楽器や音に関しては自分が常日頃考えてるので、好き勝手やらせてもらってますね」

――"こういうことを表現したい"という源はありますか。

「自分は特に、失うものや人との別れみたいなものにインプレッションを感じるというか。バンド活動を始めて今に至るまで、前進したり変化する楽しみも実感するようになってきたんですけど、同時に進む過程でこぼれていくもの、1度失ってもう2度と同じ状態には戻らないみたいなことも色々起きてる気がして、そこにすごく目がいっちゃう。なのでそういうのを自然と歌にしてるなとよく思います」

――サウンドは明るいけど、歌詞は切なく儚いですね。

「ちょっとひねくれてるからだと思います(笑)」

――いつも曲先ですか?

「はい。基本的にはメロディーがしっかり出来上がってから歌詞を考えてます。歌詞も意味合いだけじゃなくて、リズムや音韻をすごく大事にして日本語を選んでいるので、メロディーとアレンジのイメージも固まった上で書きたくて、そういう順番でやってます」

――なるほど。1音1音まで細かく練り込まれている印象を受けましたが、悦さんが細部まで作り上げてからメンバーさんに投げられるんですか?

「多いのは、デモの時点で自分がある程度形にして、メンバーに共有してスタジオで詰める方法です。自分は言葉で伝えるのがちょっと苦手で、一旦自分のイメージで作って伝えてるので、ほぼ当初のデモに近い曲もありますね」

――セレナさんは、悦さんの世界観を歌にする時に心がけていることはありますか?

セレナ「曲に合う歌い方をしたいという気持ちが1番あるので、曲の持つ世界観や歌詞、どういう人が歌ってるのかを考えたりします。あとは個人的にスッと入ってくる歌い方がしたいので、テンションもあまり重たくなりすぎないように。そこが前提としてある上で、今回はできるだけ楽しく飽きずに聴けるアルバムにしたかったので、1曲ごとの変化は意識しながら歌いました。それこそ悦が言った歌詞の意味合いだけじゃなく、言葉の持つリズムや、メロディーラインと言葉が合うように気をつけて、歌録りの前に自分の中でどう歌うかすごく考えてます。デモでは悦が歌ってるんですけど、悦の歌い方で"これはこだわってる部分なんだろうな"って最近わかってくるようになって。それを汲んだ上で、最近は"自分もこう歌いたいな"と自発的に思うこともたくさんあったりします。

――悦さんが"こういうふうに歌って"とリクエストするよりは、セレナさんがご自分で咀嚼して歌い方を決めるんですね。

セレナ「どっちもあります。たまにリファレンスを共有してくれたりもしつつ、最終的には自分なりに考えて歌いたいというのはあります(笑)。今回そこのやりとりは結構しましたね」



日本語で歌う郷愁。もっと日本でこそもっと聴いてほしい


――シングル『天使さん』のヒットで、YouTubeには海外の方からのコメントもたくさん書き込まれていますね。活動を始めてから3年、自分たちの音楽が広まってきた感覚も出てきましたか?

セレナ「広まった感覚は本当にあります。素直に嬉しい気持ちです」

「不思議だけどね、すごく。歌詞は結構"意識的に日本語を使おう"とやってきてたので、海外の方に聴いてもらえるのは意外でした」

セレナ「個人的には日本でこそもっと聴いてほしいです。"言葉をしっかり届ける"という意識が芽生えてきているので、ここからもっと歌詞とともに曲が伝わるといいなという気持ちです」

「自分も曲を作る上で、何が言葉の壁を超えて届いてるのか、音楽的な部分で読み取りたいなと思いながら過ごしているけど、まだクリティカルなものが見つかっている気がしないので、もう少し自分なりに検証して、上手くアウトプットに練り込めたらなと。現状はちゃんと前向きに捉えてますね」

――なぜ海外の方の心に刺さったのかは、まだ分析中だと。

「多分複合的な理由があるので。自分的にもしかしたら大きいかなと感じてるのは、国ごとに文化や変遷は違うけど、セレナが歌うことでそういう表層的な違いによらないところにある、聴いてくれる方みんなが持ってる郷愁を刺激するのが理由のひとつじゃないかな」

セレナ「あとは私たち、本当に海外のインディー音楽が好きで。歌詞は日本語だけど、サウンドは海外インディー的なひねくれ感がある。そういうところで面白いと思ってくれる人もいるんじゃないかなと思います」



バンドと向き合う機会になった、アルバム制作期間


――最近はバンドの雰囲気も良い感じですか。

セレナ「直近までは今作のアルバムの制作期間で、2ヶ月ぐらいライブをやってなかったんですけど、それぞれがバンドに向き合う時間になった感覚はあって。改めて"自分たちはどういうバンドなんだろう"と言語化したり、1曲1曲でメンバーがこだわる部分を伝え合ったり。だから私はバンドがちょっと進化した感覚はあるんですけど」

――というのは?

セレナ「初めてのアルバムを作る上で、このアルバムがどんなアルバムなのか、バンドがこの先どんな方向性で歩んでいきたいか、各々たくさん考えた上で制作に向き合えた実感があります」

「自分がどういう意図で作った曲なのか、全員にちゃんと話しました。『MELT』はしばらく僕らの名刺代わりになると思うんですけど、その先の自分たちにどんな変化が起きてほしいかというのは、メンバー間でも見え方が同じようになってきたんじゃないかな」

――じっくり時間をかけて作られたんですね。

「急かされてた気もするんですけど(笑)。でも時間の許す限りこだわりたくなっちゃうので。バンドを長く続けていくということは、"ここで自分たちの全てを出しきれてるはずがない"という自覚は持ちながら、"今できることはなるべくやりたい"という気持ちもあって頑張りました」

――制作期間に入られたのはいつ頃ですか。

「7月ぐらいからですかね」

セレナ「それこそ新曲も作りながら」

「『ツキナミちゃん』という1番新しいシングルは、アルバムに入れることも想定しながらデモを作り始め、レコーディングの1週間前にやっと完成して、"1週間で頑張って仕上げよう!"って。そういうのもありましたね(笑)」



"MELT"という言葉が表す、悦の芸術表現


――ライナーノーツを拝見して聴いていると、今作は出来た曲をまとめてアルバムにしたというよりは、曲順から空気感まで計画的に作られている印象を受けました。

「僕ら的には、"アルバムを作ろう"となってから作ったり、詰めた曲の方が少なくて。"1曲1曲をしっかり作っていこう"という気持ちが大きかったですね。結果それが良い意味でプレイリスト的にぎゅっと集まって、僕らの軌跡がそのまま詰まったものになった。1番古いのだと3年前に作った曲も入っているので、3年間の変化がちゃんとパッケージされてる感じ。だから"結果的に良くなったアルバム"というイメージでいます、僕は」

――どんな1枚にしたかったですか?

「1枚目のアルバムって、自分がリスナーとして聴いてきたアーティストの中でも少し神格化されていたり、実際聴いてみてそう感じる部分もよくあったので、"1枚目だ"と意識しないこともなかったんですけど、でも先輩アーティストの方たちは狙ってやってたわけじゃないのかなという気もしてきて。だから好きなことや話し合って生まれたものをそのまま詰め込めば、聴いた人にはしっかり伝わるのかなって。1枚目だけが持つ霊力みたいなものがちゃんと生まれてると思ったので、とにかく丹精込めることだけを意識して作りましたね」

――歌詞に<溶ける>というワードが出てくる曲が何曲かあったり、『夜はメルト』(M-11)という曲も収録されていますが、『MELT』というタイトルが決まったのは最後ですか?

「そうです。曲が全部出来上がってから決めました。ほんとに活動を始めてからの3年の変化が見える形で、全部ひとつに溶け合っているというか。流体的なタイトルにしたのは、自分が流動性に特別惹かれるからです。"溶ける"みたいな言葉って、例えば0か100かじゃなくて、過程そのものを切り取ってる。その曖昧さが良くて。僕らが今まで作ってきた音楽も、歌詞の曖昧さがすごく寄与する部分もあるんですけど、自分のクリエイティビティの美的感覚を抽出してて。だから"溶ける"はいつかしっかり伝えたいと思っていた言葉でした。今回のアルバムでは色んな意味の"溶ける"が込められていて、表題にできるなと思ったので『MELT』になりました」

――納得しました。歌詞は瞬間を切り取っているけど、前後に流れがあって、外にも世界があって。じわっと広がって溢れ出していくようでした。

「いろんな部分を立体的に作りたいと思っていたので、そう思っていただけてるのがめっちゃ嬉しいです(笑)」



目指す場所にいくために、ポップネスで間口を広げる


――アルバムの幕開けは、軽やかなサウンドの『愛は湯気』(M-1)です。

「これは1年ぐらい前にできた曲ですね。曲順は本当にギリギリまで悩んでて。『愛は湯気』を入れるかどうかも最後まで悩んだんですけど。僕の記憶が正しければ、1年前にデモを送った時からメンバーの印象がずっと良かったので、改めて掘り出した曲です。そしたらあっさり"いいじゃん"みたいな」

セレナ「結局"1曲目はこれしかない!"って」

――次の『風を止めないで』(M-2)もぐっと心を掴まれるような爽やかな出だしですね。

セレナ「嬉しいです」

「1曲目から3曲目までは、流れに乗って聴いてほしいなというイメージで選びましたね」

――そして、オルタナティブな『わるい雨』(M-4)で空間性が増して、どこかに連れていかれそうになるけど、アウトロの高音ギターでそこまで重くならずに曲の世界観を体感して、疾走する『フラジェール』(M-5)へ続く流れが、物語的で素敵でした。

「ありがとうございます。そこは結構お気に入りの並びじゃない?」

セレナ「そうだね」

――『フラジェール』は"これからの僕たちのイメージを大きく担うことになる曲だ"と資料に書いておられましたが、その意図は?

「多分聴いてもらったらわかると思うんですけど、かなり全面的にポップネスを追求しているというか。駆け出しのバンドって、メインストリームな音楽をどこかで忌避する態度があるじゃないですか」

――ありますね。

「そういうパンクな気持ちもなくはないんですけど、僕はその気持ちをよくある出し方にしたくなくて。やっぱり自分がこれまで影響を受けてきた......大好きなスピッツみたいにポップネスとオルタナティブな考え方を両立させて、あらゆるシーンで評価されるような人たちがすでにいるので、最初から僕らもそういうマインドを持っていこうと。今後目指していきたいのも、その結果行ける場所だし、今まで出会う機会がなかった人にも届くかもしれない。だから僕はポップでキャッチーで届きやすい音楽を、全然悪く捉えていなくて。面白いこともたくさんやるけど、尖ることが目的ではないので。マーケティング的な意味ではなく、間口としてポップネスを捉えて発信していきたい。だから今この段階で僕らのマインドが表れた曲をしっかりリリースすることに意味があると思っています」

――なるほど。『フラジェール』はセレナさんの歌い方が他と違うというか、声色が低くて力強いですね。意識された部分はありました?

セレナ「実はあの曲は3回ぐらい録り直したんです。歌い方もギリギリまで悩んで、私的には結構挑戦というか。この曲が持つパワーや、歌詞も主語が<僕>なので、イメージは少年というか、あまり可愛らしい感じではなくてはつらつとした感じ。言われると確かにちょっと低音というか、最終的には太めの声で歌いました。自分にとってもこの曲を歌ったことで、引き出しが増えた感覚はありました」



『ツキナミちゃん』は、日々変化する誰しもに刺さる曲


――アルバムを聴き進めるごとに、改めて"こんな曲もあるんだ"と驚かされましたが、『天使さん』(M-6)もこのアルバムに入ったことでまた違う光を放っているような。

「それは本当に感じましたね」

――先ほどお話にも出た『ツキナミちゃん』も存在感を増していました。セレナさんの"普遍性の中に火薬を秘めた情動を書いた"とありましたが、セレナさんは秘めたる熱いものを持っておられるんですか。

「メンバーの中で1番すごいです。この曲は"自分から見たセレナを歌に入れたいな"と思って、ほんとに見たままの姿を言葉にしました。セレナは普遍性を身体で理解できる人ながら、俺とバンドをやってくれるぐらい変なところがあるなと思ってたんです。それが最近しっかり出てきてる。ライブでの演奏の変化に表れている気もしたし、聴いてくれてる人たちをさらにリュベンスに繋ぎ止めるような魅力が出てるんだろうなと感じる部分が多い。"この人は歌にできる人だ"と思って、初めて歌にしました」

――この曲はセレナさんの歌なんですね。

「ただ主語ははっきりさせてないので、『ツキナミちゃん』を聴いた人それぞれの生活や日常と結びつく部分がどこかにあったらいいなと思ってます」

――セレナさんをイメージして書いた曲だというのは、ご本人にお伝えされてたんですか?

「どうだっけ? そんなはっきり言ってないっけ」

セレナ「うん。歌った後に言語化されたので、文字ベースで見ました(笑)」

――レコーディングはいつも通り歌われたんですか?

セレナ「いや、クセてんこ盛りで歌いました。自分の歌声は割とクセがない方だと思っているんですけど、いつもの歌い方と変化をつけたかったし、クセのない歌声だからこそちょっと面白いことをやるところが、多分『ツキナミちゃん』の曲やタイトルに通ずると思って。なのでアルバムの中でも印象的に残るように歌おうと思いました」

「多分本人も、歌い方はアレンジの範疇と捉えてるので」

セレナ「でも歌詞は、バンド活動を通じての変化というものが、自分自身もかなり実感できて。それこそ普遍性という点で、社会で生きてたら誰しも常識を持っていかなきゃいけない。私も少し前まで社会人として働いていて、その上でバンドをしている。だからこその変化を歌詞から感じたので、日々変化してる人誰しもに刺さる曲だと思います」



アルバムは僕らの作品性が、ライブは人間性が全面に出る


――最後の『夜はメルト』はリュベンスにとって重要な曲ということですが、いつ頃作られたんですか?

「これは3年前に作った曲です。バンドを始めて1年経たないぐらいの時から原型があって。今回アルバム最後の曲にしたという意味で言うと、タイトルの『メルト』は元々ついてたんですよ。そこからアルバムタイトルを取ったわけではないけど、さっきも言った通り、"溶ける"という単語に特別思い入れがあったので、たまたま被ったというか。今作で、本当に自分が考えていた"いろんなものが溶け合っているもの"をすごく描けたなと思って。そのアルバムのエンディングとして機能できる曲が、昔に作れていた。『夜はメルト』自体がアルバムの最後を締めくるパワーを持ってるように聴こえてきて。さっき『わるい雨』の終わり方の話をしてくださいましたが、自分は壮大に終わる展開があまり好きじゃなくて。アルバムもああいう軽やかな曲調で、さらっと終わりたかった。自分は別れや喪失を曲にしやすいからこそ、別れを大げさにしたくない。説教臭い歌詞でもないし、精神的・抽象的なテーマを描いてるわけでもない。何の文脈もなく聴き始めて、聴き終われる曲で締め括りたかった。ほんといろんなものの表れですね。"ポップネスを躊躇せずに全力でやりたい"というのも、メロディーのキャッチーさに出てると思ってるし。3年前のデモはさすがに稚拙だなと感じたところもあったので、変えたところはあるんですけど。いろんな意味で最後の曲になってるなと思ってます」

セレナ「最初のデモからいろいろ変わった流れを知っているので、3年の変化を感じますね。高揚感のある『愛は湯気』からの流れで聴いて、精神的な成長を感じながら後味よく終われるし、アルバムタイトルにも繋がってて。1枚のアルバムがちゃんと完成したんだなと思える曲になったと思います」

――渾身の1枚と言ってもよさそうですね。

「今は本当にそういう気持ちです」

セレナ「自信作」

「でも変化はしたいしね」

セレナ「うん。これからが楽しみです」

――それを提げてのワンマンツアー、大阪は11月3日(月・祝)のANIMAです。初の大阪ワンマンですが、意気込みは?

セレナ「今回のツアーは、アルバムリリース前に2公演(愛知・宮城)をやって、リリースを経て大阪・東京なんです。アルバムを聴いて来てくれる人もいると思うのでリアクションも楽しみだし、音源とライブでアレンジを変える部分も結構あるので、音源との違いも楽しんでほしいです。あとライブに対する向き合い方が自分の中でも変化しているので、みんなと楽しいライブがしたい」

「アルバムは曲単位で、ライブでの再現性を意識せずに"曲を良くしていきたい"という想いでアレンジしてきました。でもライブでは絶対に音源と全然違う聴こえ方をするはず。アルバムは僕らの人間性よりも作品性が前面に出てくると思うんですけど、ライブではやっぱり人が前に出るので、僕ら4人が演奏している必然性を感じてもらえると思ってます。ライブはライブで全然違う魅力を持たせたいなと思って臨んでるので、楽しみにしてほしいです」

Text by ERI KUBOTA




(2025年10月31日更新)


Check

Release

活動の3年間を詰め込んだ1stフルアルバム

Album『MELT』
・各ストリーミングサービスで配信中
・タワーレコード限定CD:11月5日(水)発売
 3300円(税込) DDCZ-9081
https://ssfuga.lnk.to/MELT

《収録曲》
01. 愛は湯気
02. 風を止めないで
03. サースティデイズ
04. わるい雨
05. フラジェール
06. 天使さん
07. 息白し
08. ツキナミちゃん
09. 陽だまりの中で
10. ハートの尾ひれ
11. 夜はメルト

Profile

2022年に東京で結成された4人組バンド。2023年4月からセレナ(vo&g)、悦(g)、Mary(b)、まつまる(ds)による現メンバーで活動スタート。これまでに8枚のシングルと2枚のEPをリリース。昨年リリースしたシングル「天使さん」で一躍注目を集めた。「天使さん」のMusic VideoはYouTubeで120万再生を突破し、現在も継続的に再生数を伸ばしている。昨年末にはindigo la EndのLIQUIDROOM公演にオープニングアクトとして起用されるなどアーティストからの支持も高い。ライブでの演奏力の高さにも定評があり、今年1月の新代田FEVERでの初ワンマンライブはソールドアウトに。約3年の活動で始めてのフルアルバム「MELT」を10/29にリリース。また10/11からは全国4カ所を巡る初の全国ツアーを開催中。

リュベンス オフィシャルサイト
https://lit.link/rubens_tokyo


Live

リュベンス ONE MAN TOUR 2025

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:305-064
▼11月3日(月・祝) 17:00
Live House Anima
オールスタンディング-3800円(ドリンク代別途要)
※中学生以上チケット必要、大人1名につき小学生以下1名まで同伴可。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は10/27(月)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
▼11月28日(金) Shibuya WWW

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