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“一生よろしくね”
the band apartがLOSTAGEと紡いだ、
エモーショナルなツーマンライブ
『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2025』レポート

10月4日(土)、服部緑地野外音楽堂にて、the band apart(以下、バンアパ)とぴあ関西、関西のイベンター・GREENSが共催する『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2025』が行われた。2017年の初回以来、毎年秋に大阪で開催されるのが恒例となった本イベント。9回目となる今回は、奈良発の3ピースバンド・LOSTAGEとthe band apartによるツーマンライブでの開催となった。友人関係で、気心の知れた間柄の2組の極上ライブ。それをあたたかく見守るオーディエンスが作り出した、珠玉の夜となった。

2022年、2024年と、これまでに2度雨に見舞われた『SMOOTH LIKE GREENSPIA(以下、SLGP)』。あいにく今年も朝から雨が降っていてどうなるか危ぶまれたが、幸いにも開場時間にほぼ雨は上がり、曇り空へと推移した。『SLGP』の観客は常連が多く、この日も過去の『SLGP』のTシャツやロンT、バンアパやLOSTAGEのグッズを身につけた人々が続々と入場し、前方から席を埋めていった。てきぱきとカバンからタオルを出して座席の雨粒を拭ったり、荷物が濡れないようにビニール袋に入れたりと、雨天時の対応もバッチリなのはさすがだった。

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ステージの上には、バンアパの木暮栄一(ds)がデザインした今年の『SLGP』のビジュアルフラッグが吊られていた。煙突付きの家の中にバンアパとLOSTAGEのバンド名があしらわれたデザインで、オレンジと黒の配色、シズル感のあるフォントが可愛らしい。

会場後方の芝生に設けられた物販ブースでは、ライブ前にも関わらず川崎亘一(gt)が自ら物販に立ち、観客とコミュニケーションをとっていた。フードブースでは原昌和(ba)おすすめのフランクにハニーマスタードをかけた「MEE MINE COMBO」が販売され、早速多くの人が行列をなしていた。また、心斎橋のライブハウス・Music Club JANUSがドリンクを提供。皆それぞれフードとドリンクを手に持ちながら、開演までの時間を自由に過ごしていた。これまでもそうだったが、場内にはバンアパメンバーのおもてなし精神が散りばめられていることがよくわかる。誰にとってもホームのような、のびのびと和やかな空気が漂っているのがとても『SLGP』らしい。それが『SLGP』の良さであり魅力であり、自然と"今年も開催してくれてありがとう"という気持ちになってしまうのだと思う。



【LOSTAGE】

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先攻は奈良発の3ピースバンド・LOSTAGE。SEが流れて五味岳久(vo.ba)、五味拓人(gt.cho)、岩城智和(ds)がステージに登場。スタンディングエリアに詰めかけたオーディエンスはかぶりつき状態でステージを見つめる。少し音を出した3人は、まずはゆったりと、しかしエモーショナルに『巡礼者たち』を演奏した。柔らかさと力強さを併せ持ったサウンドが雨で湿気を孕んだ空気に広がり、岳久の歌声が一言ずつはっきりと届いてくる。最高に気持ちの良い幕開けだ。続けて『こぼれ落ちたもの』へ。淡々と演奏されていくが、メロディはどこか懐かしく、アンサンブルの熱量は高く、彼らの内に秘めたるものを感じさせる。

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MCで岳久は「the band apartの皆さん、呼んでいただいてありがとうございます」と感謝を述べる。そして頭上に吊られたフラッグを見つめ、「(デザインを)僕らのバンドのロゴに寄せてきている感じがする」と言及。「愛を感じますね(拓人)」「ちょっと嬉しい(岳久)」とはにかむ。五味兄弟は明るい時間帯での野外のライブ、オーディエンスとの距離の近さに照れつつも、誇らしげな表情を浮かべてライブに戻る。

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イントロで拓人のギターリフがループする『ポケットの中で』は、3ピースのシンプルな構成ながら、到達点まで極められたような美しさが胸を打つ。さらにオルタナティブで伸びやかな『楽園』へ。浮遊感のあるコーラスとリバーブがすさまじい余韻を作り出すと、拓人のノスタルジックなギターフレーズと岩城の厚みのあるビート、岳久の情感豊かなボーカルが没入を誘う『NAGISA』でなおも独自の世界観へと連れていった。

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MCでは、昨年4月に行われた47都道府県ツアー『LOSTAGE "The TOUR" 2023-24』の茨城公演のゲストでバンアパに出てもらったと振り返り、「ツアーの時に作った曲があるので」と、未音源化の新曲『ひかりのまち』を披露。哀愁と郷愁が入り交じったメロディに、奈良というローカルから発信するバンドの矜持を感じる歌詞が、岳久の歌声で大きく強く歌われ、満ちていく。クライマックスに向けてどんどん熱を増すバンドアンサンブルは、まるで夢を見ているようなきらめきと迫力を宿していて、思わず飲み込まれてしまいそうだった。

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オーディエンスが一心不乱に頭を振りまくった『SURRENDER』を経て、ラストは名曲『瞬きをする間に』でフィニッシュ。同じテンポで刻まれ続ける音の中に存在する、うごめく感情と感動が忘れられない濃厚な47分だった。そのことを証明するように、客席からの拍手はしばらくの間鳴り止まなかった。

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【the band apart】

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後攻は我らがthe band apart。荒井岳史(vo&g)が「the band apartといいます、よろしく」と言って、サウンドチェックからそのまま板付きでライブをスタート。『Eric.W』のイントロが聴こえるとオーディエンスは歓喜の声を上げて一斉に身体を揺らす。さらにアンセム『higher』と、いきなり人気曲を連発。曇っていた空が少しずつ明るくなり、太陽の光が差し込むと、メンバーも嬉しそうに笑顔を見せた。

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そこからシームレスに、かつメリハリのきいた展開で木暮のドラムフィルからバンッと原のベースラインが火を吹き、『The Ninja』へ。川崎のテクニカルなギター、溶けるような荒井のボーカルがとにかく気持ち良い。続く『禁断の宮殿』でも、美しく照らされた夕日の中で、4人の魔法のようなアンサンブルが鳴り響くのだった。

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荒井は「『GREENSPIA』は何回もやってるけど、珍しいツーマンステージのひとつがLOSTAGEでほんとに良かったと思ってます(ツーマン形式は2021年のASPARAGUS以来、2度目)」と述べる。ビジュアルをデザインした木暮は「今回はLOSTAGE本体のデザインに寄せさせていただいて。無断で作って、LOSTAGEは今日初めて見たという。相手があるものだから"お前何してるんだよ"と言われる可能性もあるけど、LOSTAGEの場合は喜んでくれたので、"やっぱマイメンだなー"と思いましたね」と3人の寛容性に感謝した。

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「相当やってなかったやつを2曲ぐらい」との荒井の言葉から炸裂したのは、2ndアルバム『quake and brook』(2005年)収録の『M.I.Y.A』と『night light』。4人の阿吽の呼吸で繰り出される緩急の波やキメがたまらなく、オーディエンスはテンションアップ! その後に続く『Festival』『夢太郎』といった新しめの楽曲も、極上のソロとアンサンブルで聴かせていく。

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木暮は「さっきの話の続きなんですけど」と切り出し「長くやってくると、物事には慣れが出てきてですね、こうやってこの場にくると緊張感が高まるんだけど、『GREENSPIA』って企画の段階では緊張感がゼロに近いわけですよ。"今年の対バンはどうするのかな"と思ってて、開催の1ヶ月前とかになって"やべえな"と。"こうなったら頼れるものは友しかいない"ということで、LOSTAGEに声をかけて12時間後にはOKがきた」と裏話を明かす。「まあちゃん、岩ちゃん(岩城)のドラムカッコ良かったでしょ?」と話を振られた原は「カッコ良かったよ。大人のバンドだよね。ずっと同じテンポ感で来て、それでも喜怒哀楽がある。不思議な音楽だよね」とライブの感想を口にする。「3人ともカッコ良いじゃん(木暮)」「野良仕事の帰りにライブやってる感じの風体はあるけどね。これを機にもっとやりたいな(原)」という嬉しい言葉も聞くことができた。

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後半はバチバチにメンバーのテクが光る『shine on me』でクールなロックサウンドをお見舞いし、『Game,Mom,Erase,Fuck,Sleep』をグルーヴィかつポップにプレイ。言わずもがなで客席は手を上げダンスダンス! さらに、オレンジの照明がフラッグと夕日にマッチして、よりメロウな雰囲気を醸し出した『酩酊花火』、分厚いサウンドに生命力とエネルギーを漲らせた『クレメンタイン』と幅広い表情の楽曲を連投。27年のキャリアに裏打ちされた実力を惜しげもなく提示した。

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MCで木暮は誰も喋らないからと高校生の時にカバーしたというラップを披露。原もそこにジョインして客席は大喝采。ちょうど17時のチャイムの「夕焼け小焼け」が流れて「何の音?」とざわつく場面も。原は以前の『SLGP』でも話していたことがあるが、「昔は大阪が大嫌いだった」と悪態をつきつつ「不思議なもんで、来続けると好きになっちゃうんだよね。だからずっとここでやってる」と天邪鬼に愛を語る。それはLOSTAGEとの関係性においても同じだったとして、今は「お互いの青春」だと思っていると語る。原はサラリと「一生よろしく〜」と述べて、絆を新たに結んでいた。

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ラストスパートは原のコーラスワークが素晴らしい『8月』、木暮の手数の多さに驚く『Can't Remember』、アンセム『夜の向こうへ』で盛り上がりMAXに。そして「次の曲で最後になります。天気も回復したし、良い日になったんじゃないかと思います(荒井)」と『DEKU NO BOY』で本編を締め括った。

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来年で記念すべき10回目の開催を迎える『SLGP』。アンコールに応えて先にステージに登場した荒井は「本当に皆さんのおかげです。GREENSとぴあにもお世話になって。これまで色んな人に出てもらいましたけども、何も変えることなく、良い意味で通常通り開催したい」と述べる。それを受けて原は「このイベント楽しみにしてくれてる方もいるでしょう?あまりやってない曲もできるといいよね」と返し、荒井も「特別な日になったらいいよね」と来年に想いを馳せた。

アンコールは、バンアパ屈指の名曲で『SLGP』でも何度も演奏されてきた『K. and his bike』。すっかり陽も暮れ、青く染まるステージで奏でられる力強いサウンドは徐々に高まり、最高のサウンドスケープを描き出した。

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オーディエンスはまだ足りないとばかりにダブルアンコールを求めるも、LOSTAGEの拓人を連れてカムバックした木暮と原が「中途半端なメンバーが出てきたということは、我々の体力は限界ということです」と言って、恒例の一本締めで終了。新旧織り交ぜた1時間半のロングセットで、極上の音楽と変わらぬ魅力を届けてくれたthe band apartだった。

来年の『SMOOTH LIKE GREENSPIA』は節目でもあり、きっとスペシャルな祝祭の日になるはず。一体どんな景色が待っているのか、楽しみにしていよう。それまで皆さんお元気で!

Text by 久保田 瑛理
Photo by キョートタナカ




(2025年10月21日更新)


Check

Set List

●LOSTAGE

01. 巡礼者たち
02. こぼれ落ちたもの
03. ポケットの中で
04. 楽園
05. NAGISA
06. ひかりのまち
07. SURRENDER
08. 瞬きをする間に

●the band apart

01. Eric.W
02. higher
03. The Ninja
04. 禁断の宮殿
05. M.I.Y.A
06. night light
07. Festival
08. 夢太郎
09. shine on me
10. Game,Mom,Erase,Fuck,Sleep
11. 酩酊花火
12. クレメンタイン
13. 8月
14. Can’t Remember
15. 夜の向こうへ
16. DEKU NO BOY
EN. K. and his bike

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受付期間:〜2025年11月4日(火)まで
発送時期:11月下旬〜12月上旬を予定しています。

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the band apart Official Web SIte
https://asiangothic.net/

LOSTAGE Official Web SIte
https://lostage.co/