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ジャニスの○○と○○シリーズ
『ZAZEN BOYS×おとぼけビ~バ~』ライブレポート

8月27日に心斎橋JANUSにてライブイベント『ザゼンとおとビ』が開催された。ZAZEN BOYS(以下ザゼン)×おとぼけビ~バ~(以下おとぼけ)の対バンだから、このイベント名であり、『〇〇と〇〇』シリーズは最高の対バンをテーマに開催される心斎橋JANUSの人気企画でもある。ちなみにザゼンとおとぼけは初対バン! おとぼけは去年8月28日の同イベントシリーズ『スサシとおとビ~』以来のJANUS出演であり、ザゼンはJANUS初出演となる。

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2009年、立命館大学の音楽サークル『ロックコミューン』に在籍していたあっこりんりん(vo.g)・よよよしえ(g)を中心に結成されて、2011年に初の全国流通盤をリリース。2016年からは、海外でも本格的にライブを行なっている。グラストンベリーやコーチェラといった海外の大型ロックフェスにも出演...と、おとぼけのプロフィールを去年のライブレポート同様に簡単に書いたが、去年と今年ではメンバー編成が違う。かほキッス(dr)が7月25日のフジロックを最後に産休に入り、アメリカシカゴの音楽フェスであるロラパルーザを含む7月30日からのアメリカツアーからは、れお(えみ ex.少年ナイフ)がドラムを叩く。更に10月7日(火)FOO FIGHTERSさいたまスーパーアリーナ公演サポートアクトも発表されたばかり。まだまだ、おとぼけムーヴメントは続く。アメリカからの帰国後、初大阪ライブであり、地元関西凱旋ライブな空気で溢れ返るJANUS。心斎橋JANUSは平日夜でありながら、満員御礼の大盛況。

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開演時刻5分押し、よしえが『OK! 始めよう! We are おとぼけビ~バ~!』と言うやいなや、『大阪は四ツ橋LMスタジオからやって参りました』と、『Matsuri Studioからやって参りました』という本家向井秀徳名口上のお株を奪うかの如くスタート。そのまま『これくらいの大きい丸いボールにポテサラポテサラちょいと詰めて!』と童謡『おべんとうばこのうた』替え歌を歌い出す。ん?? 事前に貰うセットリストの1曲目は『ヤキトリ』であり、この繋ぎは何だと思っていると、あっこが『サラダ取り分けませんことよ』を歌い出す。ザゼン大名曲『ポテトサラダ』への敬意を込めてなのか、まさかの初っ端からの大奇襲! うなるしかない...。その後はセットリストの通り『ヤキトリ』→『あきまへんか』とぶちかまされる怒涛の展開。3曲もやったのに、まだ5分。恐るべき怒涛の攻撃でもある。そのまま『ドーン! ドーン!』という掛け声から『Don't light my fire』つまりは『ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って』へ。首振り回し髪の毛振り回して歌うあっこ。よしえは横で可愛くリズムを取るが、あっこが最後はドスの利いた声で『Go to hell!!』!! 続く『大殺界』もタイトルからして怖いし、『大殺界 中殺界 小殺界』と歌詞も怖いのに、メロディーはポップでキャッチ―。キュートとワイルド、可愛らしさと怖さを両方兼ね備えているのが、おとぼけの紛れも無い魅力である。

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去年も5年前に出ているというのに、よしえは『縁もゆかりも無いライブハウス』と言い切っており、流石に今年はと思いきや、しっかりと今年も『縁もゆかりも無いライブハウス』と言い切る。この1年で確実にJANUSとの距離は縮まったはずなのに、ツンデレというと陳腐過ぎるので失礼だが、舞台という戦場に上がれば容赦ない姿勢を崩さないのはたまらない。『シルブプレ』→『ラブ・イズ・ショート』の繋ぎは、これまた怒涛であり、サポートで入ったばかりなのに、れおのとてつもない高速ドラムには度肝を抜かれるしかない。続く『いまさらわたしに話ってなんえ』を聴いても感じるのは、構成複雑の凄み。それは様式美でもあり、いわゆるプログレッシブ=革新性。事前のSNSでも、あっこが書いていたり、よしえもMCで言っていたが、彼女たちは学生時代から向井秀徳の音楽に惹かれて聴いてきている。単なるルーツミュージックなどという甘っちょろい言葉では無く、彼女たちの血となり肉となり糧となっているのが否応なしに伝わってくる。

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『ヤリチン武勇伝ちゃう口を慎め』の秒殺瞬殺から『週6はきつい』での絶叫スクリームと相も変わらず猛烈な勢い。『脱・日陰の女』では、れおのスティックが吹っ飛ぶも、すぐ新しいスティックで叩きまくる。駆け抜ける様に前半が終わり、よしえが改めて如何に今日を楽しみにしてたかと、入り時間より2時間早く入ったエピソードを明かす。でも緊張感を保とうと楽屋挨拶には行かずでいたら、ドアを開けた楽屋の前に白髪眼鏡の男がおり、『フジロック配信観たよ。ジジイジジイと言ってたけど、全てのおじさんを敵に回したね』と言われたと、あっこと回想する。あっこは『こちらを動揺させる作戦だったのでは』と邪推するも、よしえは『ああいうことジジイがやりそうですよね』と、そのまま『ジジイ is waiting for my reaction』へ。敬愛する向井秀徳をネタにしての曲フリは天晴れすぎた。その後のMCでも、よしえは向井たちが新幹線に乗ってTシャツを両脇に抱えてきたなどと話していると、あっこがすかさず『ちょっと浮足立ってない?』の鋭い牽制球。よしえも『着地!』と浮足をすぐさま抑えるが、この後のあっこの言葉に痺れまくった...。

『向こうも殺しに来てるから、私たちも殺しに!』

学生時代から好きでしたなんて、同じ舞台という戦場の上に立てば全く関係ない。殺るか殺られるかの真剣1本勝負。この精神性を持っているから、おとぼけが好きなのだなと再認識が出来た。いちいち『ニューアルバムまだですか?』と聴かれるのが鬱陶しいという怒りを込めての新曲『ニューアルバム』もそうだが、根底に怒りが原動力として根付いている。あっこは前回のJANUS時には膝を怪我しており、今回は風呂場で背中を打って負傷しており、JANUS=不吉と決めつけた上で、自身を他責思考と分析する。こういう良い意味での負からの凄まじき威力に、我々は巻き込まれて惹き込まれてしまう。続く新曲『めんどいだるいしんどい』も、その真骨頂。

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学生時代、あっことよしえが組んだ時に初めてコピーしたのがNUMBER GIRL『透明少女』とも打ち明ける。れおもSNSで25年前にNUMBER GIRLとbloodthirsty butchers対バンを観に行き、そのフライヤーに向井から彼女の似顔絵付きサインをしてもらったとも投稿していた。だからこそ、『憧れのZAZEN BOYSと対バンできて本当に嬉しいです』という言葉は胸にくるものがあった。

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ラストナンバーは『あなたわたし抱いたあとよめのめし』。あっこのSNSを観ると向井が『せつない』と感想を伝えたという曲。ラストナンバーだというのに、あっこ歌・よしえギター・ひろちゃんベース・れおドラム全てが爆裂している。歌い叫び弾きまくり叩きまくり全てが爆裂している。観ているだけで最早感動すらあった、その鬼気迫る4人の気迫ぶりに...。よしえの『セックス・しば漬け・ロックンロール』というシャウトに、あっこがマイクで頭をどついて鈍い音をさせながらリズムを取る。最後は、あっこがマイクを床に叩きつけて、その鈍い音が響き渡り、『次はZAZEN BOYSです』で〆。格好良すぎる先攻であった...。

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向井らメンバー自らセッティングを行なう転換中。本番時間となり、向井が喋り出す。『出たとこバーカウンターがありますね。お手手洗いもあります』という何気ない言葉ひとつひとつに、向井秀徳フレイバーを感じ入ってしまう。1曲目『Himitsu Girl's Top Secret』。複雑な構成を一寸の狂いも無く完璧に決めていくという様式美は、おとぼけにも繋がるものがあり、しかし、そこは長い経験値ゆえの異様な完璧さがある。ソリッドとかタイトとか書けば書くほど嘘臭くなるが、兎にも角にも向井・ギター吉兼聡・ドラム松下敦・ベースMIYAの鉄壁のサウンド。その光景を緑の光が妖しげに照らし出す。4人が顔を突き合わせて音を鳴らしている場面もあり、よくよく舞台を観ていると4人の距離がとてつもなく近いのがわかる。そのギュッとした感覚があるからこそ、あれだけ凝縮した音が鳴らされるのだろう。

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2曲目『Honnoji』。『本能寺で待ってる』と向井が言い放った瞬間、観客から凄い歓声が沸く。赤い光が本能寺を燃やす赤い炎としか見えなくなってくる。MIYAがかしわ手の様に手を叩く。『本能寺でずっとじっとずっとずっと...』と繰り返される。それだけで観客は大いに体を揺らしている。でも、基本は手も拳も上げず、呆然と立ち尽くして、魅入って聴き入っている。赤い光が向井だけを照らす。まだまだ続く、『本能寺で待ってる』...。身体が疼き出し、遂には耐えきれず手を上げだす観客も。ここまで人間を音と声だけで持っていけるのは凄まじいという言葉だけではおさまらない。終わり、物凄い拍手が起きる。

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おとぼけがオマージュした本家『Matsuri Studioからやって参りました』があり、これまた、あの扉の向こうにバーカウンターとお手手洗いがあることが呟かれて、こちらも名物場面とも言える缶ビールを呑む向井。続く『安眠棒』。ドラムビートが気持ち良すぎて、『安眠棒』という言葉だけなのに、そのグルーヴで踊らされる。『本能寺』もそうだが、最小限の音、最小限の言葉で最大限に踊らされる。ビートリズムもタイトでミニマムで平熱感があるのに確実に高熱で爆発している。『SEKARASIKA』では、煩わしい面倒臭いうざったらしいという九州地方方言が補習や軽トラの車検という例文も飛び出しながら説明されるが、いざ鳴らされたら、とんでもなくミニマムなファンクビート。『くりかえされる諸行無常』という向井の世界観ではお馴染みの言葉も、そのビートの上で跳ね返っている。どっしりと地に足が根付くビート。終わり、何事もなかったみたいに舞台の灯りを少し明るくと指示して、缶ビールを呑み干す。それだけで観客から歓声が沸くという国宝級の人間像...。『バラクーダ』ではギターをおろして、時折指で何かを指しながら体でリズムを取り、センターマイクで歌う。『八方美人』ではドラムのカウントから、『狂い咲くサンダーロード 繰り返される諸行無常』と唱えられる。こちらもセンターマイクで歌われるのを、我々は集中して聴く。息つく暇も息のむ暇も無く集中して聴くのみ。

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観客への感謝、そして初めて来たというJANUSへの感謝を凄いビルの中にある5階といった強烈な印象という独特の表現で述べる。おとぼけとのツーマンも嬉しく想うと述べ、缶ビールを投げ捨てて『ブルーサンダー』へ。重たいビート...。空間を切り裂く向井のギター...。なのに抜けがある...。『夏の夢』という歌詞も聴こえてくるが、こんなに素晴らしい夏の夢はないだろう...。終わり、スタッフから缶ビールを受け取り、ブルタブを開けて、ひとくちゴクリと呑む。絵になる...。そのまま『チャイコフスキーでよろしく』へ。クラシックの音色が聴こえてくる恍惚とした幻覚すら感じる。圧巻...。

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ゴクリというよりグビリグビリと缶ビールを呑み、メンバー全員アカペラで民謡、いやまるで儀式の様に、それも手振りをつけながら歌う。そしてギターを爪弾き、ドラムカウントが入り、4人の音が織り成す『6本の狂ったハガネの振動』。頂点に達したと言っても過言では無いグルーヴの凄み...。怒涛を遥かに超える怒涛の演奏...。吉兼のギターソロ、最後は松下のドラムが撃ち込まれる...。圧倒されるだけ...。『大阪CITY!』と叫ばれ、最後の挨拶を終えて、音が乱れ撃たれ、赤青光が入り乱れる。缶ビールが一気に呑み干され、不穏な音が聴こえてきて、『胸焼けうどんの作り方』が語られていく。そして、荒れ狂った音が襲い掛かって乱れ散ってばらばらとなり...、気が付くと終わっていた。茫然自失...。

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アンコール鳴り止まないが、中々出て来ない。向井いわく『チョコザップに行ってました』とのことだが、サングラスをかけた向井はギターも持たず両手で指揮を取りながら、おとぼけがオマージュした『ボールにいっぱいのポテトサラダ』の名フレーズで愛される『ポテトサラダ』へ。3人の揺るぎない演奏に合わせて、手は拝み、腰は落として、横に動き出す向井...。観てはいけないものを観てしまったみたいな大衝撃を受ける...。ぐうの音も出ない凄み...。最後も指揮して、手を震わすようにガッツポーズ。

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『こんがらがってるin my brain』という言葉が脳内にこびりつくアンコールラストナンバー『Dalayed Brain』。ダビーなサウンドがとろけていく中、『おとぼけビ~バ~ in my brain』と唱えられると、よしえが登場! 尻を振り動き回り、いつのまにやら観客の上を歩き、ダイブをしている。向井秀徳の音楽に憧れていた少女が、その向井の音楽に合わせて、暴れ回る姿は痛快で美しすぎた...。多分間違いなく、あの長いアンコールまでの時間で向井から何かを言われたはずだ。それに真っ向から応える姿は勇ましかった。『Matsuri Studioからやって参りました』と本家のお株も本当に奪って叫ぶ。そして、あっこも登場! あっこも絶叫する。同じ舞台に立ったことで、憧れだけではとどまらない恐怖すらあった凄みを浴びまくったはずなのに、怯まず怯えず真正面から立ち向かう。よしえはワンピをめくって頭から被っている。10分続いただろうか...。『バイバイ』。向井は缶ビールを持ちながら去る。脳内をグッチャグッチャにされた威圧感のある狂乱の宴は幕を閉じた...。

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Text by 鈴木淳史
Photo by 松本いづみ




(2025年9月12日更新)


Check

Set List

●おとぼけビ〜バ〜

01. サラダ取り分けませんことよ
02. ヤキトリ
03. あきまへんか
04. ハートに火をつけたらならばちゃんと消して帰って
05. 大殺界
06. シルブプレ
07. ラブ・イズ・ショート
08. いまさらわたしに話ってなんえ
09. ヤリチン武勇伝ちゃう口を慎め
10. 週6はきつい
11. 脱・日陰の女
12. ジジイ is wating for may reaction
13. アイドンビリーブマイ母性
14. 呼ばんといて喪女
15. ニューアルバム (新曲)
16. めんどい (新曲)
17. ストライク (新曲)
18. リーブミーアローンやっぱさっきのなしでステイウィズミ
19. 孤独死こわい
20. ありがとう (新曲)
21. あなたわたし抱いたあとよめのめし

●ZAZEN BOYS

01. Himitsu Girl's Top Secret
02. Honnoji
03. 安眠棒
04. SEKARASIKA
05. バラクーダ
06. 八方美人
07. ブルーサンダー
08. チャイコフスキーでよろしく
09. 6本の狂ったハガネの振動
10. 乱土
11. 胸焼けうどんの作り方

EN1. ポテトサラダ
EN2. Delayed Brain (with よよよしえ、あっこりんりん)

今後の関西公演をピックアップ! その他の公演は「チケット情報はこちら」から!!

●ZAZEN BOYS

「ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION」
【兵庫公演】
▼11月11日(火) 19:00
チキンジョージ
【大阪公演】
▼12月16日(火) 19:00
梅田クラブクアトロ
【京都公演】
▼2026年1月23日(金) 18:30
磔磔
※未就学児童は入場不可。小学生以上はチケット必要。
[問]夢番地■06-6341-3525

「MASHUP FESTIVAL kobe」
【兵庫公演】
▼10月4日(土)・5日(日) 11:00
神戸ベイエリア一帯(神戸メリケンパーク/TOTTEI PARK/第一突堤西イベントスペース/港公園・波止場町緑地)

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