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「歪だからこそ愛おしい」
シンガーソングライター・asmiが歌う恋愛の歪み
それでも誰かを好きになることは「成長する機会を与えてくれる」

恋愛、日常における悩みや想いを歌うなど共感性が高い楽曲で「新世代のポップアイコン」と称される、シンガーソングライターのasmi(アスミ)。そんな彼女が7月8日にリリースしたのが「君がくれたもの」。テレビアニメ『カッコウの許嫁Season2』のオープニングテーマに起用された同曲は、真っ直ぐだった心をも歪めてしまう恋愛の影響力について歌われている。そこで今回は、「君がくれたもの」にどんな気持ちが込められているのか、asmiに話を訊いた。

――「君がくれたもの」は2分47秒があっという間に過ぎました。まず曲の展開・構成面がきわめてストレート。間奏はほとんど設けず、落ちサビなどの抑揚もあえてつけず、一息で聴かせる「瞬間性」がありますね。

「自分のなかで正直に出てきた感情と言葉をそのまま歌詞として書きました。自分の心境変化もあらわしつつ、真っ直ぐなラブソングが出来上がった実感がありました。展開の早さも、私の素の部分が出ている気がします。私は友だちから「気持ちの変化が早くない?」とよく言われるんです。なんなら、友だちと一緒に話していて、ある話題で相手が笑っていても、私は次の話に移っていたりするんです」

――この曲では、恋愛というものはそんなストレートかつダイレクトな気持ちすらも歪めてしまうものとして描かれています。

「恋愛をしているときって、最初は「この人のそばにいるだけでいい」とか、「お互いに好きなだけで幸せ」と思えるじゃないですか。でも、地球上にふたりしかいないんだったらそれでいい。だけど実際は周りにいろんな人がいて、パートナーと他人の関係性にヤキモチを焼いたりすることってありますよね」

――パートナーと他人の間になにもなかったとしても、親密だったら気持ちがざわつくということですね。

「そういうヤキモチなどから憎しみの感情は生まれてきたりすると思うんです。特に私は心の移り変わりが早い分、湧き上がる感情のスピードも早い。そういう意味で、もともと綺麗な心を持っていたのに、好きな人へのヤキモチが憎しみに変わったりして、「どんどん心が汚れてしまう」という自分なりの感覚があるんです。私と同じように、恋をきっかけに「自分は性格が悪いんじゃないか」と落ち込む人もいるのではないでしょうか。この曲は、そういう人にも届く気がしています」

――でも逆にパートナー側も同じように、たとえばasmiさんがほかの誰かと仲良くしていたらヤキモチを焼くはず。つまり一方通行ではなく、お互いにそうなんですよね。

「もしかすると「ちゃんと自分のことを想ってくれているのかな」と疑いを持つから、相手にヤキモチを焼いたりして、どんどん悲しくなっていくのかも。たとえば今は嫉妬をメインに話をしていますが、ほかにもいろんな歪み方が恋にはあると思うんです。「私は自立していて、軸をしっかり持つ人間だ。それはずっと変わらない」と考えていても、好きになりすぎたり、甘えすぎたりして、どんどんワガママになっていって歪んできたり。<後悔はないと言えば嘘になるわ>という歌詞もありますが、歪んでしまったことへの後悔もそこには詰まっています」

――一方で、歪みって大切な相手にだけ見せられるものだと思うんです。そう考えると「歪み」って人間らしい美しさを感じますし、asmiさんご自身、この歪みという言葉を気に入っているようにも感じられます。

「完璧なものだったらこんなに執着しないと思うんです。歪だからこそ愛おしいし、なんならその歪さって二人で作り上げたものじゃないかなって。いろんな孤独が埋まったりした結果、生まれたものが"歪な形をした心臓"というか。それが<君と過ごした証>として残ってくれる」

――それでも<後悔がないと言えば嘘になるわ>なんですよね。そして結局<足りないものはなんだんだろう>と振り返る。

「失恋しても、強がっちゃう瞬間ってありますよね。それでも寝る前なんかにふと当時のことを思い出して、「あの恋ってもうちょっとこうやってできたんじゃないかな」とか、頭をよぎる瞬間は誰にだってあるはず。この曲はみなさんのそういう瞬間に寄り添えるものになってほしい。私は「後悔がないようにがんばって生きよう!」とは、よう言わんので(笑)」

――「後悔がないようにがんばって生きよう!」とは言えないし、歌えない?

「だって、なにをしたって後悔は絶対にあると思っているから。たとえばアイスクリームを選ぶときでさえ、めちゃくちゃ後悔しますから。「いちご味か、抹茶味か」と悩んで、どちらかを買って、そうしたら「やっぱりあの味にしておけば良かった」って。でもそういうとき、この曲を思い出して欲しいんです」

――そういう意味では、恋愛だけではなく「何かを好きになる」ということは、いろんな感情を湧き上がらせ、人格形成においても強く影響を及ぼすということがよく分かります。

「好きなものがその人を形成するというのは、本当におっしゃる通りだと思います。成長する機会を与えてくれるのが「好きになる人やもの」だと思います。「君がくれたもの」は恋愛をテーマにした曲なのですが、ただサビを書いたときは真っ先にライブのこと、そしてファンのみなさんのことをイメージしました。<時速300kmで会いにきた君のこと>というところは、まさに私のライブに来てくださるファンの方々のこと。この部分の歌詞は、みなさんが新幹線やバスに乗って遠いところから会いにきてくれる姿を思い浮かべながら書いたんです」

――なるほど。

「そして、私もみんなに<生きれる理由>を届けたいなって。<死ねる理由>というのも決してネガティブな意味ではなく、「この人に出会えたから死ねる」くらいの気持ちで曲を書いたんです。それくらい満足したいというか、大きな幸福感をファンの方に持ってもらいたいなって」

――5月から6月には韓国を含む6都市でライブツアー『ラブレター』を開催されましたが、asmiさんにとっても、ファンのみなさんにとってもまさに「大きな幸福感」が得られる公演になったのではないでしょうか。

「私の歌って、みなさんへの「ラブレター」なんです。自分の音楽は相手がいないと生まれない。ひとりだけだったら「好き」という感情もなければ、歪な感情を実感できるタイミングもありません。つまり私の歌は、みんながいてくれるから歌えるもの。それくらい大切な存在だから『ラブレター』と名付けました。ひとりひとりにラブレターを渡すことができたライブになりました。ファンのみなさんとの絆がより奥深くなりましたし、その絆をこれからもっと広げていきたいです」

Text by 田辺ユウキ




(2025年9月 9日更新)


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Release

君がくれたもの

配信限定
2025年7月8日 配信開始
Sony Music Labels Inc.
TVアニメ『カッコウの許嫁Season2』オープニングテーマ

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