ホーム > インタビュー&レポート > 京都発、いま出会って欲しい注目の3人組バンド、KI_EN バンドを育んだ京都ならではの熱気と温かみが会場を包んだ 2度目のワンマンライブをレポート!
KI_ENにとって2度目のワンマンライブとなったこの日、会場のKYOTO MUSEには、小さな子どもを抱っこする人や10代、20代と思しき友人同士、人生の先輩と呼びたくなるようなシニアまでさまざまな世代がひしめいていた。にぎやかな会場に分け入って最初に目を奪われたのは、ステージを覆っている紗幕。薄い幕の向こうにはメンバーを待つピアノやギターや機材とともに、KI_ENのロゴが入った提灯が中央に置かれ、京都の夏の風情を感じさせる。
その紗幕に映像が映し出されると、場内のさざめきがやんで誰もがステージに釘付けになる。木々の緑や草花、蝶、空など身近に当たり前にあるものたちが雄大に紗幕の上に映りゆく中、「春風」の旋律が聴こえはじめる。幕の向こうで軽快なピアノに合わせて手拍子する野川に合わせ、フロアも手拍子。「春の風に吹かれた」に差し掛かった時、紗幕いっぱいに満開の桜が咲き、思わず見とれてしまう。ものごとの始まりと終わり、出会いと別れを内包する春を象徴する桜の美しさと、まっすぐに伸びる野川の力強い歌声に橋本と澤の声が重なった時のハーモニーの美しさが相まった、なんとも晴々としたライブのスタートだ。
続く「日晴」は橋本のピアノと野川のバイオリンがたおやかな旋律をなぞる。サビに差し掛かったところでステージを覆っていた紗幕が切って落とされると、どよめきとともに、この瞬間を待っていたという熱のこもった拍手と歓声があたりを包んだ。
両手を上げて踊りたくなる陽気でピースフルな「輪廻」を歌い終え「ありがとうございます!」と言うと、MCであらためて5か月ぶりのワンマンへ足を運んでくれたことへ感謝の思いを伝える。それとともに、7月から京都α-STATIONでラジオ番組「OTABI STATION」(金曜24:30?25:00)が始まったことを報告。「(ラジオを)聴いたことあるよーって人?」と尋ねると多くの手が上がり、「わ、めっちゃ聴いてくれてる!」と3人が声を弾ませる。「僕らはお祭り大好き人間なんで、7月はラジオで祇園祭特集をしました。祇園祭は終わったけど、お祭り気分を思い出して今日のライブを楽しんでいただけたらと思います!」(野川)と胸を張った。
初披露曲となる「茶柱」はラップ調のボーカルにところどころシャウトをきかせ、「夢のまた夢」は最初の1コーラスをピアノだけで歌い上げ、澤のギターが加わって以降は3人の歌声の重なりが切なさをかき立てた。彼らはベースとドラムのいない3人組だが、ライブではサポートメンバーは加えずシーケンサーを駆使した打ち込みと3人の生演奏で、それぞれの曲が持つ世界観を多角的にとらえ、表現して魅せる。
彼らが現時点でリリースしている楽曲は3曲で、そのうちの2曲「スノーハート」「Better」がセットリストに「Better(アレンジver)」「スノーハート(アレンジver)」とあった。どんなバージョンが聴けるのかと期待していると、「Better」はクールに、よりAOR風に表情を変え、本人たち曰く「かっこいいバージョンの「Better」」に。続いては、「焚き火の音とともに聴いてください」とアコースティックバージョンの「スノーハート(アレンジver)」を披露。野川がマイクを手にステージを動きながら原曲よりもグッと渋く歌い聴かせた「Better」と、最小限に抑えた照明の下、パチパチと燃える焚き火の音を背に両手でマイクを包むようにして歌い上げた「スノーハート」。なんとも心憎い演出に、「この曲好きやなぁ」とそばで呟く声が聞こえた。歌い終えた3人が、フロアを見渡しながら、「僕たちまだ3曲しかリリースしていないから、こうやってアレンジを変えて曲の可能性を広げていけたら」と照れ笑いの表情を見せたが、曲の持つ色合いや情景の一つ一つが原曲とはまた違った雰囲気をまとって喚起された、それはそれは素敵なひとときだった。
「後半戦ぶっ飛ばして行こう!」と、野川がフロアにクラップを促す。彼は再びバイオリンを手に、ピアノの橋本、ギターの澤と一人一人紹介しながら「忘れられんな」を。ノリのいい曲に合わせフロアも心地よく揺れる。次に歌った「星空に一番近い場所」は、「大切な人、大切な記憶を覚えているうちに鮮明に描き出したくて作った」との言葉を添え、切なさを抱えながらも、3人の歌声が重なるサビでは力強く前を向いて進んで行く。この時、ステージ後方や両脇のスピーカー、場内にも星をちりばめた銀河のような映像が映し出されていた。
曲が終わった後も、1曲1曲に立ち昇る情景や、日本語の美しさを感じさせる歌詞表現を噛み締めたくなる。そんなことを考えていると、「お知らせがあります」と、9月3日(水)に新曲「記憶の地図」をリリースすることが伝えられ、演奏を始めようとしたところで機材にトラブルが発生。ステージもフロアもまさかの事態ではあるが、ここで橋本がマイクを取りあらためて新曲のリリースに触れ、「この曲で特にこだわったポイントはありますか?」と澤に振る。「ええ??急に?(笑)」と素であわてる澤と、澤に話を振りながら自分が喋り出そうとするマイペースな橋本のやり取りにフロアが温かい笑いに包まれる。
その後も、レギュラー番組「OTABI STATION」で毎週のように生演奏を披露していることや、「記憶の地図」のレコーディングでは初めて生ドラム、生ベースが入り、さらにフルートやウクレレなどこれまで以上にたくさんの楽器が聴こえる曲になったことや、1本のマイクで3人一緒に歌録りをしたことも明かしてくれた。KI_ENの3人は野川と橋本が幼なじみで、澤と野川は音楽専門学校の同じクラスで出会ったと、ラジオで話していた。ラジオでは他にも、祇園祭で3人そろって御神輿を担いだことなども語っていた。自然な距離感で、時には相手に突っ込んだりしながらの普段着のトークはラジオでもライブのMCでも変わらずで、3人の間に心地よい空気が流れていることがわかる。
「お待たせしました。メンバーに合図を出してもらいながら歌おうと思います」(野川)と3人で一緒に4カウントし、フロアも手拍子で加わって「記憶の地図」が始まった。この曲について、先ほどのMCで橋本が「みんなで手を叩いたりして楽しい曲」と話していた通り、フロアも手を叩きながらリズムに乗り、ときにはハンズアップし心弾むナンバーを楽しんでいる。
「ラスト2曲、一緒に踊りましょう」と「シミラー」「Better」を畳み掛ける。赤い照明が似合うエッジィな2曲だが、「シミラー」では橋本のボーカル&ラップもあり、「Better」は先ほどのバージョンとはガラリと違い、さらにエフェクトがかかり原曲とも装いが変わっている。何より、ライブならではの熱量の高さが楽曲をより魅惑的に変貌させていた。
「『合縁_奇縁 弍』最高でした! ありがとう」と叫んで3人がステージを去ると、フロアからは「アンコール」の声ではなく、「ヨイヨイ」「ホイットホイット」といった声がかかる。祇園祭の御神輿の掛け声だ。手拍子ももちろん。徐々に大きくなる掛け声に、メンバーも「ホイットホイット」と声を出しながら再び登場し「最高に嬉しいです」と白い歯を見せた。「サイン入りポスター争奪じゃんけん大会」でフロア中が盛り上がりを見せた後、続く全員での記念撮影は「はいチーズ!」ではなく「よーさの!」と、これも御神輿の掛け声でパシャリ。メンバーも口々に「めちゃめちゃ楽しい」「こんな楽しいことってある?」「お祭りやね」と満面の笑み。
ここで11月に1stアルバムをリリースすることとアルバムを携えたツアーを12月14日(日)TOKIO TOKYO、12月21日(日)KYOTO MUSEで行うことが伝えられた。この夜一番かと思われる拍手と歓声に会場が沸いた後、最後の曲は「性根」。この曲を手がけた野川は「どんなに挫けそうで先が見えない時でも、自分にとって指標となるような大切な人やもの、思い出が自分を導いてくれる。それを追いかけるために鼓動が止まるまで走り続ける」と、「性根」に込めた強い思いを語った。橋本はピアノの前で体を大きく揺らし、野川と澤は上半身を折り曲げるようにして歌い、ギターをかき鳴らした。万感の思いを込めたエモーショナルな歌と演奏は、天井が高く開放感のあるKYOTO MUSEの会場からも溢れ出てしまいそうなぐらいのエネルギーを湛えていた。
このワンマンの時点で、KI_ENがこれまでに行ったライブの回数は12回目。ワンマンライブは2回目。リリースされている曲は3曲で9月にリリースする「記憶の地図」が4曲目。ただストック曲は200曲以上あるそうで、この日演奏した曲も1曲1曲が違う表情を持った曲であるといっても過言ではなく、今後さらにどんな楽曲が放出されるのか楽しみでしょうがない。果てが見えないぐらいと言っては大袈裟かもしれないが、それほど広く大きなステージで鳴り響くだけの力を持ったメロディーであり、歌であり演奏であることをこの日のワンマンで感じることができた。
Text by 梶原有紀子
Photo by Satoki Demoto
(2025年8月22日更新)
『KI_EN one_man LIVE 合縁_奇縁 弍』
2025.8.9 Sat at KYOTO MUSE
01. 春風
02. 日晴
03. 輪廻
04. 茶柱
05. 夢のまた夢
06. Fifty-Fifty
07. Better(アレンジver)
08. スノーハート(アレンジver)
09. 忘れられんな
10. 星空に一番近い場所
11. 記憶の地図
12. シミラー
13. Better
En1. 性根
KI_EN初ツアー2025「奇縁ノ壱」
【東京公演】
▼12月14日(日) 18:30
TOKIO TOKYO
スタンディング-3000円(ドリンク代別途必要)
※未就学児無料/小学生以上チケット必要。
▼12月21日(日) 18:30
KYOTO MUSE
スタンディング-3000円(ドリンク代別途必要)
※未就学児無料/小学生以上チケット必要。
[問]KYOTO MUSE■075-223-0389