ホーム > インタビュー&レポート > 思い出が鮮明によみがえる“絶対に入れなきゃいけなかった曲”を 収めた10周年記念のベスト盤を携えて活休前ラストのツアーへ
――まずは活動休止についてお聞きします。発表は1か月ほど前ですね。
「不安だったし、言うのが正解なのかもわかんなかったんですけど、隠すのもおかしいし。ずっと思ったように歌えなくて、それを隠し続けることが最近難しくなってきたというか。泣いてばかりになってライブもつらいし、お客さんの前でも泣いちゃうし。もう10年ぐらいファンのみなさんがめっちゃ応援してくれてるんで、みんなには正直でありたいし、申し訳なくなってきたんです。それまで休むことを考えたことはなかったんですけど、スタッフさんたちに、休んでもいいんだよ......みたいに言われて、その選択肢もありかなって。今まで自分にむち打ってやってきたから、ちょっと休みをもらってみようかなと」
――正直にファンに伝えられてすっきりした面もありますか?
「今までインタビューとかしていただいても、不調のことはあまり言えなかったんです。なんか好調な感じでなきゃいけないような気がして。だから素直に全部話せるようになったのは本当にすっきりしたし、ファンのみなさんにも、これからもずっと歌っていられるようにするための前向きなお休みだってことを伝えられたので......。みんなも"休み中はライブしなくていいから""みんなで遊ぼうね""飲み会しよう"って言ってくれてるんです。もう友達です(笑)」
――実際に活動休止してパワーアップするアーティストは少なくないし、休み中は今までできなかったことができますよね。
「新しいことは絶対なんかしたいなと思ってるんですけど......。あ、私ずっと韓国が好きで、韓国語も聞いたらちょろっとはわかるんです。でも言葉にしてアウトプットをしたことがなくて。だから韓国語を勉強したいですね」
――韓国語の曲ができるかも?
「韓国でライブができるようになったらすごくいいなと思います」
――復活後は韓国語で歌っていたり!?
「そうなったら、なんか恥ずかしいから名義を変えるかも(笑)」
――ついでにK-popダンスもどうですか(笑)?
「いや、大丈夫です。それもちょっと恥ずかしい(笑)。でも、楽しいことを考えて休みます。次につながるように」
――ではデビュー10周年の話へ。17歳でデビューを果たし、10代から20代へという、一般的な生活でも劇的な変化がある10年間。いかがでしたか?
「でも、普通の人よりなにも変わってないんじゃないかって思います。たとえば普通は17歳から18歳になって高3で卒業して、大学に入って、就職して、転職して......とかあるかもしれないですけど、私はずっと音楽をやっていただけなので。メジャーレーベルから移籍して、また自主レーベルで始めたっていうくらいですかね。だから、みなさんが仕事を始めるより小さい変化しかない。全然、みなさんの方が変化してるなって。それこそ結婚とかしてるんだよ、みんな(笑)。私、去年と今年で結婚式に3回ぐらい出ました!」
――そのうち子どもも生まれて......(笑)。
「ホントですよ。きっと、みんなの子どもに"私の姪っ子"とか、"私がおばさんだよ"とか言うんだろうな(笑)」
――でもそんな風に変化していくのとは逆に、変わることなく集中して一つのことをやり続けるのも、すごく労力がいるんじゃないかと思います。
「なんか、それに最近気づいた気がします。休むってなって気づいたっていうか......いや、不調になって気づいたかもしれない。この(不調の)原因はなんだろう?って考えた時に、続けるって難しいことなんだってわかったような気がします。昔は楽しかったことが、どんどんシビアになってきて、楽しんではいるんですけど、それはうまくいった時しか楽しくないみたいな感じになってきちゃって。昔は、だれかにヘタだと言われようが、どうでもよかったんです。歌ってるのが楽しかったのに、だれかに何か言われると、そうなのかも?って、いちいち気にするようになって。それは、いろんなことがあったからかもしれない。デビューして最初はうまくいって、右肩上がりの時はあまり人の声は気にならないんですけど、下がっていくと集客とか目に見えるから、やっぱり人の声が、それが正解なのかも?って思えてきたり、すがりたいような気持ちにもなってたんだろうなって。どうしたら下がってきてるのを上げられるんだろう?って考え過ぎて、自分にシビアになってきてたんだと思います。でも、それをずっと考えないように、深掘りしないようにしてたんですよね。仕事のことは家に持って帰らないようにして、プライベートでは自分のことを考えないようにしてました。スタッフさんとお疲れ様でした!ってなったら、もう自分の時間!みたいな」
――ミュージシャンって公私が地続きなイメージですよね。
「そうならざるを得ないですよね。家でも急に歌の練習し始めたりとか、曲を作りだしたりとかする。どんなスイッチかわかんないですけど(笑)。だから、ずっと私であり、それを普通にやってしまうような感じがあるけど、できるだけ考えないようにって」
――しかし、好きなことが楽しくなくなるのはきついですね。
「楽しいと思わないと!って焦ってたような気もします」
――そのモヤモヤはどう解消を?
「でもずっとライブはめちゃめちゃ楽しくて......本番になったら結局楽しかったから。ただ、それまでが不安だし、ライブの時も歌とか、これでどうだ!?と思いながらやってます。今、そんな状態です」
――ライブとライブで会えるファンが支えなんですね。
「ファンのみなさんは、どれだけ私がああもうダメだった!って思っても、すごくよかったって言ってくれて。私には、どうよかったのかわかんなくても、気持ちだけで歌ってるという......それはうまくいってるかどうかは置いといて......私がやってるっていうだけで、それだけでいいんだ!とか、伝えようとするその力がすごく伝わるとか言ってくれて。でも、私は音程がどれだけ取れるかって、もう脳みそがカラオケの採点機みたいになってて、(大事なのは)そこじゃないのになってわかってるのに......難しいなと思います」
――大好きなファンのために、よりうまく歌いたい。だから細かなことも気になるという。井上さんのやさしさが出ている気がします。
「そうですね。うまくやろうっていうのは、その人たちのためにうまくやりたかったんですよね。涙が出てきそう......ティッシュください」
――でも、休みの間にそこから一度離れて環境が変われば、今までと違う価値観や視点ができて、いろいろと好転するのでは?
「今までずっと長く続けてきたからこそ、その環境にずっと居続けちゃって、そういう部分は本当にありますよね。(活動休止によって)世界がすごく広く見えるんだろうなって」
――ちなみにコロナ禍で音楽活動ができなくなった時はどうでしたか?
「それまでは走り続けていなきゃいけないと思ってたんですけど......コロナ禍を機に罪悪感があまりなくなりました。休みがあってもいっかって(笑)。あの時はそこまで張り詰めた感じでもなく、不調みたいなのもちょっとは感じてたんですけど、なんとかなると思ってたんで。だからあまり焦らず、お家でも練習しなかったし(笑)。でも、だんだん不調でうまくいかなくなればなるほど、休みの日もずっと歌い続けるし、もっと練習しなきゃ!って」
――楽観的な面もあるけど......。
「......めっちゃめっちゃ楽観的です(笑)」
――でも不安がそれを追い越す。
「なんでしょうね。歌うことに対してだけ、たぶんプライドもすごくあって、うまくいかないとダメだって。なんか自分に期待してるんだと思うんですけど、それが崩れたような気がして......(目頭を押さえる)」
――じゃ、笑顔になる楽しい思い出の話をしましょう!
「楽しかったこと......。1人でやるのも好きだけど、やっぱりバンドが好きで。1人の時は自分との戦いに勝った時、私のなかでうまくいった時しか好きじゃないんです。だけど、そうじゃないことが多過ぎて......。でもバンドの時はうまくいかなくても、みんなが笑ってるから楽しかったですね。COUNTDOWN JAPANとか」
――復活後はバンドを組むのも......。
「ありですね。これからのミュージシャンと仲間になってバンドを組めたら楽しそうだなと思います」
――バンド、いいですね。それではベスト盤「Inoue Sonoko BEST -#27-」のことも。2枚組で全23曲。選曲も曲順も悩んだのでは?
「曲順はライブでやるならどうするか?みたいなところを考え、まずは"こんにちはパート"みたいな感じで3曲ぐらい、そしたら、ちょっとしっとり声を聴かせるとか、落ち着いて聴ける部分があって、どんどんワクワクして盛り上がりたいから明るい曲になってという感じで決めたんです。ただDISC2は『右足』という曲で終わる感覚です。(その次の最終曲)『点描の唄』はボーナストラックのイメージですね」
――今回収録されていない曲も含め、ひと通り聴き直したんですか?
「聴き直しました。めっちゃ聴きましたね、いろんな曲を。いろんな曲を聴いて、いろいろ入れたかったんですけど、でも今回のこの曲たちが入れたかった曲。シンプルに、絶対に入れなきゃいけなかった曲。リリースされた時のお客さんの反応とかも鮮明に覚えてます」
――反応が一番大きかった曲は?
「やっぱりデビューの時の『大切な君へ』(デビューミニアルバム『#17』収録)と『だいすき。』(1stシングル)。みんながワッてなってくれましたね。『and I...』はしっとりしてるんですけど反応がよくて。これは、ももちひろこさんっていう方のカバー曲で、当時担当してくれてたレーベルの人に、1回歌ってみてほしいって言われて。私自身も歌ってみてすごく楽しかったし、しっくりきたっていうか。当時、この曲をBGMにして動画とかを作ってくれる女の子も多かったのを覚えてますね。あと、今も結構ライブでやる『キミマミレ』は、もちろんいい曲なのはわかってたんですけど、こんなに毎回喜んでもらえる曲になるとは思わなかったな」
――今作で唯一の再録は「#17」収録の曲「ふたり」ですね。
「1曲は再録しようって話になって、どれにする?ってなったら、もうずっと歌ってる『ふたり』で!って。どのライブでも歌うくらいだし、盛り上がる曲でもあるし。あとAメロ′みたいなところがナゾにTikTokで踊られてるんです。なんでここなんだろう?みたいな。サビでもなく頭でもない。ナゾ過ぎて(笑)。でもその世の中の動きがおもしろいなと思って」
――そう思うと、10年のうちにYouTube、Spotify、TikTokなど、音楽を楽しむ環境も変化しましたね。
「本当に。だって『大切な君へ』とか『だいすき。』って、ミュージックビデオをめちゃくちゃ頑張ってて。『ナツコイ』(2ndシングル)も、とにかくキュンを詰め込もう!って(笑)。でも、最近はみんな映像を見ない。ミュージックビデオで盛り上がるのって一部のアーティストさんくらい」
――なぜそうなったんですかね?
「コンテンツが増え過ぎたんじゃないですかね。聴けるものも増えたし。それまではYouTubeとかの動画しかなかったと思うんです。当時はMixChannel(現・ミクチャ)っていうのがあって、それはほぼ女子高生しか使ってなかったんですけど、今はみんながTikTokを使ってる。大人も"とりあえずTikTokしよう!"って(笑)。昔、MixChannelには大人はそんなに注力してくれなかったのに、最近は大人までTikTokに力を注いでる。それに(TikTokなどを利用する)世代が広がったから、的がなくなっちゃったっていうのもあるし。MixChannelだったら女子高生だけを狙っていけたんですけどね」
――そういう視点で曲の変遷を感じてベストアルバムを聴くのもおもしろいかも。
「でも私、最近の曲をあまり入れてないですよね。『Meet Sauce』が(収録曲のなかで)一番最近で2023年ぐらい。その前(2020~2021年ごろ)は全然入ってない。やっぱり10代の時の曲が濃過ぎて、はずせなかったですね」
――個人的には「Meet Sauce」はリラックスしたボーカルがいいなと思いました。
「楽に歌いました。ゆるゆるラップっぽい感じで作りたかったんです。このころから不調がき始めてて、ちょっと肩の力を抜いちゃおうよ!みたいな感じになったんです」
――年齢を重ねたからのゆとりを感じました。デビューのころの歌声とは違いますよね。
「もう全然、それは感じます。あの時(デビュー当時)の力が不思議です。なんであんなに元気だったんだろう。声ツヤツヤだったし、ずっとキラキラしてて(笑)。以前は、私、寝ずに仕事とか余裕でいけましたもん。朝まで飲んだりしても。でもコロナ禍をはさんでからはしんどい(笑)」
――お酒好きなんですね(笑)。
「長いんですよ、私(笑)。飲んだら、帰りたくない!みたいな。みんな帰らないで、お願い!って。さみしがりなんです。その場から立ち去りたくないんで、ずっと居続けます。だれかが、帰る、お開きにしよう!って言わないと一生居る(笑)」
――なぜそんなにさみしいんですか(笑)?
「わかんないです。なんでだろう? でも、だれかに会いたいとか、そういうの(感覚)はめちゃくちゃラブソングにつながりますね。別に恋をしてなくても、ラブソングを書いてたんで。全然好きな人がいなくても(好きな人を)想像できました。そういう曲は多いと思います。全部、実体験じゃない」
――なるほど。やっぱりしばらくライブでファンに会えないのはさみしいですよね。
「だから、今、bubble(for JAPAN)っていうコミュニケーションアプリをやってるんです。めっちゃ動かしてます。ファンの方は個人チャットしてるみたいな感じの画面なんですけど、さみしい時とかは、顔はすっぴんで音声配信とかしてますね。この前も1時間半ぐらい配信してました(笑)」
――しかし、会えなくなる前に10周年記念のツアーがあります。
「今回は聴きたいものが聴けると思います。井上苑子といえば!みたいな曲ばかりをやろうと思ってます」
――大阪公演は9月28日(日)。関西出身の井上さんにとって大阪はデビュー前に路上ライブもしていた思い出の地。
「大阪は、小6でランドセルを背負ってるころから見てくれてるファンの人もいます。心斎橋のライブハウスでライブした時からずっと。お母さんは連絡先も知ってます(笑)。お母さんは普段バックコーラスで歌ってて、自分のライブもするんですけど、それにもなぜかその人がいます(笑)。"来て!"って言って(呼んでる)。でもライブはちゃんとチケットを買って来てくれてます。あ、お母さんのライブにも(笑)」
――親戚みたい(笑)。
「そうなってますね。みんなすごく仲良し。だから大阪は、ちょっと遠い(縁)かもしれないけど、もう、みんな親戚だよ!って感じです(笑)」
Text by 服田昌子
(2025年8月22日更新)
Type-A(CD2枚組+Blu-ray+豪華版ブックレット+ランダムトレーディングカード)
TRAK-0232-0234/5500円(税込)
Type-B(CD2枚組+ブックレット)
TRAK-0235-0236/3300円(税込)
《Blu-ray収録内容》
2025年3月18日に東京・shibuya eggmanにて開催されたプレミアムライブ【Inoue Sonoko10周年始まるよラ
イブ】の映像を収録
[Disc1]
01. だいすき。
02. ふたり-2025Ver.-
03. せかいでいちばん
04. and I…
05. メッセージ
06. ファンタジック
07. キミマミレ
08. なみだ
09. 青とオレンジ
10. 線香花火
11. 大切な君へ
12. 君がいればOK〜サマサマキュンキュン大作戦〜
[Disc2]
01. ナツコイ
02. エール
03. グッデイ
04. どんなときも。
05. おんなのこ
06. 赤いマフラー
07. ぜんぶ。
08. Meet Sauce
09. HeartBeat
10. 右足
11. 点描の唄(ソロVer.)
井上苑子(イノウエ ソノコ)…1997年12月11日生まれ、神戸市出身。歌手としてだけでなく、映画・ドラマ・CMなどにもマルチに出演するシンガーソングライター。小6より作詞作曲と路上ライブを始め、高校入学と同時に上京。メジャーデビュー曲「大切な君へ」をはじめ、「だいすき。」「ナツコイ」などの代表作がある。また、2018年8月に発売した「点描の唄feat.井上苑子 / Mrs. GREEN APPLE」は、2025年7月23日公開(集計期間:2025年7月14日~7月20日)のBillboard JAPANチャートにおけるストリーミング集計で8億回再生を突破した。
【宮城公演】
▼9月7日(日) 仙台 darwin
【福岡公演】
▼9月13日(土) Fukuoka BEAT STATION
【愛知公演】
▼9月15日(月・祝) ボトムライン
【広島公演】
▼9月27日(土) セカンド・クラッチ
▼9月28日(日) 18:00
梅田BananaHall
一般チケット-5500円(ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400
Web Site
http://www.inoue-sonoko.com/
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